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(令和7年6月13日)令和6年度公正取引委員会年次報告について

(令和7年6月13日)令和6年度公正取引委員会年次報告について

令和7年6月13日
公正取引委員会

 公正取引委員会は、独占禁止法第44条第1項の規定に基づき、内閣総理大臣を経由して、国会に対し、毎年、独占禁止法等の所管法令の施行の状況を報告しているところ、本日、令和6年度公正取引委員会年次報告書を国会に提出した。その要旨は以下のとおりである。

1  独占禁止法制等の動き

⑴ フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行等

 令和5年4月28日、第211回通常国会において可決・成立し、同年5月12日に公布されたフリーランス・事業者間取引適正化等法は、令和6年11月1日に施行された。

 令和6年5月31日、フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行に伴い必要となる「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」(令和6年政令第200号)が制定され、同日、公正取引委員会は「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」(令和6年公正取引委員会規則第3号)を制定した。 

⑵ スマホソフトウェア競争促進法の制定等

 我が国においてスマートフォンが国民生活及び経済活動の基盤としての役割を果たしていることに鑑み、スマートフォンの利用に特に必要な特定ソフトウェアの提供等を行う事業者に対し、特定ソフトウェアの提供等を行う事業者としての立場を利用して自ら提供する商品又は役務を競争上優位にすること及び特定ソフトウェアを利用する事業者の事業活動に不利益を及ぼすことの禁止等について定めることにより、特定ソフトウェアに係る公正かつ自由な競争の促進を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律案」が、令和6年4月26日、第213回通常国会に提出された。同法律案は、同年5月23日に衆議院において可決され、同年6月12日に参議院において可決され、成立し、同月19日に公布された(令和6年法律第58号)。

 スマホソフトウェア競争促進法は、規制対象事業者の指定に関連する規定等を除き、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされている。規制対象事業者の指定に関連する規定については、公布の日から起算して6月を経過した日である令和6年12月19日に施行された。

 令和6年12月13日、規制対象事業者の指定に関連する規定の施行に伴い必要となる「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律第三条第一項の事業の規模を定める政令」(令和6年政令第376号)が制定され、同日、公正取引委員会は「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律施行規則」(令和6年公正取引委員会規則第5号)を制定した。

 令和7年3月26日、公正取引委員会は、スマホソフトウェア競争促進法第3条第1項の規定に基づき、Apple Inc.、iTunes㈱及びGoogle LLC を規制対象事業者として指定した。

 公正取引委員会は、スマホソフトウェア競争促進法の全面施行に向けて、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する検討会」を開催するなどして、関係政令及び公正取引委員会規則の整備を進めている。

⑶ 下請法改正法案の国会提出

 近年の急激な労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を受け、発注者・受注者の対等な関係に基づき、事業者間における価格転嫁及び取引の適正化を図るため、下請法について、協議を適切に行わない代金額の決定の禁止、手形による代金の支払等の禁止、規制の対象となる取引への運送委託の追加等の措置を講ずること等を内容とする「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」が、令和7年3月11日、第217回通常国会に提出された。

2  厳正・的確な法運用(エンフォースメント)

⑴ 独占禁止法違反行為の積極的排除

 公正取引委員会は、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル、入札談合及び受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用及び不当廉売など、社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に厳正かつ積極的に対処することとしている。

 独占禁止法違反被疑事件として令和6年度に審査を行った事件は124件である。そのうち同年度内に審査を完了したものは105件であった。

 令和6年度においては、排除措置命令21件及び確約計画の認定3件の計24件の法的措置を行った。これを行為類型別にみると、私的独占が1件、価格カルテルが4件、入札談合が6件、受注調整が6件、不公正な取引方法が7件となっている(第1図参照)。また、延べ33名に対し総額37億604万円の課徴金納付命令を行った(表)。

 なお、令和6年度においては、課徴金減免制度に基づき事業者が自らの違反行為に係る事実の報告等を行った件数は109件であった。

<令和6年度における排除措置命令事件>

価格カルテル等

○ LPガス容器用バルブの製造販売業者らに対する件
○ 損害保険会社に対する件

入札談合

○ 名古屋市が発注する中学校スクールランチ調理等業務の入札参加業者に対する件
○ 青森市が発注する新型コロナウイルス感染症患者移送業務の入札参加業者らに対する件
○ 損害保険会社らに対する件
○ 山形県が発注する豚熱ワクチンの入札等の参加業者に対する件

