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第139回ワークショップの概要

第139回ワークショップの概要

 第139回ワークショップが4月24日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「医薬品市場における競争と研究開発インセンティブ―ジェネリック医薬品の参入が市場に与えた影響の検証を通じて―」の最終報告

報告者
(土井 教之  元CPRC主任研究官・関西学院大学名誉教授)
(武田 邦宣  CPRC主任研究官・大阪大学大学院法学研究科教授)
(伊藤 隆史  元CPRC客員研究員・常葉大学法学部准教授)
(荒井 弘毅  元CPRC次長・秀明大学総合経営学部教授)
(工藤 恭嗣  CPRC研究員・経済調査室)
(小野 香都子 CPRC研究員・経済調査室)

 
 平成26年度の共同研究の一つである本研究は,我が国におけるジェネリック医薬品の参入が市場に与えた影響の検証及び欧米におけるジェネリック医薬品を巡る競争法違反事例の検証を通じ,我が国の医薬品市場において,競争政策上,競争当局が注視すべき点について示唆を得ることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,[1]国内医薬品市場の概要及びジェネリック医薬品参入を巡る先発及び後発医薬品メーカー間の競争について,[2]法学の視点から,欧米の事例に基づく医薬品産業における競争法の適用について,また,米国におけるいわゆるReverse Payment に係る事例についての説明がされました。このほか,[3]経済学の視点から,日本の医薬品産業の競争構造やジェネリック医薬品のシェアが先発医薬品の研究開発や価格にもたらす影響等について,実証分析等に基づく検討結果が示されました。
 経済分析の結果として,日本では,ジェネリック医薬品の拡大が先発医薬品の価格にストレートに影響を与えておらず,互いに十分に競争的な関係とはいえないのではないかとの指摘がありました。この理由として,薬価制度など日本の規制制度に起因する可能性があるといった点が挙げられました。他方,先発医薬品とジェネリック医薬品間の競争回避,競争者排除があれば,競争法を積極的に適用することが,先発医薬品メーカーによるイノベーションを高める効果があるのではないかという指摘もありました。今後も,競争政策の観点から医薬品産業に注目し続けるべきであるとの意見が示されました。
 報告を受け,参加者から,米国の事例検証におけるReverse Paymentの違法性について,訴訟コストを超えるような和解金の支払があれば違法性が推認されるところ,訴訟コストの考え方やその客観性について質問がされました。また,Actavis事件後の地裁の判決の動向について,金銭の移転を伴わないものは,違法とはしないする判例の紹介がされていたが,金銭を伴わない和解についても競争阻害効果があるとの議論がされていることから,金銭の移転を重視した判決以外も紹介した方がよいのではないかとのコメントがなされました。

(2)「オンラインとオフラインのサービス需要の代替性」の最終報告

報告者
(岡田 羊祐 CPRC所長・一橋大学大学院経済学研究科教授)
(大橋 弘  CPRC主任研究官・東京大学大学院経済学研究科教授)
(浅井 澄子 元CPRC客員研究員・明治大学政治経済学部教授)
(黒田 敏史 元CPRC客員研究員・東京経済大学経済学部専任講師(都合のため欠席))
(工藤 恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)

 
 平成25・26年度の共同研究の一つである本研究(研究期間2年)は,電子書籍,音楽配信,映像配信,SNS等のコンテンツによるオンラインとオフラインのサービス需要の代替性について調査し,書籍,CD・レコード,DVD・映画等といったオフライン・サービス市場の現状分析を踏まえつつ,日米比較の視点からコンテンツの需要構造を分析し,オンライン・コンテンツ市場の発展経路を予測することを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,[1]共同研究の総論が説明されたあと,[2]供給側からみた書籍のフォーマット選択及び時系列分析による電子書籍の紙媒体への影響に関する分析結果について説明がなされ,次に[3]需要側からみたオンラインコンテンツサービスの日米比較分析の結果について説明がなされました。[1]では,クラウド・コンピューティングの歴史的な背景について説明がなされたあと,クラウドサービスを利用するオンライン・サービス市場においては技術上のリーダーシップが必ずしも市場のリーダーシップにつながらないことについて説明がなされました。[2]について書籍のフォーマット選択に関する分析では,電子書籍の提供の有無について著者の過去の販売実績,映画化されたタイトル数などとの関係について分析した結果,過去に販売実績のある作家の作品は電子書籍としての提供が少ないことなどが説明され,人気のある作家が電子書籍に積極的ではないことが,我が国で電子書籍の普及が進まない一因があると考えられるのではないかとの説明がなされました。時系列分析においては,電子書籍の登場が,紙媒体の書籍全体とコミックの双方に関して,大きな影響を及ぼしているようには見受けられないなどの説明がなされました。[3]については,日米の書籍,音楽及び映像の三つのメディアについて,日米の消費者アンケート結果から書籍,音楽及び映像ともにオンラインコンテンツの購入割合について日米で大きな差がみられていることが紹介されました。その上で,その差の源泉がオンラインコンテンツに対する日米の消費者の好みの差にあるのか否か分析した結果が示され,分析結果によれば,書籍の購入選択行動については,日米の消費者間で書籍購入について好みの差はないと考えられることから,普及率の差は日米における供給側の違いにその要因があるのではないか,他方,音楽や映像の購入については,日米で消費者の好みの違いも普及率の差に影響しているのではないか,との結果が報告されました。
 報告を受け,参加者から,日米の供給側の違いが普及率の差に影響していることについて,制度的な要因が影響していると考えられるのか質問があり,報告者から,電子書籍については著作物再販適用除外制度の対象とはなっておらず制度的な要因による影響については認識していない,他の要因としては,我が国では縦書きの書籍もあり,最近ではEPUBも縦書きに対応しているが,電子媒体を作成する際のコストが著しいなどの技術的な要因もあるのではないか,との回答がなされました。

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