[配布資料]
[発言事項]
事務総長定例会見記録(令和7年6月11日(火曜)13時30分~於官房第1会議室)
企業結合審査ガイドブックについて
本日は、企業結合審査を紹介するガイドブックを公表したことについて御説明をしたいと思います。この度、「企業結合審査ガイドブック」と題して、企業結合審査に特化してその内容を紹介するガイドブックを初めて作成し、公正取引委員会のホームページに掲載いたしました。「こちらのガイドブック一冊で、企業結合審査の大要が分かる」というものになっております。印刷した現物をお手元に御用意しております。
本ガイドブックは、企業活動の健全な発展と公正かつ自由な競争の促進に向け、企業結合審査に関する基本的な考え方や留意すべきポイントなどを、より多くの方々に正しく理解していただくことを目的としたものです。
株式取得や合併などの企業結合は、企業の成長戦略の一環として非常に重要な手段であり、新たな価値創出や国際競争力の強化に寄与するものであります。近年、我が国でも企業結合が活発化しておりますが、ほとんどの企業結合は、独占禁止法上、問題となるものではありません。一方で、市場における競争を実質的に制限するような企業結合が行われれば、企業にとっても、創意工夫を通じた更なる成長は期待できませんし、取引先や最終消費者に不利益をもたらすことになることから、このような企業結合は禁止されております。また、企業結合により競争が実質的に制限されることがないかチェックするために、一定の届出基準に該当する場合には事前届出義務がございます。したがって、企業結合を計画している企業の皆さまには、法令に対する理解を深めていただき、公正取引委員会の企業結合審査に御協力いただくとともに、私どもも透明性を持って審査手続を進めるということが極めて重要であると考えております。
今回作成したガイドブックでは、企業結合審査の概要に加え、審査基準や手続の流れなどについて、図解や平易な表現を用いて網羅的に解説しております。企業の皆さま方をはじめ、弁護士や会計士などの専門家等の方々、さらには学生や一般の皆さまにも有益な情報がたくさん盛り込まれております。ぜひ公正取引委員会のホームページから、閲覧・ダウンロードをしていただきますと幸いです。
今後も皆さまからの御意見を伺いながら、引き続き分かりやすい情報提供と、対話を重視した取り組みを進め、企業結合審査の理解促進に努めてまいります。
私からは以上です。
質疑応答
(問) 今日配られたこの企業結合審査ガイドブックは、今までこういうものがなかったということでしょうか。改めてこの目的、例えば昨年、経産省が、同意のない買収をやってもいいよといった内容のM&A指針を改めて出しましたが、そういった流れと同じになるのでしょうか。
(事務総長) 今回のこのガイドブックの作成目的ということですが、経済や国際情勢が目まぐるしく変化する現代において、企業結合は企業の成長戦略にとって重要な手段の一つとなっていると思います。企業や関係者の皆さまに、企業結合への理解を深めていただくことが重要だと考えておりまして、その正しい理解を深めていただく一助とするために、このガイドブックを作成したということでございます。
例えば、企業結合の結果、市場が寡占的になったり、市場シェアが高くなったりする場合がございますけれども、企業結合審査においては、市場シェアや集中度が高まることのみを捉えて問題とするのではなく、他の有力な競争者や輸入、新規参入者があるかどうかといったことなど、様々な考慮要素を検討して審査が行われるものです。こういった企業結合審査の視点も含めまして、これまでなじみのなかった皆さまにも御活用いただけるよう、審査のポイントや手続の流れを分かりやすく図表化しています。
今まで、例えば公正取引委員会のパンフレットの中に、独占禁止法についての一般的なパンフレットもございますが、この中に企業結合についての御説明もありますところ、ここに書いてるような記載につきましては、公正取引委員会への届出、報告が必要となる場合の概要が書かれているだけでございます。今般のガイドブックは、初めて企業結合審査に特化して作成したもので、これ1冊を見れば、企業結合の概要が分かりますというものでございます。
企業結合審査の概要はもちろん、審査基準や、あるいは実務的な手続の流れなどについても網羅的に解説しておりますので、より広く、深く企業結合審査について理解できるものとなっていると考えております。
(問) 一番気になるのは、市場の独占、シェアの割合ですが、企業結合審査ガイドブックでいうと、その辺が分かりやすく書いてある場所はありますか。
(事務総長) 様々な考慮要素について記載がございますけれども、基本的な考え方につきましては、企業結合審査ガイドブックの16頁以下のところに、企業結合審査についての考え方がございます。
先ほど申し上げましたとおりシェアだけではなく、いろんな考慮要素がございますけども、これは20頁の真ん中より下のところに、具体的な判断基準というのがございます。この辺りで考慮要素を書いております。
(問) このガイドブックの中に、今まで審査をしてこられた公取委の具体的な事例などを紹介している箇所はあるのでしょうか。
(事務総長) 具体的な審査事例自体は特に書いてはおりませんけれども、例えば14頁のところを御覧いただくと、QRコードになっているのですが、二つ目のQRコードに企業結合を計画する事業者の参考となる事例について公表しているものがございます。そこに、このコードから飛んでいくということになっておりますので、最新の情報をそういう意味では入手できるということであります。
(問) もし何かあれば教えていただきたいのですが、今日、1時間ぐらい前に、参院の本会議で、農林水産省が所管している食料システム法案が成立しました。これは農産物に関して適正な価格形成を目指すというところで、いろんな取引事業者に努力義務ということで、価格交渉に応じろとか、一応、農林水産省によると、公正取引委員会とかなりすり合わせをした上でのところであるということだそうです。これに対して何か、事務総長は把握されていますか。
(事務総長) 公正取引委員会といたしましては、発注者と受注者の価格共有を通じて、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁できる環境を整備するということが重要であると従来からも考えており、また、相応に私どもの政策も行ってきています。いわゆる食料システム法につきましては、食品の持続的な供給を確保することを目的として、最終的な取引条件は当事者間で決定されるということを前提に、取引の当事者間で誠実に価格協議を行うことなどを努力義務として課しているものと承知しております。
このような取組も通じて、食品等の取引において、適切な価格転嫁が進んでいくことは重要であると考えております。
以上