「Diffusion and Adaptation of Competition Policy in Asia」(2024年3月25日) 青木玲子(公正取引委員会委員) 五十嵐俊子(公正取引委員会事務総局官房国際課長) 甲斐隆之(元アジア開発銀行研究所リサーチフェロー) 佐武恵梨(元東京大学経済学部リサーチアシスタント) 園部哲史(アジア開発銀行研究所所長) 澤田康幸(東京大学大学院経済学研究科附属政策評価研究教育センターセンター長・同研究科教授) 植田真太郎(公正取引委員会事務総局官房総務課経済分析室)
概要 本稿では、アジアにおける競争政策の普及及び適応に関する論点について議論する。具体的には、競争法の制定及び競争当局の予算額に関するクロスカントリー・パネルデータを用いて、競争政策の導入の増加がグローバル化の進展と密接に関連していたという仮説を検証する。実証分析の結果、GATT/WTOへの加盟前に競争法を制定する傾向があること、アジア金融危機が引き金となった市場志向の改革が、競争政策の適応に重要な役割を果たしている可能性があること、ガバナンスの水準が、競争法・競争政策の導入にとって重要であることが示された。また、ビジネスサーベイデータに基づいた分析から、競争政策の主観的な有効性と市場競争の程度との間に頑健な相関関係があることも示された。本稿における分析結果は、競争法の早期導入の重要性、市場志向の改革やガバナンスの質の役割といった、アジアにおける競争政策発展に対して意義深い政策示唆を与えるものである。 |