第77回ワークショップが6月12日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。
(1)「合併の事後検証:知的財産権のネットワーク分析を通じた法と経済分析」の研究計画
(CPRC主任研究官・名古屋大学大学院法学研究科准教授 林 秀弥 氏)
(神戸市外国語大学外国語学部教授 田中 悟 氏)
平成21年度の共同研究の一つである本研究は,企業結合事案における知的財産権の競争効果を分析することを目的とするものです。
今回のワークショップでは,報告者から,研究計画について報告が行われました。本研究では,知的財産権の集約が論点となった過去の企業結合事案を取り上げ,関連する企業が保有する技術の状況とその相互依存関係に明示的に焦点を当て,これにネットワーク分析(ノード間の結び付きの構造を明示的に考慮し,結び付きの在り方がどのような効果を持つかの分析)という新たな手法を導入して研究を行う予定です。
(2)「再販売価格維持行為の法と経済学」の研究計画
(CPRC客員研究員・京都大学大学院法学研究科教授 川濱 昇 氏)
(CPRC客員研究員・神戸大学大学院経済学研究科教授 柳川 隆 氏)
(官房国際課 寺西 直子 氏)
(審査局管理企画課企画室 瀬戸 英三郎 氏)
平成21年度の共同研究の一つである本研究は,今後,活発化が予想される再販売価格維持行為をめぐる議論について,経済学的な考え方と整合性があって運用可能な基準がどのようなものであるかを近時の法的議論を批判的に検討することを通じて明らかにすることを目的とするものです。
今回のワークショップでは,報告者から,研究計画について報告が行われました。経済パートとして,再販に関する理論モデルや実証研究のサーベイ,法学パートとして,各種学説のサーベイやこれらに関する経済学的基礎付けの検討,さらに,米国のLeegin事件以降の再販規制に対する各国競争当局の立場の調査等を行う予定です。
(3)「東宝・スバル事件の事後検証」の研究計画
(CPRC研究員・経済調査室 砂田 充 氏)
平成21年度の共同研究の一つである本研究は,企業結合規制の企業行動への影響について,東宝・スバル事件を取り上げて実証的分析を行うことを目的とするものです。
今回のワークショップでは,報告者から,研究計画について報告が行われました。
報告を受け,参加者から,(1)分析への応用を検討している先行研究ではガソリンスタンドのケーススタディを行っているが,映画館の場合と立地戦略に違いがあるのではないか,(2)映画館の場合には「集積の利益」の効果があるのではないか,(3)東宝・スバル事件判決は企業結合に対する規制であり,判決が映画館の開設に与える影響は限定的なのではないか,(4)消費者は必ずしも居住地に近い映画館を選択するとは限らないのではないかとのコメントがなされました。報告者から,これらのコメントを踏まえ,研究を進めていきたいとの説明がなされました。
(4)「小売市場の寡占化と大規模小売業者の購買力に関する調査研究」の最終報告
(東京農業大学国際食料情報学部准教授 小島 泰友 氏)
(CPRCスチューデントフェロー・大宮法科大学院大学非常勤講師 渕川 和彦 氏)
(CPRC研究員・経済調査室 服部 純 氏)
平成20年度の共同研究の一つである本研究は,小売市場の寡占化による大規模小売業者の購買力の強化による競争効果を明らかにすることを目的としています。
今回のワークショップでは,報告者から,最終報告が行われました。
報告を受けて,参加者から,(1)企業合併に伴うバイヤーパワーの増大をめぐる欧州での議論が参考になるのではないか,(2)本研究の「購買力」の説明において、buyer powerやcountervailing power等の用語の定義を明確化すべきではないか,(3)ウォーターベッド効果,買手パワー,売手パワー等の定義を明確化した上で,これらが社会的に問題なのかどうかを検討すべきではないかなどのコメントがなされました。報告者から,これらのコメントを踏まえ,本研究を取りまとめていきたいとの説明がなされました。