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(令和6年6月18日)令和5年度公正取引委員会年次報告について

(令和6年6月18日)令和5年度公正取引委員会年次報告について

令和6年6月18日
公正取引委員会

 公正取引委員会は、独占禁止法第44条第1項の規定に基づき、内閣総理大臣を経由して、国会に対し、毎年、独占禁止法等の所管法令の施行の状況を報告しているところ、本日、令和5年度公正取引委員会年次報告書を国会に提出した。その要旨は以下のとおりである。

1  独占禁止法制等の動き

⑴ フリーランス・事業者間取引適正化等法の制定等

 我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずることにより、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」が、令和5年2月24日、第211回通常国会に提出された。同法律案は、同年4月6日に衆議院において可決され、同月28日に参議院において可決され、成立し、同年5月12日に公布された(令和5年法律第25号)。

 フリーランス・事業者間取引適正化等法は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされているところ、公正取引委員会は、「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」を開催するなど、同法に係る政令及び公正取引委員会規則等の制定等に向けて検討作業を行っている。

⑵ その他所管法令の改正

 公正取引委員会は、フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行に伴う執行体制の強化等のため、事務総局の官房に置かれる審議官を一人増員すること等を内容とする公正取引委員会事務総局組織令(昭和27年政令第373号)の改正を行い(令和6年政令第84号。令和6年3月29日公布、同年4月1日施行)、また、事務総局の経済取引局取引部取引企画課にフリーランス取引適正化室を新設すること等を内容とする公正取引委員会事務総局組織規則(昭和53年総理府令第10号)の改正を行った(令和6年内閣府令第39号。令和6年3月29日公布、同年4月1日施行)。

⑶ スマートフォンにおいて利用される特定のソフトウェアに係る競争の促進に関する法制度の検討

 内閣に設置されたデジタル市場競争本部の下、デジタル市場に関する重要事項の調査審議等を実施するため、デジタル市場競争会議が開催されている。同会議は、内閣官房長官が議長を務め、公正取引委員会に関する事務を担当する内閣府特命担当大臣、公正取引委員会委員長も構成員となっている。

 令和5年6月16日に開催された第7回デジタル市場競争会議では、「モバイル・エコシステムに関する競争評価 最終報告」が取りまとめられ、同日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」では、当該「最終報告を踏まえ、欧州・米国など諸外国の状況を見極めつつ、デジタル市場における公正・公平な競争環境の確保のために必要な法制度について検討する」こととされた。公正取引委員会は、内閣官房と連携しながら、諸外国における情勢を踏まえつつ、スマートフォンにおいて利用される特定のソフトウェアに係る競争の促進に関する法制度について検討を進めた。

2  厳正・的確な法運用(エンフォースメント)

⑴ 独占禁止法違反行為の積極的排除

 公正取引委員会は、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル、入札談合及び受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用及び不当廉売など、社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に厳正かつ積極的に対処することとしている。

 独占禁止法違反被疑事件として令和5年度に審査を行った事件は152件である。そのうち同年度内に審査を完了したものは131件であった。

 令和5年度においては、排除措置命令4件及び確約計画の認定5件の計9件の法的措置を行った。これを行為類型別にみると、価格カルテルが1件、入札談合が2件、受注調整が1件、不公正な取引方法が5件となっている(第1図参照)。また、延べ16名に対し総額2億2340万円の課徴金納付命令を行った(表)。

