令和4年3月30日
公正取引委員会
公正取引委員会は,独立行政法人地域医療機能推進機構(以下「JCHO」という。)が発注する医薬品(注1)の入札参加業者に対し,本日,独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
本件は,JCHOが発注する医薬品の入札参加業者が,独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。
(注1)「医薬品」とは,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条において定義されている医薬品をいう。
1 違反事業者,排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者,課徴金額等
番 号 |
違反事業者 (法人番号) |
本店の所在地 | 代表者 | 排除措置 命令 |
課徴金額 | 課徴金減免 制度の適用 |
|
平成28 年入札 医薬品 (注2) |
平成30 年入札 医薬品 (注3) |
||||||
1 | アルフレッサ株式会社※ (3010001027880) |
東京都千代田区内神田一丁目12番1号 | 代表取締役 福神 雄介 |
○ | 1億7562万円 | 30% | 30% |
2 | 東邦薬品株式会社※ (5010901023507) |
東京都世田谷区代沢五丁目2番1号 | 代表取締役 馬田 明 |
○ | 1億6189万円 | 30% | 30% |
3 | 株式会社スズケン※ (1180001017009) |
名古屋市東区東片端町8番地 | 代表取締役 宮田 浩美 |
○ | 8634万円 | 50% | 30% |
4 | 株式会社メディセオ (5010001087238) |
東京都中央区八重洲二丁目7番15号 | 代表取締役 長福 恭弘 |
- | - | 免除 | 免除 |
合計 | 3社 | 4億2385万円 |
(注2)「平成28年入札医薬品」とは,JCHOが平成28年に「独立行政法人地域医療機能推進機構57病院における医薬品単価購入契約」の件名により実施した一般競争入札の調達内容である医薬品をいう。
(注3)「平成30年入札医薬品」とは,JCHOが平成30年に「独立行政法人地域医療機能推進機構57病院における医薬品単価購入契約」の件名により実施した一般競争入札の調達内容である医薬品をいう。
(注4)違反事業者名については,以下「株式会社」を省略する。
(注5)表中の「○」は,排除措置命令の対象事業者であることを示している。
(注6)表中の「※」を付した事業者は,後記2記載の違反行為に係る事件と同一の事件について不当な取引制限の罪により罰金の刑に処せられ,同裁判が確定していることから,独占禁止法第7条の7第1項の規定に基づき,当該罰金額の2分の1に相当する金額を控除した額を課徴金額としている。
(注7)表中の「-」は,排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならない違反事業者であることを示している。
2 違反行為の概要(詳細は 別添排除措置命令書参照)
⑴ 平成28年入札医薬品に係る違反行為
アルフレッサ,東邦薬品,スズケン及びメディセオの4社(以下「4社」という。)は,平成28年6月8日以降,東京都千代田区所在の貸会議室において,部長級,課長級等の営業担当者による会合を開催して,平成28年入札医薬品のうち「藤本製薬」の医薬品を除く医薬品について,受注価格の低落防止等を図るため,
ア(ア) 4社それぞれの受注予定比率を設定し,同比率に合うよう平成28年入札医薬品を医薬品の製造販売業者等で区分した医薬品群ごとに受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(イ) 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
イ(ア) 既存の取引(入札が行われる時点での卸売業者とJCHO57病院(注8)間における単価購入契約をいう。以下同じ。)等を勘案し,前記受注予定比率に合うよう医薬品群ごとに受注予定者を決定する
(イ) 受注予定者が提示する入札価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者等が連絡した価格以上の入札価格を提示する
などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
これにより,4社は,公共の利益に反して,平成28年入札医薬品の取引分野における競争を実質的に制限していた。
⑵ 平成30年入札医薬品に係る違反行為
4社は,平成30年6月1日以降,東京都千代田区所在の貸会議室において,部長級,課長級等の営業担当者による会合を開催して,平成30年入札医薬品について,受注価格の低落防止等を図るため,
ア(ア) 4社それぞれの受注予定比率を設定し,同比率に合うよう平成30年入札医薬品を医薬品の製造販売業者で区分した医薬品群ごとに受注予定者を決定する
(イ) 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
イ(ア) 既存の取引及び医薬品群の薬価総額等を勘案し,前記受注予定比率に合うよう医薬品群ごとに受注予定者を決定する
(イ) 受注予定者が提示する入札価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者が連絡した価格以上の入札価格を提示する
などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
これにより,4社は,公共の利益に反して,平成30年入札医薬品の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(注8)「JCHO57病院」とは,JCHOが運営する全国の57病院をいう。
3 排除措置命令の概要
⑴ アルフレッサ,東邦薬品及びスズケンの3社(以下「3社」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
ア 3社は,前記2⑴及び⑵の合意が消滅していることを確認すること。
イ 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,JCHO又はJCHOが運営する病院が購入する医薬品について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行うこと。
ウ 今後,JCHO又はJCHOが運営する病院が購入する医薬品に係る予定価格の設定のために参考とされる見積価格(以下「参考見積価格」という。)をJCHOに提示するに当たり,相互に,又は他の事業者と,参考見積価格に関する情報交換を行わないこと(注9)。
⑵ 3社は,それぞれ,前項に基づいて採った措置を,自社を除く2社,JCHO及びJCHOが運営する病院に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
⑶ 3社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,JCHO又はJCHOが運営する病院が購入する医薬品について,受注予定者を決定してはならない。
⑷ 3社は,今後,JCHO又はJCHOが運営する病院が購入する医薬品に係る参考見積価格をJCHOに提示するに当たり,それぞれ,相互に,又は他の事業者と,参考見積価格に関する情報交換を行ってはならない。
⑸ 3社のうち東邦薬品は,次のア及びイの事項を行うために必要な措置を,スズケンは,次のイの事項を行うために必要な措置を,それぞれ,講じなければならない。
ア JCHO又はJCHOが運営する病院が購入する医薬品の受注に関する独占禁止法の遵守についての法務担当者による定期的な監査
イ 独占禁止法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成
(注9)4社は,JCHOから,平成28年入札医薬品及び平成30年入札医薬品に係る参考見積価格の提示を求められた際に,予定価格の低落防止を図るため,JCHOに対して提示する参考見積価格を確認し合っていた。
4 課徴金納付命令の概要
3社は,令和4年10月31日までに,それぞれ前記1の「課徴金額」欄記載の額(合計4億2385万円)を支払わなければならない。
関連ファイル
(印刷用)(令和4年3月30日)独立行政法人地域医療機能推進機構が発注する医薬品の入札参加業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について
(令和4年3月30日)参考3-4(参照条文及び課徴金制度の概要)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局審査局第一審査
電話 03-3581-4960(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/