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(令和5年6月27日)令和4年度における中部地区の独占禁止法の運用状況等について

(令和5年6月27日)令和4年度における中部地区の独占禁止法の運用状況等について

令和5年6月27日
公正取引委員会事務総局
中部事務所

第1 独占禁止法違反事件等の処理状況

1

  公正取引委員会は、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などに厳正かつ積極的に対処することとしている。また、IT・デジタル関連分野や農業・漁業分野における独占禁止法違反被疑行為など、社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に取り組んでいる。
 そして、公正取引委員会は、一般から提供された情報(申告)、自ら探知した事実等を検討し、必要な審査を行い、審査の結果、違反行為が認められたときは、違反行為をした事業者等に対し、違反行為を排除するために必要な措置等を命じている。違反行為のうち、価格カルテル・入札談合・受注調整、優越的地位の濫用等については、違反行為をした事業者に対して課徴金の納付を命じている。また、違反被疑行為について公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認められるときは、確約手続を適用し、事業者と協調的な問題解決を図っている。

2 最近の独占禁止法違反事件等の処理状況(不当廉売事案で迅速処理したもの及び優越的地位の濫用事案で注意したものを除く。)

 最近の5年間における中部地区の独占禁止法違反事件等の処理状況は、次のとおりである。

独占禁止法違反事件等の処理件数(注1) (単位:件)
処理内容/年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
審査件数 前年度からの繰越し 0 1
1 1 1
年度内新規着手 15 2 3 3 5
合計 15 3 4 4 6
処理件数 法的措置(注2) 排除措置命令等 0 1
0
0 1
その他 警告(注3) 0
0 0 0 0
注意(注4) 13 1
3
3 3
打切り(注5) 1
0
0 0 1
小計 14 1 3 3 4
合計 14
2
3
3 5
次年度への繰越し 1
1 1 1 1

(注1)「法的措置」とは、排除措置命令、課徴金納付命令及び確約計画の認定であり、一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共になされている場合には、法的措置件数を1件としている。
(注2)「警告」とは、排除措置命令を採るに足る証拠が得られないが、違反の疑いがある場合に行う措置である。
(注3)「注意」とは、違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが、将来違反につながるおそれがある場合に行う措置である。
(注4)「打切り」とは、違反行為が認められない等により、審査を打ち切る場合をいう。

3 独占禁止法違反事件等の概要

(1)入札談合

 愛知県又は岐阜県に所在する病院が発注する医事業務(注)の入札等の参加業者に対する件(令和4年10月17日 排除措置命令及び課徴金納付命令)
  (注) 「医事業務」とは、病院における患者の受付業務、療養の給付に関する費用の計算業務、会計業務、療養の給付に関する費用の保険者への請求業務をいう。

 愛知県又は岐阜県に所在する病院発注の特定医事業務の入札等の参加業者2社は、遅くとも平成27年3月9日以降、既存の取引の維持及び受注価格の低落防止を図るため
   ア(ア) 入札等において、2社が競合することが見込まれる状況となった場合に、受注予定者を決定する
       (イ) 受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する旨の合意の下に
   イ(ア) 現契約者を受注予定者とする
    (イ) 受注予定者が提示する入札価格等は、受注予定者が定める
    (ウ) 受注予定者以外の者は、入札等に参加しない若しくは入札等を辞退する又は受注予定者が定めた入札価格等よりも高い入札価格等を提示する
ことにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。

(2)優越的地位の濫用

 公正取引委員会は、優越的地位の濫用に係る情報に接した場合には、効率的かつ効果的な調査を行い、独占禁止法違反につながるおそれのある行為が認められた場合には、未然防止の観点から注意するほか、独占禁止法違反が認められた場合は厳正に対処することとしている。
 令和4年度においては、中部地区で5件の注意を行ったところ、その主な事例は以下のとおりである(注)

(注) 次の各事例は、記載された行為が行われていた疑いがあり、独占禁止法違反につながるおそれがあったものである。

ア  冠婚葬祭業を営むAは、取引先事業者に対し、発注担当者から、お節料理、年越しそば、クリスマスケーキ等の季節商品の購入を要請していた。

イ  ホームセンターを営むBは、納入業者に対し、返品条件をあらかじめ定めていないにもかかわらず、販売期間が終了した季節商品について、返品によって納入業者に通常生ずべき損失を負担することなく返品していた。