 なお、令和5年度においては、課徴金減免制度に基づき事業者が自らの違反行為に係る事実の報告等を行った件数は156件であった。

<令和5年度における排除措置命令事件>

価格カルテル

○ 木工用ドリルの製造販売業者に対する件

入札談合

○ 高知県が発注する地質調査業務の入札参加業者に対する件
○ 独立行政法人国立印刷局が発注する再生巻取用紙の入札参加業者らに対する件

受注調整

○ 東邦瓦斯供給区域に所在する大口需要家が発注する都市ガスの見積り合わせ等の参加業者に対する件

<令和5年度における確約計画の認定事案>

優越的地位の濫用

○ ㈱ダイコクに対する件
○ ㈱東京インテリア家具に対する件

排他条件付取引又は拘束条件付取引

○ 福岡有明海漁業協同組合連合会に対する件

拘束条件付取引

○ TOHOシネマズ㈱に対する件
○ ㈱IBJに対する件

 加えて、令和5年度においては、警告を行った事案が3件、注意・公表を行った事案が2件、事業者から自発的な措置の報告を受け、事案の概要を公表した事案が1件あった。

<令和5年度における警告事案>
○ 三愛リテールサービス㈱に対する件
○ 中部電力ミライズ㈱及び東邦瓦斯㈱に対する件【家庭用の都市ガス等及びFIT制度による電気の買取期間満了後の電気の買取り】
○ 中部電力ミライズ㈱及び㈱シーエナジーに対する件【LNGの供給】

<令和5年度における注意・公表事案>
○ みずほ証券㈱に対する件
○ ㈱ロジックに対する件

<令和5年度における自発的な措置に関する公表事案>
○ オーケー㈱による納入業者に対する競合店対抗値下げ補填の要請への対応について

(前記ウ及びエの事案の処理の類型別件数について第2図参照)

第1図 法的措置(注1)件数等の推移

第1図

(注1)法的措置とは、排除措置命令、課徴金納付命令及び確約計画の認定のことである。一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共に行われている場合には、法的措置件数を1件としている。
(注2)私的独占と不公正な取引方法のいずれも関係法条となっている事件は、私的独占に分類している。
(注3)「その他のカルテル」とは、数量、販路、顧客移動禁止、設備制限等のカルテルである。

 

第2図 排除措置命令、確約計画の認定、警告等の件数の推移

第2図

(注)事案の概要を公表したものに限る。 

表 課徴金額等の推移

表

(注)課徴金額については、千万円未満切捨て。

 このほか、違反につながるおそれのある行為に対する注意411件(不当廉売事案について迅速処理による注意を行った317件を含む。)を行うなど、適切かつ迅速な法運用に努めた。

 公正取引委員会は、独占禁止法違反行為の審査の過程において競争政策上必要な措置を講ずべきと判断した事項について、事業者団体等に申入れ等を行っている。
 令和5年度においては、電力・ガス取引監視等委員会に対して情報提供を行った。

⑵ 公正な取引慣行の推進

ア 優越的地位の濫用に対する取組

 公正取引委員会は、独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する優越的地位の濫用行為が行われないよう監視を行うとともに、独占禁止法に違反する行為には厳正に対処している。また、優越的地位の濫用行為に係る調査を効率的かつ効果的に行い、必要な是正措置を講じていくことを目的とした「優越的地位濫用事件タスクフォース」を設置し、調査を行っている。
 令和5年度においては、優越的地位の濫用事件について、優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして67件の注意を行った。

イ 不当廉売に対する取組

 公正取引委員会は、小売業における不当廉売について、迅速に処理を行うとともに、大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって、周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについて、周辺の販売業者の事業活動への影響等を個別に調査し、問題がみられた事案については、法的措置を採るなど厳正に対処している。
 令和5年度においては、石油製品の小売業において、不当廉売に当たるおそれがあるとして1件の警告を行ったほか、酒類、石油製品等の小売業において、不当廉売につながるおそれがあるとして317件(酒類29件、石油製品233件、その他55件)の注意を行った。

ウ 下請法違反行為の積極的排除等

(ア) 公正取引委員会は、下請事業者からの自発的な情報提供が期待しにくいという下請取引の実態に鑑み、中小企業庁と協力し、親事業者及びこれらと取引している下請事業者を対象として定期的な調査を実施するなど、下請法違反行為の発見に努めている。また、中小事業者を取り巻く環境が依然として厳しい状況において、中小事業者の自主的な事業活動が阻害されることのないよう、下請法の迅速かつ効果的な運用により、下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護に努めている。
 令和5年度においては、親事業者8万名及びこれらと取引している下請事業者33万名を対象に定期調査を行い、定期調査等の結果、下請法に基づき13件の勧告を行うとともに、8,268件の指導を行った(第3図参照)。

