令和8年9月28日
公正取引委員会
公正取引委員会は、関東地区(注1)に所在するマンションの管理組合(以下「管理組合」という。)が設計コンサル業務(注2)を設計コンサル業者(注3)である株式会社リノシスコーポレーション又は株式会社翔設計に委託した上で発注する大規模修繕工事の施工業者らに対し、本日、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
本件は、設計コンサル業者及び施工業者が、独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。
また、後記第2のとおり、事業者団体に対して申入れを行った。
(注1)「関東地区」とは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県及び群馬県の区域をいう。
(注2)「設計コンサル業務」とは、マンションの大規模修繕工事(注4)を発注するために必要な業務であり、マンションの大規模修繕工事を施工する施工業者の選定補助等の業務(建物の劣化状況に係る調査・診断業務、工事範囲・仕様を定めて工事の見積りを取得するために必要な設計図書等を作成する設計業務、又は工事監理業務の全部又は一部を含む。)をいう。
(注3)「設計コンサル業者」とは、設計コンサル業務を管理組合に提供する事業を営む事業者をいう。
(注4)「大規模修繕工事」とは、管理組合が計画的に発注して実施するマンションの修繕工事であり、外壁全面に足場を組むなどの仮設工事を伴うものをいう。
(注5)違反事業者名については、以下「株式会社」の記載を省略する。
第1 排除措置命令及び課徴金納付命令
1 違反事業者数、排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者数並びに課徴金額
(別表1及び別表2参照)
(注6)管理組合がリノシスコーポレーションに設計コンサル業務を委託した上で発注する大規模修繕工事(注7)管理組合が翔設計に設計コンサル業務を委託した上で発注する大規模修繕工事
2 特定リノシス大規模修繕工事に係る違反行為の概要等(別添1排除措置命令書参照)
⑴ 違反行為の概要
別表1記載の施工業者36社(以下「施工業者36社」という。 ) 及びリノシスコーポレーションは、かねてから、特定リノシス大規模修繕工事ごとに、施工業者36社のうち1社とリノシスコーポレーションとの間で当該大規模修繕工事の受注等に関して協力し合う関係(以下、本項において「受注協力関係」という。)を構築するとともに、受注に関する調整を行っていたところ、遅くとも令和3年9月27日以降(注8)、特定リノシス大規模修繕工事について
ア(ア) 特定リノシス大規模修繕工事ごとにリノシスコーポレーションと受注協力関係を構築した者を受注予定者とする
(イ) 受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
イ(ア) 施工業者36社及びリノシスコーポレーションは、特定リノシス大規模修繕工事ごとに、リノシスコーポレーション等から具体的な発注情報を入手した施工業者がリノシスコーポレーションに対して受注希望を伝えるなどして、受注協力関係を構築する
(イ) 受注予定者は、リノシスコーポレーションとの協議を経るなどして、施工業者36社のうち見積り合わせ等に参加する者が管理組合に提示する見積価格等を定める
(ウ) 施工業者36社のうち受注予定者以外の者は、受注予定者等からの依頼に応じるなどして、見積り合わせ等に参加して受注予定者等から連絡された見積価格を管理組合へ提示等する、又は見積り合わせ等に参加しない
(エ) リノシスコーポレーションは、設計コンサル業務の過程で入手した設計予算(注9)等に係る情報を受注予定者等に対して提供し、また、受注予定者の意向を踏まえて設計コンサル業務を行う
などにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
これにより、施工業者36社及びリノシスコーポレーションは、公共の利益に反して、特定リノシス大規模修繕工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(注8)ワイ興産にあっては令和5年2月2日までの間、日装にあっては同年4月30日までの間、旧日本ハウズイング(令和7年3月1日、日本ハウズイングに吸収合併されたことにより消滅した事業者のこと。)にあっては令和7年2月28日までの間をいう。また、ヤマギシリフォーム工業にあっては令和5年2月3日以降、日本ハウズイングにあっては令和7年3月1日以降をいう。
(注9)「設計予算」とは、管理組合が決定する大規模修繕工事の発注予定金額をいう。
⑵ 排除措置命令の概要
ア 排除措置
(ア) 前記⑴の行為を既に行っていないことを確認すること。
(イ) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定リノシス大規模修繕工事について、受注予定者を決定しないこと。
イ 名宛人のうち施工業者は、それぞれ、前記アに基づいて採った措置を、自社を除く名宛人及び自社(注10)が受注した別添1排除措置命令書別表4記載の工事を発注した管理組合に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。
ウ 名宛人のうちリノシスコーポレーションは、前記アに基づいて採った措置を、自社を除く名宛人及び別添1排除措置命令書別表4記載の工事を発注した管理組合に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。
エ 名宛人は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定リノシス大規模修繕工事について、受注予定者を決定してはならない。
オ 名宛人のうち施工業者は、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。
(ア) 大規模修繕工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底(注11)
(イ) 大規模修繕工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての、関東地区に所在するマンションの大規模修繕工事の営業に関わる自社の役員及び従業員に対する定期的な研修の実施
カ 名宛人のうちリノシスコーポレーションは、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。
(ア) 大規模修繕工事に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底
(イ) 大規模修繕工事に関する独占禁止法の遵守についての、関東地区に所在するマンションの大規模修繕工事に関わる自社の役員及び従業員に対する定期的な研修の実施
(注10)ヤマギシリフォーム工業にあっては自社及びワイ興産、日装・ツツミワークスにあっては自社及び日装、日本ハウズイングにあっては旧日本ハウズイングである。
(注11)伊勝、シンヨー、日本ハウズイング及びSMCRにあっては、大規模修繕工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の自社の役員及び従業員に対する周知徹底である。
