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「能率競争」概念からみた優越的地位の濫用の公正競争阻害性に関する一考察

「能率競争」概念からみた優越的地位の濫用の公正競争阻害性に関する一考察

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「「能率競争」概念からみた優越的地位の濫用の公正競争阻害性に関する一考察」(2022年5月20日)
 田辺治(競争政策研究センター次長・公正取引委員会事務総局官房政策立案総括審議官)
 概要
 巨大デジタル・プラットフォーム事業者による消費者や広告主に対する一方的な不利益行為や、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分の転嫁拒否行為をはじめ、現代の多くの問題を解決するためのツールの一つとして、優越的地位濫用規制の活用が期待されている。デジタル・プラットフォーム事業者の搾取的な濫用行為や、購買力の濫用行為に対する効果的な規制の在り方については、我が国のみならず世界各国で議論されている。

 このように、国内外において、優越的地位濫用規制を含む搾取的濫用規制の活用に注目が高まっている現在、優越的地位の濫用行為を競争当局である公正取引委員会が独占禁止法の体系の中で禁止・是正する根拠について、より厳密な説明が必要とされていると思われる。

 優越的地位濫用規制が積極的に活用されることは、本来当事者間の自由な交渉に基づき決定されるべき取引条件に公正取引委員会が直接介入する場面が拡大し、事業者の自由な経済活動と緊張関係に立つ場面が拡大することであり、単に経済的強者が弱者に不利益を課す弱いものいじめは悪いことだから禁止・是正するといえば済むものではなくなっている。

 優越的地位の濫用の公正競争阻害性は、現在、「取引主体が取引の諾否及び取引条件について自由かつ自主的に判断することによって取引が行われるという、自由な競争の基盤が保持されていること」の侵害つまり自由競争基盤の侵害をその本質とすると説明されている。本稿では、「能率競争」の観点から、優越的地位の濫用の公正競争阻害性について、自由競争基盤の侵害をその本質とする考え方に疑問を呈し、行為者による能率競争の侵害にその本質を求め、このように解することの現代的な意義について検討を試みるものである。

CPDP90-J(PDF:969KB)

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