<令和5年度における勧告事件>

○ 家庭電気製品の販売業における下請代金の減額事件
○ パワー半導体製品の販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 菓子等の製造販売業における下請代金の減額及び返品事件
○ 自動車部品の製造販売業における下請代金の減額事件
○ 紙パルプ加工品等の製造販売業における不当な給付内容の変更及び不当なやり直し事件
○ 一般貨物自動車運送、貨物利用運送業における購入・利用強制事件
○ 自動車空調システム等の製造販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 自動車等の製造販売業における下請代金の減額事件
○ 食料品等の販売業における下請代金の減額及び返品事件
○ 中古自動車の販売業における買いたたき、購入・利用強制及び不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 消費者等に販売する婦人服等の製造業における下請代金の減額事件
○ 産業用モータの製造販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件

第3図 下請法の事件処理件数の推移

第3図①

(注)自発的な申出事案については後記(ウ)参照。

 

第3図②

(イ) 令和5年度においては、下請事業者が被った不利益について、親事業者174名から下請事業者6,122名に対し、下請代金の減額分の返還等、総額37億2789万円相当の原状回復が行われた(第4図参照)。このうち、主なものとしては、①下請代金の減額事件において、親事業者は総額33億2274万円を下請事業者に返還し、②下請代金の支払遅延事件において、親事業者は遅延利息等として総額2億4795万円を下請事業者に支払い、③返品事件において、親事業者は総額6968万円相当の商品を下請事業者から引き取り、④不当な経済上の利益の提供要請事件において、親事業者は総額4770万円の利益提供分を下請事業者に返還した。

第4図 原状回復の状況

第4図

(ウ) 公正取引委員会は、親事業者の自発的な改善措置が下請事業者の受けた不利益の早期回復に資することに鑑み、当委員会が調査に着手する前に、違反行為を自発的に申し出、かつ、自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については、親事業者の法令遵守を促す観点から、下請事業者の利益を保護するために必要な措置を採ることを勧告するまでの必要はないものとして取り扱うこととし、この旨を公表している(平成20年12月17日公表)。
 令和5年度においては、前記のような親事業者からの違反行為の自発的な申出は39件であった。また、同年度に処理した自発的な申出は39件であった。

エ 適切な価格転嫁の実現に向けた取組

(ア) 独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査の実施等
公正取引委員会は、令和4年に実施した独占禁止法上の優越的地位の濫用に関する緊急調査の結果等を踏まえ、11万名を超える事業者に対して「独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(以下「令和5年特別調査」という。)を行い、協議を経ない取引価格の据置き等が確認された8,175名に対し、注意喚起文書を送付したことなども含め、令和5年12月27日、結果を取りまとめ、公表した。
 また、令和5年11月8日に公表した「価格転嫁円滑化に関する調査の結果を踏まえた事業者名の公表に係る方針について」に基づき、令和5年特別調査において、取引価格が据え置かれており事業活動への影響が大きい取引先として受注者から多く名前が挙がった発注者に対して、同年11月以降、その旨を説明し、事業者名の公表があり得る旨を予告した上で、立入調査、独占禁止法第40条に基づく報告命令等による個別調査を実施した。
 個別調査の結果、相当数の取引先について協議を経ない取引価格の据置き等が確認された事業者10名については、令和6年3月15日、独占禁止法第43条の規定に基づき、その事業者名を公表した。
(イ) 「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」に関する取組
 公正取引委員会は、令和5年特別調査を踏まえて、発注者と受注者それぞれが採るべき行動/求められる行動を12の行動指針として取りまとめ、令和5年11月29日、内閣官房とともに「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を策定、公表した。

