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(令和7年6月24日)令和6年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果及び優越的地位の濫用事案の処理状況について

(令和7年6月24日)令和6年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果及び優越的地位の濫用事案の処理状況について

令和7年6月24日
公正取引委員会
 

 公正取引委員会は、荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用を効果的に規制する観点から、独占禁止法に基づき「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」(平成16年公正取引委員会告示第1号。以下「物流特殊指定」という。)を指定し、その遵守状況及び荷主と物流事業者との取引状況を把握するため、荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた調査を継続的に行っている。

 また、「優越的地位濫用事件タスクフォース」(以下「優越タスクフォース」という。)(注)においては、上記の調査で物流事業者から寄せられた荷主の行為に関する情報も活用して荷主と物流事業者との取引に関する優越的地位の濫用事案を処理している。

 令和6年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果及び優越的地位の濫用事案の処理状況は以下のとおりである。  

(注)審査局内に設置した優越タスクフォースにおいては、優越的地位の濫用行為に係る全国から寄せられる情報及び自ら収集した情報に基づいて、一元的に当該行為の類型に特化した調査を行うことで事例の蓄積や処理方法の向上を図り、これらを積極的に活用することにより、優越的地位の濫用事案を効率的に処理できるようにしている。

第1 荷主と物流事業者との取引に関する調査結果

1 調査方法

 令和6年度においては、次表のとおり、荷主と物流事業者との物品の運送又は保管に係る継続的な取引を対象として、荷主及び物流事業者向けの調査(注)を実施した。また、その結果を踏まえ、現下の労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコスト上昇分の取引価格への反映の必要性について協議をすることなく取引価格を据え置く行為等が疑われる事案に関して、荷主100名に対する立入調査を実施した。

(注)令和6年度の調査では、「不当な給付内容の変更及びやり直し」に係る質問とは別に、「荷待ち」(荷主と物流事業者との間で出発時間・到着時間を取り決めていたにもかかわらず、荷主の都合で出発時間・到着時間が変更され、物流事業者に待機時間が発生すること。)に係る質問を設けた。荷待ちによって、物流事業者に運転手の人件費、待機時間料等の追加費用が生じたにもかかわらず、荷主が当該費用を負担しない場合に独占禁止法上問題となる。

 
 【調査の概要】
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2 注意喚起文書の送付
 調査の結果を踏まえ、独占禁止法上の問題につながるおそれのある行為を行った荷主646名に対し、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付した。
 注意喚起文書を送付した荷主の上位3業種は、「協同組合」(注)、「飲食料品卸売業」、「建築材料、鉱物・金属材料等卸売業」の順であった。
 また、問題につながるおそれのある行為についての回答を行為類型別にみると、「不当な給付内容の変更及びやり直し」、「代金の支払遅延」、「買いたたき」の順に多かった。
 (注)主に農産物、林産物及び水産物の販売事業等を営む協同組合

(1)注意喚起文書を送付した荷主の業種別内訳

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(注)業種名は、日本標準産業分類(令和5年7月告示 総務省)による。割合は、小数点以下第2位を四捨五入して
   いるため、大分類ベースの割合とその内訳の和は必ずしも一致しない。


(2)注意喚起文書を送付した荷主の行為類型別内訳

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(注1)複数の行為類型で注意喚起文書の送付を受けた荷主が存在するため、合計の件数は前記(1)の荷主数646名とは
   一致しない。
(注2)同一回答者が、荷待ちとともに、荷待ち以外の不当な給付内容(積載数量、発着地、集貨日等)の変更及びやり
   直しに該当しているものがある。


3 独占禁止法上の問題につながるおそれのある主な事例

 主な事例は以下のとおり(括弧内は荷主の業種)。

(1)不当な給付内容の変更及びやり直し 

・荷主Aは、物流事業者に対し、定期便として発注した運送業務を集配送当日にキャンセルしたが、そのような突然のキャンセルに伴い物流事業者が負担した車両の手配に要した費用を支払わなかった。(飲食料品卸売業)

