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(平成30年9月18日)平成29年度公正取引委員会年次報告について

平成30年9月18日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,独占禁止法第44条第1項の規定に基づき,内閣総理大臣を経由して,国会に対し,毎年,独占禁止法等の所管法令の施行の状況を報告しているところ,本日,平成29年度公正取引委員会年次報告書を国会に提出した。その要旨は以下のとおりである。

1 独占禁止法改正等

(1) 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律の成立

 平成28年2月4日に我が国を含む12か国により署名された環太平洋パートナーシップ協定(以下「TPP協定」という。)には「各締約国は、自国の国の競争当局に対し、違反の疑いについて、当該国の競争当局とその執行の活動の対象となる者との間の合意により自主的に解決する権限を与える。」とする規定が含まれているところ(第16.2条5),同規定は,現行の独占禁止法上担保されていないことから,同規定を担保するため,独占禁止法を改正し,「合意により自主的に解決する」制度である確約手続を導入することとした。確約手続の導入を内容とする独占禁止法の一部改正を含む「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案」は,同年3月8日に第190回通常国会へ提出され,継続審議とされた後,同年12月9日,第192回臨時国会において可決・成立し,同月16日に公布された(施行期日は,TPP協定が日本国について効力を生ずる日)。
 その後,米国がTPP協定からの離脱を表明したことを受けて,平成30年3月8日に,米国を除く11か国により署名された環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴い,「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」について,所要の改正を行うため,「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」が同月27日に第196回通常国会へ提出された。同法律案は,同年5月24日に衆議院において,同年6月29日に参議院において,それぞれ可決・成立した(平成30年法律第70号)。この法律は,一部の規定を除き,公布の日(平成30年7月6日)から施行された。

(2) 独占禁止法研究会報告書の公表

 独占禁止法における課徴金制度は,違反行為者に対して金銭的不利益処分を課すことによって違反行為を抑止するための行政上の措置として,昭和52年に導入された後,約40年が経過し,その間,数次の改正が行われてきた。しかし,近年,事業者の経済活動や企業形態のグローバル化・多様化・複雑化は一層進展しており,硬直的な現行課徴金制度では事業活動の実態を反映せず適正に対応できていない場面も生じているため,経済・社会環境の不断の変化にも対応できる制度の在り方について検討する必要性が高まってきた。公正取引委員会は,このような認識の下,平成28年2月以降,課徴金制度の在り方について専門的見地から検討を行うことを目的として,各界の有識者からなる「独占禁止法研究会」を開催してきた。同研究会は,平成29年3月までの間,15回の会合を重ね,検討結果を踏まえ,報告書を取りまとめ,当委員会は,同年4月25日にこれを公表した。同報告書で示された事項については,広く国民から意見を募集し,同年8月8日にこの意見募集の結果を公表した。

2  厳正・的確な法運用

(1) 独占禁止法違反行為の積極的排除

 公正取引委員会は,迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下,国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整,中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売など,社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に厳正かつ積極的に対処することとしている。

 独占禁止法違反被疑事件として平成29年度に審査を行った事件は143件である。そのうち同年度内に審査を完了したものは118件であった。

 平成29年度においては,13件の排除措置命令を行った。これを行為類型別にみると,価格カルテルが1件,入札談合が5件,受注調整が5件,不公正な取引方法が1件,その他が1件となっている(第1図参照)。また,延べ32名に対し総額18億9210万円の課徴金納付命令を行った(第2図参照)。
 なお,平成29年度においては,課徴金減免制度に基づき事業者が自らの違反行為に係る事実の報告等を行った件数は103件であった。

