[配布資料]
1 日時
令和8年7月22日(水) 13:30~14:22
2 概要
(1) 委員長からの説明
公正取引委員会委員長の茶谷でございます。本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、平素より大変お世話になっておりますこと、改めてこの場をお借りして感謝申し上げます。
このような形で記者の皆様と懇談させていただくのは、昨年の5月21日に公正取引委員会委員長に就任しましてから半年が経った12月に、霞が関の旧庁舎で会見させていただいたとき以来になりますが、そのときには、スマホソフトウェア競争促進法と中小受託取引適正化法、いわゆる取適法の施行が迫っておりましたので、この2つの法律についてお話をさせていただきました。それから半年余りが経ちましたので、その後の取引適正化に向けた取組などについて、本日はお話をさせていただければと思っております。
一つ目は、取適法が本年1月1日に施行されましたが、取適法でカバーしきれない取引についてもルール整備を行ったことについてです。二つ目は、1月に「イノベーションの促進に向けた競争政策の積極的展開」という文書で、公正取引委員会が現在取り組んでいることを3つの柱に分けて整理しましたところ、それを踏まえた組織改革についてです。本日はこの2点について、お手元の資料に基づいて御説明させていただきたいと思います。
まず一つ目の「取引適正化に向けた取組」の方ですが、御承知のとおり、日本経済は長きにわたって「デフレ・コストカット型経済」といわれる状況が続きましたが、ロシアがウクライナに侵攻した辺りから、物価も賃金も上昇する時代になってきました。そうした中での経済政策の大きな課題は、賃上げが物価上昇を上回る、すなわち、実質賃金がプラスになる状態を持続させることであるかと思います。
そのためには、企業のイノベーションを促進して生産性を上げて、付加価値を高めていくことが一番の基本となりますが、そのような状況の中で公正取引委員会ができることはということを考えますと、中小企業の方にも焦点を当てつつ、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁をできるようにすることではないかと思います。適切な価格転嫁ができるようになりますと、それによって得た原資で賃上げもできますし、生産性の向上に向けた取組もできるようになるという考え方の下、サプライチェーン全体の適切な価格転嫁を推進しているわけでございますが、その中で公正取引委員会は大きな役割を担っているものと思います。
その一つの取組として、本年1月から、取適法が施行されました。取適法は、昨年5月、古谷前委員長の任期の最終日に参議院経済産業委員会で採決され、翌日に成立した法律ですが、法案提出時点では施行日を公布後一年以内としていましたところ、与野党共に早く施行した方がいいという話になりまして、議員修正で本年1月から施行ということになりました。
施行前には、徹底した周知・広報が必要なものですから、ここにおられるマスコミの皆様の御協力も得ながら、一生懸命に周知・広報をやらせていただいたところでございますし、実際に施行が始まりました後には、積極的な執行に取り組んできたところで、今月には、取適法が適用された初の勧告案件も公表させていただいたところです。ただ、御承知のとおり、取適法は、資本金や従業員数という客観的な基準で適用範囲を定めているため、どうしても取適法が適用されないような取引が出てきます。サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を実現していくためには、そのような取引の適正化にも取り組んでいく必要がありました。このような課題に対応していくために、お手元にお配りした資料の1ページに書いてございますが、公正取引委員会は、6月17日に、独占禁止法上の優越的地位の濫用に関するルールの整備を行いました。
資料の2ページ目を御覧いただければと思いますが、具体的に申し上げますと、物流特殊指定を改正するとともに、支払告示という新たな告示の制定を行いました。物流特殊指定というのは平成16年に制定されましたもので、制定以来、実質的に改正するのは今回が初めてです。また、新しい特殊指定の制定は約21年ぶりになります。それとともに、優越的地位の濫用に関するガイドラインの改正も行って、価格協議に関する考え方を明確化したところでございます。さらに、公正取引委員会、中小企業庁と特許庁は、知的財産に関する取引指針を本年6月に公表しました。
