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4 医療用医薬品製造販売業者が製造販売を終了する予定の医療用医薬品の代替品の供給を確保するため情報共有を行う取組

4 医療用医薬品製造販売業者が製造販売を終了する予定の医療用医薬品の代替品の供給を確保するため情報共有を行う取組

 医療用医薬品製造販売業者が、製造販売を終了する予定の医療用医薬品について、関係省庁の通知に基づき、他の医療用医薬品製造販売業者に対し、代替品の供給の確保に向けた要請及び情報共有を行う取組について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

 #共同調達、#情報共有、#安定供給の確保、#生産終了予定の医薬品の代替品の供給

1 相談者

 X社(医療用医薬品製造販売業者)

2 相談の要旨

⑴  X社は、我が国において医療用医薬品Aを製造販売している事業者である。


⑵  医療用医薬品Aは、特定の原薬を用いて製造される医療用医薬品であり、特定の薬効が認められ、薬価基準に収載されているものである。


⑶  我が国において、医療用医薬品Aと同種の機能・効用を有する医療用医薬品 (必ずしも同一成分の品目に限らず、臨床上の位置付けが同じものも含む。以下「代替品」という。)については、これらを製造販売している数十社の後発医薬品製造販売業者及び数社の先発医薬品製造販売業者が存在する。
 なお、代替品のうち、先発医薬品と後発医薬品とでは薬価に差がない又は差があるとしても僅少であることが多く、卸売業者から医療機関等への卸価格の差はほとんど存在しない。さらに、医療用医薬品Aと代替品を合わせた販売数量の合計に占める医療用医薬品Aの販売数量の割合は最大でも1パーセントに満たない。


⑷ア  X社は、現に医療現場で使用されている医療用医薬品Aの原薬の製造を早期に終了する必要が生じた。このため、医療用医薬品の供給不安を解消する観点から、関係省庁の通知に基づいて、医療用医薬品Aの供給停止及びこれに関連する手続を採る必要がある。
 具体的には、X社は、代替品を製造販売する医療用医薬品製造販売業者に対して、医療用医薬品Aの総販売数量及び供給停止時期を示した上で、医療用医薬品Aの総販売数量に相当する数量を代替供給することについて了承を得る必要がある(以下、この代替供給の了承をした代替品の製造販売業者を「代替供給事業者」という。)。代替供給事業者は、X社に対し、追加生産予定の代替品の品名及びその数量に係る情報を伝達する。これらの情報は、X社が医療用医薬品Aの総販売数量に相当する代替品の確保の有無の判断をするに当たり、必要不可欠となる。
 なお、X社は、緊急事態等への対応余力の確保等の観点から、代替供給事業者1社がX社の製造する医療用医薬品Aの全量の代替供給の引受けを了承することはおよそ想定されず、引受け先は数社となる見込みであり、その場合、各代替供給事業者の引受け後の総生産数量に占める、引受けを了承した代替品の追加生産数量の割合は、数パーセントを超えることはないと説明している。

  イ  そして、X社は、前記アの代替供給事業者の了承を得た後、医療機関等に対し、当該代替供給事業者の名称及び代替品名を周知する。この周知を受けて、医療機関等はX社の医療用医薬品Aから代替供給事業者の代替品へ発注を移行することとなるが、国民医療に重大な支障を来さないよう、代替供給事業者はその発注に確実に対応する必要がある。

  ウ  X社からの代替供給依頼を受け、これを了承するか否かを検討することとなる代替品の製造販売業者は、代替供給依頼を了承し代替供給事業者となったことにより医療機関等からの発注が集中し、これに対応できない事態となることを回避するため、他の代替供給事業者の動向に関する情報を入手し、事前にそのような事態となるリスクがどの程度あるのか、予測・評価することが必要不可欠となる。すなわち、代替品の製造販売業者は、既に代替供給することを了承した代替供給事業者の名称、その代替供給事業者が供給する代替品名及びその代替品の追加生産数量といった情報(以下「各代替供給事業者に関する情報」という。)を把握した上で、自社の製造販売する代替品への発注集中リスクを事前に予測・評価し、了承するか否かの検討をすることが必要不可欠となる。