 また,平成29年度においては,違反行為は認定したが,排除措置命令を行うことができる期間を経過していたため,審査を終了し,公表した事例が1件あった。

<平成29年度における法的措置事件>

価格カルテル

○ ハードディスクドライブ用サスペンションの製造販売業者に対する件
入札談合

○ 東京都が平成26年度に発注する個人防護具の入札参加業者らに対する件
○ 東京都が平成27年度に発注する個人防護具の入札参加業者らに対する件
○ 東京都が発注する二層式低騒音舗装工事の工事業者に対する件
○ 東京港埠頭株式会社が発注する舗装工事の工事業者に対する件
○ 成田国際空港株式会社が発注する舗装工事の工事業者に対する件

受注調整

○ 東日本旅客鉄道株式会社が発注する接客型制服の販売業者に対する件
○ 東日本旅客鉄道株式会社が発注する技術型制服及び検修型制服の販売業者に対する件
○ 東日本旅客鉄道株式会社が発注する盛夏シャツ・ズボンの販売業者に対する件
○ 西日本旅客鉄道株式会社が発注する制服の販売業者に対する件
○ 東日本電信電話株式会社が発注する作業服の入札参加業者らに対する件

取引条件等の差別取扱い ○ 大分県農業協同組合に対する件

事業者団体による一定の事業分野における事業者の数の制限

○ 公益社団法人神奈川県LPガス協会に対する件

第1図 排除措置命令件数等の推移

(注1)複数の行為類型に係る事件は,主たる行為に即して分類している。
(注2)価格カルテルとその他のカルテルが関係している事件は,価格カルテルに分類している。
(注3)「その他」とは,事業者団体による構成事業者の機能又は活動の不当な制限等である。

第2図 課徴金額等の推移

(注)平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決に係る金額を含む。

 このほか,違反するおそれのある行為に対する警告3件,違反につながるおそれのある行為に対する注意545件(不当廉売事案について迅速処理による注意を行った457件を含む。)を行うなど,適切かつ迅速な法運用に努めた。

 公正取引委員会は,独占禁止法違反行為についての審査の過程において,競争政策上必要な措置を講じるべきと判断した事項について,関係官庁等に要請等を行っている。
 平成29年度においては,公益財団法人日本ユニフォームセンターに対して申入れを,経済産業省に対して要請を,それぞれ行った。

 公正取引委員会は,国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案等については,刑事処分を求めて積極的に告発を行うこととしている。平成29年度においては,東海旅客鉄道㈱が発注する中央新幹線に係る建設工事の受注調整事件について,平成30年3月23日,競争見積参加業者4社及び当該4社のうち2社で東海旅客鉄道株式会社が発注する中央新幹線に係る建設工事の受注等に関する業務に従事していた従業者2名を,検事総長に告発した。

 平成29年度当初における審判件数は,前年度から繰り越されたもの245件(排除措置命令に係るものが123件,課徴金納付命令に係るものが122件)であった(第3図参照)。平成29年度においては,審判開始を行った事件はなく,平成25年独占禁止法改正法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律〔平成25年法律第100号〕をいう。)による改正前の独占禁止法に基づく審決を66件(排除措置命令に係る審決33件,課徴金納付命令に係る審決33件)行ったほか,被審人による審判請求の取下げが1件あった。この結果,平成29年度末における審判件数(平成30年度に繰り越すもの)は178件となった。