3 特定翔設計大規模修繕工事に係る違反行為の概要等(別添2排除措置命令書参照)
⑴ 違反行為の概要
別表2記載の施工業者19社(以下「施工業者19社」という。)及び翔設計は、かねてから、特定翔設計大規模修繕工事ごとに、施工業者19社のうち1社と翔設計との間で当該大規模修繕工事の受注等に関して協力し合う関係(以下、本項において「受注協力関係」という。)を構築するとともに、受注に関する調整を行っていたところ、遅くとも令和3年11月16日以降(注12)、特定翔設計大規模修繕工事について
ア(ア) 特定翔設計大規模修繕工事ごとに翔設計と受注協力関係を構築した者を受注予定者とする
(イ) 受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
イ(ア) 施工業者19社及び翔設計は、特定翔設計大規模修繕工事ごとに、翔設計等から具体的な発注情報を入手した施工業者が翔設計に対して受注希望を伝えるなどして、受注協力関係を構築する
(イ) 受注予定者は、翔設計との協議を経るなどして、施工業者19社のうち見積り合わせ等に参加する者が管理組合に提示する見積価格等を定める
(ウ) 施工業者19社のうち受注予定者以外の者は、受注予定者等からの依頼に応じるなどして、見積り合わせ等に参加して受注予定者等から連絡された見積価格を管理組合へ提示等する、又は見積り合わせ等に参加しない
(エ) 翔設計は、設計コンサル業務の過程で入手した設計予算等に係る情報を受注予定者等に対して提供し、また、受注予定者の意向を踏まえて設計コンサル業務を行う
などにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
これにより、施工業者19社及び翔設計は、公共の利益に反して、特定翔設計大規模修繕工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(注12)旧日本ハウズイングにあっては令和7年2月28日までの間をいう。また、ヤマギシリフォーム工業にあっては令和5年2月3日以降、日本ハウズイングにあっては令和7年3月1日以降をいう。
⑵ 排除措置命令の概要
ア 排除措置命令の対象事業者(以下、本項において「名宛人」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議(取締役会設置会社でない場合にあっては、取締役による決定)しなければならない。
(ア) 前記⑴の行為を既に行っていないことを確認すること。
(イ) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定翔設計大規模修繕工事について、受注予定者を決定しないこと。
イ 名宛人のうち施工業者は、それぞれ、前記アに基づいて採った措置を、自社を除く名宛人及び自社(注13)が受注した別添2排除措置命令書別表4記載の工事を発注した管理組合に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。
ウ 名宛人のうち翔設計は、前記アに基づいて採った措置を、自社を除く名宛人及び別添2排除措置命令書別表4記載の工事を発注した管理組合に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。
エ 名宛人は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、特定翔設計大規模修繕工事について、受注予定者を決定してはならない。
オ 名宛人のうち施工業者は、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。
(ア) 大規模修繕工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底(注14)
(イ) 大規模修繕工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての、関東地区に所在するマンションの大規模修繕工事の営業に関わる自社の役員及び従業員に対する定期的な研修の実施
カ 名宛人のうち翔設計は、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。
(ア) 大規模修繕工事に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底
(イ) 大規模修繕工事に関する独占禁止法の遵守についての、関東地区に所在するマンションの大規模修繕工事に関わる自社の役員及び従業員に対する定期的な研修の実施
(注13)日本ハウズイングにあっては旧日本ハウズイングである。
(注14)伊勝、シンヨー及び日本ハウズイングにあっては、大規模修繕工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の自社の役員及び従業員に対する周知徹底である。
4 課徴金納付命令の概要(別表1及び別表2参照)
特定リノシス大規模修繕工事に係る違反行為に関する課徴金納付命令の対象事業者は別表1の「課徴金額」欄記載の額を、特定翔設計大規模修繕工事に係る違反行為に関する課徴金納付命令の対象事業者は別表2の「課徴金額」欄記載の額を、それぞれ令和9年4月30日までに支払わなければならない。
第2 事業者団体に対する申入れ等
本件審査の過程において、リノシスコーポレーション又は翔設計が大規模修繕工事の発注に関する情報を施工業者に提供し、当該施工業者が当該大規模修繕工事を受注した場合に、当該大規模修繕工事の工事請負契約金額の一定割合に相当する金銭(以下「手数料等」という。)を、当該施工業者がリノシスコーポレーション又は翔設計に支払っていた事実が確認された。
手数料等の支払については、設計コンサル業者から施工業者へ提供される情報の内容等によっては、大規模修繕工事の受注に関する施工業者間の自由な競争をゆがめるおそれがあるものと考えられる。
このため、公正取引委員会は、別添3「大規模修繕工事の施工業者から設計コンサル業者に対して支払う手数料等について」と題する資料を取りまとめ、大規模修繕工事に関係する事業者の団体である一般社団法人全国マンション改修設計コンサルタント協会、一般社団法人マンション計画修繕施工協会及び一般社団法人日本塗装工業会に対し、当該資料の内容を会員に周知することなどを申し入れた。
関連ファイル
(印刷用)(令和8年9月28日)関東地区所在のマンションの管理組合が設計コンサル業者に委託して発注する大規模修繕工事の施工業者らに対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について
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(令和8年9月28日)参考1-3(最近の入札談合・受注調整事件、参照条文、課徴金制度の概要)
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(令和8年9月28日)調査協力減算制度の概要
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