令和5年4月6日
公正取引委員会
公正取引委員会は、株式会社ダイコク(以下「ダイコク」という。)に対し、独占禁止法の規定に基づき審査を行ってきたところ、同社の後記3の行為が独占禁止法第19条(同法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用))の規定に違反する疑いが認められた。公正取引委員会は、当該行為について、確約手続に付すことで、ダイコクによって当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置が速やかに実施されることにより、競争の早期回復が図られると認め、令和5年2月24日、同法第48条の6の規定に基づき、同社に対し確約手続に係る通知を行った。
今般、ダイコクから、公正取引委員会に対し、同法第48条の7第1項の規定に基づき、後記3の行為が排除されたことを確保するために必要な措置の実施に関する確約計画の認定を求める申請があった。公正取引委員会は、当該確約計画は当該行為が排除されたことを確保するために十分なものであり、かつ、その内容が確実に実施されると見込まれるものであると認め、本日、同法第48条の7第3項の規定に基づき、当該確約計画を認定した(注1)(注2)。
なお、本認定は、公正取引委員会がダイコクの後記3の行為が独占禁止法の規定に違反することを認定したものではない。
(注1)確約計画の認定は、確約手続に係る通知を受けた事業者から申請された確約計画を公正取引委員会が認定するという、独占禁止法に基づく行政処分である。
(注2)公正取引委員会は、認定した確約計画に従って確約計画が実施されていないなどの場合には、独占禁止法第48条の9第1項の規定により当該認定を取り消し、確約手続に係る通知を行う前の調査を再開することとなる。
1 申請者の概要
法人番号 | 4120001083078 |
名称 | 株式会社ダイコク |
所在地 | 大阪市中央区道頓堀二丁目2番1号 |
代表者 | 代表取締役 新川 友寛 |
2 ダイコクと納入業者との取引等
⑴ ダイコクは、近畿地方を中心に全国において「ダイコクドラッグ」と称するドラッグストア(以下「店舗(注3)」という。)を展開し、医薬品、日用雑貨、化粧品、食品等を販売している。
⑵ ダイコクは、インバウンド需要をターゲットとした店舗展開を行うことで売上高を伸ばし、令和元年時点において、全国に約180店舗を展開し、近畿地方のいわゆるドラッグストア市場において売上高が上位の事業者であった。
⑶ 令和2年3月頃以降、新型コロナウイルス感染症の流行によるインバウンド需要の減少の影響を受け、ダイコクは多くの店舗を閉店したため、膨大な量の在庫を抱えることとなった。
⑷ ダイコクと納入業者(注4)との取引は買取取引である。
⑸ 納入業者の中には、ダイコクに対する取引依存度が大きい者、インバウンド需要の回復を期待してダイコクとの取引継続を望む者、他の事業者との取引開始又は取引拡大によりダイコクとの取引と同等の売上高を確保することは困難であると述べる者などがいた。
(注3)ダイコクの店舗のほか、ダイコクの子会社等の店舗を含む。令和4年12月時点のダイコク及びダイコクの子会社等の店舗数は95店舗である。
(注4)「納入業者」とは、店舗で販売する商品をダイコクに直接販売して納入する事業者のうち、ダイコクと継続的な取引関係にあるものをいう。
3 違反被疑行為の概要
ダイコクは、遅くとも令和2年3月頃以降、令和4年4月頃までの間、納入業者に対して、次の行為を行っていた。
⑴ 返品
①新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受けて売れ残った商品等(以下「売れ残り商品等」という。)について当該売れ残り商品等を納入した納入業者の責めに帰すべき事由がなく、かつ、②当該売れ残り商品等の購入に当たって当該納入業者との合意により返品の条件を明確に定めることなく、かつ、③あらかじめ当該納入業者の同意を得ることなく又は当該納入業者の同意を得た場合であっても、当該売れ残り商品等の返品によって当該納入業者に通常生ずべき損失を負担することなく、かつ、④当該納入業者から当該売れ残り商品等の返品を受けたい旨の申出がないにもかかわらず、当該売れ残り商品等を返品していた(注5)。
⑵ 従業員等の派遣の要請
ア 閉店等に際し、これらを実施する店舗等において、売れ残り商品等の返品に係る作業を行わせるため、あらかじめ納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく、かつ、派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく、当該納入業者の従業員等を派遣させていた(注5)。
イ 新規開店又は改装に際し、これらを実施する店舗において、納入業者が納入する商品以外の商品を含む当該店舗の商品の陳列等の作業を行わせるため、あらかじめ当該納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく、かつ、派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく、当該納入業者の従業員等を派遣させていた。