ざっと言えばこういう四つのルール整備を行ったものでして、これについて、まずお話させていただければと思います。
一つ目は、物流特殊指定の改正です。御承知のとおり、荷物を送り出す側の「発荷主」と運送事業者との間の取引、これについては取適法の対象にして取引適正化を図ったわけですが、現実には、運送事業者とは契約関係にない、荷物を受け取る側の「着荷主」による問題もあります。この問題というのは、着荷主が運送事業者に無償で長時間荷待ちさせるとか、無償で荷物の積込みや荷下ろしを行わせるといったものです。この問題につきましては、物流特殊指定で対応することとし、着荷主が物流事業者を通じて契約外の荷待ち・荷役等を行わせることによって、結果として発荷主の利益を不当に害する行為という考え方の下、このような着荷主による行為を新たに禁止する改正を行いました。
二つ目は、支払告示です。取適法では給付の受領日から60日以内の代金の支払が定められておりますが、取適法が適用されない取引でも同様のルールを整備しなければ、例えば、そもそも委託者側が中小事業者で、受託者側も小規模事業者というように、資本金基準も従業員基準も満たさない場合には、受託者側の資金繰りが悪化することになります。そのため、支払告示で、製造委託等の取引において、正当な理由なく給付を受領した日から60日以内に代金を支払わないことを新たに禁止することとしたところでございます。
三つ目は、優越ガイドラインの改正です。取適法では、改正の目玉として、「協議に応じない一方的な代金決定」という、プロセスに着目した新たな禁止行為を設けましたが、取適法が適用されない取引においても、独占禁止法上の優越的地位の濫用の観点から、対価の決定方法について、実効的な協議が行われたかどうかが考慮要素となることを明確に示すことで、独占禁止法上の考え方を明らかにしたところであります。
これらのルールが相まって、取適法の対象外の取引を含むサプライチェーン全体の取引適正化が図られるようにしていきたいと考えておりますし、そのために、まだ施行前の改正物流特殊指定や支払告示の周知・広報を引き続き行っていきたいと思いますので、是非マスコミの皆様にも御協力を賜れれば幸いです。
四つ目は、知的財産に関する取引指針です。中小企業の方も、当然、知的財産、あるいはノウハウ、データを持っておられて、これは中小企業にとってのイノベーションの源泉ですし、宝だと思うのですが、取引の現場では、力関係を反映して、無償あるいは低廉な価格でそれらが吸い上げられる事例も往々にして見られたものですから、知的財産権等の取引環境の整備や知的財産権等に係るリテラシーの向上を図ろうということで、先ほど申し上げましたように、中小企業庁、特許庁と共同で指針を定めさせていただいたところでございます。この指針を定めることによって、知的財産権等が創出する付加価値に見合った適切な対価を中小企業の方が享受し、新たなイノベーションに向けた再投資へとつなげる好循環が生まれることを公正取引委員会としては期待し、目指していきたいと思います。知的財産の取引指針につきましても周知・広報に努めていくところですので、マスコミの皆様には是非御協力を賜れればと思いますし、我々も、実効性ある指針になるようしっかりと執行に取り組んでまいりたいと考えております。
以上が、本日お話したいことの一つ目の取引適正化についての話でございます。
二つ目は、公正取引委員会の体制強化の話でございます。
公正取引委員会は、30年前の平成8年に、それまでの、事務局の下に部が置かれていた体制から、事務総局に生まれ変わって、事務総局の下に官房と局が二つ、経済取引局と審査局が置かれているという体制で、この30年間ずっとやってきました。
