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第134回ワークショップの概要

第134回ワークショップの概要

 第134回ワークショップが4月11日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

「EUのリニエンシー制度の研究」の最終報告

 報告者
 (武田 邦宣 大阪大学大学院法学研究科教授・CPRC主任研究官)
 (和久井 理子 立教大学法学部特任教授・大阪市立大学大学院法学研究科特別研究員・CPRC客員研究員)
 (斉藤 高広 金沢大学人間社会研究域法学系教授・CPRC客員研究員)
 (高居 良平 課徴金減免管理官・CPRC研究員)
 (能勢 弘章 課徴金減免管理官付主査・CPRC研究員)
 (牧原 祐記 課徴金減免管理官付審査専門官・CPRC研究員)
 (白川 慶  課徴金減免管理官付内閣府事務官・CPRC研究員)
 (後藤 景子 経済調査室・CPRC研究員)ほか

 平成25年度の共同研究の一つである本研究は,EUのリニエンシー制度の歴史的展開をフォローし,裁量型課徴金制度や和解制度との関係も踏まえた上でリニエンシーの制度改革の意図と効果について内在的に研究し,また,欧州委員会がリニエンシー制度において有している裁量の意義・効果等について検証することを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から本研究の成果として,EUのリニエンシー制度の実際の制度運用等について報告がなされました。EUの制度の下では,リニエンシー申請の順序のみならず欧州委員会に対する協力の質もリニエンシーを認めるに当たって考慮されるところ,このことから欧州委員会の裁量の余地は自然と広がり,ともすれば恣意的な判断が行われやすくなるようにも思えるが,EUでは協力の質を考慮すること自体に対する批判は無いようであること,むしろ欧州委員会の法執行活動に対して重大な貢献を行っていない限り,リニエンシーを認めるべきでないとの基本的な考え方は広く共有されているようであることが報告されました。
 また,減額が認められるためには,申請順序のみならずSignificant Added Value(SAV)(重大な付加価値)を持つ証拠を早く提出する必要があるところ,早い段階で提出すれば欧州委員会の手持ち証拠が少ないためにSAVが認められやすく,かつ,どのような証拠がSAVを持つと認められるのか分からないことから,徹底した社内調査を行うなどして早くSAVを持つ証拠を提出しようと申請者間の競争が行われていること,欧州委員会から発出されるRequest for Information (RFI)(公式に事実認定のために申請者に対して質問や情報提供要求を行うこと)に対しては回答義務がある上,RFIを超えて提出した証拠に限ってSAVを持つかどうかの評価の対象となることから,申請者はRFIが発出される前にSAVを持つ証拠を自発的に提出する必要があること,それ以外でも,申請者は申請時から完全協力義務を負うため,欧州委員会からの非公式な質問に対する回答や,入手した証拠等の提出も完全協力義務の範囲内で行われていること,このように申請者間における申請競争と完全協力義務とがあいまって,欧州委員会の効率的な法執行を助けているとみられることが報告されました。
 加えて, EUには部分的免除(partial immunity)制度があり,後続申請者の提出した証拠により欧州委員会が新たな事実を立証することができるようになり,かつ,これにより法規違反の重大性や継続期間が増大する申請を行った場合,当該部分については制裁金が免除されること,これは後続申請者が違反行為を広く申請するインセンティブを持つことを確保するための制度であること等が報告されました。
 報告を受け,参加者から,免除申請者が,カルテル行為の一部しか関わっていない場合であっても,当該免除申請者は自分の知る部分について申請すれば免除を得られるのかとの質問がありました。これに対して,報告者からは,免除が認められるのは欧州委員会による「ターゲットを絞った調査」(調査開始前)又は「違反行為の認定」(調査開始後)を可能にすることができる場合に限られるのであり,立入調査も可能にならない程度の情報しか提供されていないのであれば免除は受けられないことが前提であること,しかし,ターゲットを絞った調査を可能にすると認められれば,カルテルの全容を明らかにすることは免除の要件ではないとの回答がありました。
 また,免除申請者が報告しなかった期間・範囲についてもカルテル行為があることが判明した場合には,当該部分について申請を行った者に対して,上記のとおり,部分的免除が認められる制度が用意されている(ただし,欧州委員会がこれら期間・範囲について知らなかった場合に限る。)との説明がありました。
 

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