第87回ワークショップが3月12日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。
(1)「連続寡占市場における企業行動の反競争的効果に関する研究」の共同研究最終報告
(CPRC客員研究員・富山大学経済学部准教授 西村暢史氏(都合のため欠席))
(神戸大学大学院法学研究科准教授 池田千鶴氏)
(CPRC研究員・経済調査室 荒井弘毅氏)
(CPRC研究員・経済調査室 水野倫理氏)
平成21年度の共同研究の一つである本研究は,川上・川下市場が寡占的である市場における垂直的企業結合の反競争効果に関する事例の整理と経済学的な分析を目的とするものです。
今回のワークショップでは,報告者から,報告書の概要及び日本の事例に関する経済学的な分析結果が振り返られるとともにEUにおける垂直的企業結合事例の紹介が行われました。
報告を受け,参加者から,理論分析に関して,最終財の価格が上がることが見るべきポイントとなるのであれば,能力とインセンティブの分析を進めた際の判断基準としても,そのことを指摘しておくべきであるという意見がありました。さらに,本件モデルでは時間的枠組は考慮に入れていないことは理解できるが,EUの分析では時間を考慮に入れた事例もあり,長期的には競争者がなくなることでイノベーションへの負の効果が働く可能性もあり,最終報告書ではそのことについて触れておくことも必要ではないかという提案がありました。上記のコメントを受けて,報告者から,これらの内容をできるだけ反映させるように修正していきたいという説明がなされました。
(2)「改良技術に関する経済理論分析」の共同研究最終報告
(CPRC客員研究員・政策研究大学院大学准教授 畠中薫里氏)
(CPRC研究員・経済調査室 西村元宏氏)
(CPRC研究員・経済調査室 水野倫理氏)
平成21年度の共同研究の一つである本研究は,グラントバック条項が投資行動の誘因にどのような影響を与えるのかに関して,現実の事例を考慮しながら,経済学的分析を行うことを目的とするものです。
今回のワークショップにおいては,報告者から,本研究の問題意識を実務的な観点から説明された後,経済学の理論的なモデルに基づいた分析結果の報告が行われました。また,モデルに基づいて,グラントバック条項が開発投資にどのような影響を及ぼすのか,さらに,グラントバック条項を規制することで開発投資は高まるのかについても説明がなされました。
報告を受け,参加者から,買い戻し価格と開発企業における利潤との関係において,アサインバックの範囲と開発企業の利潤に変化が生じるかどうかの関係をクラリファイする質問があり,報告者から,発明の成功確率を投資関数にする等,実務上の観点を組み込んでなおかつ解ける形に工夫している状況について説明がなされました。また,参加者から,需要関数を組み込んだ形でのモデルは考えられないかという質問がなされました。これについて,報告者から,現行モデルの中に組み込むと複雑すぎる形になるため,解を得ることが難しくなり,このモデルであっても消費者余剰が減少することは開発投資の関係から導き出されること,また政策上のインプリケーションを明確に示すことができることから,このモデルも一定の意義を有するものと考えられるという説明がなされました。