ただ、この間、公正取引委員会が担う業務は大きく広がっています。先ほども申し上げましたが、物価が上がる状況で実質賃金をプラスにするためにサプライチェーン全体での適切な価格転嫁を図る業務が、まず第一に挙げられますし、取引適正化の分野では、令和6年11月からフリーランス・事業者間取引適正化等法が施行されています。さらに、デジタル分野での業務も広がってきておりまして、スマホソフトウェア競争促進法が昨年12月18日から全面的に施行されております。生成AIについてはアジャイルに実態調査を行ってきておりますし、ニュースメディアとの関係でも今調査を行っているところでございます。また、グリーン・トランスフォーメーションに向けた取組や、最近では特に地政学リスクの高まりから経済安全保障に関連する仕事も増えています。
このように、公正取引委員会の仕事は30年前から比べるとかなり拡大しています。業務拡大に合わせて、約30年前に事務総局に移行したときは約500人だった定員が、今はほぼ1,000人規模というように倍増してきていますが、体制については、1官房2局体制から変わっていません。
これだけ公正取引委員会の業務が増えてきたものですから、先ほど申し上げました、「イノベーションの促進に向けた競争政策の積極的展開」という文書を今年1月に公表し、公正取引委員会の施策を三つの柱に分類しました。
三つの柱の一つが「厳正な法執行」でございまして、昭和22年、今から79年前に公正取引委員会ができて以来、一番の中心的な業務として取り組んできた、公正取引委員会にとって最も基本的な業務です。
もう一つは「取引適正化による公正な取引環境の確保」でございまして、先ほど申し上げた取適法やフリーランス法の執行が中心になっていますが、取引適正化に関する業務です。
それともう一つは「対話を通じた市場環境の確保」でございまして、こちらも先ほど申し上げましたが、デジタル、グリーン・トランスフォーメーション、経済安全保障のような、環境がどんどん変わっていく中で、関係者と対話を重ねながら競争環境の整備を図っていく業務です。地政学リスクの高まりなどを踏まえた企業結合ガイドラインの改正もここに入ります。
公正取引委員会の役割は、元々、イノベーションを促進して経済成長と豊かな国民生活を実現していくというものです。競争政策を通じて、公正取引委員会がこのような役割を果たしていくためには、今申し上げた三つの柱を有機的に連携させながら、個別の施策に機動的かつ効果的に当たっていく必要があり、そのためには、それを実行する組織そのものも、三つの柱のそれぞれの特性に応じたものにしていく必要があると考えています。その上で、組織はそう頻繁に変えるわけにいきませんので、中長期的にも持続可能な最適化された組織体制にしたいと考えています。それとともに、取引適正化に関しては地方での取組が特に重要になってきますので、公正取引委員会の地方組織の体制強化もしていく必要があると考えたところです。
具体的には、今の1官房2局というのを、三つの柱に応じた1官房3局体制に移行したいと考えています。
それに合わせて、取適法の衆参の審議において、あまねく全国において適正な取引の確保が図られるよう、地方での執行力を強化する必要があると附帯決議がされました。また、取適法では、御承知のとおり、一つの眼目として、公正取引委員会と中小企業庁に加えて、各産業を担当する省庁にも調査・指導する権限が新たに与えられましたが、これは地方の執行現場でも同じでして、地方レベルにおいても省庁間の連携がスムーズにできるようにしたいと考えています。そのため、公正取引委員会の地方組織も他省庁の地方組織と同じように「局」という形に格上げして、立場を対等なものにするという発想から、今の「地方事務所」を「地方事務局」とするように改めていきたいと考えています。
これらのための機構・定員要求を、令和9年度に向けて行っていきたいと考えているところでございます。また、今申し上げました組織の話につきましては、独占禁止法に「官房及び局の数は、三以内とする」ですとか、「地方事務所を置く」というように書かれているものですから、これを改正する必要がありまして、できれば関係方面との調整の上、御理解を得て、来年の通常国会に独占禁止法の改正法案を提出したいと考えているところでございます。
私からまずお話させていただきたいのは、以上でございます。
(2) 質疑応答
(問)体制強化について伺いたいのですが、1官房3局体制ということで、現在の取引部の局への格上げという形を見込まれているのでしょうか。
