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2 農産物を原料とする商品の製造販売業者による再生農業の実証実験に係る参加希望者のマッチング及び得られた成果物に係る情報共有【グリーン社会の実現に向けた事業者等の取組に関する相談】

2 農産物を原料とする商品の製造販売業者による再生農業の実証実験に係る参加希望者のマッチング及び得られた成果物に係る情報共有【グリーン社会の実現に向けた事業者等の取組に関する相談】

 農産物を原料とする商品の製造販売業者約10社が、温室効果ガスの排出量削減等を目的として、共同して再生農業の実証実験を行うに当たり、当該実証実験に係る実施希望地及び生産を希望する農産物名を外部機関に報告し、当該外部機関が、これらの情報を集約して希望実施地・希望農産物が合致する事業者を実証実験のチームとしてマッチングさせ、そのマッチング結果を全参加事業者に共有し、得られた成果物について、実証実験に参加する事業者間で共有すること及び実証実験に参加しなかった事業者に対しては合理的な対価により共有する取組について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

 #業務提携、#情報共有、#グリーン社会の実現、#再生農業の実証実験、#発展段階の市場、#事業者のマッチング

1 相談者

 X社ら約10社(農産物を原料とする商品の製造販売業者等)

2 相談の要旨

⑴  X社ら約10社(以下「X社ら」という。)は、農産物を原料とする商品を製造販売する事業者等である。


⑵ア  X社らが農産物を原料として製造販売する商品は、主に日常生活において消費される飲食料品であり、様々な種類に分散しており、原料として使用する農産物も同様である。X社らが原料として使用する農産物は、従来型の手法を用いた農法によって生産されているが、後記イの理由から、将来的に、後記⑶の特徴を有する再生農業の手法を用いた農法によって生産される可能性もある。

  イ  X社らの説明によれば、従来型の手法を用いた農法では、化学肥料の使用による温室効果ガス[1](一酸化二窒素)の発生、農薬の使用による環境への影響、農業機械の使用による温室効果ガス(二酸化炭素)の排出といった、環境への負の影響が生じる可能性があるとのことである。
 そこで、近年では、化学肥料等をなるべく使用せず、土壌を健康にし、環境を再生させる農法として、再生農業が注目を集めているが、再生農業の要件や定義は統一されておらず、経済性の実証や環境への貢献度についても明らかではない部分が大きいとのことである。

[1] 温室効果ガスとは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素等の総称をいう(「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号)第2条第3項)。

⑶  再生農業には、①カバークロップ(メインの作物以外の植物で土壌を覆う)、②不耕起栽培(土の露出を防ぐために耕さない)、③輪作(同じ耕地に、異なった種類の作物を、一定の順序に栽培)、④農薬の削減・化学肥料の未使用といった方法があり、これらの農法は、従来型の手法を用いた農法と比べてその土壌にはより多くの炭素が貯留される可能性が指摘されており、温室効果ガスの排出量を抑制する効果があるとされている。
 X社らの説明によれば、国内においては、X社ら以外にも、農産物を原料とする商品を製造販売する有力な事業者であって、再生農業の手法や効果等の検証を行う者が少なくとも数社程度存在しており、その手法の確立に向けた取組が進められている状況にあるとのことである。

⑷ア  X社らは、2050年までのカーボンニュートラル[2]の実現に向けて、X社らの製造販売する商品の原料である農産物について、温室効果ガスの排出量を抑制した方法で生産されたものを調達したいと考えている。
 そして、X社らは、その実現方法の一つとして、再生農業の手法を用いた農法を確立することを考えている。その一環として、X社らは、各社が製造販売する商品の原料となる複数の農産物について特定の地域ごとに生産チームを組成し、再生農業の手法を用いた農法による農産物(以下「再生農業由来の農産物」という。)の栽培を試験的に行い、その農地における炭素貯留量等の状況について、従来型の手法を用いた農法による栽培との比較検証を行うなどの実証実験(以下「本件実証実験」という。)を実施したいと考えている。

[2] カーボンニュートラルとは、「人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と吸収作用の保全及び強化により吸収される温室効果ガスの吸収量との間の均衡が保たれ」ることをいう(地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)第2条の2)。

  イ  X社らは、具体的には、次の手順により、本件実証実験を行うことを想定している(以下「本件取組」という。)。

  (ア)  X社らから、外部機関(X社らから独立した第三者により構成される組織)に対し、各社の実施希望地(都道府県名又は国名)及び再生農業による生産を希望する農産物名を報告し、当該外部機関がその情報を集約する。
 なお、各社から集約した情報を取り扱うことができるのは当該外部機関の職員のみであり、X社らは当該外部機関に集約された他社の情報にアクセスすることはできないようにする。

  (イ)  当該外部機関が、集約した情報を基に、X社らのうち、同じ地域で同じ農産物について再生農業による生産を希望する事業者同士を実証実験のチームとしてマッチングさせて、複数のチームを組成する。
 なお、X社らが、本件実証実験を実施する上で全チームの準備・進捗状況を報告し合うことができるよう、全チームのマッチング結果(実施希望地、再生農業による生産を希望する農産物名及びメンバー)の情報についてのみ、当該外部機関がX社ら各社に共有する。マッチングしなかったものに係る情報(各社が他に希望していた実施希望地、農産物名等)はX社らに共有しない。

  (ウ)  前記(イ)でチームが組成された後、X社らは、組成されたチームごとに、本件実証実験に協力をしてくれる農家に対し、再生農業由来の農産物の栽培を委託等する。

  (エ)  X社らは、本件実証実験の結果、自己が参加したチームに係る土壌分析情報[3]や営農履歴情報[4]等を取得する。
 なお、これらの情報は、再生農業の手法や効果等の検証結果として一定の技術的価値が認められるものとのことである。

