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第62回ワークショップの概要

第62回ワークショップの概要

 第62回ワークショップが7月25日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです(かっこ内は担当客員研究員及び研究員を表す。)。

(1)「小売市場の寡占化と小売事業者の購買力に関する調査研究」の研究計画

 (東京農業大学国際食料情報学部准教授 小島 泰友 氏)
 (CPRCスチューデントフェロー・慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程 渕川 和彦 氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 中條 玲子 氏)

 平成20年度の共同研究の一つである本研究では,日本の各主要地域における業態別の商品仕入価格・小売価格等を用いてウォーターベッド効果(※)の存在を明らかにし,90年代初めと現在の状況を比較し状況の変化について考察すること,価格データと卸売・小売各段階における垂直的・水平的関係を示すデータを用いて,ウォーターベッド現象の発生構造の推定を試みること,また,ウォーターベッド効果の要因の一つとして考えられる優越的地位の濫用について主要先進国の状況とその規制内容を調査し,日本の小売市場の寡占化に伴う優越的地位の濫用に対する規制の在り方について考察することを目的とするものです。
 今回のワークショップでは,研究の目的・計画・調査の概要等について報告者から説明が行われました。
 報告を受け,参加者からは,ウォーターベッド効果を推定する際,価格データ以外にも考慮する必要のある要素があるのではないかとの意見が出されました。また,ウォーターベッド効果は優越的地位の濫用のほか差別対価に関連するとも考えられるところ,経済分析と法律論を繋げるためには,ウォーターベッド効果が生じ得る様々な行為類型を検討し,それらを念頭に置きながら経済分析を行う必要があるとの指摘がありました。
 ※ ウォーターベッド効果(Waterbed Effect)とは,大手小売業者がそのバイイングパワーを通じて,納入業者から安い価格で商品を仕入れることにより,コストの削減及び収益の拡大が可能となる一方,その納入業者は一定の利益を確保するため,その他の小規模一般小売店に対する納入価格を引き上げ,小規模一般小売店のコストが上昇するという二重の効果が発生する現象を指します。

(2)「双方向市場の経済分析」の研究計画

 (CPRC研究員・経済調査室 砂田 充 氏)

 平成20年度の共同研究の一つである本研究は,実証分析による雑誌市場のケーススタディを通じて,近年,注目を集めている双方向市場とプラットフォームビジネスにおける競争政策の在り方に対して1つの示唆を与えることを目的とするものです。
 今回のワークショップでは,報告者から,研究の目的・計画の詳細・研究日程等について説明が行われました。
 報告を受け,参加者から,雑誌市場を分析するための実証モデルについて,消費者(読者)にとっての雑誌の代替構造と広告主にとっての雑誌の代替構造は,異なっている可能性があるのではないかという指摘がありました。また,実際の意思決定をしているのは出版社であるのに対し,消費者及び広告主が選択するのは個々の雑誌である点をモデルに組み込むことが重要である旨の発言がありました。加えて,プラットフォームの様々な企業行動(合併,カルテル,垂直的取引等)の市場への影響について,示唆が与えられる研究成果が上げられれば有益であるとの意見が出されました。

(3)「原始独禁法の制定過程と現行法への示唆-公取委の組織,司法制度,損害賠償,刑事制度-」の最終報告

 (CPRC主任客員研究員・神戸大学大学院法学研究科教授 泉水 文雄 氏)
 (CPRC客員研究員・富山大学経済学部准教授 西村 暢史 氏)

 平成19年度の共同研究の一つである本研究は,原始独禁法の組織及び手続規定が,原始独禁法制定過程において,どのような意図の下に設けられ,どのような運用が期待されていたのか等を分析することで,制定当時の意図とこれまでの運用実務との関係を明らかにするとともに,現行法における解釈の相対化を図り,歴史的経験を今後に生かすことを目的としています。
 今回のワークショップでは,報告者から,原始独禁法制定過程における米国側と日本側との交渉を示す重要な資料の内容,意義が紹介され,また,原始独禁法における組織及び手続規定が定まる過程,経緯が説明されました。
 報告を受けて,参加者から,米国は三倍額賠償制度の提案をどの程度強く主張したのかとの質問があり,報告者から,三倍額賠償制度の規定案は比較的早い段階で削除されているとの説明がありました。また,刑罰規定が設けられたことに関連し,報告者から,カイム氏案には当時の米国でも定着していなかった制度の提案も盛り込まれており,日本での実験であったとも言えるとの説明がありました。参加者から,損害賠償制度等に関する規定が設けられるまでの過程,経緯を知ることで,立法に関与したさまざまな立場の人や国がどのような意図で条文を策定したかが解明され,大変意義深い研究であるとのコメントがなされました。

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