(答)現在、取引適正化に関する業務は、取引適正化担当の審議官が行っていますが、組織再編を行う際には、単に取引部を格上げするのではなく、三つの柱に沿った組織の形として適切な形はどのようなものかということを、今後具体的に詰めていくことになります。現在、経済取引局が三つの柱のうち二つを担っていますが、それをどう分けるのかということを考えますと、先ほど申し上げましたように、組織というものは一度定めたら頻繁に変えることはよくないものですから、もう少し将来の仕事まで見定めて、中長期的に持続できるような体制はどのようなものかということを真剣に議論し、業務の特性に応じて、課のレベル、係のレベルまで含めて考えていきたいと思っています。そのため、単に取引部を局にするというよりも複雑なものになってくるかとは思います。
(問)新しい局の業務は、経済取引局の中のいろいろな課の業務も精査して決めていくということかと思いますが、そうしますと、新たな局は必ずしも「取引適正局」と呼ばれるわけではないというイメージでしょうか。それとも、基本的には「取引適正局」みたいな感じの名称になるのでしょうか。
(答)名称については現在検討中ですので、何とも申し上げられないです。ただ、当然、業務の中身を分かりやすく表す名称にする必要がありますので、こっちは取引適正化を図る局だな、こっちは対話を通じた市場環境の整備を図る局だなということが、極力分かりやすいように名称を考えていく必要があろうかと思います。
(問)1月に公表された「イノベーションの促進に向けた競争政策の積極的展開」に関連してお伺いします。「対話を通じた市場環境整備」の中にスマホ法の運用も入ってきています。他方、スマホ法は、EUのデジタル市場法(DMA)と同様に、法に違反する行為がある場合には、正式な調査と処罰が行われる立て付けになっています。基本的には、遵守報告書の内容を基に対話で競争状況の確保を図るというのが大きな役割であるというのはわかるのですが、事件審査を行い得るにもかかわらず、「厳正な法執行」の領域にスマホ法の運用が入っていないことにちょっと疑問があります。
また、スマホ法については、既に1回目の遵守報告書が公表され、現在2回目の遵守報告書の精査を内部で進められている段階かと思いますけれども、GoogleとAppleの対応は不十分なのではないか、公取委ももうちょっとしっかりしてよという意見も高まっているようです。スマホ法の今後の運用の方針について姿勢を聞かせていただけますか。
(答)スマホ法についても、もちろん、最終的に排除措置命令などの処分まで持っていくときには、それに関する仕事は「厳正な法執行」の領域に入るものと考えています。先ほど申し上げた経済安全保障やグリーン社会の実現に向けた取組についても、独占禁止法の考え方を明らかにしていくといった業務は「市場環境の整備」の領域でしょうけれども、明らかにしたルールに基づいて、違反する行為が行われたということで排除措置命令や課徴金納付命令を課すという段階になれば、その業務は「厳格な法執行」の領域になるかと思います。両者を完全に縦割りに切り分けるのはなかなか難しいと思いますので、先ほど有機的な連携が必要と申し上げましたが、ルール整備のときには「市場環境の整備」の仕事だけれども、いよいよ執行する段階になるとそこは「厳正な法執行」に舞台が移っていくということになります。そういう意味では、三つの柱に応じて組織を組み立てていくとしても、過度に縦割りにならないよう、極力有機的に連携するようにしていきたいと考えています。
(問)そうすると、スマホ法の運用の姿勢としては、どういうものになるのでしょうか。まだしばらく対話を続けるのですか。自民党の中でも対話で解決しないならば厳正な法執行をという意見も出ているようですけれども。
(答)まず今は対話を続けている段階です。ただ、対話を続ける中で、スマホ法に違反している疑いが明らかであるため、そのような行為の改善を求めたにもかかわらず、指定事業者が改善に動かなかった場合には、当然、法執行の段階に移ることになります。現在はまだそこまで至っていないため、引き続き対話を続けていると、そういうフェーズだと思います。
(問)私も体制強化のところでちょっと細かい点を伺いたいのですけれども、2局から3局とするのに独禁法改正が必要ということですが、定員の要求は令和9年度からできるように要求されるのでしょうか。
(答)そうですね。おそらく、8月末に行う概算要求に反映する形になると思います。
(問)今、1,000人近い体制なのですけれども、大体何人くらいになるのでしょうか。
