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第133回ワークショップの概要

第133回ワークショップの概要

 第133回ワークショップが4月4日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「諸外国の企業結合規制における行動的問題解消措置に関する研究」の最終報告

 報告者
 (大久保直樹 CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授)
 (川浜昇 CPRC客員研究員・京都大学大学院法学研究科教授)
 (田平恵 CPRC客員研究員・埼玉大学経済学部専任講師)
 (荒井弘毅 CPRC次長・経済研究官)
 (品川武 CPRC研究員・企業結合課長)
 (栗谷康正 CPRC研究員・企業結合課長補佐)
 (飯塚広光 CPRC研究員・経済調査室)
 (佐藤範行 CPRC研究員・経済調査室)

 平成25年度の共同研究の一つである本研究は,米国及びEUの企業結合規制において講じられている行動的問題解消措置の実態を調査した上で,競争法上の問題の類型ごとに講じられている行動的問題解消措置の傾向を明らかにすること等を目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,本研究の成果について以下のとおり報告がありました。初めに,米国の事例と競争当局の方針について,競争当局が公表した報告書,ガイドライン等の調査の結果から,競争当局は,個々の事情において,反競争的効果除去のための問題解消措置の設計・実効を行っており,その際に,構造的/行動的問題解消措置の区分に拘泥していないこと等の報告がなされました。次に,EUの事例と当局の方針について,EUの規則や研究者による評価等の調査の結果から,構造的か行動的かという類型論は崩れてきていること及び問題解消措置の履行確保は,当局ではなく,trustee(注)が担当しているとの報告がなされました。続いて,比較法と経済分析の橋渡しとして構造的問題解消措置を課した場合でも他の行動的問題解消措置が必要な場合が多いこと等の報告がなされました。最後に,問題解消措置の経済分析について先行研究の紹介がなされ,様々な研究において,経済的効果の観点からは,行動的問題解消措置よりも構造的問題解消措置が望ましく,それが困難な場合にだけ行動的問題解消措置を検討すべきとするものが多かったという報告がなされました。
 報告を受け,参加者から,当局が求めた行動的問題解消措置を行わなかった場合に対する制度について質問がありました。これに対して,報告者から,米国及びEUでは,ペナルティの対象となるとの回答がありました。また,参加者から,事業譲渡について,何をもって「成功」と判断するのか難しいので,報告書において,問題解消措置として「成功」と説明する際の「成功」の定義について明確に説明してほしいとのコメントがありました。

(注)trusteeとは,事業譲渡等の問題解消措置を当事会社が期限内に完全に行っているか競争当局を代理して監視するものである。競争当局が任命し,報酬は当事会社が負担する。monitoring trustee(当事会社が問題解消措置を守っているかどうかを監視するもの)と,divestiture trustee(資産分離のために最終的な取決めをして,資産分離取引を実行するもの)の2種類が存在し,それらの総体がtrusteeの制度である。

(2)「モビリティー指数を利用した我が国主要産業の市場構造の変化の検証と競争政策の実務への利用可能性の検討-生産・出荷集中度データに基づく分析-」の最終報告

 報告者
 (土井教之 CPRC主任研究官・関西学院大学経済学部教授)
 (本庄裕司 CPRC客員研究員・中央大学商学部教授)
 (工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)

 平成25年度の共同研究の一つである本研究は,生産・出荷集中度調査のデータを使用し,市場のダイナミズムの視点も加えて我が国の主要産業の市場構造の変化を検証するとともに,モビリティー指数等の市場のダイナミズムに関する指標について検討し,これらの指標の企業結合審査等の競争政策の実務への利用可能性と利用に当たっての留意点について研究するものです。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,[1]モビリティー指数間の相関分析,[2]モビリティー指数の決定要因に関するクロスセクション分析及びパネルデータ分析の結果並びに[3]モビリティー指数の影響に関するクロスセクション分析の結果について報告がありました。具体的には,[1]についてモビリティー指数間の相関が高いものもあれば低いものもあり,シェアの変動があっても上位企業の順位は比較的安定している場合があること,[2]について需要の変動が大きな産業ではモビリティー指数が高くなっており市場シェアの変動や順位の変動が起きている傾向にあること,カルテルが確認されている産業ではモビリティー指数が低いこと,需要成長率がプラスの産業のみならず需要成長率がマイナスの産業でもモビリティー指数が高い傾向にあり,つまり成長産業及び衰退産業で市場シェアの変動や順位の変動が起きている傾向にあること等が指摘され,[3]について価格の変動とモビリティー指数の間に明確な関係を確認できなかったが,一方,価格費用マージンとモビリティー指数の間には負の関係がみられ,市場シェアの変動や順位の変動が起きている産業では価格費用マージンが低い傾向にある等の報告がありました。
 報告を受け,参加者からは,カルテルとモビリティー指数の間の因果関係について,カルテルの結果,市場シェアや順位が安定するのか,それとも,市場シェアや順位が安定している市場でカルテルが起きやすいのか,本分析からは捉えられないのではないか,また,価格の変動にはコストの変化も影響するので,利用できるのであればコストの変化を追加して分析してはどうか,とのコメントがありました。

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