オ 消費税転嫁対策に関する取組

 公正取引委員会は、様々な情報収集活動によって把握した情報を踏まえ、立入検査等の調査を積極的に行い、令和5年度においては、消費税転嫁対策特別措置法に基づき2件の指導を行った。また、総額1257万円の原状回復が行われた。
 なお、消費税転嫁対策特別措置法は、令和3年3月31日をもって失効したが、同法附則第2条第2項の規定に基づき、失効前に行われた違反行為に対する調査、指導、勧告等の規定については、失効後もなお効力を有するとされていることから、失効前に行われた転嫁拒否行為には、引き続き迅速かつ的確に対処していくこととしている。

⑶ 企業結合審査の充実

 独占禁止法は、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる会社の株式取得・所有、合併等を禁止している。公正取引委員会は、我が国における競争的な市場構造が確保されるよう、迅速かつ的確な企業結合審査に努めている。また、個別事案の審査に当たっては、経済分析を積極的に活用している。
 令和5年度においては、独占禁止法第9条から第16条までの規定に基づく企業結合審査に関する業務として、銀行又は保険会社の議決権取得・保有について20件の認可を行い、持株会社等について121件の報告、会社の株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業譲受け等について345件の届出をそれぞれ受理し、必要な審査を行った。
 また、公正取引委員会は、令和6年1月に㈱大韓航空によるアシアナ航空㈱の株式取得に関する審査結果について公表したほか、令和5年12月にアドビ・インク及びフィグマ・インクの統合に関する審査の終了について、令和6年1月にアマゾン・ドット・コム・インク及びアイロボット・コーポレーションの統合に関する審査の終了について、それぞれ公表した。

3  競争環境の整備(アドボカシー(唱導))

⑴ ガイドラインの改定等

 公正取引委員会は、事業者及び事業者団体による独占禁止法違反行為の未然防止とその適切な活動に役立てるため、事業者及び事業者団体の活動の中でどのような行為が実際に独占禁止法違反となるのかを具体的に示したガイドラインを策定するなどしている。

<令和5年度における主なガイドラインの改定等>

○ 「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」の改定
○ 「適正な電力取引についての指針」の改定
○ 「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方(改定案)」に対する意見公募手続の実施

⑵ 実態調査

 公正取引委員会は、様々な実態調査を積極的に行っており、実態調査において把握した事実等に基づき、独占禁止法上又は競争政策上の問題点や論点を指摘して、事業者や事業者団体による取引慣行の自主的な改善を促すことや、制度所管官庁による規制や制度の見直し等を提言することを通じ、競争環境の整備を図っている。

<令和5年度における主な実態調査>

○ 高速道路における電気自動車(EV)充電サービスに関する実態調査
○ ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査
○ 使用済みペットボトルのリサイクルに係る取引に関する実態調査
○ 電力分野における実態調査(卸分野)
○ コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査

⑶ イノベーションと競争政策に関する検討会

 イノベーションを促進し得る競争環境を確保することは、競争政策における重要かつ現代的な政策課題であり、将来起こり得るイノベーションという長期的な競争環境に対する影響を適切に評価していくことが重要である。公正取引委員会は、このような認識の下、それら実態に係るより深い理解や知見を得るため、企業行動等がイノベーションに与える影響メカニズム等について、経済学的知見等に基づき理論的・体系的に整理することを目的として、令和5年3月以降、「イノベーションと競争政策に関する検討会」を開催し、同年6月30日に、経済学的知見等に基づき、各種の企業行動等がイノベーションに与える影響メカニズム等について理論的・体系的な整理を取りまとめた中間報告書を公表した。
  また、中間報告書において、本整理の実務での活用を仮定した場合、現行独占禁止法体系・制度や運用解釈など法律面・実務面との関係で、法的取扱いを含めた基本的な捉え方・着眼点等を更に整理・検討する必要があるとされたことを踏まえ、イノベーションの問題について、独占禁止法の適用に際しての法的枠組み上の基本的な考え方等について更なる整理・検討を行うため、令和5年10月27日から同検討会を再開した。

