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公正取引委員会
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(令和元年9月20日)平成30年度公正取引委員会年次報告について

令和元年9月20日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,独占禁止法第44条第1項の規定に基づき,内閣総理大臣を経由して,国会に対し,毎年,独占禁止法等の所管法令の施行の状況を報告しているところ,本日,平成30年度公正取引委員会年次報告書を国会に提出した。その要旨は以下のとおりである。

1 独占禁止法改正等

(1) 令和元年独占禁止法改正

 平成31年3月12日,一律かつ画一的に算定・賦課されている課徴金制度について,事業者による調査協力を促進し,適切な課徴金を課すことができるものとすることなどにより,不当な取引制限等を一層抑止し,公正で自由な競争による我が国経済の活性化と消費者利益の増進を図るための「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」が第198回通常国会に提出された。同法律案は,令和元年5月30日に衆議院において,同年6月19日に参議院においてそれぞれ可決されて成立し,同月26日に公布された(令和元年法律第45号)。この法律は,一部の規定を除き,公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされている。

(2) 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律の成立等

 平成28年2月4日に我が国を含む12か国により署名された環太平洋パートナーシップ協定(以下「TPP協定」という。)の締結に伴い,独占禁止法に,「合意により自主的に解決する」制度である確約手続を導入する必要性が生じたことから,同年3月8日,確約手続の導入を内容とする独占禁止法の一部改正を含む「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案」が第190回通常国会に提出された。同法律案は,継続審議とされた後,同年12月9日,第192回臨時国会において可決・成立し,同月16日に公布された(施行期日は,TPP協定が日本国について効力を生ずる日)。
 その後,米国がTPP協定からの離脱を表明したことを受けて,平成30年3月8日に,米国を除く11か国により署名された環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(以下「TPP11協定」という。)の締結に伴い,「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」(以下「TPP整備法」という。)について,所要の改正を行うため,「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」が同月27日に第196回通常国会に提出された。同法律案は,同年5月24日に衆議院において,同年6月29日に参議院においてそれぞれ可決されて成立した(平成30年法律第70号)。この法律は,一部の規定を除き,公布の日(平成30年7月6日)から施行された。これにより,改正後のTPP整備法(「環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」)は,TPP11協定の発効の日(同年12月30日)に施行された。

(3) TPP整備法の改正に伴う公正取引委員会規則の改正等

 TPP整備法により確約手続が導入されることに伴い制定された「公正取引委員会の確約手続に関する規則」(平成29年公正取引委員会規則第1号),「公正取引委員会の審査に関する規則の一部を改正する規則」(平成29年公正取引委員会規則第2号)及び「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第九条から第十六条までの規定による認可の申請、報告及び届出等に関する規則の一部を改正する規則」(平成29年公正取引委員会規則第3号)について,TPP整備法の改正に伴い,TPP整備法の施行日とされていたこれら委員会規則の施行期日を,改正後のTPP整備法の施行日に改正した(改正後のTPP整備法は平成30年12月30日に施行)。
 また,確約手続の対象や確約手続移行前の手続との関係など,確約手続に関する考え方を可能な限り明確にし,確約手続に係る法運用の透明性及び事業者の予見可能性を確保する観点から,「確約手続に関する対応方針」を策定するとともに,「企業結合審査の手続に関する対応方針」について所要の改定を行った(平成30年9月26日公表。改正後のTPP整備法の施行日である同年12月30日から適用)。

2  厳正・的確な法運用

(1) 独占禁止法違反行為の積極的排除

 公正取引委員会は,迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下,国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整,中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売など,社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に厳正かつ積極的に対処することとしている。

 独占禁止法違反被疑事件として平成30年度に審査を行った事件は143件である。そのうち同年度内に審査を完了したものは120件であった。

 平成30年度においては,8件の排除措置命令を行った。これを行為類型別にみると,価格カルテルが1件,入札談合が3件,受注調整が3件,不公正な取引方法が1件となっている(第1図参照)。また,延べ18名に対し総額2億6111万円の課徴金納付命令を行った(第2図参照)。
 なお,平成30年度においては,課徴金減免制度に基づき事業者が自らの違反行為に係る事実の報告等を行った件数は72件であった。

