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「ニュースメディアとデジタルプラットフォーム:競争・取引条件の適正化のための様々な方法と海外の動き」(2024年12月5日) 概要 ニュースへの接触方法が、新聞・テレビ等のマスメディアを中心としたものから、デジタルプラットフォーム(DPF)が運営するニュースポータル、検索エンジン、生成AIを利用した検索システム等に代わられるようになり、DPFの行為や取引慣行が、新聞社をはじめとする報道各社の収入、記事の見せ方(ランキング、編集等を含む)、データの取得、購読者・広告主との関係、ブランド力の維持に大きな影響を与えるようになっている。そして、これらが社会的・重要的に重要な役割を果たしてきた報道機関の持続可能性に脅威を与えている。本稿は、このような状況を背景として、収入・支払いをめぐる問題に焦点をあてて調査研究を行った。日本外でどのような介入がなされているか行われているかを調査し、示唆を得た。 まず、外国の状況について、豪州・カナダのように競争法の内外に特別な法的ルールを設けている国では、最終的には最終提案仲裁制度によって適正な条件を設定するようにする制度を採用するとともに、支払い等を十分等に行っていると認められる場合には当該ルールの適用を免れるようにすることによって、DPFから一定の支払いが行われるようになっている。他方、EUとその加盟国であるドイツ・フランスは、著作権法にかかるルールを改訂して、報道機関に著作権隣接権を付与するとともに、適正な報酬の支払い及び透明性にかかる義務を課している。そして、フランスではこれらの義務に反するDPFの行為を競争法違反とし確約制度を通じて行うべき行為と行ってはならない行為を明らかにして著作権法上の諸ルールの実質化が図られている。一方、ドイツでは著作権集中管理機関が対価等の適切性を判定する公的機関を利用して権利実現をはかろうとしている。さらに、EUでは、デジタル市場法によりゲートキーパーとして指定されるDPFの一定の事業については透明性等にかかる義務が様々なサンクションを伴う形で公的に執行されるものとなっている。米国では、DPFから報道機関に支払い等を義務付ける法律の成立には至っていないものの、議会において法案が何度にもわたって出されている。 国によって競争法及び知的財産権法の備えている原理や執行制度は異なるのであり、他国の様々な措置は、日本で直ちに試行・実施できるものではない。もっとも、様々な国が措置を講じているのであるから、日本でも、措置を講じることは可能なはずである。日本も、外国の経験を参考として、DPFとAIの時代にジャーナリズムを守っていく法制度・政策について導入を検討すべきである。これまで一定の措置をとってきた国においても、報道機関への支払額は小さいものにとどまっており、他国で採用されてきた様々な方策をもってしても報道機関の長期的な持続可能性が確保できるのかには疑問が残ることには、注意が必要である。さらに、収入の側面以外の報道機関の直面する課題、及び、「エコチェンバー」 問題をはじめとする政治的・社会的問題は残る可能性がある。これらのことを考慮すれば、ディープフェイクないしなりすましのような偽情報への法的対処、政治的過程及び経済力をもつ企業の透明性を高めるための措置、報道機関及び報道関係者(ジャーナリスト)への金銭付与その他の公的補助、教育等の方策をはじめとする様々な方策を講じるべきである。 |
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