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第125回ワークショップの概要

第125回ワークショップの概要

 第125回ワークショップが3月29日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「電子書籍市場の動向について」の最終報告

 報告者
 (大橋弘 CPRC主任研究官・東京大学大学院経済学研究科教授)
 (泉克幸 CPRC客員研究員・京都女子大学法学部教授)
 (田中辰雄 CPRC客員研究員・慶應義塾大学経済学部准教授)
 (山田弘 CPRC研究員・取引企画課長)
 (田辺貴紀 CPRC研究員・取引企画課)
 (塩友樹 CPRC研究員・取引企画課)
 (山崎和久 CPRC研究員・取引企画課)
 (上田昌史 CPRC研究員・経済調査室)
 (柳田千春 CPRC研究員・経済調査室)

 平成24年度の共同研究の一つである本研究は,市場の黎明期にある我が国の電子書籍市場の発展経路予測と同市場の競争政策の観点からの着眼点について把握しようとするものです。
 今回のワークショップにおいては,報告者から本研究の成果について報告がありました。初めに,我が国の電子書籍市場の現状について,電子書籍関係者に対するアンケート調査を実施し,その結果から,紙の書籍と電子書籍の同時刊行を取組方針としている出版社は電子化に積極的である一方,既刊本を中心に電子化をしている出版社は電子化に慎重であるとの報告がなされました。次に,欧米で起きた電子書籍に関するカルテル事件の検証について報告があり,同事件の背景や是正措置の内容について説明がありました。続いて,電子書籍と類似する市場構造を持つ音楽配信市場の分析から,音楽配信事業と同様にプラットフォーム事業としての性格を有する電子書籍事業においても,プラットフォーム事業者間の競争が消費者利益の拡大に寄与し,市場の成長につながるとの見解が紹介されました。最後に,産業組織の観点から電子書籍市場の発展経路を予測する上で重要な視点は,プラットフォーム事業者とコンテンツ事業者(主に出版社)の力関係が市場の発展過程に応じて異なってくるとの見解が紹介されました。

(2)「グローバル市場における競争優位と国内市場における競争状況について」の最終報告

 報告者
 (土井教之 CPRC主任研究官・関西学院大学経済学部教授)
 (田辺治 CPRC研究員・企業結合課長)
 (栗谷康正 CPRC研究員・企業結合課)
 (福永啓太 CPRC研究員・企業結合課)
 (宮丸栄介 CPRC研究員・企業結合課)
 (大宮俊吾 CPRC研究員・企業結合課)
 (工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)

 平成24年度の共同研究の一つである本研究は,グローバル競争が本格化した1990年代後半以降を対象に,国内市場における競争状況とグローバル市場における事業活動の展開能力の関係について,国内競争が国際競争優位や国際競争力に与える影響を実証的に分析し,「国内における合併・産業再編成は国際競争優位を維持・強化するために必要」という議論が妥当か否か,また,実際の合併や提携は国際競争力とどのように関連しているのか実証的に明らかにしようとするものです。
 今回のワークショップにおいては,報告者から本研究の成果として,初めに,我が国の産業データ及び企業データを使用し,国内の競争状況と国際競争力(輸出世界シェアや海外売上高比率)との関係を実証的に分析した結果,両者の間には明確な関係が確認されなかったこと,また,主要企業間に合併がみられる産業ほど輸出世界シェアが低い傾向がみられるとの報告がなされました。次に,政府主導の国内寡占化政策によって躍進を遂げたと言われることの多い韓国企業を題材に行った,国内寡占化が企業の国際的な躍進の必要条件であるという主張に関し検証した結果,国内寡占化が企業の国際的な躍進に貢献したという主張に明確な根拠を見いだすことができず,むしろ[1]迅速かつ大胆な意思決定,[2]技術調達・技術投資戦略,[3]積極的かつ緻密な海外進出戦略といった企業の内部要因が,本研究で着目した韓国企業の国際的な躍進において,非常に重要な役割を果たしてきたのではないかとの検証結果が紹介されました。
 報告を受け,参加者から,実証分析について今後同様の研究を行う場合には,産業や企業の国際競争力を比較優位の視点から捉えることを検討してはどうか,韓国企業の国際的な躍進に対し財閥の貢献の有無といった視点からの検証方法もあったのではないか,とのコメントがなされました。

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