<平成30年度における法的措置事件>

価格カルテル

○ 近畿地区に店舗を設置する百貨店業者に対する件
入札談合

○ 宮城県大崎市等が発注する建設関連業務の入札参加業者に対する件
○ 宮城県北部土木事務所が発注する建設関連業務の入札等の参加業者に対する件
○ 宮城県北部土木事務所栗原地域事務所が発注する建設関連業務の入札参加業者に対する件

受注調整

○ 全日本空輸㈱が発注する制服の販売業者に対する件
○ ドコモショップユニフォームの見積り合わせの参加業者に対する件(販売業者)
○ ドコモショップユニフォームの見積り合わせの参加業者に対する件(レンタル業者)

取引妨害 ○ ㈱フジタに対する件

 また,平成30年度においては,審査の過程において,事業者から改善措置の申出等を受け,法運用の透明性や事業者の予見可能性を高める観点から,事案の概要を公表したものが3件あった。

<平成30年度における改善措置に関する公表事案>
○ みんなのペットオンライン㈱に対する件
○ Apple Japan(同)及びアップル・インクに対する件
○ エアビーアンドビー・アイルランド・ユー・シー及びAirbnb Japan㈱に対する件

第1図 排除措置命令件数等の推移

(注1)複数の行為類型に係る事件は,主たる行為に即して分類している。
(注2)価格カルテルとその他のカルテルが関係している事件は,価格カルテルに分類している。
(注3)「その他」とは,事業者団体による一定の事業分野における事業者の数の制限等である。

第2図 課徴金額等の推移

 このほか,違反するおそれのある行為に対する警告3件,違反につながるおそれのある行為に対する注意322件(不当廉売事案について迅速処理による注意を行った227件を含む。)を行うなど,適切かつ迅速な法運用に努めた。

 公正取引委員会は,独占禁止法違反行為についての審査の過程において競争政策上必要な措置を講じるべきと判断した事項について,関係官庁等に要請等を行っている。
 平成30年度においては,農林水産省に対して申入れを,宮城県に対して要請を,それぞれ行った。

 平成30年度当初における審判件数は,前年度から繰り越されたもの178件(排除措置命令に係るものが89件,課徴金納付命令に係るものが89件)であった(第3図参照)。平成30年度においては,審判開始を行った事件はなく,平成25年独占禁止法改正法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律〔平成25年法律第100号〕をいう。)による改正前の独占禁止法に基づく審決を15件(排除措置命令に係る審決8件,課徴金納付命令に係る審決7件)行った。この結果,平成30年度末における審判件数(令和元年度に繰り越すもの)は163件となった。

第3図 審判件数の推移

(注)審判件数は,行政処分に対する審判請求ごとに付される事件番号の数である。

(2) 公正な取引慣行の推進

ア 優越的地位の濫用に対する取組
(ア) 公正取引委員会は,以前から,独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する優越的地位の濫用行為が行われないよう監視を行うとともに,独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処している。また,優越的地位の濫用行為に係る審査を効率的かつ効果的に行い,必要な是正措置を講じていくことを目的とした「優越的地位濫用事件タスクフォース」を設置し,審査を行っている。
 平成30年度においては,優越的地位の濫用事件について,違反のおそれがあるとして2件の警告を行ったほか,優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして56件の注意を行った。
(イ) 公正取引委員会は,中小事業者の取引の公正化を図る必要が高い分野について,実態調査等を実施し,優越的地位の濫用規制の普及・啓発等に活用している。
 平成30年度においては,物流特殊指定の遵守状況及び荷主と物流事業者との取引状況を把握するため,荷主3万名及び物流事業者4万名を対象とする書面調査を実施した。当該調査の結果,物流特殊指定に照らして問題となるおそれがあると認められた571名の荷主に対して,物流事業者との取引内容の検証・改善を求める文書を発送した(平成31年3月)。
(ウ) 公正取引委員会は,過去に優越的地位の濫用規制に対する違反がみられた業種,各種の実態調査で問題がみられた業種等の事業者に対して一層の法令遵守を促すことを目的として,業種ごとの実態に即した分かりやすい具体例を用いて説明を行う業種別講習会を実施している。
 平成30年度においては,荷主・物流事業者向けに10回,大規模小売業者向けに7回の講習会を実施した。
(エ) 公正取引委員会は,下請事業者を始めとする中小事業者からの求めに応じ,当委員会事務総局の職員が出向いて,下請法等の内容を分かりやすく説明するとともに相談受付等を行う「中小事業者のための移動相談会」を実施している。
 平成30年度においては,「中小事業者のための移動相談会」を全国27か所で実施した。このほか,事業者団体が開催する優越的地位の濫用規制に係る研修会等に職員を講師として14回派遣した。