(答)定員数については現在検討中です。
(問)3局体制ということで、審査局は基本変わらず、経済取引局が変わるのでしょうか。
(答)ざっくり言えばそういう形になると思います。
(問)取適法とか経済安保とかいろいろやってきましたけれども、特に今一番体制が整っていないという分野はありますでしょうか。
(答)どの分野も非常に逼迫していますが、例えば取適法については、全国津々浦々で対応をしていく必要があるものの、地方事務所を含めて非常に人員が足りない状況です。また、デジタル分野については、単に人数を増やせば良いというものではなく、専門家の確保が重要になりますので、どのような人材を採用するかも含めて組織体制を考えていくことになると思います。
(問)地方機関を「地方事務局」に変更するというのは、どのくらいの体制強化になるのでしょうか。人数も含めてお聞かせください。
(答)人数は、もちろん増やしていければ、と思っています。
少し実務的な話になりますが、今年、環境省が法律を改正して、「地方環境事務所」を「地方環境局」に改めたのですが、これと同じような発想です。地方では、大体の省庁がブロックごとに出先機関を置いていまして、各省庁の出先機関のトップが集まって協議を行う場面がありますが、正直に申し上げると、同じ出先機関同士といっても、局長の集まりの中に所長の立場で出席するよりも、局長同士のほうが円滑に協議を進めやすい面があります。環境省もそのような問題意識から改正を行われたのですが、我々としても同じ問題意識を持っております。例えば、地方の経済団体が地方支分部局のトップを集める場合でも、局長か所長かによってある程度扱いに違いを設けることがあるわけです。そこはやはり、同じ立場ですよということを明確にしていきたいですし、当然、名称だけではなく、定員の増加も含めて、中身も強化していきたいと考えています。
(問)分かりました。令和9年の通常国会に法案が提出されて可決されれば、何年度からこの体制になるのでしょうか。
(答)令和9年度の特定の時期からだと思います。予算関連法案として国会に提出したいと考えていますが、現時点で具体的な期日まで申し上げることはなかなか難しい状況です。
(問)質問が2点ございます。1点目は、体制強化についてなのですが、公正取引委員会が執行連携をしていくに当たり、国土交通省であったり、中小企業庁であったり、いろいろな省庁と連携していくことになりますが、そういった省庁は、全国の都道府県に出先機関があって、それをまとめる中間的な機関もあるという体制になっています。それに対して公正取引委員会はというと、例えば関東なんかは分かりやすいですけれども、本省に当たるところが関東地方を直接みる形になっていて中間の組織がなく、各都道府県というレベルに至っては明確にここが窓口だというものが非常に分かりづらいという状況です。当然、法改正もあって予算もあって定員もあってと、いろいろなハードルがあるのは分かるのですけれども、目指すべき理想の形、今、委員長の中で本来やはりこういったところまで組織というものはあった方がいいのではないかというような絵があれば、なかなか言葉にするのは難しいかもしれませんが、お聞かせください。
2点目は、技術的な話かもしれませんが、取適法は中小企業庁との共同所管で法執行をされており、調査結果の公表については両機関が合同で記者会見を開かれていたと思いますが、調査開始についてはそれぞれ別々に公表されていて、アンケートの開始や締切りの時期も違うというふうになっていて、なかなか全体像が見えづらいというのがあります。独占禁止法で執行するのでは非常に時間がかかるので、より簡易・迅速に対応するために、各種の調査や注意だとかの制度があって、それによって中小企業の事業環境の改善が図られていくというところがあると思うのですけれど、なかなかそのメッセージが分かりやすく届いていないのではないかなという危惧を持っています。改善策などがあればお聞かせください。
(答)1点目の方につきましては、地方支分部局の在り方は、省庁ごとに多分異なると思います。例えば、財務省ですと、財務局は各ブロックに置かれていて、県には財務事務所がある、一方、税関は各ブロックに置かれていて、支所が置かれていることもありますが、基本的にはそれだけという体制になっています。
