ホーム > CPRC >

内部向けイベント

>

ワークショップ

>

第130回ワークショップの概要

第130回ワークショップの概要

 第130回ワークショップが11月22日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「諸外国の企業結合規制における行動的問題解消措置に関する研究」の中間報告

 報告者
 (大久保直樹 CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授)
 (川浜昇 CPRC客員研究員・京都大学大学院法学研究科教授)
 (田平恵 CPRC客員研究員・埼玉大学経済学部専任講師)
 (荒井弘毅 CPRC次長・経済研究官)
 (田辺治 CPRC研究員・企業結合課長)
 (栗谷康正 CPRC研究員・企業結合課長補佐)
 (飯塚広光 CPRC研究員・経済調査室)
 (佐藤範行 CPRC研究員・経済調査室)

 平成25年度の共同研究の一つである本研究は,企業結合規制において,これまで副次的なものとされ十分な分析がなされてきたとはいえない行動的問題解消措置について研究するものです。具体的には,米国及びEUの企業結合規制において講じられている行動的問題解消措置の実態を調査した上で,競争法上の問題の類型ごとに講じられている行動的問題解消措置の傾向を明らかにすることなどを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,まず,米国の競争当局のスタンスは,水平的合併・垂直的合併を問わず,構造的問題解消措置が原則であり,行動的問題解消措置は例外的な位置付けにあることは変わっていないとの説明がありました。次に,米国で行動的問題解消措置が課された事例について,[1]垂直合併を認めるに当たって行動的問題解消措置が課されたケース,[2]水平合併を認めるに当たって行動的問題解消措置が課されたケース,[3]水平的合併を認めるに当たって課された構造的問題解消措置の実効性確保手段として課された行動的問題解消措置のケースについて背景と内容について説明がありました。次に,米国における行動的問題解消措置の遵守の状況について説明がありました。
 報告を受けて,参加者から,行動的問題解消措置の中にはRAND(Reasonable and Non-Discriminatory)条件での必須特許のライセンス義務のような構造的問題解消措置に近いものから価格の報告義務のような簡易なものまであるが,モニタリングのしやすさや行動的問題解消措置の不可逆性といった観点からある程度類型化できるのではないか,構造的問題解消措置によって,意図した結果と異なり,企業間の生産能力が対称的になり,市場が協調的になったとの経済学の分析もあるので,こうした経済学の既存研究もフォローする必要があるのではないかとのコメントがなされました。これに対して報告者から,指摘された点も踏まえ,研究に当たっていきたいとの回答がなされました。

(2)「モビリティー指数を利用した我が国主要産業の市場構造の変化の検証と競争政策の実務への利用可能性の検討-生産・出荷集中度データに基づく分析-」の中間報告

 報告者
 (土井教之 CPRC主任研究官・関西学院大学経済学部教授)
 (本庄裕司 CPRC客員研究員・中央大学商学部教授)
 (工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)

 平成25年度の共同研究の一つである本研究は,生産・出荷集中度調査のデータを使用し,[1]市場のダイナミズムの視点も加えて我が国の主要産業の市場構造の変化を検証するとともに,[2]モビリティー指数等の市場のダイナミズムに関する指標について検討し,これらの指標の企業結合審査等の競争政策の実務への利用可能性と利用に当たっての留意点について研究するものです。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,まず,[1]分析に使用した市場のダイナミズムを計測するモビリティー指数として,市場シェアの変動をベースにした指数と企業の順位の変動をベースにした指数について説明があり,次に,[2]それぞれの指数を使用した分析の途中結果が報告されました。具体的には,[1]について,市場シェアの変動と順位の変動をそれぞれ独立して使用した指数は幾つかあるものの両方を考慮した指数は一つしかない旨報告され,本共同研究においては,既存の指数を使用するほか,両方を考慮する指数の開発を検討している旨説明がありました。次に,[2]について,各指数を計測したところ市場シェアの変動をベースにした指数間では相関係数は高いものの市場シェアの変動をベースにした指数と順位の変動をベースにした指数との相関係数は低く,両指数は市場のダイナミズムについて異なる傾向を捉えている可能性がある旨報告がありました。また,市場集中度や市場規模の成長率と各指数との相関係数を求めたところ,市場規模が変動している市場ではモビリティー指数が高い傾向にあること,市場集中度が高い市場においては市場規模の成長率が高い品目でモビリティー指数が高い傾向にあるなどの傾向が報告されました。
 報告を受け,参加者から,[1]市場シェアの変動をベースにする指数と順位の変動をベースにする指標のどちらが企業結合審査等の実務に有用となり得るか,[2]技術のリーダーと市場のリーダーが異なる場合があると思われるが,本研究ではそういった点についてはどのように考えているのか,との質問がなされました。これに対し報告者から,[1]については,直感的には順位の変動をベースにした指数が有用と思われるがまだ十分検討できていない,[2]特許取得数等のデータを使用すれば技術のリーダーを把握できると思われるが,今回の研究ではそういった点は検討の対象としていない,との回答がなされました。

ページトップへ