金属素材の製造販売業者4社が、海外からの輸入に依存している鉱物資源(金属素材の原料)の安定供給の確保・サプライチェーン(供給網)の強靱化を目的として、共同して、これまで輸入したことのない国から新たに鉱物資源(金属素材の原料)の調達を行う取組について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
#共同調達、#情報共有、#安定供給の確保、#サプライチェーンの強靱化、#鉱物資源(金属素材の原料)の輸入
1 相談者
X社ら4社(金属素材の製造販売業者)
2 相談の要旨
⑴ X社ら4社(以下「X社ら」という。)は、金属素材Aの製造販売業者である。
⑵ 金属素材Aは、その優れた特徴から様々な機械部品に用いられている重要な素材である。また、金属素材Aは品質に係る国際的な規格が定められているため、どの事業者が製造する製品であっても品質に大きな差はない。
金属素材Aの原料である鉱物資源α(以下「原料α」という。)は、国内では産出されておらず調達できないため、X社らは原料αを複数の国から輸入し、我が国において加工して金属素材Aを製造販売している。
⑶ア X社らは、金属素材Aを製造するために必要な原料αの約9割は、海外の生産者から直接調達し、残りの約1割を国内外の卸売業者経由で調達している。
我が国の原料αの調達市場におけるX社らのシェアの合計は95パーセント超である。
イ 我が国の金属素材Aの製造販売市場におけるX社らのシェアの合計は約95パーセントであり、金属素材Aの製造コストに占める原料αの調達コストの割合は約90パーセントである。
国内の金属素材Aの製造量は、国内の金属素材Aの需要量を超え供給過多になっており、国内で製造された金属素材Aは輸出もされているが、海外にも金属素材Aを製造する有力な事業者が複数存在しており、世界的に金属素材Aを製造するために必要な原料αの調達競争は激しくなっている状況にある。
金属素材Aの製造販売業者がそれぞれ定めている販売価格の内訳の大部分は、慣行として国際的な指標を基に決められているため、金属素材Aの販売価格による競争の余地は比較的小さい。しかし、X社ら金属素材Aの製造販売業者は、輸送サービスの品質等の販売価格以外の要素においても競争を行っている。
ウ 金属素材Aの需要は世界的に拡大しており、原料αの調達競争は厳しさを増している。そのため、X社らは、中長期的な調達先確保の必要性の高まりから、原料αの調達元の多角化を図り、これにより調達元で発生する供給リスクの分散を行い、サプライチェーンの強靱化を図りたいと考えているものの、X社ら各社が単独で、これまで取引したことのない海外の原料αの生産者と新たに調達契約を、有利な条件で締結することは、調達数量の規模の小ささを踏まえると、交渉力の強さの観点から難しい状況にある。
⑷ そこでX社らは、原料αの調達数量を増やすことで交渉力を高め、より有利な条件で原料αを調達するため、外国である甲国において生産される原料αについて、次の方法で共同調達(以下「本件取組」という。)を行うことを検討している。
ア X社らは共同して、甲国の原料αの生産者と交渉を行い、原料αの合計調達数量(X社ら各社が調達する数量の合計)、調達価格等の調達条件を決定する。当該合計調達数量のうち、X社ら各社の調達数量は各社がその裁量で決め、各社はそれぞれ自社の調達数量の代金を甲国の原料αの生産者に支払う。
イ X社らは、金属素材Aの販売価格や販売数量について情報共有を行わず、個別に決定する。
ウ X社らは、①原料αの共同調達に当たって必要な情報のみを、共同調達の検討に関与する役員・従業員に限り共有する、②金属素材Aの販売価格や販売数量については各社が個別に決定して需要者に販売し、各社における短期的な原料αの調達数量の変更要因となる製造工場の定期修理等に関する概括的な情報を除き、情報共有をしない、といった情報遮断措置を講じる。
⑸ X社らの原料αの調達数量全体に占める本件取組による共同調達数量の割合は約5パーセントである。また、X社らは既に、本件取組以外にも外国からの共同調達を行っているところ、X社らの原料αの調達数量全体に占める本件取組及び既存の共同調達数量を合計した割合は約10パーセントである。
なお、X社らは、既存の共同調達においても、原料αの調達及び金属素材Aの販売価格等について、情報遮断措置を講じている。
本件取組は、独占禁止法上問題となるか。
○本件取組の概要図
3 独占禁止法上の考え方
⑴ 事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第3条)。
⑵ 本件取組は共同調達であり、我が国の原料αの調達市場及び我が国の金属素材Aの製造販売市場における現在又は将来の競争に影響を与える可能性があると考えられるため、当該市場に与える影響について検討する。
⑶ア 本件取組が我が国の原料αの調達市場における競争に与える影響について
本件取組は、原料αの調達において競合関係にあるX社らが、甲国の生産者から原料αを共同して調達するものである。X社らの国内の原料αの調達市場における合計シェアは約95パーセント超と高く、X社らは本件取組において調達価格を統一し、各社の調達数量及び合計調達数量を合意して決定するものの、
(ア) X社らの国内の原料αの調達量全体に占める、本件取組による調達割合は約5パーセント、既存の共同調達も含めたX社らの共同調達の割合は約10パーセントと低く、これら以外の原料αの調達については各社が独自に行っている状況にあること
(イ) 情報遮断措置を講じた上で、本件取組において共有される情報は本件取組を実施するに当たって必要かつ最低限のものとなっていること
から、本件取組によって、原料αの調達市場における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。
イ 本件取組が我が国の金属素材Aの製造販売市場における競争に与える影響について
金属素材Aは、前記2⑶イのとおり国内の製造量が同需要量を超えており、海外からの輸入はほとんどないところ、X社らの国内の金属素材Aの製造販売市場における合計シェアは約95パーセントと高く、金属素材Aの製造コストに占める原料αの調達コストの割合(原価率)も約90パーセントと高いものの、
(ア) X社らの国内の原料αの調達量全体に占める、本件取組の割合(約5パーセント)及び既存の共同調達も含めたX社らの共同調達の割合(約10パーセント)が低いこと
(イ) 国内の金属素材Aの製造販売市場は供給過多の状況であり、需要者からの競争圧力が強いこと
(ウ) 金属素材Aは品質に係る国際的な規格が定められているため、どの事業者が製造する製品であっても品質に大きな差はなく、また、金属素材Aの販売価格の内訳の大部分は国際的な指標を基に定められるため、本件取組が実施されることによる価格競争への影響は限定的であるが、X社らは製品の品質や価格による競争の余地が少ないがために、それら以外の輸送サービスの品質等による競争を行っていると考えられるところ、本件取組によってそれらの競争が損なわれることはないと考えられること
(エ) X社らは、各社における短期的な原料αの調達数量の変更要因となる製造工場の定期修理等に関する概括的な情報を除き、金属素材Aの製造に係る情報は共有せず、金属素材Aの販売価格や販売数量について個別に決定し、情報共有しないこと
から、本件取組によって、金属素材Aの製造販売市場における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。
⑷ 以上から、本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。
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本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。