公正取引委員会の場合は、基本的には、それぞれの地方事務所が担当する地域を全部みています。例えば、仙台にある東北事務所で青森、岩手など東北全域をカバーしているということであります。このようなやり方はやはり相当に大変なので、理想的には各県に事務所があるとか、そのような形が望ましいのかもしれませんが、今はそれ以前の段階であり、理想を語っていても現実的にどうやって人を採用するのかということも含めて考えていく必要がありますので、まずは事務所から事務局に格上げしたいと考えており、その上でいずれどういった体制が望ましいかというのは考えていきたいと考えています。デジタル化が進んでいくと、本当に物理的にそこに人がいる必要があるのかというようなことも考えていく必要が出てくるのではないかとも思いますので、そういった世の中の状況も考えながら、更に先の地方の体制というのは今後よく考えていきたいと思っております。
2点目については事務方からお答えさせていただきます。
(事務方)2点目の関係省庁との連携という観点からのお尋ねについて御説明いたします。
元々、下請法の執行では、中小企業庁と公正取引委員会とがそれぞれ調査をいたしまして、中小企業庁は指導、公正取引委員会は勧告をするというようなやり方をしてきたという歴史的背景がございます。そして、中小企業庁が調査を行って大きな事案だった場合には、調査結果を踏まえて公正取引委員会に措置請求を行い、公正取引委員会が勧告するというような形であったわけですが、御存知のとおり、しばらくは停滞しておったという時期がございました。しかしながら、昨年の実績で申しますと9件の措置請求があったということでありまして、これは、公正取引委員会と中小企業庁で協力をしていこうと意識的に取り組んできた結果でございます。具体的には、昨年から人事交流も始めるということで、お互いがどういう調査をしてどういうスケジュールでやっていこうなど、そういった調整をする体制ができたということでございます。そして、御存知のとおり、今年1月から取適法が施行されたということ、さらには関係省庁も調査や指導ができるというようなスキームとなりまして、そこで、中小企業庁だけでなく、関係省庁とも連携をしていこうということで、今進めておるというところでございます。このように、段階的に各省との連携を進めてきているという状況でございますので、今御指摘がありました、制度や取組が分かりにくいのではないかという点につきましては、現場の声をどんどんお寄せいただいて、改善をしていければというふうに考えております。また、最終的には、地方で、関連する省庁の局と公正取引委員会の局とで連携することによりまして、全国の津々浦々で取引適正化、価格転嫁が進むような連携が図られるというところを目指していければというふうに考えています。
(問)地方拠点のお話なのですけれども、課題の認識としては、取適法に対応する人員が地方においても足りないというところが一番大きいのでしょうか。
(答)取適法で全国津々浦々の取引の適正化を図っていくということで、ウエイト的には取適法の執行に関する課題が大きいだろうと思います。もちろん独占禁止法に関わる部分、例えばカルテルなどは地方でも起こっているでしょうし、優越的地位の濫用の問題やフリーランス法上の問題もそれぞれ全国津々浦々で起こっているでしょうから、その適正化を図っていく必要があろうかと思いますので、必ずしも取適法に限らないですが、ウエイト的には取適法が大きいかなと思っています。
(問)ありがとうございます。それと、先ほどちょっと質問で出た、関東地方を本局がみているという点ですが、なかなか広いエリアだと思うのですけれども、他の地域では地方事務所を地方事務局にしていくということですが、本局管内の地方対応については、何かお考えなのでしょうか。
(答)今現在は、直ちに対応するのはなかなか難しいと思いますが、ただ、本局がカバーするエリアはかなり広範になっていますので、今後の中長期的な課題としてしっかり考えていく必要があると思っています。
(問)近年、金型の保管費を巡る問題の解決に向けて動かれているかと思うのですけれども、愛知県の製造業などを取材していると、未だに金型の図面の提出であるとか、保管費以外にも様々な問題があるように見聞きするのですけれども、現状、金型の保管費以外での何らの問題であるとか、これから解決に向けて取り組んでいくのに念頭にある問題がありましたら教えてください。