・荷主Bは、物流事業者に対し、自組合の選果場から自組合の小売店舗までの農作物の運送を委託しているところ、当該物流事業者との間であらかじめ取り決めていた出発時間について、選果場における突然の設備故障のため一方的に遅らせる変更をしたが、その変更に伴い物流事業者が負担した追加費用(待機中の運転手の人件費等)を支払わなかった。(協同組合)

・荷主Cは、物流事業者との間で、積込時間を朝からと取り決めていたにもかかわらず、実際には自社の都合で、到着時間を変更しないまま積込時間を昼からに変更したが、その変更に伴い物流事業者が負担した追加費用(待機中の運転手の人件費、到着時刻に間に合わせるために利用した高速道路通行料等)を支払わなかった。(建築材料、鉱物・金属材料等卸売業)


(2)代金の支払遅延  

・荷主Dは、物流事業者に対し、自社の事務処理が間に合わないことを理由に、あらかじめ定めた支払期日を超過して運賃を支払った。(飲食料品小売業)

・荷主Eは、物流事業者に対し、自社の担当者が経理部門に請求書の回付を失念していたことを理由に、あらかじめ定めた支払期日を超過して運賃を支払った。(総合工事業)


(3)買いたたき  

・荷主Fは、物流事業者から、それまで無償で提供させていた附帯業務の料金が上乗せされた見積書を受け取ったにもかかわらず、理由を一切説明することなく、運賃を一方的に据え置いた。(機械器具卸売業)

・荷主Gは、物流事業者に対し、自社工場から自社が運営する飲食店舗までの食材等の運送を委託しているところ、労務費等のコスト上昇局面にあることを認識しながら、物流事業者から、運賃の引上げを要請されなかったため、労務費等のコスト上昇分の反映の必要性について、価格交渉の場において明示的に協議することなく運賃を据え置いた。(飲食店)

・荷主Hは、物流事業者に対し、自社の電子部品の保管を委託しているところ、労務費等のコスト上昇局面にあることを認識しながら、物流事業者から保管料の引上げを要請されなかったため、エネルギーコスト等のコスト上昇分の反映の必要性について、価格交渉の場において明示的に協議することなく保管料を据え置いた。(機械器具卸売業)


(4)不当な経済上の利益の提供要請  

・荷主Iは、物流事業者に対し、契約では、運送の委託しかしていないにもかかわらず、運送した荷物の荷卸し、検品及び棚入れを無償で行わせた。(その他の卸売業)

・荷主Jは、物流事業者に対し、自社工場で用いる機械部品を海外事業者から購入するに当たり、当該部品の荷揚げ港から自社工場までの運送を委託しているところ、当該運送業務に附帯して輸入通関業務を委託する際の関税・消費税の納付を立て替えさせた。(生産用機械器具製造業)


(5)代金の減額  

・荷主Kは、物流事業者に対し、理由を一切説明することなく、あらかじめ定めた運賃を一方的に減額して支払った。(物品賃貸業)

・荷主Lは、物流事業者に対し、「値引き」と称して、あらかじめ定めた運賃を一方的に減額して支払った。(生産用機械器具製造業)


(6)割引困難な手形の交付  

・荷主Mは、物流事業者に対し、運賃として手形期間150日の約束手形を交付した。(機械器具卸売業)


(7)物の購入強制・役務の利用強制  

・荷主Nは、物流事業者に対し、自社が開催する展示会における家具の運送等の委託をする際に、自社製品を購入させた。(家具・装備品製造業)

・荷主Oは、物流事業者に対し、自社のグループ会社が運営する給油所で運送車両の燃料を購入させた。(鉱業、採石業、砂利採取業)


第2 優越タスクフォース等における荷主と物流事業者との取引に関する優越的地位の濫用事案の処理状況

1 処理概況
 令和6年度においては、荷主と物流事業者との取引に関する優越的地位の濫用事案について、1件の法的措置(橋本総業株式会社に対する確約計画の認定)、1件の警告(株式会社イトーキに対する警告)、29件の注意を行った。

