令和元年6月19日
公正取引委員会事務総局
近畿中国四国事務所中国支所
はじめに
公正取引委員会は,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)の未然防止のための取組と,転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組を進めてきたところである。
近畿中国四国事務所中国支所(以下「中国支所」という。)においても,転嫁拒否行為等に対して迅速かつ厳正に対処することを目的として,「消費税転嫁対策調査室」を設置し,中国支所管内(鳥取県,島根県,岡山県,広島県及び山口県)において消費税転嫁対策に係る取組を実施してきたところ,平成30年度における管内の取組状況は以下のとおりである。
第1 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組
1 措置件数
管内においては,平成30年度は,転嫁拒否行為に対して,25件の指導を行っている。主な指導の概要は別紙のとおりである。
表1:措置件数 [単位:件]
年 度 |
平成30年度 |
平成29年度 |
累計(注1) |
||||
全国 |
中国地区 |
全国 |
中国地区 |
全国 |
中国地区 |
||
措 |
指 導 |
295 《16》 |
25 《1》 |
370 《16》 |
23 《1》 |
2,416 《156》 |
176 《15》 |
勧 告 |
5 《3》 |
0 《0》 |
5 《1》 |
0 《0》 |
48 《11》 |
2 《0》 |
|
違反事実なし |
107 |
4 |
149 |
9 |
1,406 |
84 |
(注1) 平成25年10月から平成31年3月までの累計。また,全国の件数には,中国地区の件数を含む(以下同じ)。
(注2) 《 》内の件数は,大規模小売事業者に対する勧告又は指導を行った事件の件数(措置件数)で内数である。
2 措置件数の業種別内訳
平成30年度の措置件数(勧告又は指導を行った事件の件数をいう。以下同じ。)について措置の対象となった特定事業者(注1)を業種別に分類すると,管内においては,製造業が10件(40.0%)と最も多く,以下,小売業業が5件(20.0%)とこれに続いている。
(注1) 特定事業者とは,①大規模小売事業者,②特定供給事業者(注2)から継続して商品又は役務の供給を受ける法人事業者である。
(注2) 特定供給事業者とは,①大規模小売事業者に継続して商品又は役務を供給する事業者,②資本金等の額が3億円以下である事業者,個人事業者等である。
表2:措置件数の内訳(業種別) [単位:件(%)]
業種 | 平成30年度 | 平成29年度 | 累計(注1) | |||||
全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | |||
建設業 | 48(16.0) | 1( 4.0) | 54(14.4) | 3(13.0) | 288(11.7) | 18(10.1) | ||
製造業 | 78(26.0) | 10(40.0) | 84(22.4) | 4(17.4) | 632(25.6) | 43(24.2) | ||
情報通信業 | 18( 6.0) | 3(12.0) | 43(11.5) | 3(13.0) | 216( 8.8) | 17( 9.6) | ||
運輸業 | 13( 4.3) | 1( 4.0) | 12( 3.2) | 0( 0.0) | 144( 5.8) | 10( 5.6) | ||
卸売業 | 17( 5.7) | 2( 8.0) | 28( 7.5) | 2( 8.7) | 174( 7.1) | 13( 7.3) | ||
小売業 | 39(13.0) | 5(20.0) | 30( 8.0) | 2( 8.7) | 284(11.5) | 30(16.9) | ||
不動産業 | 19( 6.3) | 0( 0.0) | 23( 6.1) | 0( 0.0) | 111( 4.5) | 3( 1.7) | ||
技術サービス業 | 11( 3.7) | 1( 4.0) | 15( 4.0) | 2( 8.7) | 125( 5.1) | 14( 7.9) | ||
学校教育・
教育支援業
|
6( 2.0) | 0( 0.0) | 10( 2.7) | 0( 0.0) | 56( 2.3) | 0( 0.0) | ||
その他 | 51(17.0) | 2( 8.0) | 76(20.3) | 7(30.4) | 434(17.6) | 30(16.9) | ||
合計 | 300( 100) | 25( 100) | 375( 100) | 23( 100) | 2,464( 100) | 178( 100) |
(注1) 平成25年10月から平成31年3月までの累計。
(注2) 複数の業種にわたる事業者が勧告又は指導の対象となった場合は,当該事業者の主たる業種により分類している。「その他」は娯楽業,医療福祉,事業サービス業(ビルメンテナンス業,警備業等)等である。
(注3) ( )内の数値は合計値に占める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
3 措置件数の行為類型別内訳
平成30年度の措置件数について行為類型別に分類すると,管内においては,買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)が25件(96.2%)と最も多い。
表3:措置件数の内訳(行為類型別) [単位:件(%)]
行為類型 | 平成30年度 | 平成29年度 | 累計(注1) | |||
全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | |
減額 | 23(7.2) | 1(3.8) | 36( 9.0) | 2( 8.0) | 132( 5.2) | 17( 8.7) |
買いたたき | 295(92.2) | 25(96.2) | 363(90.8) | 23(92.0) | 2,131(83.1) | 165(84.2) |
役務利用又は
利益提供の要請
|
0(0.0) | 0(0.0) | 0( 0.0) | 0( 0.0) | 49( 1.9) | 3( 1.5) |
本体価格での
交渉の拒否
|
2(0.6) | 0(0.0) | 1( 0.3) | 0( 0.0) | 251( 9.8) | 11( 5.6) |
合計 | 320(100) | 26(100) | 400( 100) | 25( 100) | 2,563( 100) | 196( 100) |
(注1) 平成25年10月から平成31年3月までの累計。
(注2) 事業者の中には,複数の行為を行っている場合があり,「合計」の件数は,表1及び表2に記載の件数とは必ずしも一致しない。
(注3) ( )内の数値は合計値に閉める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
4 特定供給事業者が被った不利益の原状回復の状況
平成30年度は,転嫁拒否行為によって特定供給事業者が被った不利益について,管内において,特定事業者17名から,特定供給事業者136名に対し,総額675万円の原状回復が行われた。
表4:特定供給事業者が被った不利益額の原状回復の状況
年 度 |
平成30年度 |
平成29年度 |
累計(注1) |
|||
全国 |
中国地区 |
全国 |
中国地区 |
全国 |
中国地区 |
|
原状回復を行った |
273名 |
17名 |
357名 |
19名 |
1,484名 |
123名 |
原状回復を受けた |
45,072名 |
136名 |
21,698名 |
403名 |
161,060名 |
6,739名 |
原状回復額 |