第3図 審判件数の推移

(注)審判件数は,行政処分に対する審判請求ごとに付される事件番号の数である。

(2) 公正な取引慣行の推進

ア 優越的地位の濫用に対する取組
(ア) 公正取引委員会は,以前から,独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する優越的地位の濫用行為が行われないよう監視を行うとともに,独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処している。また,優越的地位の濫用行為に係る審査を効率的かつ効果的に行い,必要な是正措置を講じていくことを目的とした「優越的地位濫用事件タスクフォース」を設置し,審査を行っている。
 平成29年度においては,優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして49件の注意を行った。
(イ) 公正取引委員会は,中小事業者の取引の公正化を図る必要が高い分野について,実態調査等を実施し,優越的地位の濫用規制の普及・啓発等に活用している。
 平成29年度においては,「大規模小売業者との取引に関する納入業者に対する実態調査報告書」を平成30年1月31日に公表した。
(ウ) 公正取引委員会は,過去に優越的地位の濫用規制に対する違反がみられた業種,各種の実態調査で問題がみられた業種等の事業者に対して一層の法令遵守を促すことを目的として,業種ごとの実態に即した分かりやすい具体例を用いて説明を行う業種別講習会を実施している。
 平成29年度においては,荷主・物流事業者向けに10回の講習会を実施した。
(エ) 公正取引委員会は,下請事業者を始めとする中小事業者からの求めに応じ,当委員会事務総局の職員が出向いて,下請法等の内容を分かりやすく説明するとともに相談受付等を行う「中小事業者のための移動相談会」を実施している。
 平成29年度においては,「中小事業者のための移動相談会」を全国60か所で実施した。このほか,事業者団体が開催する優越的地位の濫用規制に係る研修会等に職員を講師として29回派遣した。

イ 不当廉売に対する取組
 公正取引委員会は,小売業における不当廉売について,迅速に処理を行うとともに,大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって,周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについて,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題がみられた事案については,法的措置を採るなど厳正に対処している。
 平成29年度においては,酒類,石油製品,家庭用電気製品等の小売業において,不当廉売につながるおそれがあるとして457件(酒類96件,石油製品352件,家庭用電気製品4件,その他5件)の注意を行った。

ウ 下請法違反行為の積極的排除等
(ア) 公正取引委員会は,下請事業者からの自発的な情報提供が期待しにくいという下請取引の実態に鑑み,中小企業庁と協力し,親事業者及びこれらと取引している下請事業者を対象として定期的に書面調査を実施するなど違反行為の発見に努めている。また,中小事業者を取り巻く環境は依然として厳しい状況において,中小事業者の自主的な事業活動が阻害されることのないよう,下請法の迅速かつ効果的な運用により,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護に努めている。
 平成29年度においては,親事業者6万名及びこれらと取引している下請事業者30万名を対象に書面調査を行い,書面調査等の結果,下請法に基づき9件の勧告を行い,6,752件の指導を行った(第4図参照)。

<平成29年度における主な勧告事件>
○ 食料品等の卸売業等における下請代金の減額事件
○ フランチャイズ・システムによるコンビニエンスストア事業における下請代金の減額事件
○ 自動車部品等の製造業における下請代金の減額事件
○ 緑茶,麦茶,ウーロン茶等の清涼飲料及び茶葉製品の製造販売事業における下請代金の減額事件
○ シール,ラベル等の製造販売業における下請代金の減額事件
○ アンテナ,テレビ受信関連機器等の製造業における下請代金の減額事件
○ 冷凍食品の企画,開発及び販売事業における下請代金の減額事件

第4図 下請法の事件処理件数の推移

(注1)勧告を行った事件の中には,製造委託等及び役務委託等との双方において違反行為が認められたものがあるが,本図においては,当該事件の違反行為が主として行われた取引に区分して,件数を計上している。
(注2)このほか,勧告に相当するような自発的な申出事案もある。

(イ) 平成29年度においては,下請事業者が被った不利益について,親事業者308名から,下請事業者1万1025名に対し,下請代金の減額分の返還等,総額33億6716万円相当の原状回復が行われた(第5図参照)。このうち,主なものとしては,①下請代金の減額事件においては,親事業者は総額16億7800万円を下請事業者に返還し,②受領拒否事件においては,親事業者は総額14億7624万円相当の商品を下請事業者から受領し,③下請代金の支払遅延事件においては,親事業者は遅延利息等として総額1億9675万円を下請事業者に支払い,④不当な経済上の利益の提供要請事件においては,親事業者は総額633万円の利益提供分を下請事業者に返還した。