2 法的措置(令和6年12月12日 確約計画の認定)
 公正取引委員会は、橋本総業株式会社に対し、橋本総業株式会社の下記の物流事業者(注)に対する行為が独占禁止法の規定に違反する疑いがあるものとして、確約手続通知を行ったところ、同社から確約計画の認定申請があり、当該計画が独占禁止法に規定する認定要件に適合すると認め、当該計画を認定した。
 橋本総業株式会社は、遅くとも平成29年7月以降、物流事業者に対して、①物流事業者の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、あらかじめ定めた代金の額から「お支払割戻金」と称して、当該額に一定率を乗じて得た額を減じている、②長時間の運送業務について、同種又は類似の内容の運送業務に対し通常支払われる額に比し著しく低い額となる運賃で委託している、③物流事業者に対する委託内容に含まれていない特定の附帯作業(積込み、取卸し等)について、あらかじめ物流事業者との間で取引の条件を取り決めることなく、無償で行わせている等の行為を行っている。
 (注)物流特殊指定の備考第2項に規定する特定物流事業者に該当する事業者をいう。

3 警告(令和6年11月28日)
 株式会社イトーキは、オフィス家具の運送、搬入、組立て、据付け及び搬出の業務(以下「本件運送業務」という。)を委託する物流事業者(注1)に対して、
 (1)時間外費(注2)の対象を納品場所での業務に要した時間に限ることにより、納品場所以外での業務
 (2)本件運送業務に係る特定の附帯業務(注3)
を無償で行わせている疑いがある。
(注1)物流特殊指定の備考第2項に規定する特定物流事業者に該当する事業者をいう。
(注2)基礎作業時間を超えて行われた業務に支払われる加算額をいう。
(注3)物流事業者が、オフィス家具を車両に積み込む業務及びオフィス家具の梱包材等の残材を引き渡す業務をいう。

4 注意
 優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして29件の注意を行った。
 注意対象となった業種をみると、協同組合(注1)(4件)、建築材料、鉱物・金属材料等卸売業(4件)、道路貨物運送業(3件)、物品賃貸業(3件)、生産用機械器具製造業(3件)、倉庫業(2件)、飲食料品卸売業(2件)などとなっている。
 また、注意対象となった行為類型をみると、「買いたたき」が57件(注2)中22件と最も多く、次いで「不当な給付内容の変更及びやり直し」が15件、「不当な経済上の利益の提供要請」及び「代金の減額」が各7件となっている(具体的な事例は、「令和6年度における独占禁止法違反事件の処理状況について」(令和7年5月1日公表)の 別添参照)。

(注1)農産物の販売事業等を営む協同組合

(注2)一つの事案において複数の行為類型について注意を行っている場合があるため、注意件数(29件)と行為類型の内訳の合計数(57件)とは一致しない。

第3 今後の取組

 公正取引委員会は、今回の調査結果について、関係省庁及び関係団体を通じて周知徹底を図り、違反行為の未然防止に向けた取組を進めていく。

 また、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律(令和7年法律第41号)による改正(令和8年1月1日から施行)後の下請法(以下「中小受託取引適正化法」(注) という。)の対象取引に特定運送委託が追加されることとなることを踏まえ、公正取引委員会は、今後も、荷主と物流事業者との取引に関する実態把握に努めるとともに、独占禁止法上の優越的地位の濫用や中小受託取引適正化法の禁止行為に当たり得る具体的な事案に接した場合には、これらの法律に基づき厳正かつ機動的に対処していく。

(注)正式名称は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(昭和31年法律第120号)となる。


関連ファイル

(印刷用)(令和7年6月24日)令和6年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果及び優越的地位の濫用事案の処理状況についてpdfダウンロード(139 KB)

(参考)物流特殊指定の概要pdfダウンロード(58 KB)

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局 

 経済取引局取引部企業取引課優越的地位濫用未然防止対策調査室

  電話 03-3581-3378(直通)(第2を除く。)

 審査局管理企画課

  電話 03-3581-3381(直通)(第2)

ホームページ https://www.jftc.go.jp/


 

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