  エ  代替品の製造販売業者であって代替供給を了承していない製造販売業者(以下「代替供給事業者以外の製造販売業者」という。)であっても、代替供給事業者の代替品の生産が何らかの事情で滞った場合等に自社の代替品への発注が行われる可能性があるため、医療用医薬品製造販売業者としての信用保持と医療用医薬品の安定供給を行う観点から、仮に、医療機関等から自社の代替品への発注があった場合には、これに確実に対応する必要がある。そのため、代替供給事業者以外の製造販売業者は、各代替供給事業者に関する情報を把握した上で、自社の代替品への発注可能性を予測した生産計画を策定するよう努めることとなる。

⑸  X社は、前記⑷の状況を踏まえ、代替供給事業者の確保等の手続を円滑かつ効率的に進め、代替品の供給確保を図るため、代替供給の引受けを了承する可能性が高いと考えられる代替品の複数の製造販売業者が会員となっている後発医薬品製造販売業者の団体Y(以下「団体Y」という。)を通じて、以下のアないしエの取組(以下「本件取組」という。)を行うことを検討している。

  ア  X社は、医療用医薬品Aの年間総販売数量及び近く到来する供給停止時期に関する情報を、団体Yを通じて、団体Yの会員に伝達するとともに、代替供給の依頼(1巡目)を行う。

  イ  X社は、前記アの依頼に応じた代替供給事業者それぞれから、直接、当該事業者が追加生産予定の代替品の品名及びその数量に係る情報を受け取る。

  ウ(ア)  代替供給依頼(1巡目)によって、合算でX社が製造販売する医療用医薬品Aの総販売数量に相当する数量の代替品が確保できなかった場合、X社は、不足分を追加で依頼するため、前記アと同様の方法で、再度、団体Yを通じて団体Yの会員に代替供給の依頼(2巡目)を行う。X社は、合算でX社が製造販売する医療用医薬品Aの総販売数量に相当する数量の代替品が確保できるまで、代替供給依頼を繰り返す。

   (イ)  X社は、2巡目以降の代替供給依頼においては、前巡目までに代替供給依頼を了承した全ての各代替供給事業者に関する情報を、団体Yを通じて団体Yの会員に伝達する。

  エ  前記ウまでの代替供給依頼により、合算でX社が製造販売する医療用医薬品Aの総販売数量に相当する数量の代替品が確保された場合、X社は、団体Yの会員に、全ての各代替供給事業者に関する情報を伝達する。

 本件取組は、独占禁止法上問題となるか。



○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴  事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第3条)。

⑵  本件取組は、医療用医薬品Aとその代替品の製造販売市場において競争関係にある事業者間で、将来の事業活動に係る情報を共有するものであることから、医療用医薬品A及び代替品の製造販売市場における現在又は将来の競争に影響を与える可能性があると考えられるため、当該市場に与える影響について検討する。
 

⑶ア  本件取組は、現に医療現場で使用されている医療用医薬品Aについて、事情により早期にその原薬の製造を終了せざるを得ず、医療用医薬品Aの製造販売もできなくなることから、医療用医薬品Aの代替品の供給を迅速かつ円滑に確保し、医療用医薬品の供給不安を解消するという社会公共目的のために行われるものであると認められる。

  イ  本件取組は、医療用医薬品Aとその代替品の製造販売市場において競争関係にある事業者間で、X社の医療用医薬品Aの過去の年間総販売数量及び供給停止時期並びに各代替供給事業者に関する情報が共有されることとなるところ、これは、時期や数量を含む生産計画の具体的な見通しといった将来の事業活動における重要な競争手段に関連する情報を共有するものである。
 以下においては、①X社と団体Yの会員との間の情報共有(1巡目の情報共有)及び②X社を通じて行われる代替品の製造販売を行っている団体Yの会員間(代替供給事業者と代替供給事業者以外の製造販売業者との間)の情報共有(2巡目以降の情報共有)とに分けて検討する。

