[配布資料]
(令和8年7月8日)「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」の改正について
[発言事項]
事務総長定例会見記録(令和8年7月8日(水曜)13時30分~)
ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査のフォローアップ調査に係る事業者アンケート及び消費者アンケートの開始について
本日、私からは2点ございます。まず1点目は、ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査のフォローアップ調査に係るアンケートの開始についてです。
公正取引委員会は、デジタル分野に関する新規の実態調査として、令和7年12月からニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査のフォローアップ調査を実施しております。
本調査では、公正取引委員会が令和5年9月に公表しましたニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書において示している取組の実施状況や、現在の競争環境、先ほど申しました報告書で指摘した課題の改善状況などについて、改めて実態の確認を行っています。また、生成AIを用いた検索サービスや、AI概要と呼ばれるサービスを提供する事業者が、ニュースメディアの許可なく、ニュースコンテンツを用いて、ユーザーによる検索に対する回答を生成しているという指摘があることを踏まえ、こうした新たなサービスがニュースコンテンツ配信分野における競争環境に与える影響についても確認を行っております。
こうした現在の競争環境・課題の改善状況や新たなサービスによる影響を把握するため、本日、ニュースコンテンツを提供する事業者約370社を対象として、ニュースポータル事業者や生成AIを用いた検索サービスを提供する事業者との取引に関する具体的状況などをお尋ねするアンケート調査を実施することとし、本日アンケートの協力依頼をお送りいたしました。
また、消費者のニュースコンテンツの閲覧行動を幅広く把握するため、消費者を対象としたアンケート調査も本日開始をしております。具体的には、ニュースコンテンツの閲覧が可能なニュースポータルサイトや生成AIサービスなどの各種サービスの利用状況などを調査することとしております。
なお、ニュースポータル事業者や生成AIを用いた検索サービスを提供する事業者に対しては、今後別途報告を求める予定です。
競争政策上の課題の解決に向けて実効的な提言を行うことを目指し、引き続き関係省庁や海外当局とも連携しながら調査を進めてまいりたいと考えております。以上が1点目でございます。
「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」の改正について
2点目は、本日7月8日に公表した、「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」、我々は「流通・取引慣行ガイドライン」と呼んでおりますが、このガイドラインの改正についてお話しいたします。流通・取引慣行ガイドラインは、我が国の流通・取引慣行について、独占禁止法上の考え方を示したものであり、事業者・事業者団体の独占禁止法違反行為の未然防止と、その適切な活動の展開に役立てようとするものです。
今回の改正は、各種報道等で用いられている言葉を借りますと、メーカーが流通業者に対して自社の商品の販売価格を指示する、いわゆる「指定価格制度」について独占禁止法上の考え方を明確化したものです。
この改正案につきましては、今年の5月13日に公表して広く意見募集をしたところ、19件の御意見をいただきました。これらの御意見を慎重に検討した結果、原案を一部変更した上で、本日、流通・取引慣行ガイドライン改正の成案を公表したところでございます。
前提として、メーカー等の事業者が、自社の商品を購入する小売業者等に対してその商品の販売価格を指示し、これを守らせる行為、これを「再販売価格維持行為」と呼んでいますけれども、この行為は競争手段の重要な要素である価格を拘束するものであり、独占禁止法上、原則として違法になります。
この再販売価格維持行為について、流通・取引慣行ガイドラインでは、例えば委託販売の場合など、例外として通常違法とならない場合の考え方を明らかにしているところですが、今回の改正では、その考え方に該当する場合と、その具体例を追加しました。
具体的には、例えばメーカーが小売業者に対して商品を販売する場合に、当該メーカーが、小売業者において当該商品のユーザーへの販売に至るまでに生じるリスクや費用を負担することによって、実質的に見て当該メーカーが自ら直接その商品をユーザーに販売していると認められる場合には、通常、違法とはならないとの考え方を示しています。そして、メーカーが負担する必要がある、ユーザーへの販売に至るまでに生じるリスクや費用はどのようなものであるかについての理解に資するよう、特にメーカーが負担する必要がある費用については、その内容や負担方法等について具体的に例示をしております。
また、今回の改正に関連して、公正取引委員会のウェブサイトに掲載している「よくある質問コーナー(独占禁止法)」にも、関連する設問を追加しております。
今回の改正では、メーカーが流通業者に対して商品を販売する場合に関し、原則として独占禁止法違反となる再販売価格維持行為の例外となるものを明らかにしたわけですが、再販売価格維持行為が原則として違反となる行為であることからして、ユーザーへの販売に至るまでに生じる費用を、流通業者に一部でも負担させる場合には、メーカーがその費用を負担したとは認められないことになります。いわゆる「指定価格制度」の名目で、こういったリスクや費用の負担を行わずに、再販売価格維持行為が実施されることがないよう、十分に留意していただく必要があります。
公正取引委員会としては、今回の改正の内容を十分に周知し、事業者の独占禁止法違反行為の未然防止、そして、その適切な活動の展開にお役立ていただきますとともに、引き続き、開かれた公正取引委員会として、事業者や事業者団体が実施しようとする具体的な取組に関する個別の相談については積極的に対応していきたいと考えております。