受注調整

○ 公益社団法人山形県畜産協会が発注する動物用ワクチンの入札の参加業者に対する件
○ 機械式駐車装置メーカーらに対する件

再販売価格の拘束

○ ㈱関家具に対する件

抱き合わせ販売等

○ ASP Japan(同)に対する件

拘束条件付取引

○ 熊本県漁業協同組合連合会に対する件
○ 佐賀県有明海漁業協同組合に対する件

競争者に対する取引妨害

○ ㈱MC データプラスに対する件

<令和6年度における確約計画の認定事案>

私的独占、その他の取引拒絶又は競争者に対する取引妨害

○ Google LLC に対する件

優越的地位の濫用

○ 橋本総業㈱に対する件

抱き合わせ販売等

○ シスメックス㈱に対する件

 令和6年度においては、警告を行った事案が8件あった。

<令和6年度における警告事案>
○ 日清食品㈱に対する件
○ 日本プロフェッショナル野球組織に対する件
○ 永山石油㈱及びエッカ石油㈱に対する件
○ ㈱イトーキに対する件
○ ㈱ダイゼンに対する件
○ ㈱アトレに対する件
○ ㈱九州シジシーに対する件


(前記ウ及びエの事案の処理の類型別件数について第2図参照)

第1図 法的措置(注1)件数等の推移

第1図

(注1)法的措置とは、排除措置命令、課徴金納付命令及び確約計画の認定のことである。一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共に行われている場合には、法的措置件数を1件としている。
(注2)私的独占と不公正な取引方法のいずれも関係法条となっている事件は、私的独占に分類している。
(注3)「その他のカルテル」とは、数量、販路、顧客移動禁止、設備制限等のカルテルである。

 

第2図 排除措置命令、確約計画の認定、警告等の件数の推移

第2図

(注4)事案の概要を公表したものに限る。 

表 課徴金額等の推移

表

(注5)課徴金額については、千万円未満切捨て。

 このほか、違反につながるおそれのある行為に対する注意322件(不当廉売事案について迅速処理による注意を行った253件を含む。)を行うなど、適切かつ迅速な法運用に努めた。

 公正取引委員会は、違反行為者に対する措置に併せて、競争政策上必要な措置を講ずべきと判断した事項について、発注機関や関連団体等に要請等を行っている。
 令和6年度においては、水産庁、公益社団法人日本給食サービス協会、青森市及び一般社団法人日本旅行業協会、金融庁及び一般社団法人日本損害保険協会、一般社団法人全国動物薬品器材協会並びに公益社団法人立体駐車場工業会に対して要請等を行った。

⑵ 公正な取引慣行の推進

ア 優越的地位の濫用に対する取組

 公正取引委員会は、独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する優越的地位の濫用行為が行われないよう監視を行うとともに、独占禁止法に違反する行為には厳正に対処している。また、優越的地位の濫用行為に係る調査を効率的かつ効果的に行い、必要な是正措置を講じていくことを目的とした「優越的地位濫用事件タスクフォース」を設置し、調査を行っている。
 令和6年度においては、優越的地位濫用事件タスクフォースが中心となって、優越的地位の濫用に当たるおそれがあるとして3件の警告を行ったほか、優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして41件の注意を行った。

イ 不当廉売に対する取組

 公正取引委員会は、小売業における不当廉売について、迅速に処理を行うとともに、大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって、周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについて、周辺の販売業者の事業活動への影響等を個別に調査し、問題がみられた事案については、法的措置を採るなど厳正に対処している。
 令和6年度においては、石油製品の小売業において、不当廉売に当たるおそれがあるとして2件の警告を行ったほか、酒類、石油製品等の小売業において、不当廉売につながるおそれがあるとして253件(酒類18件、石油製品186件、その他49件)の注意を行った。

ウ 下請法違反行為の積極的排除等

(ア) 公正取引委員会は、下請事業者からの自発的な情報提供が期待しにくいという下請取引の実態に鑑み、中小企業庁と協力し、親事業者及びこれらと取引している下請事業者を対象として定期的な調査を実施するなど、下請法違反行為の発見に努めている。また、中小事業者を取り巻く環境が依然として厳しい状況において、中小事業者の自主的な事業活動が阻害されることのないよう、下請法の迅速かつ効果的な運用により、下請取引の適正化及び下請事業者の利益の保護に努めている。
 令和6年度においては、親事業者9万名及びこれらと取引している下請事業者33万名を対象に定期調査を行い、定期調査等の結果、下請法に基づき21件の勧告を行うとともに、8,230件の指導を行った(第3図参照)。