第5図 原状回復の状況

(ウ) 公正取引委員会は,親事業者の自発的な改善措置が下請事業者が受けた不利益の早期回復に資することに鑑み,当委員会が調査に着手する前に,違反行為を自発的に申し出,かつ,自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については,親事業者の法令遵守を促す観点から,下請事業者の利益を保護するために必要な措置を採ることを勧告するまでの必要はないものとして取り扱うこととし,この旨を公表している(平成20年12月17日公表)。
 平成29年度においては,上記のような親事業者からの違反行為の自発的な申出は47件であった。また,同年度に処理した自発的な申出は46件であり,そのうちの5件については,違反行為の内容が下請事業者に与える不利益が大きいなど勧告に相当するような事案であった。
(エ) 公正取引委員会は,下請代金の支払遅延,下請代金の減額,買いたたき等の行為が行われることのないよう,平成29年11月15日,約21万名の親事業者及び約650の関係事業者団体に対し,下請法の遵守の徹底等について,公正取引委員会委員長及び経済産業大臣連名の文書をもって要請を行った。

エ 消費税転嫁対策に関する取組
(ア) 公正取引委員会は,様々な情報収集活動によって把握した消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)に関する情報を踏まえ,立入検査等の調査を積極的に実施している。これらの調査の結果,転嫁拒否行為が認められた事業者に対しては,転嫁拒否行為に係る不利益の回復等の必要な改善指導を迅速に行っている。
 平成29年度においては,中小企業庁と合同で,中小企業・小規模事業者等(売手側。約280万名)に対する悉皆的(しっかいてき)な書面調査を実施した。また,中小企業庁と合同で,個人事業者(売手側。約350万名)に対する書面調査を実施した。書面調査等の結果,消費税転嫁対策特別措置法に基づき勧告を行ったものは5件,指導を行ったものは370件であった。
(イ) 公正取引委員会は,転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置し,平成29年度においては,392件の相談に対応した。また,事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,平成29年度においては,移動相談会を43回実施した。
(ウ) 公正取引委員会は,転嫁拒否行為を受けた事業者にとって,自らその事実を申し出にくい場合もあると考えられることから,転嫁拒否行為を受けた事業者からの情報提供を受動的に待つだけではなく,中小企業庁と合同で書面調査を実施し,転嫁拒否行為に関する情報収集を積極的に行った。また,様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,平成29年度においては,1,009名の事業者及び346の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。
(エ) 公正取引委員会は,平成29年度においては,消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為7件及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為1件の合計8件の届出を受け付けたほか,事業者又は事業者団体からの届出書の記載方法等に関する相談に対応した。
(オ) 公正取引委員会は,消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,当委員会主催の説明会を実施している。
 平成29年度においては,42回の説明会を実施した。また,商工会議所,商工会,事業者団体等が開催する説明会等に公正取引委員会事務総局の職員を講師として15回派遣した。

(3) 企業結合審査の充実

 独占禁止法は,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる会社の株式取得・所有,合併等を禁止している。公正取引委員会は,我が国における競争的な市場構造が確保されるよう,迅速かつ的確な企業結合審査に努めている。個別事案の審査に当たっては,必要に応じ,経済分析を積極的に活用している。
 平成29年度においては,独占禁止法第9条から第16条までの規定に基づく企業結合審査に関する業務として,銀行又は保険会社の議決権取得・保有について1件の認可を行い,持株会社等について105件の報告,会社の株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業譲受け等について306件の届出をそれぞれ受理し,必要な審査を行った。
 平成29年度における主要な企業結合事例としては,株式会社第四銀行と株式会社北越銀行による共同株式移転について審査を行った結果,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと認められたため,本件審査を終了し,その内容を公表したなどの例がある。

