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第145回ワークショップの概要

第145回ワークショップの概要

 第145回ワークショップが4月22日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

「企業結合審査における輸入圧力等の評価に係る事後検証」の最終報告

報告者 
(大橋弘 平成27年度CPRC主任研究官・東京大学大学院経済学研究科教授)
(中川晶比兒 平成27年度CPRC客員研究員・北海道大学大学院法学研究科准教授)
(中村豪 平成27年度CPRC客員研究員・東京経済大学経済学部教授)
(品川武 CPRC研究員・企業結合課長)
(小俣栄一郎 CPRC研究員・調整課)
(瀬戸口丈博 CPRC研究員・企業結合課)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・企業結合課)
(吉川満 CPRC研究員・経済調査室)
(岩宮啓太 CPRC研究員・経済調査室)
(川島裕司 CPRC研究員・経済調査室)


 平成27年度の共同研究の一つである本研究は,企業結合審査の際に,輸入圧力や隣接市場からの競争圧力に係る評価を行うに当たって踏まえるべき視点や採るべき手法等について検討し,我が国における企業結合審査において競争圧力の存否について評価する上での示唆を得ることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,研究成果として,
 [1]経済学の観点から,実際の企業結合事例を2つ取り上げ,(欧米でも用いられるものを含め)複数の手法により分析した結果,[2]法学の観点から,欧米の企業結合事例における輸入圧力の判断基準とそれに対応した経済的証拠の在り方が報告され,[3]その上で,本共同研究では,手法上・データ上の課題は残るものの,当時の審査結果に概ね沿う結果が得られた一方で,今後の課題として,近年公正取引委員会の企業結合審査において経済分析の充実が図られている中で,実務と研究とのインタラクションの強化を念頭に,(1)分析手法の精緻化,(2)データ収集の充実及び(3)分析手法の精緻化に向けての人材の確保と情報公開の3点が提案されました。
 報告を受け,参加者から,[1]M&Aが世界的に行われている中,日本企業から,世界市場で競争するためにM&Aが必要であるという主張がよくなされるところ,日本国内で市場を画定したとしても,輸入圧力があるかどうかを検討することは,当該企業が国外に進出(輸出)していくときの環境も考慮していることにつながり得ると考えるが,今回の研究で用いた分析手法は,現実に輸入が起こっていない場合にはどのように対応すべきか,との質問がなされました。これに対し,報告者から,現実に輸入が起こっていない場合に合併後輸入が起きるかどうかについては,データとして表れてこないこともあり,これを正確に予測することは困難であるが,過去の事例について事後検証することは可能であり,当該検証を一定程度蓄積させることで,企業結合審査の現場において,輸入圧力に係る予測を肌感覚でつかんでいくべきだと思う,との回答がなされました。
 また,[2]例えば,対象商品の世界相場が明確であり,国内価格と連動しているというような事情がある場合,輸入圧力の有無の問題というよりは,日本国内という市場画定でよかったのかという議論に発展すると考えられる。他方,日本国内で市場画定を行った後に輸入圧力の有無を判断することについても,入手できるデータとの関係上一定の便宜もあるところ,欧米ではどのように考えられているか,との質問がなされました。これに対し,報告者から,欧米においては,御指摘のような事情を踏まえ世界市場で画定したとしても,今度は輸出事業者を同じ市場の競争事業者として,輸入拡大の見込みに係る判断と同様に,当該事業者の供給余力等を検討することになる。輸出事業者と競争事業者という呼び方の別はあるとしても,基本的には同じ問題であると考えられる,との回答がなされました。

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