<令和6年度における勧告事件>

○ 食料品等の小売業における下請代金の減額事件
○ 漬物製品の製造販売業における下請代金の減額事件
○ ラベル等の印刷物の製造販売業における不当な給付内容の変更及び不当なやり直し事件
○ 自動車に架装する外装及び内装用の製品の製造販売業における返品及び不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 食料品等の卸売業における下請代金の減額事件
○ 水栓金具等の製造販売業における下請代金の減額及び不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 建築資材の製造販売業における下請代金の減額事件
○ 「VTuber 動画」の作成業における不当な給付内容の変更及び不当なやり直し事件
○ 出版事業、映像事業、通販事業における買いたたき事件
○ 圧延用ロール、マリンチェーン等の製造販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 電気通信機器等の製造販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件
○ ラジエーター等の熱交換器及び燃料タンク等の車体部品の製造販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 自動車用ばね等の製造販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 自動車用エンジン等の自動車用部品の製造販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 業務用冷蔵・冷凍庫、冷蔵ショーケース等の製造販売業における下請代金の減額及び不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 標準ポンプ、カスタムポンプ等の製造販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 家庭用電気製品等の販売業における下請代金の減額事件
○ 冠婚葬祭式の施行業における購入・利用強制事件
○ 自動車部品の製造販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件
○ 商用車用ブレーキ等の製造販売業における下請代金の減額事件
○ 洋菓子等の製造販売業における受領拒否及び不当な経済上の利益の提供要請事件

第3図 下請法の事件処理件数の推移

第3図①

(注)自発的な申出事案については後記(ウ)参照。

 

第3図②

(イ)令和6年度においては、下請事業者が被った不利益について、親事業者149名から下請事業者3,026名に対し、下請代金の減額分の返還等、総額13億5279万円相当の原状回復が行われた(第4図参照)。このうち、主なものとしては、①下請代金の減額事件において、親事業者は総額10億164万円を下請事業者に返還し、②不当な経済上の利益の提供要請事件において、親事業者は総額1億8959万円の利益提供分を下請事業者に返還し、③返品事件において、親事業者は総額6048万円相当の商品を下請事業者から引き取り、④下請代金の支払遅延事件において、親事業者は遅延利息等として総額5678万円を下請事業者に支払った。

第4図 原状回復の状況

第4図

(ウ) 公正取引委員会は、親事業者の自発的な改善措置が下請事業者の受けた不利益の早期回復に資することに鑑み、当委員会が調査に着手する前に、違反行為を自発的に申し出、かつ、自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については、親事業者の法令遵守を促す観点から、下請事業者の利益を保護するために必要な措置を採ることを勧告するまでの必要はないものとして取り扱うこととし、この旨を公表している(平成20年12月17日公表)。
 令和6年度においては、前記のような親事業者からの違反行為の自発的な申出は32件であった。また、同年度に処理した自発的な申出は36件であった。