3  競争環境の整備

(1) 「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」の改正

 公正取引委員会は,「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月11日公表。以下「流通・取引慣行ガイドライン」という。)が制定されてから約25年が経過しており,我が国における流通・取引慣行の実態が大きく変化していることから,そうした実態に即したガイドラインの見直しに関して必要な検討を行うことを目的として,平成28年2月から平成29年3月までの間,各界の有識者からなる「流通・取引慣行と競争政策の在り方に関する研究会」を開催した。
 そして,同研究会により取りまとめられた報告書(平成28年12月16日公表)において,「最近の実態を踏まえつつ,分かりやすく,汎用性のある,事業者及び事業者団体にとって利便性の高い流通・取引慣行ガイドラインを目指すべき」とされたことを受け,公正取引委員会は流通・取引慣行ガイドラインを改正し,平成29年6月16日に公表した。

(2) 液化天然ガスの取引実態に関する調査

 液化天然ガス(以下「LNG」という。)の需給については,近年,①東日本大震災後に停止していた原子力発電所の再稼動及び今後のエネルギー供給構成の多様化に伴う国内需給の緩和,②電力小売市場及びガス小売市場の全面自由化に伴う国内需給の見通しの不透明化,③アジアを始めとする世界的な需要量の増加,④非在来型天然ガスの開発等による世界的な供給量の増加といった要因による大きな環境変化が指摘されている。
 前記①及び②により,国内需要者は,現在,LNGの余剰発生を見込んでいるものの,供給者の仕向地制限等により,今後,国内外にLNGの余剰を再販売することが妨げられること等を懸念している。
 また,政府は,仕向地制限の撤廃等を働きかけるという方針を閣議決定している。
 公正取引委員会は,このような状況を踏まえ,LNGの取引における独占禁止法又は競争政策上問題となるおそれのある取引慣行,契約条件等の有無等を明らかにするため,LNGの取引実態に関する調査を実施し,平成29年6月28日,「液化天然ガスの取引実態に関する調査報告書」を取りまとめ,公表した。

(3) 公立中学校における制服の取引実態に関する調査

 公立中学校の制服は,学校が指定することが一般的であるところ,その価格は入学に当たって準備する品目の中でも比較的高額なものとなっており,また,制服の販売価格は,近年,上昇傾向にある。
 公正取引委員会は,このような状況を踏まえ,公立中学校の制服取引において,制服を指定する学校が制服の製造業者及び販売業者に対して行う行為のほか,製造業者及び販売業者が行う行為について,独占禁止法又は競争政策上問題となるおそれのある取引慣行等の有無を明らかにするため,公立中学校における制服の取引実態に関する調査を実施し,平成29年11月29日,「公立中学校における制服の取引実態に関する調査報告書」を取りまとめ,公表した。

(4) 大規模小売業者との取引に関する納入業者に対する実態調査

 公正取引委員会は,独占禁止法上の優越的地位の濫用規制及び下請法に基づき,納入業者に不当に不利益を与える行為に対し厳正に対処するとともに,違反行為の未然防止に係る取組を行っている。また,この未然防止の取組の一環として,当委員会は,優越的地位の濫用規制上又は下請法上問題となり得る事例が見受けられる取引分野について,取引の実態を把握するための調査を実施している。
 大規模小売業者の間では,消費者のニーズに対応するための競争が活発に行われる一方で,公正取引委員会は,優越的地位の濫用行為について,平成25年度から平成28年度までの間,小売業者に対して毎年度20件前後の注意を行っている。このような実情を踏まえ,当委員会は,大規模小売業者との取引に関する納入業者に対する実態調査を実施し,平成30年1月31日,「大規模小売業者との取引に関する納入業者に対する実態調査報告書」を公表した。

(5) 電力卸売分野に関する競争政策上の考え方

 公正取引委員会では,平成28年4月の小売全面自由化後の電力市場において公正かつ有効な競争を確保するため,引き続き,独占禁止法違反行為に厳正かつ迅速に対応していくとともに,その未然防止に努めている。また,電力市場における公正かつ有効な競争が着実に行われていくよう状況を注視し,必要に応じて,競争の在り方について検討を行っている。
 公正取引委員会は,平成30年2月20日に開催された経済産業省電力・ガス取引監視等委員会の第4回「競争的な電力・ガス市場研究会」において,電力市場に関する最近の当委員会の取組を紹介しつつ,電力卸売分野の現状とそれを踏まえた競争政策上の考え方について意見表明を行った。

