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7 燃料の製造販売業者を会員とする団体が主導する、温室効果ガスの排出量削減に寄与する新たな輸送用機械向け燃料の先行導入のために行われる、当該燃料の共同生産等の実施【グリーン社会の実現に向けた事業者等の取組に関する相談】

7 燃料の製造販売業者を会員とする団体が主導する、温室効果ガスの排出量削減に寄与する新たな輸送用機械向け燃料の先行導入のために行われる、当該燃料の共同生産等の実施【グリーン社会の実現に向けた事業者等の取組に関する相談】

 燃料の製造販売業者を会員とする団体が、温室効果ガスの排出量を大幅に削減するという特徴を有する新たな輸送用機械向け燃料の普及を目的として、団体主導で、会員が共同で行う、当該燃料の将来の円滑な導入拡大に向けた製造から流通に至るまでの課題の発見及び検証の機会として位置付けられる先行導入のため、当該燃料の共同生産等を実施する取組について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

 #共同生産、#グリーン社会の実現、#新燃料製造・流通のための課題検証、#発展段階の市場

1 相談者

 X協会(燃料Aの製造販売業者を会員とする団体)

2 相談の要旨

⑴  X協会は、輸送用機械向け燃料として主に流通している燃料Aの製造販売業者を会員とする団体であり、日本国内で流通する燃料Aのほぼ全てはX協会の会員によって製造されている。


⑵  輸送用機械向け燃料業界においては、カーボンニュートラル化[1]を推進するとともに、エネルギーの安定供給を図る必要性が高まっており、この解決策の一つとして、燃料Aの一種として位置付けられる、輸送用機械向け燃料a(以下「燃料a」という。)の活用が新たに検討されている。
 燃料aは、温室効果ガス[2]の排出量を大幅に削減し、カーボンニュートラル化に資するという点で、グリーン社会の実現に有用な燃料であるが、一方で、以下のような特徴を有している。

・  安全性の確保のため、輸送用機械が燃料aの使用に対応している必要がある。

   なお、燃料aに対応した輸送用機械は既に日本国内で流通している。

・  輸送用機械が燃料aに対応している場合、燃料Aと燃料aは使用燃料として代替し得るものではあるが、輸送用機械向け燃料として主に流通している燃料Aと比較して、燃料aは一定程度燃費効率が低下し需要者が燃料購入に費やす費用も高くなる。

・  既存の燃料Aの製造設備等では製造することができず、新たな製造設備等が必要になる。


[1] カーボンニュートラルとは、「人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と吸収作用の保全及び強化により吸収される温室効果ガスの吸収量との間の均衡が保たれ」ることをいう(地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)第2条の2)。

[2] 温室効果ガスとは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素等の総称をいう(「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号)第2条第3項)。


⑶  日本国内において、燃料aに対応した輸送用機械は既に流通しているが、燃料aは、輸送用機械向け燃料としていまだ商用化の段階に至っていない。
 前記⑵のような特徴を有する燃料aの商用化を実現するためには、実際の製造及び流通段階における課題の発見及び検証による知見の蓄積が必要である。しかし、輸送用機械向け燃料業界で燃料aに係る知見が不足しており、また、燃料aの製造に当たっては巨額の設備投資を要することから、燃料Aの製造販売業者が単独で取り組むには難しい状況にある。
 なお、グリーン社会の実現に有用な輸送用機械向けの燃料としては、燃料aのほか、様々なエネルギー源の燃料が既に日本国内で流通している。


⑷  そこで、X協会は、燃料aの将来の円滑な導入拡大のために、自らが主導して、燃料Aの製造販売業者である会員の任意の協力を得て、特定の地域において、会員が共同で行う、燃料aの製造から流通に至るまでの課題の発見及び検証の機会として位置付けられる先行導入を実施すること(以下「本件取組」という。)を検討している。具体的な先行導入のスキームは、以下のとおりである。

ア  先行導入の実施期間は、約2年間とする。燃料aの製造・流通により、その製造・販売設備等に何らかの影響が生じるとした場合、その影響は製造・流通後直ちに顕在化するものではなく、1年以上の期間経過をもって顕在化する場合もあると考えられるところ、燃料aの製造・流通における課題を適切に検証するためには、最低でも約2年間の期間が必要となるからである。

イ  会員間の協議を踏まえてX協会が決定した燃料aの製造方式に従い、会員が共同して設備投資を行った製造設備を用いて特定の会員が燃料aの製造を担当することにより、燃料aの共同生産を行う。会員は、共同生産された燃料aを、同一の単価による費用を負担した上で各自で引き取り、その後の保管や輸送、販売に至るまでの過程も各自で実施する。
 なお、燃料aの共同生産コストは、燃料aを流通業者や一般消費者等に販売するまでに要する総コストの大部分を占める。

ウ  会員は、燃料aを流通業者や一般消費者等に販売するに当たり、その販売価格を各自で自由に決定する。X協会は、会員の燃料aの販売価格に関する情報を他の会員に提供しない。

エ  会員は、燃料aの取扱量を各自で自由に決定する。X協会は、会員の燃料aの取扱量に関する情報を他の会員に提供しない。

オ  先行導入の期間終了後においては、燃料aの共同生産を終了し、会員は、先行導入から得られた知見を活用し、燃料aの製造や販売等について、各自で自由に決定し、単独で取り組むこととする。

カ  X協会は、先行導入に参加した会員が、途中で脱退することを制限しない。また、X協会は、X協会の会員でない事業者から、先行導入への参加を希望する旨の申出を受けた場合には、先行導入に要する費用の分担を求めるものの、合理的な理由なく申出を拒否しない。