(注5)ダイコクは、納入業者に対して、閉店店舗において返品に係る作業を行わせるため当該納入業者の従業員等を派遣させて当該納入業者が納入した商品を返品していたほか、自社の物流センター及び営業を継続する店舗においても返品に係る作業を行わせるため当該納入業者の従業員等を派遣させて当該納入業者が納入した商品を返品していた。
4 独占禁止法上の考え方
⑴ 前記3⑴及び⑵アの行為は、新型コロナウイルス感染症の流行によるインバウンド需要の減少の影響を受けたことを理由としたものである。
買取取引において、取引上の地位が納入業者に優越している事業者が、当該納入業者に対して、当該納入業者の責めに帰すべき事由がない場合に商品を返品すること、又は当該納入業者の従業員等を派遣させて本来自らが行うべき役務を行わせることは、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受けたものであったとしても、優越的地位の濫用として問題となるものと考えられる。
⑵ 前記3⑴の行為の中には、納入業者の同意を得た上で行われたものもある。
買取取引において、取引上の地位が納入業者に優越している事業者が、返品によって当該納入業者に通常生ずべき損失を負担しない場合は、あらかじめ当該納入業者の同意を得ていたとしても、優越的地位の濫用として問題となるものと考えられる。
5 確約計画の概要
⑴ 次の事項を取締役会で決議すること。
ア 前記3の行為を取りやめていることを確認すること。
イ 前記3の行為と同様の行為を行わないこととし、この措置を今後3年間実施すること。
⑵ 前記⑴に基づいて採った措置を、納入業者に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底すること。
⑶ 前記3の行為に関する納入業者における金銭的価値を回復すること。
⑷ 前記3の行為と同様の行為を行わないこととし、この措置を今後3年間実施すること。
⑸ 次の事項を行うために必要な措置を講じること。
ア 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成及び自社の従業員に対する周知徹底
イ 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての自社の役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査
ウ 独占禁止法違反行為に関与した自社の役員及び従業員に対する処分に関する規程の作成
エ 独占禁止法違反行為に係る通報を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成
オ 独占禁止法違反行為に係る通報制度の納入業者及び自社の従業員に対する周知
カ 法務・コンプライアンスに係る担当の取締役の新設
⑹ 前記⑴、⑵、⑶及び⑸の措置の履行状況を公正取引委員会に報告すること。
⑺ 前記⑷の措置及び⑸イに基づいて講じた措置の履行状況を、今後3年間、毎年、公正取引委員会に報告すること。
6 確約計画の認定
公正取引委員会は、次のとおり、前記5の確約計画が独占禁止法に規定する認定要件のいずれにも適合すると認め、当該確約計画を認定した。
なお、当該確約計画が実施されることにより、前記5⑶の金銭的価値の回復については、現時点において、納入業者のうち約80社に対し、総額約7億5000万円と見込まれる。
⑴ 措置内容の十分性
ア 前記5の確約計画に記載の措置の内容は、近時の排除措置命令で独占禁止法第19条(同法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用))の規定に違反すると認定された事案における排除措置の内容を全て含んでいる。
イ また、前記5⑶の金銭的価値の回復措置は、納入業者にとっては違反被疑行為により被った不利益に係る被害救済の効果があるものであるとともに、違反被疑行為の再発防止につながるものである。
ウ 以上を踏まえれば、本件においては、前記5の確約計画に記載の措置の内容は、措置内容の十分性を満たすと判断した。
⑵ 措置実施の確実性
ダイコクは、前記5の確約計画において措置の内容ごとに実施期限を設けていること、また、当該措置の履行状況の報告を行うこととしていることから、前記5の確約計画は実施期限内に確実に実施されると判断した。
関連ファイル
(令和5年4月6日)株式会社ダイコクから申請があった確約計画の認定について(131KB)
(令和5年4月6日)参考1-2(過去の事例及び参照条文)(103KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局審査局第二審査
電話 03-3581-3384(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/