[3] 土壌分析情報とは、本件実証実験の結果を分析して得られる、農産物を生産するための土壌の能力に関する情報をいう。

[4] 営農履歴情報とは、X社らが本件実証実験において行った営農作業の履歴に係る情報をいう。例えば、各種農業資材(肥料・農薬・燃料等)の使用履歴情報のみならず、当該資材に係る調達コスト情報も含まれる。

  (オ)  X社らは、前記(エ)の土壌分析情報や営農履歴情報等の成果物について、①本件実証実験に参加した事業者には無償で共有する、②X社ら以外の本件実証実験に参加しなかった事業者に対しては合理的な対価にて共有する。

  ウ  本件実証実験により再生農業由来の農産物が生産されることとなるが、本件実証実験の目的は、前記アのとおり、再生農業由来の農産物を生産する際に生じる温室効果ガスの排出状況や土壌への炭素貯留量等を確認することであり、本件実証実験により生産された再生農業由来の農産物をX社らの商品の原料として商用利用することは現時点では想定されていない。また、本件実証実験において想定される作付面積は1チーム当たり数ヘクタールにとどまる。

 本件取組は、独占禁止法上問題となるか。



○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴ア  事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第3条)。

  イ  事業者が、グリーン社会の実現に向けた技術を生み出すため、競争関係にある事業者と共同で基礎研究、応用研究又は開発研究を行い、その技術を用いて新たな製品を開発することが考えられる。このような共同研究開発は、多くの場合、市場における競争に影響を与えないような少数の事業者間で行われており、独占禁止法上問題なく実施できるものが多い。また、温室効果ガスの削減といういわゆる外部性への対応を目的とする場合には、研究に係るリスク、コスト等に鑑みて単独で行うことが困難な場合が少なくなく、共同化は研究開発活動を活発で効率的なものとし、技術革新を促進するものであって、競争促進効果を有する場合も多く、そうした場合について独占禁止法上問題となる可能性は低い。
 一方、例えば、研究開発の対象となる技術を利用した製品の市場において競争関係にある事業者の大部分が、各参加者が単独でも行い得るにもかかわらず 共同研究を実施し、参加者間で研究開発活動を制限し、技術市場又は製品市場における競争が実質的に制限される場合には、独占禁止法上問題となる。
 【参考】グリーンガイドライン第1の3⑵「業務提携」イ(ア)「共同研究開発」

⑵  本件取組は、①再生農業の手法や効果の検証を内容とする本件実証実験を共同で行うものであるとともに、本件実証実験の成果物たる情報が参加事業者間で共有されるものである。また、②再生農業由来の農産物を原料とする商品の製造販売の準備行為という側面も併せ持つものである。
 そこで、以下の市場における現在又は将来の競争に影響を与える可能性があると考えられるため、当該市場に与える影響について検討する。  

  ①  再生農業の手法を用いた農法に係る技術市場(以下「本件技術市場」という。)

  ②  再生農業由来の農産物を原料とする各商品に係る製造販売市場(以下「本件製品市場」という。)

⑶ア  本件取組は、温室効果ガスの排出量削減に資するものであることから、グリーン社会の実現に向けた取組であることが認められる。以下、これを前提に検討する。

  イ  前記2⑵イのとおり、再生農業はその要件や定義も統一されていない状況であり、前記⑵の各市場における競争の詳しい状況は定かではないが、これを踏まえ本件取組が各市場に与える影響について検討する。

  (ア)  本件技術市場について
 前記2⑶のとおり、国内において、農産物を原料とする商品を製造販売する有力な事業者であって、再生農業の手法や効果の検証を現に行う者が、X社ら以外にも少なくとも数社程度存在しており、X社らが把握していない潜在的な主体も含めると、本件技術市場において当該検証を行う主体は相当数存在するのではないかと考えられる。
 また、X社らは本件実証実験の成果物について、本件実証実験に参加しなかった事業者に対しても合理的な対価にて共有することとしているため、本件取組に参加しなかった事業者が本件技術市場から排除されるおそれは想定されない。
 これらのことから、本件取組が本件技術市場における競争を実質的に制限することにはならないと考えられる。

  (イ)  本件製品市場について
 本件実証実験は、再生農業の手法を用いた農法の検証を内容とするものであり、

 ・ X社らが、再生農業由来の各農産物を原料として製造販売する商品は一般的かつ様々なものに分散していること

 ・ 本件実証実験により生産される再生農業由来の農産物の1チーム当たりの作付面積が数ヘクタールの規模にとどまるものであること

    から、本件取組による本件製品市場への影響はなく、仮にあるとしても軽微であると考えられる。また、

 ・ 本件取組のうち前記2⑷イ(イ)においてX社らが入手することが可能な情報は、全チームのマッチング結果である実施希望地、再生農業による生産を希望する農産物名及びメンバーのみであり、これらは再生農業由来の各農産物における農家への生産委託に係る価格、生産数量等の重要な競争手段である事項に影響を及ぼす情報には当たらないと考えられること

 ・ 当該情報を含む本件取組に係る全ての情報にアクセスできるのは外部機関のみとする情報遮断措置を講じた上で管理する予定であること

 ・ X社らは本件実証実験の成果物について、本件実証実験に参加しなかった事業者に対しても合理的な対価にて共有することとしているため、本件取組に参加しなかった事業者が本件製品市場から排除されるおそれは想定されないこと

    も考慮すれば、本件取組が本件製品市場における競争を実質的に制限することにはならないと考えられる。

⑷  以上から、本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答

 本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。

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