    (ア)    X社と団体Yの会員との間の情報共有(1巡目の情報共有)について
 近く到来するX社の医療用医薬品Aの供給停止に至るまでの間、X社と競争関係にある団体Yの会員との間で、X社の医療用医薬品Aの過去の年間総販売数量等の情報が共有されることとなる。また、団体Yの会員のうち代替供給事業者は、X社に対し、それぞれ追加生産予定の代替品の品名及びその数量に係る情報を共有することとなる。しかし、

  a  これらの情報共有は、前記アのとおり、社会公共目的に基づく本件取組の一環として行われるものであり、目的の正当性が認められることに加え、前記2⑷アのとおり、これらの情報を共有する必要性が高く、共有される情報の内容も必要な範囲に限定されているため、手段も相当であること

  b  団体Yの会員のうち代替供給事業者からX社に対し共有される情報である、各代替供給事業者の供給する代替品の追加生産数量は、各代替供給事業者の代替品の総生産数量のごく一部を占めるにすぎず、最終的な総生産数量も各代替供給事業者が独自に判断して決定することから、当該情報だけではX社が各代替供給事業者の代替品の実際の総生産数量を具体的に推認することはできないこと

    から、X社と団体Yの会員との間の当該情報共有が、医療用医薬品A及び代替品の製造販売市場における競争に影響を与えるとしても、その影響は軽微であり、同市場における競争を実質的に制限するものではないと考えられる。

    (イ)  X社を通じて行われる代替品の製造販売を行っている団体Yの会員間(代替供給事業者と代替供給事業者以外の製造販売業者との間)の情報共有(2巡目以降の情報共有)について
 前記2⑸ウ及びエにおいては、X社を通じて、団体Yの会員のうち代替供給事業者と代替供給事業者以外の製造販売業者との間で、合算でX社が製造販売する医療用医薬品Aの総販売数量に相当する数量の代替供給を了承した各代替供給事業者に関する情報が共有されることとなる。しかし、

  a  これらの情報共有は、前記アのとおり、社会公共的な目的に基づく本件取組の一環として行われるものであり、目的の正当性が認められること

  b  前記2⑷ウ及びエのとおり、これらの情報を共有する必要性が高く、共有される情報の内容も合算でX社が製造販売する医療用医薬品Aの総販売数量に相当する数量に係るものに限られ、かつ、代替供給事業者及び代替供給事業者以外の製造販売業者が代替品の生産計画を策定するのに合理的に必要な範囲に限定されているため、手段も相当であること

  c  団体Yの会員間で共有される各代替供給事業者の供給する代替品の追加生産数量は、前記(ア)bと同様、当該情報だけでは団体Yの会員が、各代替供給事業者の代替品の実際の総生産数量を具体的に推認することはできないこと

  d  前記2⑶のとおり、代替供給事業者以外にも代替品を製造販売している数十社の後発医薬品製造販売業者及び数社の先発医薬品製造販売業者が存在する。数十社の後発医薬品製造販売業者については、その生産数量は団体Yの会員に共有されない。また、数社の先発医薬品製造販売業者については、団体Yの会員の各代替供給事業者に関する情報を得ることもない。このことから、これらの製造販売業者の存在が、代替供給事業者に対する一定程度の競争圧力となること

      から、X社を通じて行われる代替品の製造販売を行っている団体Yの会員間(代替供給事業者と代替供給事業者以外の製造販売業者との間)の当該情報共有が、代替品の製造販売市場における競争に影響を与えるとしても、その影響は軽微であり、同市場における競争を実質的に制限するものではないと考えられる。


⑷  以上から、本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答

 本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。

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