イ 不当廉売に対する取組
 公正取引委員会は,小売業における不当廉売について,迅速に処理を行うとともに,大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって,周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについて,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題がみられた事案については,法的措置を採るなど厳正に対処している。
 平成30年度においては,酒類,石油製品等の小売業において,不当廉売につながるおそれがあるとして227件(酒類22件,石油製品194件,その他11件)の注意を行った。

ウ 下請法違反行為の積極的排除等
(ア) 公正取引委員会は,下請事業者からの自発的な情報提供が期待しにくいという下請取引の実態に鑑み,中小企業庁と協力し,親事業者及びこれらと取引している下請事業者を対象として定期的に書面調査を実施するなど違反行為の発見に努めている。また,中小事業者を取り巻く環境は依然として厳しい状況において,中小事業者の自主的な事業活動が阻害されることのないよう,下請法の迅速かつ効果的な運用により,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護に努めている。
 平成30年度においては,親事業者6万名及びこれらと取引している下請事業者30万名を対象に書面調査を行い,書面調査等の結果,下請法に基づき7件の勧告を行い,7,710件の指導を行った(第4図参照)。

<平成30年度における勧告事件>
○ 業務用厨房機器の製造業における下請代金の減額事件
○ 鋼材及び建材の卸売業等における下請代金の減額事件
○ 食料品等の卸売業等における下請代金の減額事件
○ 住宅内装金物,家具金物等の製造業における下請代金の減額事件
○ キャラクター商品の企画,製造販売業等における返品及び不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 婦人服等の製造販売業における下請代金の減額事件
○ 畜肉加工品,弁当,調味料等の製造販売業等における下請代金の減額事件

第4図 下請法の事件処理件数の推移

(注1)勧告を行った事件の中には,製造委託等及び役務委託等との双方において違反行為が認められたものがあるが,本図においては,当該事件の違反行為が主として行われた取引に区分して,件数を計上している。
(注2)このほか,勧告に相当するような自発的な申出事案もある。

(イ) 平成30年度においては,下請事業者が被った不利益について,親事業者321名から,下請事業者1万172名に対し,下請代金の減額分の返還等,総額6億7068万円相当の原状回復が行われた(第5図参照)。このうち,主なものとしては,①下請代金の支払遅延事件において,親事業者は遅延利息等として総額4億2288万円を下請事業者に支払い,②下請代金の減額事件において,親事業者は総額1億8367万円を下請事業者に返還し,③有償支給原材料等の対価の早期決済事件において,親事業者は総額2088万円の負担分を下請事業者に支払い,④返品事件において,親事業者は下請事業者から総額1911万円相当の商品を引き取った。

第5図 原状回復の状況

(ウ) 公正取引委員会は,親事業者の自発的な改善措置が下請事業者が受けた不利益の早期回復に資することに鑑み,当委員会が調査に着手する前に,違反行為を自発的に申し出,かつ,自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については,親事業者の法令遵守を促す観点から,下請事業者の利益を保護するために必要な措置を採ることを勧告するまでの必要はないものとして取り扱うこととし,この旨を公表している(平成20年12月17日公表)。
 平成30年度においては,上記のような親事業者からの違反行為の自発的な申出は73件であった。また,同年度に処理した自発的な申出は71件であった。

(エ) 公正取引委員会は,下請代金の支払遅延,下請代金の減額,買いたたき等の行為が行われることのないよう,平成30年11月27日,約21万名の親事業者及び約1,000の関係事業者団体に対し,下請法の遵守の徹底等について,当委員会委員長及び経済産業大臣連名の文書をもって要請を行った。

