「An Attempt to Draw Implications about Economic Analysis in Antitrust Cases」(2022年12月9日) 上續高裕(公正取引委員会事務総局経済取引局総務課デジタル市場企画調査室係長) 下津秀幸(公正取引委員会事務総局審査局管理企画課企画室長) 概要 本研究は、競争法違反事件において経済分析がどのように活用されているのかを視覚化するとともに、そこから同経済分析の活用について示唆を得ることを目的としている。この目的を踏まえ、筆者らは、2021年7月から8月にかけて、海外競争当局を対象として、以下に記載するアンケート調査を実施した。 <アンケート調査の概要> ・収集項目は、2015年1月から2021年7月までの期間にプレスリリースをした事件(企業結合事件を除く。)の中で、経済分析を活用した事件名、同経済分析の目的・概要・結果等である(実際に使用したアンケート調査票はディスカッションペーパーに別紙1(Appendix 1)として添付している。)。 ・アンケート調査で収集する「経済分析」には定量分析のみならず、理論分析も含めた。 ・また、競争当局が行った経済分析(ディスカッションペーパーではActive Analysisと表記している。)のみならず、関係事業者が行った経済分析を競争当局が分析したもの(ディスカッションペーパーではPassive Analysisと表記している。)も含めた。 上記アンケート調査により、11の競争当局から得られた合計94の事件における経済分析の内容等を分析し(得られた回答の概要については、ディスカッションペーパーに別紙2(Appendix 2)として添付している。)、以下の4つの示唆を導き出した。 1)「競争制限のメカニズム」(Theory of Harm)を構築するのに経済分析が有用であること 2)談合・カルテルの事件審査においても経済分析が有用であること 3)違反被疑行為の正当化事由に関する経済分析が今後重要になってくると思われること 4)信頼できるデータに裏付けられた反実仮想をいかに推計できるかが裁判においては重要になってくること ディスカッションペーパーの別紙2(Appendix 2)には上記94事件における経済分析に関する豊富な情報が掲載されているところ、ぜひ一度チェックしていただければと思う。筆者らは上記4つの示唆を導き出したが、これら4つ以外の様々な示唆が得られるものと思われる。 |