エ 適切な価格転嫁の実現に向けた取組

(ア) 令和6年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査の実施
 公正取引委員会は、令和5年度に実施した「独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(以下「令和5年度調査」という。)等を踏まえ、調査対象業種43業種の事業者11万名及び令和5年度調査において注意喚起文書の送付対象となった8,175名に対して「令和6年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(以下「令和6年度調査」という。)を行い、当委員会のウェブサイトに掲載している「よくある質問コーナー(独占禁止法)」のQ&Aに該当する行為が認められた事業者6,510名及び労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(以下「労務費転嫁交渉指針」という。)に沿った行動を採らなかった事業者9,388名に対し、注意喚起文書を送付したこと等も含め、令和6年12月16日、結果を取りまとめ、公表した。
 また、令和5年11月8日に公表した「価格転嫁円滑化に関する調査の結果を踏まえた事業者名の公表に係る方針について」に基づき、令和6年度調査において、取引価格が据え置かれており事業活動への影響が大きい取引先として受注者から多く名前が挙がった発注者に対して、その旨を説明し、事業者名の公表があり得る旨を予告した上で、立入調査、独占禁止法第40条に基づく報告命令等による個別調査を実施した。当該個別調査の結果、相当数の取引先について協議を経ない取引価格の据置き等が確認された事業者3名については、令和7年3月14日、独占禁止法第43条の規定に基づき、その事業者名を公表した。
(イ) 下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準の改正
 公正取引委員会は、労務費転嫁交渉指針等を踏まえ、下請法上の買いたたきの解釈・考え方が更に明確になるよう、令和6年5月27日、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(平成15年公正取引委員会事務総長通達第18号)の改正を行った。
(ウ) 手形等が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準等の変更
 公正取引委員会は、令和6年4月30日、「手形が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準の変更について」(令和6年4月30日官房審議官通知)を策定し、また、「一括決済方式が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導方針について」(昭和60年12月25日取引部長通知) 及び「電子記録債権が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導方針について」(平成21年6月19日取引部長通知)を改正し、手形、一括決済方式又は電子記録債権(以下「手形等」という。)を下請代金の支払手段として用いる場合のサイトの基準について、業種を問わず60日にするとともに、親事業者がこれを超える長期の手形等を支払手段として用いる場合、割引困難な手形(一括決済方式又は電子記録債権の場合は支払遅延)に該当するおそれがあるとして、その親事業者に対し指導することとし、令和6年11月1日から運用を開始した。

オ フリーランス・事業者間取引適正化等法に関する取組

 公正取引委員会は、中小企業庁及び厚生労働省と協力し、業務委託事業者を対象として「フリーランスとの取引に関する調査」を実施するなどフリーランス・事業者間取引適正化等法違反行為の発見に努めている。これらの調査の結果、違反行為が認められた業務委託事業者に対しては、迅速かつ適切に対処することとしている。
 令和6年度においては、問題事例の多い業種に係る発注事業者3万名を対象に「フリーランスとの取引に関する調査」を実施するとともに、54件の指導を行った。

カ 消費税転嫁対策に関する取組

 消費税転嫁対策特別措置法は、令和3年3月31日をもって失効したが、同法附則第2条第2項の規定に基づき、失効前に行われた違反行為に対する調査、指導、勧告等の規定については、失効後もなお効力を有するとされていることから、公正取引委員会は、失効前に行われた違反行為には、引き続き迅速かつ的確に対処していくこととしている。
 令和6年度においては、消費税転嫁対策特別措置法に基づき1件の指導を 行った。また、総額2731万円の原状回復が行われた。

⑶ 企業結合審査の充実

 独占禁止法は、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる会社の株式取得・所有、合併等を禁止している。公正取引委員会は、我が国における競争的な市場構造が確保されるよう、迅速かつ的確な企業結合審査に努めている。また、個別事案の審査に当たっては、経済分析を積極的に活用している。
 令和6年度においては、独占禁止法第9条から第16条までの規定に基づく企業結合審査に関する業務として、銀行又は保険会社の議決権取得・保有について20件の認可を行い、持株会社等について123件の報告、会社の株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業譲受け等について437件の届出をそれぞれ受理し、必要な審査を行った。
 また、公正取引委員会は、令和7年1月30日にANA ホールディングス㈱による日本貨物航空㈱の株式取得に関する審査結果について、同年3月13日にシノプシス・インクによるアンシス・インクの買収に関する審査結果について、同月27日に㈱クボタによる日本鋳鉄管㈱の新設製造子会社の株式取得に関する審査結果について、それぞれ公表した。

3  競争環境の整備(アドボカシー(唱導))

⑴ ガイドラインの改定等

 公正取引委員会は、事業者及び事業者団体による独占禁止法違反行為の未然防止とそれらの適切な活動に役立てるため、事業者及び事業者団体の活動の中でどのような行為が実際に独占禁止法違反となるのかを具体的に示したガイドラインを策定するなどしている。

<令和6年度における主なガイドラインの改定等>

○ 「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」の改定
○ 「適正な電力取引についての指針」の改定
○ 「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造改革のための独占禁止法関係事例集」の策定

⑵ 実態調査

 公正取引委員会は、様々な実態調査を積極的に行っており、実態調査において把握した事実等に基づき、独占禁止法上又は競争政策上の問題点や論点を指摘して、事業者や事業者団体による取引慣行の自主的な改善を促すことや、制度所管官庁による規制や制度の見直し等を提言することを通じ、競争環境の整備を図っている。