エ 消費税転嫁対策に関する取組
(ア) 公正取引委員会は,様々な情報収集活動によって把握した消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)に関する情報を踏まえ,立入検査等の調査を積極的に実施している。これらの調査の結果,転嫁拒否行為が認められた事業者に対しては,転嫁拒否行為に係る不利益の回復等の必要な改善指導を迅速に行っている。
 平成30年度においては,中小企業庁と合同で,中小企業・小規模事業者等(売手側。約280万名)に対する悉皆的(しっかいてき)な書面調査を実施した。また,中小企業庁と合同で,個人事業者(売手側。約350万名)に対する書面調査を実施した。書面調査等の結果,消費税転嫁対策特別措置法に基づき勧告を行ったものは5件,指導を行ったものは295件であった。
(イ) 公正取引委員会は,転嫁拒否行為に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置し,平成30年度においては,493件の相談に対応した。また,事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,平成30年度においては,移動相談会を50回実施した。
(ウ) 公正取引委員会は,転嫁拒否行為を受けた事業者にとって,自らその事実を申し出にくい場合もあると考えられることから,転嫁拒否行為を受けた事業者からの情報提供を受身的に待つだけではなく,中小企業庁と合同で書面調査を実施し,転嫁拒否行為に関する情報収集を積極的に行った。また,様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,平成30年度においては,832名の事業者及び208の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。
(エ) 公正取引委員会は,平成30年度においては,消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為,消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為のいずれも届出はなかったものの,事業者又は事業者団体からの届出書の記載方法等に関する相談に対応した。
(オ) 公正取引委員会は,消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,当委員会主催の説明会を実施している。
 平成30年度においては,50回の説明会を実施した。また,商工会議所,商工会,事業者団体等が開催する説明会等に公正取引委員会事務総局の職員を講師として20回派遣した。

(3) 企業結合審査の充実

 独占禁止法は,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる会社の株式取得・所有,合併等を禁止している。公正取引委員会は,我が国における競争的な市場構造が確保されるよう,迅速かつ的確な企業結合審査に努めている。個別事案の審査に当たっては,必要に応じ,経済分析を積極的に活用している。
 平成30年度においては,独占禁止法第9条から第16条までの規定に基づく企業結合審査に関する業務として,銀行又は保険会社の議決権取得・保有について12件の認可を行い,持株会社等について107件の報告,会社の株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業譲受け等について321件の届出をそれぞれ受理し,必要な審査を行った。

<平成30年度における主な企業結合事案>
○ ㈱ふくおかフィナンシャルグループによる㈱十八銀行の株式取得
○ 王子ホールディングス㈱による三菱製紙㈱の株式取得
○ 新日鐵住金㈱による山陽特殊製鋼㈱の株式取得

3  競争環境の整備

(1) デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備

 近年,ICTやデータを活用して第三者に多種多様なサービスの「場」を提供するデジタル・プラットフォーマーは,革新的なビジネス等を生み出し続けるイノベーションの担い手になっており,その恩恵は事業者の市場アクセスや消費者の便益向上につながるなど,我が国の経済や社会にとって,重要な存在となっている。
 一方,複数の利用者層が存在する多面市場を担うデジタル・プラットフォーマーを巡っては,ネットワーク効果,低廉な限界費用,規模の経済等の特性を通じて拡大し,独占化・寡占化が進みやすいと指摘されており,公正かつ自由な競争を活発に行うことができる環境を整えることが必要である。
 こうした中,平成30年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」において,プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備のために,同年中に基本原則を定め,これに沿った具体的措置を早急に進めるべきものと定められたことを踏まえ,公正取引委員会,経済産業省及び総務省は,競争政策,情報政策,消費者政策等,多様な知見を有する学識経験者等からなる「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」(以下「検討会」という。)を同年7月10日に立ち上げた。検討会において調査・検討を進め,同年11月5日に中間論点整理(案)を公表し,当該案に対して寄せられた意見や検討会において実施した事業者ヒアリングの結果を踏まえ,同年12月12日に中間論点整理を取りまとめるとともに,これを踏まえ,当委員会,経済産業省及び総務省は,プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の基本原則(以下「基本原則」という。)を策定した。
 その後,公正取引委員会,経済産業省及び総務省は,検討会の下に学識経験者や実務家からなる「透明性・公正性確保等に向けたワーキング・グループ」及び「データの移転・開放等の在り方に関するワーキング・グループ」を立ち上げた。各ワーキング・グループにおける検討・整理を踏まえて,平成31年4月24日に開催された検討会において議論がなされ,「取引環境の透明性・公正性確保に向けたルール整備の在り方に関するオプション」及び「データの移転・開放等の在り方に関するオプション」が取りまとめられ,令和元年5月21日に公表した。
 また,公正取引委員会は,基本原則において,「透明性及び公正性を実現するための出発点として,大規模かつ包括的な徹底した調査による取引実態の把握を進める」とされていることなどを踏まえ,「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査」を開始した。当該実態調査の一環として,平成31年1月23日から,当委員会のウェブサイト上に,情報提供窓口を設置し,デジタル・プラットフォーマーについて,競争政策上問題と考えられる取引実態や利用状況に関する情報の収集・把握に努めている。また,①オンラインモール運営事業者の取引実態に関するアンケート調査,②アプリストア運営事業者の取引実態に関するアンケート調査,③デジタル・プラットフォームサービスの利用者(消費者)に対するアンケート調査を実施し,同年4月17日,中間報告を取りまとめ公表した。