(6) 携帯電話市場のフォローアップ調査

 公正取引委員会は,平成28年8月2日に「携帯電話市場における競争政策上の課題について」を公表したが,国民の消費支出における移動系通信費の割合が増加傾向にあること,携帯電話市場の競争が依然として十分ではない状況にあると考えられることから,フォローアップを含めた調査を行い,平成30年6月28日,「携帯電話市場における競争政策上の課題について(平成30年度調査)」を取りまとめ,公表した。

(7) 競争評価に関する取組

 平成19年10月以降,各府省が規制の新設又は改廃を行おうとする場合,原則として,規制の事前評価の実施が義務付けられ,規制の事前評価において,競争状況への影響の把握・分析(以下「競争評価」という。)についても行うこととされ,平成22年4月から試行的に実施されてきた。平成29年7月28日,「規制の政策評価の実施に関するガイドライン」が改正され,同年10月1日に施行されたことに伴い,競争評価が同日から本格的に実施されることとなった。規制の事前評価における競争評価において,各府省は,競争評価チェックリストを作成し,規制の事前評価書の提出と併せて総務省に提出し,総務省は,受領した競争評価チェックリストを公正取引委員会へ送付する。
 平成29年度においては,試行的実施に係る競争評価チェックリストを19件,本格的実施に係る競争評価チェックリストを125件,総務省から受領し,内容を精査した。

(8) 入札談合の防止への取組

 公正取引委員会は,入札談合の防止を徹底するためには,発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から,地方公共団体等の調達担当者等に対する独占禁止法や入札談合等関与行為防止法の研修会を開催するとともに,国,地方公共団体等が実施する調達担当者等に対する同様の研修会への講師の派遣及び資料の提供等の協力を行っている。
 平成29年度においては,研修会を全国で32回開催するとともに,国,地方公共団体等に対して275件の講師の派遣を行った。
 また,公正取引委員会は,発注機関の職員が入札談合等に関与した事件が依然として多くみられる現状を踏まえ,発注機関におけるコンプライアンスの向上に資することを目的として,発注機関(2,018機関)に対し官製談合防止に向けた取組について調査を実施し,その結果を取りまとめた報告書「官製談合防止に向けた発注機関の取組に関する実態調査報告書」を平成30年6月13日に公表した。

(9) 独占禁止法コンプライアンスの向上に向けた取組

 公正取引委員会は,独占禁止法コンプライアンスの向上に関連した企業の取組を促していく観点から,企業における独占禁止法に関するコンプライアンス活動の状況を調査し,改善のための方策等と併せて,報告書の取りまとめ・公表を行うとともに,その周知に努めている。
 平成29年度においては,事業者団体における独占禁止法に関するコンプライアンスを推進するために有効と考えられる方策や留意点を取りまとめた報告書「事業者団体における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について」(平成28年12月21日公表)に基づき,経済団体等からの依頼による講演(10回)及び公正取引委員会が主催する説明会(8回)を通じて周知を行った。

4  競争政策の運営基盤の強化

(1) 競争政策に関する理論的・実証的な基盤の整備

 競争政策研究センターは,平成15年6月の発足以降,独占禁止法等の執行や競争政策の企画・立案・評価を行う上での理論的・実証的な基礎を強化するための活動を展開している。平成29年度においては,国際シンポジウムを2回,公開セミナーを3回開催したほか,以下の2テーマについて検討会を開催し,それぞれ報告書を取りまとめ公表した。