⑷ 競争評価に関する取組

 各府省が規制の新設又は改廃を行おうとする場合、原則として、規制の事前評価の実施が義務付けられ、競争状況への影響の把握・分析(以下「競争評価」という。)も行うこととされている。規制の事前評価における競争評価において、各府省は、競争評価チェックリストを作成し、規制の事前評価書の提出と併せて総務省に提出し、総務省は、受領した競争評価チェックリストを公正取引委員会へ送付することとされている。
 公正取引委員会は、令和5年度においては、総務省から競争評価チェックリストを139件受領し、その内容を精査した。また、各府省における競争評価のより適切な実施の促進を目的として、競争評価の手法の改善等を検討するため、経済学や規制の政策評価の知見を有する有識者による競争評価検討会議を同年度において1回開催した。

⑸ 入札談合の防止への取組

 公正取引委員会は、入札談合の防止を徹底するためには発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から、地方公共団体等の調達担当者等に対する独占禁止法や入札談合等関与行為防止法の研修会を開催するとともに、国、地方公共団体等が実施する調達担当者等に対する同様の研修会への講師の派遣及び資料の提供等の協力を行っている。
 令和5年度においては、研修会を全国で43回開催するとともに、国、地方公共団体等に対して264件の講師の派遣を行った。

⑹ 独占禁止法コンプライアンスの向上に向けた取組

 公正取引委員会は、これまで実施してきた独占禁止法コンプライアンスに関する調査結果や各国・地域競争当局等における同様の取組を踏まえ、主にカルテル・談合に関して、個々の企業が実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムを整備・運用する上で参考となるベストプラクティスを整理した、「実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド-カルテル・談合への対応を中心として-」を作成し、令和5年12月21日に公表した。

⑺ 相談対応

 公正取引委員会は、事業者、事業者団体、一般消費者等から寄せられる独占禁止法及び関係法令に関する質問に対して、文書又は口頭により回答している。

4 競争政策の運営基盤の強化

⑴ 競争政策に関する理論的・実証的な基盤の整備

 競争政策研究センターは、平成15年6月の発足以降、独占禁止法等の執行並びに競争政策の企画・立案及び評価を行う上での理論的・実証的な基礎を強化するための活動を展開している。
 令和5年度においては、シンポジウムを2回開催したほか、公開セミナーを1回開催した。

⑵ 競争政策・法執行における経済分析の活用

 公正取引委員会は、独占禁止法違反被疑事件審査、企業結合審査、各種実態調査等において、経済分析の活用を図っている。

 令和5年度に結果を公表した独占禁止法違反被疑事件審査、企業結合審査、各種実態調査等のうち、経済分析を活用し、かつ、その内容を公表したものは、次のとおりである。

<企業結合審査>

○ 古河電池㈱による三洋電機㈱のニカド電池事業の譲受けについて
○ ㈱大韓航空によるアシアナ航空㈱の株式取得に関する審査結果について

<各種実態調査>

○ ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書について
○ 使用済みペットボトルのリサイクルに係る取引に関する実態調査について
○ コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査報告書について

<事後評価>

○ 学校制服の取引実態に関する事後検証報告書について

⑶ 経済のグローバル化への対応

ア 競争当局間における連携強化

 公正取引委員会は、二国間独占禁止協力協定等に基づき、関係国の競争当局に対し、執行活動等に関する通報を行うなど、外国の競争当局との間で緊密な協力を行っている。また、我が国と経済的交流が特に活発な国・地域の競争当局との間で競争政策に関する協議を行っている。

イ 経済連携協定等への取組

 公正取引委員会は、経済連携協定等が市場における競争を一層促進するものとなることが重要であるという観点から、我が国の経済連携協定等の締結に関する取組に参画している。令和5年度においては、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の締結交渉等に参加した。