(2) 「農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針」の改定

 公正取引委員会は,平成19年4月18日,農業協同組合(農業協同組合連合会及び単位農協をいう。以下同じ。)の活動に関して,独占禁止法上問題となる行為を明らかにすることにより,農業協同組合による独占禁止法違反行為を未然に防止するとともに,農業分野における公正かつ自由な競争の促進に役立てるため,「農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針」(以下「農協ガイドライン」という。)を策定・公表し,これまで4回にわたり,引用する法令等の改正に伴う技術的な改定を行ってきた。
 今般,公正取引委員会は,近時,事件処理がなされた農業協同組合関係の審査事件を踏まえ,改定前の農協ガイドラインには掲載されていない問題行為についての独占禁止法上の考え方等を追加し,平成30年12月27日に公表した。

(3) 「地方公共団体職員のための競争政策・独占禁止法ハンドブック」の作成・公表

 公正取引委員会は,地方公共団体を含む行政機関が実施する行政指導に対する独占禁止法上の考え方について,「行政指導に関する独占禁止法上の考え方」(平成6年6月30日公表)を策定したほか,地方公共団体の活動に係る独占禁止法上及び競争政策上の問題の有無についての相談にも対応してきており,その中から地方公共団体等の施策立案の参考になると考えられる事例を「地方公共団体からの相談事例集」(平成19年6月20日公表。以下「平成19年相談事例集」という。)として取りまとめ,公表している。これらを通じて,当委員会は,地方公共団体の活動における独占禁止法上及び競争政策上の考え方を明らかにしてきている。
 平成19年相談事例集の公表から約10年が経過したが,この間も,独占禁止法のコンプライアンス意識の社会的な高まりなどもあり,地方公共団体からの公正取引委員会に対する相談は引き続き寄せられている。
 そこで,平成19年相談事例集公表後10年間の事例の蓄積も踏まえ,独占禁止法及び競争政策に関する地方公共団体の理解を一層深めるため,今般,「地方公共団体職員のための競争政策・独占禁止法ハンドブック」を作成し,平成31年3月18日に公表した。

(4) 「適正な電力取引についての指針」の改定

 公正取引委員会は,通商産業省(現経済産業省)と共同して,電力市場における公正かつ有効な競争の観点から,独占禁止法上又は電気事業法上問題となる行為等を明らかにした「適正な電力取引についての指針」を平成11年12月に作成・公表している。
 令和元年7月に旧一般電気事業者等が保有するベースロード電源を投入し,新電力が年間固定価格で電気を調達するベースロード市場が創設されること等に伴い,同年5月30日に本指針を改定した。

(5) 携帯電話市場における競争政策上の課題について(平成30年度調査)

 公正取引委員会は,平成28年8月2日に「携帯電話市場における競争政策上の課題について」を公表した。しかし,国民の消費支出における移動系通信費の割合は増加傾向にあること,携帯電話市場の競争が依然として十分ではない状況にあると考えられることから,フォローアップを含めた調査を行い,平成30年6月28日,「携帯電話市場における競争政策上の課題について(平成30年度調査)」を取りまとめ,公表した。