ア 「データと競争政策に関する検討会」
 IoT(Internet of Things)の普及や人工知能関連技術の高度化を背景として,「ビッグデータ」の解析等を通じて,データを事業活動に生かすことの重要性が高まる中で,データの利活用を促すことに資するような競争政策上の課題について検討を行うことが必要となっている状況を踏まえ,データの収集・利活用に関連する競争政策及び独占禁止法上の論点を整理するための検討を行い,平成29年6月6日,「データと競争政策に関する検討会」報告書を公表した。

イ 「人材と競争政策に関する検討会」
 個人の働き方が多様化するとともに,労働人口の減少による深刻な人手不足のおそれから,人材の獲得を巡る競争の活発化が予想される。その一方で,活発化した競争を制限する行為が行われる可能性もある。このような状況を踏まえ,個人が個人として働きやすい環境を実現するために,人材の獲得を巡る競争に対する独占禁止法の適用関係及び適用の考え方を理論的に整理するための検討を行い,平成30年2月15日「人材と競争政策に関する検討会」報告書を公表した。

(2) 経済のグローバル化への対応

 近年,複数の国・地域の競争法に抵触する事案,複数の国・地域の競争当局が同時に審査を行う必要のある事案等が増加するなど,競争当局間の協力・連携の強化の必要性が高まっている。このような状況を踏まえ,公正取引委員会は,二国間独占禁止協力協定,経済連携協定等に基づき,関係国の競争当局と連携して執行活動を行うなど,外国の競争当局との間で緊密な協力を行っている。
 また,公正取引委員会は,国際競争ネットワーク(ICN),経済協力開発機構(OECD),アジア太平洋経済協力(APEC),国連貿易開発会議(UNCTAD)等といった多国間会議にも積極的に参加している。
 さらに,発展途上国において,既存の競争法制を強化する動きや,新たに競争法制を導入する動きが活発になっていることを受け,公正取引委員会は,これら諸国の競争当局等に対し,当委員会事務総局の職員の派遣や研修の実施等による技術支援活動を行っている。
 このほか,我が国の競争政策の状況を広く海外に発信することにより公正取引委員会の国際的なプレゼンスを向上させるため,英文ウェブサイトに掲載する報道発表資料の一層の充実,海外の弁護士会等が主催するセミナー等へのスピーカーの派遣等を行っている。
 平成29年度においては,主に以下の事項に取り組んだ。

ア 競争当局間における連携強化
 公正取引委員会は,カナダの競争当局であるカナダ競争局との間で,平成29年5月11日に「日本国公正取引委員会とカナダ政府競争局競争長官との執行活動の情報伝達に関する協力取決め」を締結し,同取決めに基づく協力が開始された。また,シンガポール共和国の競争当局である競争委員会との間で,平成29年6月22日に「日本国公正取引委員会とシンガポール競争委員会との間の協力に関する覚書」を締結し,同覚書に基づく協力が開始された。

イ 競争当局間協議
 公正取引委員会は,我が国と経済的交流が特に活発な国・地域の競争当局等との間で競争政策に関する協議を定期的に行っている。

ウ 経済連携協定への取組
 我が国は,EU,中国・韓国,トルコ等との間で経済連携協定等の締結交渉を行い,また,東アジア地域包括的経済連携(RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership)及び環太平洋パートナーシップに関する包括的かつ先進的な協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)の締結交渉を行ってきた。
 公正取引委員会は,経済連携協定等において競争政策を重要な要素と位置付け,競争分野における協力枠組みに係る条項等を盛り込む方向で交渉に参加している。

エ 多国間協議への参加
 国際競争ネットワーク(ICN)においては,その設立以来,ICNの活動全体を管理する運営委員会のメンバーを公正取引委員会委員長が務めている。また,当委員会は,平成23年5月から平成26年4月までカルテル作業部会の共同議長を,平成26年4月から平成29年5月まで同作業部会サブグループ(SG1)の共同議長を務め,平成29年5月からは企業結合作業部会の共同議長を務めている。加えて,当委員会主導の下で設立された「(カルテルに関する)非秘密情報の交換を促進するためのフレームワーク」及び「企業結合審査に係る国際協力のためのフレームワーク」を運用するなど各作業部会の取組に参画している。
 また,公正取引委員会は,経済協力開発機構(OECD)に設けられている競争委員会の各会合に参加し,ラウンドテーブル討議において我が国の経験を紹介するなどして,議論への貢献を行っている。
 このほか,インドネシアにおいて東アジア競争政策トップ会合及び東アジア競争法・政策カンファレンスを共催した。