ウ  宿泊業を営むCは、取引先事業者に対し、月締めの支払代金が20万円を超える際、代金の65パーセントをあらかじめ定めた支払期日に支払い、残りの代金は翌月以降の支払として、あらかじめ定めた支払期日までに代金を支払っていなかった。

(3)不当廉売

 不当廉売は、総販売原価を著しく下回る価格で継続して販売するほか、不当に低い価格で販売することにより、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれのある行為であり、独占禁止法第19条で禁止されるものである。申告のあった小売業に係る不当廉売事案については、迅速に処理するとの方針の下で対処しているほか、大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって、周辺の販売事業者に対する影響が大きいと考えられるものについて、周辺の販売事業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い、問題のみられる事案については厳正に対処することとしている。
 迅速に処理するとの上記方針の下、令和4年度においては、酒類及び石油製品の小売業について、不当廉売につながるおそれがあるとして中部地区で41件の注意を行った。

(4)その他

 次の各事例は、記載された行為が行われていた疑いがあり、独占禁止法違反につながるおそれがあったため、注意を行った。

ア  D中学校の制服等の販売業者で構成する任意団体Eは、構成事業者が販売するD中学校制服の販売価格を決定していた(事業者団体による価格決定)。

イ  水産食料品製造業を営む事業者を組合員とする任意団体Fは、構成事業者が仕入れた水産食料品の原料について、販売する数量及び販売する相手方を制限していた(事業者団体による数量及び取引先の制限)。

ウ  化粧品等の製造業を営む事業者Gは、自社が販売する消費者向け化粧品について、直接又は卸売業者を通じて小売業者に対し、自社が設定する希望小売価格で販売するよう要請していた(再販売価格の拘束)。

第2 企業結合関係届出及び協同組合届出の状況

1 企業結合関係届出

 独占禁止法では第4章において、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等の禁止(第9条)及び銀行業又は保険業を営む会社の議決権取得・保有の制限(第11条)について規定しているほか、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による場合の会社等の株式取得・所有、役員兼任、合併、分割、共同株式移転及び事業譲受け等の禁止並びに一定の条件を満たす企業結合についての届出義務(第10条及び第13条から第16条まで)を規定している。
 公正取引委員会は、これらの規定に従い、企業結合審査を行っている。
 最近5年間における中部地区の企業結合関係届出の状況は、次のとおりである。

企業結合関係届出受理件数 (単位:件)
  平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
株式取得届出受理 9
4
5
4
7
合併届出受理 0 3
1
0
0
分割届出受理 2
1
0
2
0
共同株式移転届出受理 1
0
0 0 0
事業譲受け等届出受理 0 2
1
0 2
合計 12
10 7
6
9

2 協同組合届出

 中小企業等協同組合法は、同法に基づき設立された事業協同組合及び信用協同組合に対し、同法第7条第1項第1号に規定する小規模事業者以外の事業者が加入したとき又は組合員が同小規模事業者でなくなったときには、その旨を公正取引委員会に届け出ることを義務付けている(同法第7条第3項)。
 最近5年間における中部地区の協同組合届出件数は、次のとおりである。

中小企業等協同組合法第7条第3項に基づく届出件数 (単位:件)
平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
41 46 26 27 19

第3 広報・広聴活動

 公正取引委員会は、独占禁止法等の普及・啓発及び競争政策の運営に資するため、次のような広報・広聴活動を行っている。

1 独占禁止政策協力委員制度

 競争政策への理解の促進と地域の経済社会の実情に即した政策運営に資するため、独占禁止政策協力委員制度を設置しており、公正取引委員会が行う広報活動等に御協力いただくとともに、独占禁止法等の運用や競争政策の運営等について意見聴取を行っている。
 令和4年度においては、(1)公正取引委員会に対する期待、(2)地域経済の実情と競争政策上の課題、(3)中小企業の取引適正化/優越的地位の濫用規制・下請法の規制、(4)経済のデジタル化の進展と競争政策の役割、(5)競争環境の整備に係る調査・提言などについての意見聴取をそれぞれ行った(注)