         なお、X協会は、会員に対して、燃料aに関する先行導入に必要な製造技術や安全性等に関する情報及び先行導入から得られた知見の提供は行うものの、会員の燃料Aの製造や販売等に関する決定、又は、これらの事業行動の予測を可能にするような情報を他の会員に提供することはない。


 本件取組は、独占禁止法上問題となるか。


○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴ア 本件取組は、事業者団体が主導して、会員間で燃料aの先行導入のための共同生産を行うものであることから、このような事業者団体の行為により市場における競争を実質的に制限する場合には、独占禁止法第8条第1号の規定に違反する。

 イ 共同生産は、事業者が単独で行うよりも効率的な生産を可能とし温室効果ガス削減につながる場合があるほか、温室効果ガスを大幅に削減する生産設備への転換を促す場合もある。また、温室効果ガス削減に資する製品の供給量を拡大することを目的として実施されることもあり、グリーン社会の実現に貢献することが期待される。共同生産は効率的な生産を可能とするものであり、競争促進効果を有することから、独占禁止法上問題なく実施することができる場合もあるが、共同生産によって、当該共同生産の対象商品の販売市場における競争が実質的に制限される場合、独占禁止法上問題となる。
 共同生産に係る独占禁止法上問題となるか否かの検討に当たっては、まず、競争制限効果の有無について、以下の点を考慮して検討が行われる。

  (ア)  販売市場における共同生産への参加者の市場シェア

  (イ)  共同生産の対象商品の供給に要するコストに占める共同生産のコストの割合

  (ウ)  当該商品の販売分野における独立した活動の状況(価格や数量等の情報交換・共有を行わないこと)

  (エ)  共同生産への参加が自由で制限されていないか

      そして、競争制限効果がない場合は独占禁止法上の問題とはならず、競争制限効果が認められる場合は、取組の目的の合理性及び手段の相当性を勘案しつつ、当該取組から生じる競争制限効果及び競争促進効果について総合的に考慮して、競争の実質的制限を生じさせるものであるか否かを判断することとなる(グリーンガイドライン第1の3⑵イ(カ)「共同生産及びOEM」)。


⑵ 本件取組は、事業者団体が主導して、燃料aの販売に関して競争関係となる会員間で燃料aの先行導入のための共同生産を行うものであり、燃料aの製造販売市場における現在又は将来の競争に影響を与える可能性があると考えられる。
 また、輸送用機械が燃料aに対応している場合、燃料Aと燃料aは使用燃料として代替し得るものではあるが、燃料aは燃料Aと比較して一定程度燃費効率が低下し需要者が燃料購入に費やす費用も高くなると想定されることから代替性は限定的と考えられる。
 これらのことから、燃料aの製造販売市場に与える影響について検討する。


⑶ 本件取組は、温室効果ガスの排出量削減に資するものであることから、グリーン社会の実現に向けた取組であることが認められる。以下、これを前提に検討する。

 ア  前記2⑶のとおり、燃料aはいまだ商用化の段階に至っておらず、その市場が形成されているとまではいえないものの、本件取組は、

 (ア)  日本国内のほとんど全ての燃料Aを製造しているX協会の会員が参加して燃料aの共同生産を実施することになるため、燃料aの製造販売市場における会員の市場シェアは、相当程度高くなることが想定されること

 (イ)  燃料aの共同生産コストは、燃料aを流通業者や一般消費者等に販売するまでに要する総コストの大部分を占め、コスト共通化割合が高いこと

   といった事情が存在するとはいえ、

 (ウ)  X協会の会員は、燃料aを流通業者や一般消費者等に販売するに当たり、その販売価格や取扱量を各自で自由に決定し、X協会は他の会員の販売価格や取扱量に関する情報提供を行わないこと

 (エ)  X協会は、本件取組に参加した会員が途中で脱退することを制限せず、また、X協会の会員でない事業者から、本件取組への参加を希望する旨の申出を受けた場合には、本件取組に要する費用の分担を求めるものの、合理的な理由なく申出を拒否しないこと

 (オ)  本件取組の実施期間が必要最低限の約2年間に限定されていること

 (カ)  本件取組の実施期間後は、X協会の会員が、本件取組から得られた知見を活用し、燃料aの製造や販売等について、各自で自由に決定し、単独で取り組むこととされていること

 (キ)  燃料Aのほか、様々なエネルギー源の燃料による競争圧力も存在すること

   も考慮すれば、本件取組の競争制限効果はあるとしても限定的であると考えられる。

 イ  そして、本件取組は、グリーン社会の実現に資する燃料aの商用化を目指して行うものであり、目的の合理性が認められ、それに向けて1社が単独で取り組むには難しい状況であることから、X協会が主導して、会員共同の取組として行う相当性も認められる。

    これを踏まえ、本件取組には、燃料aの商用化の契機となり、新たな技術や優れた商品を生み出すなどの競争促進効果も期待できる。

 ウ  これらを総合的に考慮すると、本件取組は、燃料aの製造販売市場における現在又は将来の競争を実質的に制限するものではないと考えられる。


⑷ 以上から、本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答

 本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。

 なお、本件取組は、日本国内で流通する燃料Aのほぼ全てを製造しているX協会の会員が関与して行われることを踏まえ、X協会は、本件取組を行うことを契機として、会員が燃料Aの製造販売市場における競争を実質的に制限する行為を行うことのないよう、会員に対して、他の会員の燃料Aの製造や販売等に関する決定、又は、これらの事業行動の予測を可能にするような情報提供を行わないことについて徹底する必要がある。

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