<令和6年度における主な実態調査>

○ 電気自動車(EV)充電サービスに関する第二次実態調査
○ 音楽・放送番組等の分野の実演家と芸能事務所との取引等に関する実態調査
○ フードサプライチェーンにおける商慣行に関する実態調査
○ 生成AI関連市場に関する実態調査

⑶ イノベーションと競争政策に関する検討会

 イノベーションを促進し得る競争環境を確保することは、競争政策における重要かつ現代的な政策課題であり、将来起こり得るイノベーションという長期的な競争環境に対する影響を適切に評価していくことが重要である。公正取引委員会は、このような認識の下、それら実態に係るより深い理解や知見を得るため、「イノベーションと競争政策に関する検討会」を開催し、令和6年6月28日に「イノベーションと競争政策に関する検討会」最終報告書を公表した。

⑷ 入札談合の防止への取組

 公正取引委員会は、入札談合の防止を徹底するためには発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から、地方公共団体等の調達担当者等に対する独占禁止法や入札談合等関与行為防止法の研修会を開催するとともに、国、地方 公共団体等が実施する調達担当者等に対する同様の研修会への講師の派遣及び資料の提供等の協力を行っている。
 令和6年度においては、研修会を全国で42回開催するとともに、国、地方公共団体等に対して256件の講師の派遣を行った。

⑸ 独占禁止法コンプライアンスの向上に向けた取組

 公正取引委員会は、これまで実施してきた独占禁止法コンプライアンスに関する調査結果や各国・地域競争当局等における同様の取組を踏まえ、「実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド-カルテル・談合への対応を中心として-」を作成し、令和5年12月に公表した。当委員会は、同ガイドの内容について企業等への周知・啓発に取り組んでいる。
 他方で、近年においても、独占禁止法違反行為を行った企業等に対する排除措置命令において、コンプライアンス体制の構築を含む再発防止策の実行が命じられるなど、独占禁止法コンプライアンスが実効的に機能していないことが疑われる事案が引き続き発生している。このような状況を踏まえ、公正取引委員会は、令和6年10月8日以降、企業コンプライアンスに関する実態調査を実施している。

⑹ 相談対応

 公正取引委員会は、事業者、事業者団体、一般消費者等から寄せられる独占禁止法及び関係法令に関する質問に対して、文書又は口頭により回答している。
 特に、事業者や事業者団体が行おうとする具体的な行為に関する相談につい ては、法運用の透明性を高め、相談制度の一層の充実を図るため、独占禁止法等の規定に照らして問題がないかどうかを書面により回答する「事前相談制度」を設けている。
 公正取引委員会は、令和6年12月23日、事前相談制度に基づき一般社団法人日本種苗協会から申出を受けた、会員事業者に対するアンケートに係る相談に対し、独占禁止法上問題となるものではない旨の回答を行うとともに、その内容を公表した。

4 競争政策の運営基盤の強化

⑴ 競争政策に関する理論的・実証的な基盤の整備

 競争政策研究センターは、平成15年6月の発足以降、独占禁止法等の執行並びに競争政策の企画・立案及び評価を行う上での理論的・実証的な基礎を強化するための活動を展開している。
 令和6年度においては、シンポジウムを2回開催したほか、公開セミナーを1回開催した。

⑵ 競争政策・法執行における経済分析の活用

 公正取引委員会は、独占禁止法違反被疑事件審査、企業結合審査、各種実態調査等において、経済分析の活用を図っている。

 令和6年度に結果を公表した独占禁止法違反被疑事件審査、企業結合審査、各種実態調査等のうち、経済分析を活用し、かつ、その内容を公表したものは、次のとおりである。

<事後評価>

○ ㈱第四銀行及び㈱北越銀行の統合に係る企業結合審査の事後検証について

⑶ 国際的な連携の強化

ア 競争当局間における連携強化

 公正取引委員会は、二国間独占禁止協力協定等に基づき、関係国の競争当局に対し、執行活動等に関する通報を行うなど、外国の競争当局との間で緊密な協力を行っている。また、我が国と経済的交流が特に活発な国・地域の競争当局との間で競争政策に関する協議を行っている。

イ 経済連携協定等への取組

 公正取引委員会は、経済連携協定等が市場における競争を一層促進するものとなることが重要であるという観点から、我が国の経済連携協定等の締結に関する取組に参画している。令和6年度においては、インド太平洋経済枠組み(IPEF)、日・バングラデシュ経済連携協定、日・GCC経済連携協定及び日・UAE経済連携協定の締結交渉等に参加した。