(6) 消費者向けeコマースの取引実態に関する調査

 近年,我が国における消費者向けeコマースの市場規模は急速に拡大しており,また,新たなオンラインモール運営業者も出現するなど,市場環境は大きく変貌を遂げてきていると考えられる。このようなeコマースの発展は,小売市場における競争を促進し,消費者利益の増大をもたらしていると考えられる一方で,事業者が競争事業者や取引先事業者の行動を把握しやすくなることにより,競争制限的な行為が行われやすくなることも懸念されるところである。
 公正取引委員会は,このような問題意識を踏まえ,メーカーと流通業者との間の取引条件,メーカーや流通業者のウェブサイトでの販売方法,オンラインモールでの取引状況といった消費者向けeコマースに関する取引慣行全般や消費者の消費行動に関する取引実態調査報告書を取りまとめ,平成31年1月29日に公表した。

(7) クレジットカードに関する取引実態調査

 現在,我が国におけるキャッシュレス決済額の大半はクレジットカードによるものであり,また,クレジットカードによる決済額は増加傾向にある。「未来投資戦略2017」(平成29年6月9日閣議決定)及び「未来投資戦略2018」(平成30年6月15日閣議決定)では,「今後10年間(2027年6月まで)に,キャッシュレス決済比率を倍増し,4割程度とすることを目指す。」とされており,クレジットカードによる決済額は今後も増えていくことが予想される。
 公正取引委員会は,このような状況を踏まえ,クレジットカードに関する取引における独占禁止法又は競争政策上問題となるおそれのある取引慣行等の有無を明らかにするため,クレジットカードに関する取引実態調査報告書を取りまとめ,平成31年3月13日に公表した。

(8) 人材獲得競争に関する取組

 公正取引委員会は,競争政策研究センター(CPRC)において「人材と競争政策に関する検討会」を開催し,個人が個人として働きやすい環境を実現するために,人材の獲得を巡る競争に対する独占禁止法の適用関係及び適用の考え方を理論的に整理するための検討を行い,平成30年2月15日,「人材と競争政策に関する検討会」報告書を公表した。
 それ以降,公正取引委員会では,人材の獲得を巡る競争が独占禁止法の適用対象となり得ることなどについて関係団体に対する周知活動を行うとともに,独占禁止法上問題となり得る具体的行為や慣行が存在するかどうかについて実態把握に努めている。こうした取組の過程において,スポーツ事業分野では,スポーツ統括団体が移籍制限ルールを定めている事例があることが認められたため,平成30年12月21日,スポーツ事業分野における移籍制限ルールの実態について広く情報提供を呼びかけるとともに,ヒアリング等を通じて実態把握を行い,令和元年6月17日,「スポーツ事業分野における移籍制限ルールに関する独占禁止法上の考え方について」を公表した。

(9) 競争評価に関する取組

 平成19年10月以降,各府省が規制の新設又は改廃を行おうとする場合,原則として,規制の事前評価の実施が義務付けられ,規制の事前評価において,競争状況への影響の把握・分析(以下「競争評価」という。)についても行うこととされ,平成22年4月から試行的に実施されてきた。平成29年7月28日,「規制の政策評価の実施に関するガイドライン」が改正され,同年10月1日に施行されたことに伴い,競争評価が同日から本格的に実施されることとなった。規制の事前評価における競争評価において,各府省は,競争評価チェックリストを作成し,規制の事前評価書の提出と併せて総務省に提出し,総務省は,受領した競争評価チェックリストを公正取引委員会へ送付することとされている。
 公正取引委員会は,平成30年度においては,総務省から競争評価チェックリストを96件受領し,その内容を精査した。

(10) 入札談合の防止への取組

 公正取引委員会は,入札談合の防止を徹底するためには,発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から,地方公共団体等の調達担当者等に対する独占禁止法や入札談合等関与行為防止法の研修会を開催するとともに,国,地方公共団体等が実施する調達担当者等に対する同様の研修会への講師の派遣及び資料の提供等の協力を行っている。
 平成30年度においては,研修会を全国で34回開催するとともに,国,地方公共団体等に対して299件の講師の派遣を行った。
 また,公正取引委員会は,発注機関の職員が入札談合等に関与した事件が依然として多くみられる現状を踏まえ,発注機関におけるコンプライアンスの向上に資することを目的として,発注機関(2,018機関)に対し官製談合防止に向けた取組について調査を実施し,その結果を取りまとめた報告書「官製談合防止に向けた発注機関の取組に関する実態調査報告書」を平成30年6月13日に公表した。