(注) 聴取した意見の概要は、他の地区のものと合わせて令和5年5月24日に公表されている。

2 有識者との懇談会

 各地の有識者と公正取引委員会の委員等との懇談会及び講演会を通して、競争政策についてより一層の理解を求めるとともに、幅広く意見及び要望を把握し、今後の競争政策の有効かつ適切な推進を図るため、毎年、全国各地において有識者との懇談会を開催している。
 中部地区では、令和4年度は金沢市において、金沢商工会議所、石川県商工会連合会、報道機関、学識経験者等の金沢市の有識者と公正取引委員会委員との懇談会を実施し、同時に「公正取引委員会の役割と社会経済の変化に対応した競争政策」をテーマに講演会を開催した。
 このほか、中部事務所長等と各地の有識者との懇談会を開催しており、令和4年度は名古屋市(3か所)、岐阜市、津市(2か所)、三重県四日市市(2か所)、静岡市(3か所)、金沢市(2か所)、富山市(2か所)及び富山県高岡市の計16か所において開催した。

3 独占禁止法説明会等

 公正取引委員会は、独占禁止法等の違反行為の未然防止を図るため、説明会・講習会等を自ら主催しているほか、各種業界団体等から要請を受けて講習会等へ講師を派遣している。令和4年度は、新型コロナウイルス感染症対策として、ウェブ会議による説明会等も実施した。
 中部地区では、令和4年度は独占禁止法に関する説明会等を10回実施した。また、入札談合等関与行為防止法に関する研修会等を43回実施したほか、インボイス制度への対応に係る独占禁止法等において問題となり得る行為についての説明会を10回実施した。

4 独占禁止法教室(出前授業)

 将来を担う中学生、高校生、大学生等を対象に、市場経済の仕組みや競争の機能について説明するなどし、競争の必要性・重要性、独占禁止法の役割等について理解してもらうことを目的として、公正取引委員会の職員による「独占禁止法教室」を開催している。和4年度は、新型コロナウイルス感染症対策として、公正取引委員会の職員による講義の様子をあらかじめ収録したデータの提供も行った。
 中部地区では、令和4年度は中学生向け独占禁止法教室を2回、高校生向け独占禁止法教室を4回、大学生向け独占禁止法教室を29回それぞれ開催した。

5 消費者セミナー

 一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動等について、より一層理解を深めてもらうことを目的として、地域の一般消費者を対象としたセミナーを開催しているほか、公正取引委員会の職員を消費者団体等の勉強会や大学の講義に派遣している。
 令和4年度は、新型コロナウイルス感染症対策として、ウェブ会議による消費者セミナーも実施した。
 中部地区では、令和4年度は名古屋市(9か所)、愛知県一宮市、愛知県岡崎市、愛知県尾張旭市、愛知県東海市、岐阜市(2か所)、岐阜県各務原市、岐阜県関市、津市、三重県鈴鹿市、静岡市及び富山県高岡市に所在する団体等に対して、消費者セミナーを21回実施した。

6 一日公正取引委員会

 本局及び地方事務所等の所在地以外の都市において、独占禁止法及び下請法の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため、独占禁止法説明会、下請法説明会、消費者セミナー、入札談合等関与行為防止法研修会、独占禁止法教室及び相談・展示コーナーを1か所の会場で開催する「一日公正取引委員会」を開催している。
 中部地区では、令和4年度は富山県高岡市において、12月8日に一日公正取引委員会を開催した。

7 相談業務

(1) 相談受付件数

 公正取引委員会は、法運用に対する理解を深め、違反行為の未然防止を図るため、相談を受け付けている。
 最近5年間における中部地区の相談受付件数は次のとおりである。

相談受付件数 (単位:件)
  平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
独占禁止法 422 456 520 426 699
下請法 966 904 1,028 1,229 1,540
合計 1,388 1,360 1,548 1,655 2,239

関連ファイル

ファイルダウンロード 新規ウインドウで開きます。(印刷用)(令和5年6月27日)令和4年度における中部地区の独占禁止法の運用状況等についてpdfダウンロード(155 KB)

問い合わせ先

第1に関する問い合わせ先
公正取引委員会事務総局中部事務所第一審査課
電話 052-961-9425(直通)

第2に関する問い合わせ先
公正取引委員会事務総局中部事務所経済取引指導官
電話 052-961-9422(直通)

第3に関する問い合わせ先
公正取引委員会事務総局中部事務所総務課
電話 052-961-9421(直通)

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