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第144回ワークショップの概要

第144回ワークショップの概要

 第144回ワークショップが4月15日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「独占禁止法違反行為の端緒探知ツールとしてのスクリーニング手法に関する研究」の最終報告

報告者
(武田邦宣 平成27年度CPRC主任研究官・大阪大学大学院法学研究科教授)
(中林純 平成27年度CPRC主任研究官・東北大学経済学部准教授)
(西脇雅人 平成27年度CPRC客員研究員・早稲田大学高等研究所准教授)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・企業結合課)
(能勢弘章 CPRC研究員・経済調査室)
(小野香都子 CPRC研究員・経済調査室)
(新藤友理 CPRC研究員・経済調査室)

 平成27年度の共同研究の一つである本研究は,スクリーニング手法に係る学術研究の調査や諸外国の競争当局の活用事例の収集等を通じて,スクリーニング手法の種類及びその特徴について把握するとともに,我が国で独占禁止法上問題となった事例を材料として,各スクリーニング手法を用いてシミュレーションを実施し,その有効性について検証を行い,我が国におけるスクリーニング手法の利用の是非について検討する際の基礎資料とすることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,研究の対象について,競争当局におけるスクリーニング手法の必要性といった活用の背景事情,事業者の内部監査におけるスクリーニング手法の活用の可能性について説明がなされました。また,産業のスクリーニング手法,市場のスクリーニング手法及び入札のスクリーニング手法のそれぞれについて,シミュレーションの結果についての報告がなされました。さらに,競争当局においてスクリーニング手法を利用する際の課題・留意点の説明がなされました。 
 報告を受け,参加者から,[1]事業者による内部監査に関して,競争当局によるスクリーニング手法を事業者の内部監査に活用できるよう還元するとは具体的にはどのようなことを指しているのかについて質問がなされました。これに対し,報告者から,競争当局が事業者に対して,導入コストが低く,内部監査部門が抱える人材による分析が可能と思われるシンプルなスクリーニング手法を紹介すれば,各事業者がカスタマイズする形で,実際に活用される可能性が高まると考えられるとの回答がなされました。
 また,[2]市場のスクリーン手法においては,シェアの変動のみで検討がされているが,このほか順位の変動や企業のコスト構造の差などについては,シェア変動とともに検討を行うことによりどの程度活用の余地があるのかとの質問がなされました。これに対し,報告者から,シェア変動に加えて,順位の変動などのデータを加えることにより,より精緻なスクリーニングが可能となるが,本研究での目的は,簡素な手法でスクリーニングが可能であるかシミュレーションをするというものであるため,そのようなデータはあえて利用していないとの回答がなされました。


(2)「諸外国における競争法適用除外制度の動向及び同制度撤廃が市場に与える影響」の最終報告

報告者
(大久保直樹 平成27年度CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授)
(齊藤高広 平成27年度CPRC客員研究員・金沢大学人間社会研究域法学系教授)
(佐藤英司 平成27年度CPRC客員研究員・福島大学人文社会学群経営学類准教授)
(多田英明 平成27年度CPRC客員研究員・東洋大学法学部教授)
(洪淳康 平成27年度CPRC客員研究員・金城学院大学生活環境学部准教授)
(和久井理子 平成27年度CPRC客員研究員・大阪市立大学大学院法学研究科特任教授)
(藤井宣明 CPRC研究員・調整課長)
(十川雅彦 CPRC研究員・管理企画課)
(口ノ町達朗 CPRC研究員・調整課)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・企業結合課)
(小野香都子 CPRC研究員・経済調査室)
(岩宮啓太 CPRC研究員・経済調査室)
(川島裕司 CPRC研究員・経済調査室)

 平成27年度の共同研究の一つである本研究は,我が国における適用除外制度の見直しを進めるため,研究対象を外航海運及び国際航空に係る適用除外制度の2分野に絞り,EU,米国,韓国等の諸外国における競争法適用除外制度の概要や,同制度見直しに関する議論の把握等により,諸外国の動向を踏まえた我が国の適用除外制度のあるべき姿についての示唆を得ることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,研究成果として,研究対象とした諸外国における,競争法適用除外制度の概要,同制度見直しに関する議論,我が国への示唆等に関する報告が行われました。

 これらの報告を受け,参加者から,[1]各国における海運同盟の実効性に関する評価はどのようなものであるか,との質問がなされました。これに対し,報告者からは,米国では,既に海運同盟はほとんど存在しておらず,EUでは,既に海運同盟は適用除外の対象ではなくなっており,競争が行われている実態にある。このほか,韓国では,大手の海運事業者は海運同盟を使っていないが,一方,近距離で事業を行う中小の海運事業者は,海運同盟を必要としており,さらに諸国(オーストラリア,ニュージーランド,シンガポール及びマレーシア)においては,海運同盟自体の数も減少しており,そもそも価格を決めてそれを他の事業者に守らせることが制度的にできなくなってきているのが実態である,との回答がなされました。

 また,参加者から,[2]外航海運に係る我が国への示唆に関しては,各国の制度を踏まえ,形骸化している海運同盟から見直しを進めるべきなのかなど,実際にどのように制度を見直していくべきと考えられるか,との質問がありました。これに対し,報告者から,米国では,反トラスト法の考え方が海運法に盛り込まれているが,それでもなお適用除外制度を廃止すべきという議論があることが特徴的であるほか,コンソーシアムについては我が国では効率性をどう見るのかという点が適用除外制度を検討する上で重要であると考えられる。このほか,EUでは,外航海運に競争法が適用される場合において,競争者間で協力できる範囲などを示した水平的協力ガイドラインが明確に規定されている一方,我が国では適用除外制度を廃止した場合にその点が不明確なことが課題であると思われ,さらに,韓国では,協定を類型別に分けた上で,役割が終わったものから段階的に廃止すべきと議論されたことから,我が国においても参考になると思われる,との回答がなされました。

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