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第138回ワークショップの概要

第138回ワークショップの概要

 第138回ワークショップが11月7日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「オンラインとオフラインのサービス需要の代替性」の第2回中間報告

報告者
(岡田羊祐 CPRC所長・一橋大学大学院経済学研究科教授)
(大橋弘 CPRC主任研究官・東京大学大学院経済学研究科教授(都合のため欠席))
(浅井澄子 CPRC客員研究員・明治大学政治経済学部教授)
(黒田敏史 CPRC客員研究員・東京経済大学経済学部専任講師(都合のため欠席))
(工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)

 平成25・26年度の共同研究の一つである本研究(研究期間2年)は,電子書籍,音楽配信,映像配信,SNS等のコンテンツによるオンラインとオフラインのサービス需要の代替性について調査し,書籍,CD・レコード,DVD・映画等といったオフライン・サービス市場の現状分析を踏まえつつ,日米比較の視点からコンテンツの需要構造を分析し,オンライン・コンテンツ市場の発展経路を予測することを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,[1]供給側からみた書籍市場の分析及び[2]需要側からみた書籍,音楽及び映像市場の分析について説明がなされました。[1]では,電子書籍(オンライン・コンテンツ)の販売が紙媒体(オフライン・コンテンツ)の販売に与えるインパクトについて,書籍全体,コミック雑誌及びコミック単行本それぞれの分野を対象に行った分析について報告があり,電子書籍の登場が紙媒体の販売に対して大きな影響を及ぼしているようには見受けられないなどの説明がなされました。[2]では,日米の消費者について,年齢,性別,世帯所得等を基に分類し,各分類ごとにオンライン・コンテンツ又はオフライン・コンテンツの購入・利用に係る選択の傾向について分析したところ,日本では消費者の所得とオンライン・コンテンツ又はオフライン・コンテンツの購入・利用に係る選択との間に有意な関係は認められなかったが,米国では消費者の所得の増加と共にオフライン・コンテンツのみを購入・利用する者が減少していること,日米共に,現在,オンライン・コンテンツを購入・利用しない者が,今後,オンライン・コンテンツを購入・利用する確率が上昇しているなどの説明がなされた。
 報告を受け,日米間の差の理由としてどのようなものが考えられるのか質問があり,報告者から,詳細には分析していないものの,電子化されているジャンルの違いや書店の数などの差が影響しているのではないかとの回答がなされました。ほかに参加者から,今回対象としている市場では双方向性が関係している市場もあり,例えば,著者やアーティストの創作活動と小売市場との相互関係も考えてみてはどうかとのコメントがなされました。

(2)「医薬品市場における競争と研究開発インセンティブ―ジェネリック医薬品の参入が市場に与えた影響の検証を通じて―」の中間報告

報告者
(土井教之 CPRC主任研究官・関西学院大学経済学部教授)
(武田邦宣 CPRC主任研究官・大阪大学大学院法学研究科教授)
(伊藤隆史 CPRC客員研究員・常葉大学法学部准教授)
(荒井弘毅 CPRC次長・経済研究官)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)
(小野香都子 CPRC研究員・経済調査室)
(瀬戸口丈博 CPRC研究員・経済調査室)

 平成26年度の共同研究の一つである本研究は,我が国におけるジェネリック医薬品の参入が市場に与えた影響の検証及び欧米におけるジェネリック医薬品をめぐる競争法違反事例の検証を通じ,我が国の医薬品市場において,競争政策上,競争当局が注視すべき点について示唆を得ることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,これまでの研究成果として,[1]これまでに行ったヒアリングに関し,ジェネリック医薬品が普及しない理由として患者や医者の不安や先発薬の薬価低下がジェネリックの参入・普及を制約しているのではないかといったことが挙げられたとの説明があり,[2]経済学の視点から,これまでの実証分析において確認した,過去10年で参入企業数,売上,シェア及び薬価が変動した品目が示されたほか,暫定的な結果としてジェネリック医薬品の参入後に先発薬シェアは低下していること,HHIが上昇するとジェネリック医薬品と先発薬の価格の乖離は縮小していることなどの報告がなされ,[3]法学の視点から,欧州における医薬品産業に係るセクター別調査や競争法違反事例の検証及び米国におけるいわゆるReverse Payment に係る事例に関するこれまでの検証結果についての説明がされました。
 報告を受け,参加者から,Reverse Paymentは,米国・欧州以外の国においても事例があることから,これらについても確認をしておく必要があるのではないかというコメントがなされました。また,実証分析については,ジェネリック参入が市場にもたらす影響を検討するには,先発医薬品の価格がジェネリック参入以前の価格からどれくらい下がっているかをみるのが良いのではないかというコメントや,薬効領域別に価格変動に違いがみられることなどから,これについて整理してみる必要があるのではないかというコメントがなされました。このほか,今回の共同研究の成果として,医薬品市場における競争環境の整備に関する示唆を加えてもらいたいとのコメントがなされました。

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