8億1517万円 |
675万円 |
8億1008万円 |
1561万円 |
36億4081万円 |
8829万円 |
(注1) 平成26年4月から平成31年3月までの累計。
(注2) 原状回復額は1万円未満を切り捨てている。
5 転嫁拒否行為等に関する相談件数
転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置しており,当該相談窓口において,平成30年度は17件の相談に対応した。
表5:転嫁拒否行為等に関する相談件数 [単位:件]
|
平成30年度 |
平成29年度 |
平成28年度 |
平成27年度 |
平成26年度 |
平成25年度 |
累計 |
全国 |
493 |
392 |
444 |
548 |
1,420 |
3,179 |
6,476 |
中国地区 |
17 |
18 |
12 |
13 |
45 |
38 |
143 |
(注) 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出に関する相談件数並びに情報提供件数を含む。
6 事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査
様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,管内においては,平成30年度は9名の事業者及び10の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。
表6:事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査の実施件数 [単位:件]
|
事業者 |
事業者団体 |
||
全国 |
中国地区 |
全国 |
中国地区 |
|
平成30年度 |
832 |
9 |
208 |
10 |
平成29年度 |
1,009 |
7 |
346 |
10 |
平成28年度 |
2,385 |
210 |
581 |
28 |
平成27年度 |
4,344 |
261 |
682 |
71 |
平成26年度 |
8,744 |
482 |
1,263 |
114 |
平成25年度 |
1,326 |
45 |
401 |
7 |
累計 |
18,640 |
1,014 |
3,481 |
240 |
7 移動相談会
事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,管内においては,平成30年度は移動相談会を5回実施した。
表7:移動相談会の実施回数 [単位:回]
|
平成30年度 |
平成29年度 |
平成28年度 |
平成27年度 |
平成26年度 |
平成25年度 |
累計 |
全国 |
50 |
43 |
36 |
52 |
47 |
75 |
303 |
中国地区 |
5 |
6 |
6 |
6 |
6 |
5 |
34 |
第2 転嫁拒否行為の未然防止のための取組
1 公正取引委員会主催説明会
消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,公正取引委員会主催の説明会を実施しており,管内においては,平成30年度は5回実施した。
表8:公正取引委員会主催説明会の実施回数 [単位:回]
|
平成30年度 |
平成29年度 |
平成28年度 |
平成27年度 |
平成26年度 |
平成25年度 |
累計 |
全国 |
50 |
42 |
36 |
51 |
30 |
40 |
249 |
中国地区 |
5 |
6 |
6 |
6 |
2 |
3 |
28 |
2 講師派遣
管内で開催された,商工会議所,商工会及び事業者団体が開催する説明会等に,平成30年度において,公正取引委員会の職員を講師として3回派遣した。
表9:講師の派遣回数 [単位:回]
|
平成30年度 |
平成29年度 |
平成28年度 |
平成27年度 |
平成26年度 |
平成25年度 |
累計 |
全国 |
20 |
15 |
73 |
27 |
59 |
384 |
578 |
中国地区 |
3 |
1 |
2 |
2 |
1 |
15 |
24 |
第3 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出
消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為(転嫁カルテル)及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為(表示カルテル)の届出並びに届出書の記載方法等に関する相談を受け付けているところ,管内においては,平成30年度はいずれもなかった。
なお,平成31年3月末までに,管内において,転嫁カルテル2件,表示カルテル2件の合計4件の届出を受理し,このほか,届出書の記載方法等に関して,12件の相談に対応した。
別紙
主な指導事例
(平成30年4月~平成31年3月)
1 減額(第3条第1号前段)
成型機等の製造業を営むA社は,倉庫保管業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,あらかじめ定めた倉庫保管業務の委託代金から消費税率の引上げ分相当額を減じて支払っていた。
2 買いたたき(第3条第1号後段)
① 書道用品の販売業を営むB社は,書道用品を仕入れている事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの仕入代金を据え置いていた。
② 印刷業を営むC社は,税務顧問業務を委託している個人事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
③ 有線放送業を営むD社は,番組制作業務又は司会業務を委託している個人事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
④ 工業用プラスチック製品の製造業を営むE社は,輸送機器に使用する部品の製造を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後の委託代金について,消費税相当額を上乗せすることなく定めた。
⑤ 魚介類の仲卸業を営むF社は,運送業務を委託している個人事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
⑥ システム開発業を営むG社は,ソフトウェアの営業支援・導入支援業務を委託している個人事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
⑦ 金属加工業を営むH社は,外国人技能実習生受入業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
⑧ 新聞販売業を営むI社は,新聞代金の集金業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
⑨ J森林組合は,森林整備業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
⑩ 医用機器の製造業を営むK社は,従業員の健康管理業務を委託している個人事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
⑪ 食品卸売業を営むL社は,事務所の貸借人(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの賃料を据え置いていた。
関連ファイル
(印刷用)(令和元年6月19日)平成30年度における中国地区の消費税転嫁対策の取組について(PDF:337KB)
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