令和7年6月6日
公正取引委員会
第1 実態調査開始の経緯
近年、急速な発展を遂げている生成AIは、事業者の生産性の向上や多様なサービスの提供等、経済・社会に様々な便益をもたらし、また、新たなイノベーションを生み出すポテンシャルがあると考えられていることから、更なる発展が期待されている。
その一方で、生成AIには、著作権も含む知的財産権等の侵害への懸念や偽・誤情報などの社会を混乱させるリスク、サイバー攻撃等にAIが使用される安全保障上のリスクなど、様々なリスク等が指摘されており、その中には、競争政策上の観点からの潜在的なリスクに関する指摘もある。
このため、公正取引委員会は、我が国の生成AI関連市場における公正かつ自由な競争環境を維持し、生成AIの持続的な進展を確保することにより、更なるイノベーションを生み出す観点から、また、生成AIを健全な形で経済社会に実装する観点も踏まえ、生成AI関連市場の実態を把握するための調査を開始することとし、令和6年10月、関係各方面から広く情報・意見を募集するため、ディスカッションペーパー「生成AIを巡る競争」(以下「前回ペーパー」という。)を公表した 。同調査は、現状の生成AI関連市場の流動的な状況を踏まえ、従来の実態調査よりも迅速かつ柔軟な方法で進めることとした。
前回ペーパーでは、生成AI関連市場の市場構造を3つのレイヤーに整理し、レイヤーごとの概観を、前回ペーパー公表時点で把握していた限りにおいて示すとともに、今後の議論に資することを目的として独占禁止法・競争政策上の論点を示した上で、項目ごとに情報・意見の募集のための設問を設定した。
第2 情報・意見を募集した結果等を踏まえた報告書の公表
前回ペーパーにおいて情報・意見を募集した結果、寄せられた情報・意見の数は712件に上り、そのうち個人事業者や一般消費者等からの意見が大部分を占めているが、国内外のモデル開発事業者など様々な事業者、事業者団体からも、生成AI関連市場の実態等に関する情報・意見が多数寄せられた。
また、国内外の事業者や有識者、関係省庁、海外当局等約50者にヒアリングを行い、様々な情報・意見を収集した。
公正取引委員会は、これらの情報・意見の募集やヒアリング等により収集した情報等の傾向を分析し、主要な情報・意見の厳選等を行い、従来の報告書よりも要点を絞った形で本報告書を取りまとめた。
第3 調査結果
報告書本体、別紙及び概要参照
第4 今後の取組
1 本報告書で指摘した独占禁止法上問題となる行為、論点として挙げているが具体的な問題を指摘していない行為や論点として挙げていない行為も含め、独占禁止法上問題となる具体的な案件に接した場合には、引き続き厳正・的確に対処していく。
2 生成AI関連市場において懸念される弊害については、必要に応じて関係省庁とも緊密な連携・協力を積極的に行いながら、公正な競争環境の確保を図っていく。
3 今後とも様々なレベルで各国・地域の競争当局との意見交換を行い、ICN(国際競争ネットワーク)、OECD(経済協力開発機構)等の場も活用しながら、海外関係当局と継続的に連携し、競争環境の整備を図っていく。
4 公正取引委員会ウェブサイトにおいて、今回新たに生成AIに関する情報募集フォームを開設するなど、引き続き広く情報・意見を募集し、引き続き実態調査を継続する。
公正取引委員会は、「生成AI関連市場における独占禁止法・競争政策に関する事項についての情報提供窓口」 を通じて、生成AI関連市場における独占禁止法・競争政策に関する情報の提供を引き続き受け付けておりますので、今後とも、事業者等の皆様におかれましては、本報告書で指摘した点を含め、幅広い情報提供をお願い申し上げます。 |
関連ファイル






問い合わせ先
公正取引委員会事務総局総務課デジタル市場企画調査室 実態調査担当
電話 03-3581-3377(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/