4  競争政策の運営基盤の強化

(1) 競争政策に関する理論的・実証的な基盤の整備

 競争政策研究センターは,平成15年6月の発足以降,独占禁止法等の執行や競争政策の企画・立案・評価を行う上での理論的・実証的な基礎を強化するための活動を展開している。平成30年度においては,国際シンポジウムを3回開催したほか,業務提携に関する検討会を開催した。

○ 「業務提携に関する検討会」
 我が国は,近年,デジタルエコノミーやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)化の進展,急速な高齢化や人口減少・労働力減少,市場縮小といった大きな社会経済環境の変化に直面している。こうした環境の変化に対応するため,各事業者は,事業効率化やイノベーション達成といった様々な課題に取り組んでおり,その際,迅速な事業遂行やコスト低減といった利点から,事業戦略上の手法の一つとして「業務提携」が広く活用されている。
 こうした状況に鑑み,業務提携に関する既存の考え方や現行の運用実務について整理し,また,現下の社会経済環境の変化を踏まえた新しい課題を含め,新たな関連諸課題等に係る有識者の知見に基づき,業務提携に関する独占禁止法上の考え方に関して分析・研究を行い,令和元年7月10日,「業務提携に関する検討会」報告書を公表した。

(2) 経済のグローバル化への対応

 近年,複数の国・地域の競争法に抵触する事案,複数の国・地域の競争当局が同時に審査を行う必要のある事案等が増加するなど,競争当局間の協力・連携の強化の必要性が高まっている。このような状況を踏まえ,公正取引委員会は,二国間独占禁止協力協定,経済連携協定等に基づき,関係国の競争当局と連携して執行活動を行うなど,外国の競争当局との間で緊密な協力を行っている。
 また,公正取引委員会は,国際競争ネットワーク(ICN),経済協力開発機構(OECD),アジア太平洋経済協力(APEC),国連貿易開発会議(UNCTAD),東アジア競争政策トップ会合(EATOP)等といった多国間会議にも積極的に参加している。
 さらに,発展途上国において,既存の競争法制を強化する動きや,新たに競争法制を導入する動きが活発になっていることを受け,公正取引委員会は,これら諸国の競争当局等に対し,当委員会事務総局の職員の派遣や研修の実施等による技術支援活動を行っている。
 このほか,我が国の競争政策の状況を広く海外に発信することにより公正取引委員会の国際的なプレゼンスを向上させるため,英文ウェブサイトに掲載する報道発表資料の一層の充実,海外の弁護士会等が主催するセミナー等へのスピーカーの派遣等を行っている。
 平成30年度においては,主に以下の事項に取り組んだ。

ア 競争当局間における連携強化
 公正取引委員会は,二国間独占禁止協力協定等に基づき,関係国の競争当局に対し執行活動等に関する通報を行うなど,外国の競争当局との間で緊密な協力を行っている。平成30年度においては,日EC独占禁止協力協定の改正や外国の競争当局との覚書等の署名に向けた交渉を行った。

イ 競争当局間協議
 公正取引委員会は,我が国と経済的交流が特に活発な国・地域の競争当局等との間で競争政策に関する協議を定期的に行っている。

ウ 経済連携協定への取組
 我が国は,中国・韓国,トルコ等との間で経済連携協定等の締結交渉を行い,また,東アジア地域包括的経済連携(RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership)の締結交渉を行ってきた。
 公正取引委員会は,経済連携協定等において競争政策を重要な要素と位置付け,競争分野における協力枠組みに係る条項等を盛り込む方向で交渉に参加している。