ウ 多国間会議への参加

 国際競争ネットワーク(ICN)においては、その設立以来、公正取引委員会委員長が、ICNの活動全体を管理する運営委員会のメンバーを務めている。また、公正取引委員会は、令和2年5月から令和5年10月まで単独行為作業部会の共同議長を務め、同月からはアドボカシー作業部会の共同議長代行を務めている。
 令和5年度においては、アドボカシー作業部会にて、世界銀行との共催で、各競争当局のアドボカシー活動の成功例に関する2023年アドボカシーコンテストが開催されたところ、「競争政策を通じた気候変動課題の解決支援」をテーマとするカテゴリにおいて、公正取引委員会の応募事例である「包括的な競争政策上の取組を通じたGX支援」が、最も優れた取組に選定されて優勝した。
 また、経済協力開発機構(OECD)に設けられている競争委員会の各会合に、公正取引委員会委員等が参加した。
 さらに、公正取引委員会は、令和5年11月、東京において、内閣官房デジタル市場競争本部事務局と連携して、G7の競争当局及び政策立案者のトップ等が出席する「G7エンフォーサーズ及びポリシーメイカーズサミット」を開催した。同サミットでは、公正取引委員会委員長が議長を務めるとともに、G7の競争当局等が「デジタル競争コミュニケ」を採択した。
 このほか、公正取引委員会は、東アジア競争政策トップ会合、アジア太平洋経済協力(APEC)及び国連貿易開発会議(UNCTAD)の会合にも積極的に参加した。

エ 技術支援

 公正取引委員会は、東アジア地域等の開発途上国の競争当局等に対し、当委員会事務総局の職員の派遣や研修の実施等の競争法・政策分野における技術支援活動を行っている。
 令和5年度においては、独立行政法人国際協力機構(JICA)の枠組みを通じて、タイ及びマレーシアに対して技術支援を行ったほか、競争法制を導入しようとする国や既存の競争法制の強化を図ろうとする国の競争当局の職員等に対し、競争法・政策に関する研修を実施した。

⑷ 競争政策の普及啓発に関する広報・広聴活動

 競争政策に関する意見、要望等を聴取して施策の実施の参考とし、併せて競争政策への理解の促進に資するため、独占禁止政策協力委員から意見聴取を行った。
 また、経済社会の変化に即応して競争政策を有効かつ適切に推進するため、公正取引委員会が広く有識者と意見を交換し、併せて競争政策の一層の理解を求めることを目的として、独占禁止懇話会を開催しているところ、令和5年度においては、同懇話会を3回開催した。
 さらに、経済団体や消費者団体との意見交換会、公正取引委員会委員等と各地の有識者との懇談会(全国8都市)、地方事務所長等の当委員会事務総局の職員と各地区の有識者との懇談会(全国各地区)及び弁護士会との懇談会(全国各地区)との意見交換会をそれぞれ開催した。また、現場の事業者の声に耳を傾ける広聴という観点から、委員や事務総長が事業者の工場等を訪問し懇談する取組を行った。
 前記以外の活動として、本局及び地方事務所等の所在地以外の都市における独占禁止法等の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため、一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動を紹介する「消費者セミナー」を開催した。
 加えて、中学校、高等学校及び大学(大学院等を含む。)に職員を講師として派遣し、経済活動における競争の役割等について授業を行う独占禁止法教室(出前授業)の開催など、学校教育等を通じた競争政策の普及啓発に努めた。

<令和5年度における主な取組>(注)

○ 独占禁止政策協力委員に対する意見聴取の実施(148件)
○ 独占禁止懇話会の開催(3回)
○ 経済団体との意見交換会の実施(6回)
○ 消費者団体との意見交換会の実施(10団体)
○ 地方有識者との懇談会の開催(北海道釧路市、福島市、千葉市、静岡市、神戸市、山口県下関市、松山市及び佐賀市)
○ その他の地方有識者との懇談会の開催(94回)
○ 弁護士会との懇談会の開催(17回)
○ 事業者の工場等への訪問及び懇談会(16回)
○ 消費者セミナーの開催(88回)
○ 独占禁止法教室の開催(中学生向け54回、高校生向け36回、大学生等向け143回)

(注)対面形式のほか、ウェブ会議等の非対面形式も活用してそれぞれ開催した。

関連ファイル

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問い合わせ先

公正取引委員会事務総局官房総務課
電話 03-3581-3574(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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