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第140回ワークショップの概要

第140回ワークショップの概要

 第140回ワークショップが5月15日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「プラットフォームビジネスの特性の分析と合併審査上の課題」の最終報告

報告者
(大橋弘 CPRC主任研究官・東京大学大学院経済学研究科教授)
(大久保直樹 CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授)
(池田千鶴 元CPRC客員研究員・神戸大学大学院法学研究科教授)
(大木良子 元CPRC客員研究員・法政大学経営学部准教授)
(荒井弘毅 元CPRC次長・秀明大学総合経営学部教授)
(品川武 CPRC研究員・企業結合課長)
(橋本庄一郎 CPRC研究員・企業結合課)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)
(瀬戸口丈博 CPRC研究員・経済調査室)

 
 平成26年度の共同研究の一つである本研究は,プラットフォームビジネスの業界構造やビジネスモデルを検証し,プラットフォームビジネスにおける競争上の特性を分析・把握した上で,こうした特性を有する分野の水平合併審査に当たって考慮すべき問題について調査研究することを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,[1] 経済学の観点から,プラットフォーム事業者間の合併がなされた場合,いずれの市場においても価格は上昇するものの,間接ネットワーク効果の存在により価格上昇が抑制され,また,いずれかの市場がSingle-homing(注)の場合,合併したプラットフォーム事業者が提供する商品・役務の価値が間接ネットワーク効果によって上昇し,合併前より価格が上昇する可能性があるといった報告がなされました。[2] また,法学の観点から,双方向市場に関するOECDにおける議論状況について報告があり,双方向市場における市場画定に際しては,間接ネットワーク効果が実質的な影響を及ぼす場合であるかどうかを識別することが重要であるといったことについて報告がなされました。また,従来,ある商品・役務が無料で提供されている場合,当該商品・役務の市場を画定して反競争性の有無を検討するということはされてこなかったものの,当該商品・役務の対価として情報が支払われていると捉えれば,市場画定・反競争性の有無の検討も行い得るのではないかといった報告がなされました。[3] さらに,プラットフォームビジネスを行っている事業者に対して行ったヒアリングの結果として,ネットワーク効果を重要視している事業者は顕著に多くはない一方で,双方向市場の一方の市場における取引・情報を増やすことで,他方の市場へ良い影響をもたらすことが多いという認識が多くの事業者によってなされていたといった報告がなされました。

(注)複数のプラットフォームがあるとき,プラットフォームの利用者がいずれか一つのみのプラットフォームを利用すること。

(2)「非ハードコアカルテルの違法性評価の在り方」の最終報告

報告者
(泉水文雄 CPRC客員研究員・神戸大学大学院法学研究科教授)
(宮井雅明 元CPRC客員研究員・立命館大学法学部教授)
(齊藤高広 CPRC客員研究員・金沢大学人間社会研究域法学系教授)
(井畑陽平 元CPRC客員研究員・椙山女学園大学現代マネジメント学部准教授)
(遠藤光 CPRC研究員・元相談指導室長)
(瀬戸口丈博 CPRC研究員・経済調査室)
(佐藤範行 CPRC研究員・経済調査室)
(川島裕司 CPRC研究員・経済調査室)

 
 平成26年度の共同研究の一つである本研究は,非ハードコアカルテルの違法性の評価の判断枠組み及び判断基準について,環境分野を中心として,日米EUの比較法研究の観点から分析すること等を目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,中間報告以降の研究成果として,[1]米国関連では,司法省反トラスト局(Antitrust Division, Department of Justice,以下「DOJ」という。)及び連邦取引委員会(Federal Trade Commission,以下「FTC」という。)の政策担当者へのインタビューにより得られた示唆の概要について,[2]EU関連では,情報交換活動と非ハードコアカルテルの違法性の評価,特に石油危機等の緊急事態時のEU競争法の適用判断について,[3]日本については,震災等緊急時における共同行為の分析,及び独占禁止法に関する相談事例集のうち,レジ袋の削減に関する共同行為の相談事例を前提に,レジ袋の削減の取組が進んでいる自治体へのヒアリング結果についての説明がなされました。
 報告を受け,参加者から,(1)米国における非ハードコアカルテルの違法性判断に関して,いわゆる社会公共目的によって正当化できるかどうかについては,反トラスト法上,社会公共目的がある行為だからといって特別扱いはしないという説明があったが,DOJやFTCは競争に与える影響のみを判断し,社会公共目的による正当化(反トラスト法適用除外の問題)についての判断は裁判所に任せていると理解してよいのか,(2)日米EUにおいては,競争制限効果がある非ハードコアカルテルは社会公共目的を持った行為であったとしても競争法上問題であるというのは理解できたものの,発展途上国等の他の国々では競争促進効果以外の価値が考慮されることがあるように思うが,そのような国々では社会公共目的を持った非ハードコアカルテルに対してどのような評価がなされているのか,法制度面や運用面での知見について教えてほしいとの質問がなされました。これに対し,報告者から,(1)については,反トラスト法の事案においては,競争への影響が焦点となるというのが基本的な判例法の立場であり,反トラスト当局の立場でもある。したがって,競争促進という文脈で説明できない価値は基本的には考慮しないというのが裁判所のスタンスである。ただ,米国の場合,州政府が社会公共目的を持った競争制限的な内容の法律や政策を打ち出す場合があり,それに従って企業が競争制限行為をしても,当該行為が主権者としての州政府の行為と同一視されて反トラスト法の適用を除外される可能性がある。この場合,裁判所は,州政府の政策内容の是非については判断せず,専ら州政府の主権の発露をどこまで尊重するかという観点から適用除外の是非を判断する,(2) については,ドイツの企業結合規制において,連邦カルテル庁によって禁止された企業結合を,連邦経済技術大臣が申請に基づいて,産業政策的な側面も考慮して許可することができることが条文に盛り込まれているが,実際の運用はまだなされていないようである。また,詳しい内容は存じていないが,中国の企業結合規制にも公共の利益や国家安全を考慮する条文が入っているようであるが運用実態はわからない,との回答がなされました。

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