(答)我々も金型についてはかなり集中的にやってきましたが、それでもまだ案件が出てくるということは、その問題意識がなかなか十分に浸透しているわけではないということなのでしょうし、金型に限らず、やはり委託者と受託者が長年取引をしていると、様々な面で優越的地位を利用したような取引が行われていると思いますので、様々な情報や端緒に接するごとに適正化を図っていって、極力それを横展開と申しますか、問題の所在を業界団体あるいは関係省庁に伝えて改善の動きを広げる取組をやっていこうと思っています。今までの経験上、それで簡単に改まるものではなかなかないと思いますが、様々なことについて地道に努力を重ねていくしかないのかなと思っています。
(問)現在、企業結合ガイドラインを改定するためのパブコメ中ですが、委員長の立場として、なぜ今、改定が必要なのか、何を目指して改定を行うのか、御説明ください。
(答)私自身、1年ちょっと前に委員長になってから経済界の方々とお話している中で、どうも公正取引委員会は敷居が高くて相談しにくいし、企業結合を止められるのではないかという不安があるというような声を聞いたりもしていました。そうした中で、今、特に地政学リスクが高まってきていますし、時代の流れというものは急に変わったりもするものですから、何か課題が生じてから考えるというのではなくて、先手先手で競争法でも対応ができるようにしておく必要があるだろうと思っています。地政学リスクの高まりを受けた話というのは世界的な潮流でもありますが、そういった中で、経済成長と豊かな国民生活の実現を競争政策を通じて図っていくために何が必要かという観点から合併規制を見た場合には、企業の方が予見可能性を持って事業を進められるようにルールを整備していくことが今は必要だろうと思いまして、内部で相談して、今回の改定に踏み切ったところです。
(問)ありがとうございます。あと二つ質問がありまして、一つは3局体制について、新設される局の名称は検討中ということですけれども、経済取引局も名称変更が行われるかもしれないという理解でよろしいでしょうか。
(答)名称については、まだ検討中ですので、何とも申し上げられません。経済取引局という名称でよいなら現在のままということもあるかもしれませんけれども、それは今決めているわけではなくて、どのような名称がふさわしいのかということは今後内部で考えていくこととしておりますので、単に取引適正化を担当する局がぽっと一つできるというイメージではないのではないかと思います。三つの柱に沿って組織をシャッフルした上で、それぞれの局にふさわしい名称を付けることになります。
(問)分かりました。ありがとうございます。あと、これが最後の質問ですが、この三つの柱でイノベーションと競争政策を進めるということなのですが、世界の競争当局の体制からすると取引適正化に関わるところを競争当局が担っている国ばかりでは必ずしもないかと思うのですが、この3局の体制について、他の世界の当局の方々に対して、あるいは、他の国の競争法の読者に対して、どういうふうな説明をしたいとお考えですか。
(答)私も委員長に就任してから6回ほど海外出張をして国際会議にも参加してきましたが、おっしゃるとおり、韓国などでは取引適正化に関する取組を競争当局が担うことが必要だとされていたりしますが、欧州などでは取引適正化に関する取組を競争当局が担うことは必ずしも一般的ではありません。そのため、取引適正化について海外の方々に話すときには、日本では、取引上強い立場にある事業者が契約に書かれていない業務を要求するなど、かなり自由にできてしまっているような商慣習があるといった日本の風潮をまず説明してからでないと、なぜこのような取組をしているのか理解してもらえない部分もありますので、そういった日本と欧米で契約上の風潮がかなり違うことをある程度前提として説明した上で、今回の組織改編について説明する形になろうかと思います。