オ 技術支援
 公正取引委員会は,東アジア地域等の発展途上国の競争当局等に対し,当委員会事務総局の職員の派遣や研修の実施等の技術支援活動を行っている。平成29年度においては,独立行政法人国際協力機構(JICA)の枠組みを通じて,インドネシア及びモンゴルに対して技術支援を行ったほか,競争法制を導入しようとする国や既存の競争法制の強化を図ろうとする国の競争当局等の職員を我が国に招へいし,競争法・政策に関する研修を実施した。
 また,日・ASEAN統合基金(JAIF)を活用した技術支援として,ASEAN加盟国の競争当局の職員等24名を我が国に招へいし,競争法・政策に関する研修を実施したほか,マレーシア,インドネシア及びブルネイ・ダルサラームにおいて開催された現地ワークショップに公正取引委員会事務総局の職員及び学識経験者を派遣するなどした。

(3) 競争政策の普及啓発に関する広報・広聴活動

 競争政策に関する意見・要望等を聴取して施策の実施の参考とし,併せて競争政策への理解の促進に資するため,独占禁止政策協力委員から意見聴取を行った。
 また,経済社会の変化に即応して競争政策を有効かつ適切に推進するため,公正取引委員会が広く有識者と意見を交換し,併せて競争政策の一層の理解を求めることを目的として,独占禁止懇話会を開催しており,平成29年度においては,3回開催した。
 さらに,全国8都市において,公正取引委員会委員と各地の有識者との懇談会を,また,全国各地区において,地方事務所長等の当委員会事務総局の職員と各地区の有識者との懇談会を,全国7都市において,当委員会委員による弁護士会に対する講演会等を,それぞれ開催した。
 前記以外の活動として,本局及び地方事務所等の所在地以外の都市における独占禁止法等の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため,「一日公正取引委員会」を開催するとともに,一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動を紹介する「消費者セミナー」を開催した。
 加えて,中学校,高等学校及び大学(短期大学等を含む。)に職員を講師として派遣し,経済活動における競争の役割等について授業を行う独占禁止法教室(出前授業)の開催など,学校教育等を通じた競争政策の普及啓発に努めた。

<平成29年度における主な取組>
○ 独占禁止政策協力委員150名に対する意見聴取の実施
○ 独占禁止懇話会の開催(3回)
○ 地方有識者との懇談会の開催(北海道旭川市,福島市,新潟県長岡市,静岡市,京都市,広島市,高知市及び鹿児島市)
○ その他の地方有識者との懇談会の開催(89回)
○ 弁護士会等に対する講演会等の開催(9回)
○ 一日公正取引委員会の開催(北海道旭川市,盛岡市,千葉市,三重県四日市市,京都市,島根県浜田市,松山市及び熊本市)
○ 消費者セミナーの開催(92回)
○ 独占禁止法教室の開催(中学生向け58回,高校生向け46回,大学生等向け110回)

5  独占禁止法施行70周年を迎えるに当たっての公正取引委員会委員長談話の公表

 平成29年7月に,独占禁止法の施行70年を迎えるに当たり,この70年間における公正取引委員会の活動についての歴史的回顧と競争政策の現代的意義をまとめた委員長談話(「独占禁止法施行70周年を迎えるに当たって ~イノベーション推進による経済成長の実現~」)を公表した。

関連ファイル

平成29年度公正取引委員会年次報告

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問い合わせ先

公正取引委員会事務総局官房総務課
電話 03-3581-3574(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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