エ 多国間会議への参加
 国際競争ネットワーク(ICN)においては,その設立以来,ICNの活動全体を管理する運営委員会のメンバーを公正取引委員会委員長が務めている。また,当委員会は,平成23年5月から平成26年4月までカルテル作業部会の共同議長を,平成26年4月から平成29年5月まで同作業部会サブグループ(SG1)の共同議長を務め,平成29年5月からは企業結合作業部会の共同議長を務めている。加えて,平成30年11月,当委員会は「2020年代の企業結合審査:デジタル化・グローバル化は企業結合審査を変えるか?」をテーマとした企業結合ワークショップを東京において主催した。そのほか,当委員会主導の下で設立された「(カルテル執行に係る)非秘密情報の交換を促進するためのフレームワーク」及び「企業結合審査に係る国際協力のためのフレームワーク」を運用するなど各作業部会の取組に積極的に参画している。
 また,公正取引委員会は,経済協力開発機構(OECD)に設けられている競争委員会の各会合に参加し,ラウンドテーブル討議において我が国の経験を紹介するなどして,議論への貢献を行っているほか,オーストラリアにおいて東アジア競争政策トップ会合及び東アジア競争法・政策カンファレンスを共催した。
 さらに,令和元年のG7サミットの議長国であるフランスから,「競争とデジタル経済」をG7サミットにおいて取り扱うテーマの1つとすることが提案された。公正取引委員会を含むG7各国の競争当局は,フランス競争当局を通じ,デジタル経済により生じる競争上の課題に関する共通理解を取りまとめるようフランスより要請されたところ,継続的に議論を行い,同年6月,「競争とデジタル経済」に関するG7競争当局の共通理解について合意した。

オ 技術支援
 公正取引委員会は,東アジア地域等の発展途上国の競争当局等に対し,当委員会事務総局の職員の派遣や研修の実施等の技術支援活動を行っている。平成30年度においては,独立行政法人国際協力機構(JICA)の枠組みを通じて,インドネシア,モンゴル及びケニアに対して技術支援を行ったほか,競争法制を導入しようとする国や既存の競争法制の強化を図ろうとする国の競争当局等の職員を我が国に招へいし,競争法・政策に関する研修を実施した。
 また,日・ASEAN統合基金(JAIF)を活用した技術支援として,ASEAN加盟国の競争当局の職員等27名を我が国に招へいし,競争法・政策に関する研修を実施したほか,インドネシア及びシンガポールにおいて開催された現地ワークショップに当委員会事務総局の職員及び学識経験者を派遣するなどした。

(3) 競争政策の普及啓発に関する広報・広聴活動

 競争政策に関する意見・要望等を聴取して施策の実施の参考とし,併せて競争政策への理解の促進に資するため,独占禁止政策協力委員から意見聴取を行った。
 また,経済社会の変化に即応して競争政策を有効かつ適切に推進するため,公正取引委員会が広く有識者と意見を交換し,併せて競争政策の一層の理解を求めることを目的として,独占禁止懇話会を開催しており,平成30年度においては,3回開催した。
 さらに,全国9都市において,公正取引委員会委員等と各地の有識者との懇談会を,また,全国各地区において,地方事務所長等の当委員会事務総局の職員と各地区の有識者との懇談会を,全国4都市において,当委員会委員等による弁護士会に対する懇談会等を,それぞれ開催した。
 前記以外の活動として,本局及び地方事務所等の所在地以外の都市における独占禁止法等の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため,「一日公正取引委員会」を開催するとともに,一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動を紹介する「消費者セミナー」を開催した。
 加えて,中学校,高等学校及び大学(短期大学等を含む。)に職員を講師として派遣し,経済活動における競争の役割等について授業を行う独占禁止法教室(出前授業)の開催など,学校教育等を通じた競争政策の普及啓発に努めた。

<平成30年度における主な取組>
○ 独占禁止政策協力委員150名に対する意見聴取の実施
○ 独占禁止懇話会の開催(3回)
○ 地方有識者との懇談会の開催(北海道釧路市,盛岡市,水戸市,津市,福井市,山口市,徳島市,大分市及び那覇市)
○ その他の地方有識者との懇談会の開催(78回)
○ 弁護士会に対する懇談会等の開催(6回)
○ 一日公正取引委員会の開催(北海道釧路市,山形市,長野市,石川県白山市,福井市,鳥取市,高知市及び鹿児島市)
○ 消費者セミナーの開催(83回)
○ 独占禁止法教室の開催(中学生向け61回,高校生向け54回,大学生等向け121回)

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電話 03-3581-3574(直通)
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