ウ 多国間会議への参加

 国際競争ネットワーク(ICN)においては、その設立以来、公正取引委員会委員長が、ICNの活動全体を管理する運営委員会のメンバーを務めている。また、公正取引委員会は、令和5年10 月からはアドボカシー作業部会の共同議長代行を、令和6年5月からは同作業部会の共同議長を務めている。
 令和6年度においては、公正取引委員会が主導する「競争当局と規制当局との相互作用プロジェクト」に係る各加盟競争当局を対象にしたサーベイ調査が行われるとともに、当委員会が中心となって当該プロジェクトの報告書の取りまとめを進めた。
 また、経済協力開発機構(OECD)に設けられている競争委員会の各会合に、公正取引委員会委員が参加した。
 さらに、公正取引委員会委員長は、令和6年10月、イタリア・ローマにおいて、G7の競争当局及び政策立案部局のトップ等が出席するG7競争サミットに出席した。同サミットでは、デジタルとAI市場に関する様々な競争上の課題について、G7の競争当局及び政策立案部局のトップ等と議論を行った結果、成果文書として、「デジタル競争共同宣言」が採択された。
 このほか、公正取引委員会の委員長・委員は、東アジア競争政策トップ会合にも積極的に参加した。

エ 技術支援

 公正取引委員会は、東アジア地域等の開発途上国の競争当局等に対し、当委員会事務総局の職員の派遣や研修の実施等の競争法・政策分野における技術支援活動を行っている。
 令和6年度においては、独立行政法人国際協力機構(JICA)の枠組みを通じて、タイ、マレーシア及びフィジーに対して技術支援を行ったほか、競争法制を導入しようとする国や既存の競争法制の強化を図ろうとする国の競争当局の職員等に対し、競争法・政策に関する研修を実施した。

⑷ 競争政策の普及啓発に関する広報・広聴活動

 競争政策に関する意見、要望等を聴取して施策の実施の参考とし、併せて競争政策への理解の促進に資するため、独占禁止政策協力委員から意見聴取を行った。
 また、経済社会の変化に即応して競争政策を有効かつ適切に推進するため、公正取引委員会が広く各界の有識者と意見を交換し、併せて競争政策の一層の理解を求めることを目的として、独占禁止懇話会を開催しているところ、令和6年度においては、同懇話会を3回開催した。
 さらに、経済団体や消費者団体等との意見交換会、公正取引委員会の委員等と各地の有識者との懇談会(全国9都市)、当委員会の地方事務所長等と各地区の有識者との懇談会(全国各地区)及び弁護士会等との懇談会(全国各地区)をそれぞれ開催した。また、現場の事業者の声に耳を傾ける広聴という観点から、公正取引委員会の委員等が事業者の工場等を訪問し懇談する取組を行った。
 前記以外の活動として、本局及び地方事務所等の所在地以外の都市における独占禁止法等の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため、一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動を紹介する「消費者セミナー」を開催した。
 加えて、中学校、高等学校及び大学(大学院等を含む。)に職員を講師として派遣し、経済活動における競争の役割等について授業を行う独占禁止法教室(出前授業)の開催など、学校教育等を通じた競争政策の普及啓発に努めた。

<令和6年度における主な取組>(注)

○ 独占禁止政策協力委員に対する意見聴取の実施(147件)
○ 独占禁止懇話会の開催(3回)
○ 経済団体との意見交換会の実施(5回)
○ 消費者団体との意見交換会の実施(10団体)
○ 地方有識者との懇談会の開催(北海道函館市、盛岡市、群馬県高崎市、津市、京都市、鳥取市、高知市、鹿児島市及び那覇市)
○ その他の地方有識者との懇談会の開催(98回)
○ 弁護士会との懇談会の開催(18回)
○ 事業者の工場等への訪問及び懇談会(19回)
○ 消費者セミナーの開催(88回)
○ 独占禁止法教室の開催(中学生向け50回、高校生向け46回、大学生等向け143回)

(注)対面形式のほか、ウェブ会議等の非対面形式も活用してそれぞれ開催した。

関連ファイル

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問い合わせ先

公正取引委員会事務総局官房総務課
電話 03-3581-3574(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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