(問)組織の体制強化の関係で、現在の近畿中国四国事務所について確認させていただきたいのですけれども、改正法案が実現すれば近畿中国四国事務局となり、事務局の管理下に、中国支局、四国支局が置かれる形になると理解しています。まず、成り立ちとして、近畿中国四国事務所と中国支所、四国支所との関係が、なぜ今のような局形になったのかを確認させてください。また、先ほどおっしゃっていたように、地方機関の間で局長のカウンターパートとして対等な立場であることが重要だというのであれば、中国・四国地方だけが公正取引委員会の中でちょっと取扱いが違う、もちろん、実態は多分そんなに違わないのだろうとは思うのですが、名称上の扱いが違うことに対して、他省庁などに対してどう説明されるのでしょうか。もっと言ってしまえば、全てを地方事務局とすれば、フラットで組織的にも分かりやすいと思うのですけれども、そのあたりの御見解を伺いたいと思います。
(答)この点は、もしかしたら事務方の方が詳しいかもしれませんが、国の組織を作るときには財源出しのようなルールがある中で、以前は、中国も四国も事務所だったのですが、財源出しの関係で事務所から支所になり、その状況が引き続いて現在に至っている経緯もございます。おそらく他省庁のどの地方支分部局も近畿・中国・四国は対等な局の扱いになっていることがほとんどで、本来はそれが望ましい形でしょうけれども、先ほど申しました一定のルールの中で霞が関全体は動いていまして、公正取引委員会だけ例外ということにはならないというのが現実としてはあります。その全般的なルールの中で様々な解消を図っていきたいとは思っております。
(事務方)今、委員長から説明があったとおりでして、事務総局にする際に、いろいろなやりくりをしなければいけなかったので、地方を効率化しますということで、それまでは公取委の地方の出先機関はそれぞれ同じく対等な「事務所」という位置付けだったものが、現在のような体制になったという経緯があります。今回、地方事務所を事務局にするという中で、中国支所、四国支所の位置付けといった辺りを一度に全部元の形に戻せるかというと、なかなか悩ましいところかなと思っています。
(問)将来的な課題としては捉えているということですかね。
(答)我々の希望としてはそうしていきたいと考えています。
(問)体制強化の関係なのですけれども、1官房3局体制になると局長も3人になるのでしょうか。
(答)おっしゃるとおりです。
(問)霞が関全体では幹部や役職の増加は長年抑えられてきたと思いますが、その中で局長を増やすことについて、納得を得られる、説得できる材料があるとの御認識であればそれを伺いたいです。若しくは、名称は局長であるけれども、実際の職位が実は違うといった手があるのでしょうか。
(答)局長は局長です。ただ、おそらく、その下の部長や審議官まで含めた全般的なところで、一定のルールに基づいたスクラップアンドビルトは必要になります。
(問)改めて基本的な話になりますが、就任して1年経っての所感をお願いいたします。
(答)無我夢中でやってきたというところでしょうか。半年前にも申し上げましたが、公正取引委員会の仕事は非常に多岐にわたっているのに、これほど少ない人数でやっているのだとつくづく感じています。そういう意味では、まずは仕事を整理して、それに見合った組織にしていこうということですが、増員も引き続きの課題としてあると思いますし、さらに、仕事そのものについても、とりわけ先ほども申し上げた「対話を通じた市場環境の整備」の部分は、私が委員長になってからでも、経済安全保障を巡る状況が変化していますし、AIについてもその間の進歩には凄まじいものがありますので、絶えず対応を考えていく必要がある領域というのがそれなりにあると思っております。
(問)厳正な法執行のところでお伺いしたいのですけれども、この1年の間にガソリン、軽油といった、生活に身近な油に関する公正取引委員会の動きが相次いで見られますが、こうした動きとなっている理由を含めてコメントをいただけるのであればお願いいたします。
(答)ガソリンの問題については、元々信濃毎日新聞さんが長野県で様々な取材をされてきたことは非常に大きな影響を与えていますし、公正取引委員会としても、人員が限られている中では、当然、国民生活に身近な商品やサービスに関するカルテル等の事案に注力していきたいと考えています。その意味では、ガソリンや軽油は正に国民生活に密着する商品であり、更に補助金も投入されているものですから、公正取引委員会がリソースを投入して対応する必要があったものだったと考えています。引き続き、違反行為がないか、常に注視していく必要があると思っています。
以上