なお、本件の担当は取引部の相談指導室でございます。
私からの冒頭の発言は以上です。
質疑応答
(問) 1点目についてお尋ねします。ニュースポータル事業者と消費者に対してアンケートを行うということですが、具体的にどういった質問を御準備されているのでしょうか。何を聞き取るのかといったことを詳しく教えてください。また、アンケートの期間としては、今日からいつぐらいまで実施し、対象の370社はどのように選定されたのかなどを教えてください。
(事務総長) 3点あったと思いますが、まず、アンケートの中身について申しますと、事業者向けと消費者向けがあるわけですが、事業者向けに関しては、大きく分けると二つの観点があります。
一つは前回の実態調査で指摘した点についてのフォローアップということで、前回の報告書で指摘したニュースコンテンツ配信分野における独占禁止法上の問題や競争政策上の課題について、関係事業者間の取組の実施状況であるとか改善状況を調査するというのが大きなくくりとなります。
もう一つが、先ほど私が申し上げたようなAI絡みでありまして、AI検索サービスの登場によるニュースコンテンツ配信分野への影響という観点があります。これは、AI検索サービスを提供する事業者との契約の有無や、AI検索サービスを提供する事業者によるニュースコンテンツの利用を拒否するためにニュースメディア事業者が講じている対策などについて調査するものになっております。これが事業者向けの内容です。
それから、消費者向けについては、ニュースポータルサイト、あるいはインターネット検索、それから先ほど申しました生成AIサービス、そういったものを用いたニュースコンテンツの閲覧状況について調査するものになります。
次に、アンケートの期間については、事業者向けは、本日から7月29日までです。消費者向けは、所定の回答数が得られるまで行いますので、いつまでと決まっているものではないのですが、遅くとも7月22日までには終了するかと思っております。少し補足しますと、消費者向けのアンケートは、アンケート調査事業者に委託をしまして、その委託を受けた事業者が保有するモニターを対象に調査をするものになります。
それから、対象の370社がどういうところかについては、一般社団法人日本新聞協会に加盟している新聞社・通信社、一般社団法人日本雑誌協会に加盟している出版社、一般社団法人日本民間放送連盟に加盟しているテレビ放送事業者・ラジオ放送事業者になります。
(問) ありがとうございます。重ねてになりますが、消費者向けで、所定の回答数というのはどのぐらいを想定されているのでしょうか。あと、アンケートのやり方について、例えば郵送なのか、インターネットなのか、少し細かいですが、教えていただけますか。
(事務総長) 消費者向けアンケートで念頭に置いている回答数としては、2000になります。方法は、消費者向けも事業者向けも、インターネットを通じてということになります。
(問) ありがとうございます。2026年に調査実施することを公表されていたと思いますが、いつぐらいまでに結果として取りまとめるかは決まっているのでしょうか。
(事務総長) 今回アンケートを行うわけですが、これまでも行っているヒアリング調査についても続けていきますし、アンケートに基づいて、さらに深掘りして検討していくとか、海外当局ともいろいろな協力をしていくということになってまいりますので、今の段階では未定ということになります。
(問) 前回12月の会見でもお答えいただいていますが、AI検索事業者について、想定されている事業者を改めてお尋ねしてもよろしいですか。
(事務総長) 飽くまでも今の段階でということでありますけれども、想定しているところとしては、GeminiとかAI Mode、AI Overviewsを提供しているグーグル、それから、以下、会社名のみを申し上げますが、LINEヤフー、マイクロソフト、オープンAI、パープレキシティAI、アンソロピックなどになります。そういったところが今の段階で想定しているところになります。
(問) AI検索事業者に対する調査は、先ほどのニュースコンテンツメディアと消費者の調査が終わったら、それを踏まえて実施するということになるのでしょうか。
(事務総長) これまでもヒアリングなどは実施しているところですが、冒頭でニュースポータル事業者や生成AIを用いた検索サービスを提供する事業者に報告を求めると申し上げたとおり、今日から行っているアンケートなども踏まえて、そういった事業者に対してヒアリングなり報告なりを求めたりしていくという流れになるかと思います。
(問) ありがとうございます。令和5年9月の調査のときには、消費者が質の高いニュースコンテンツを享受できる環境の劣化への懸念を踏まえた調査であるという御発言があったと思いますが、今回も、同じような認識ということでよろしいでしょうか。
(事務総長) はい。今回、観点が二つあるということを申し上げましたうちの一つ目は前回の調査のフォローアップということですので、前回の調査を踏まえて、その実施状況、改善状況がどうなっているかというのを確認していくということで、共通した観点の下で状況を把握していくということになるかと思います。
(問) ニュースコンテンツ配信分野のフォローアップ調査について伺います。イギリスの競争・市場庁が、6月3日に、グーグルが導入しているAIを使った検索機能について、報道機関などが自社コンテンツの利用を拒否できるようにする行動規範を発表しました。また、その同日に、グーグルも、ウェブサイトの所有者が引用の可否を決められるようにする新しい機能を英国で試験的に開始すると発表しました。この動きについてどう見ているのか、どう評価しているのか、教えてください。
(事務総長) 御指摘のとおり、CMAと呼ばれているイギリス競争当局が、デジタル市場に関する法律であるデジタル市場・競争・消費者法に基づいて、行動要件(Conduct Requirement)を6月3日にグーグルに対して新たに課したということで、グーグルに対する行動要件では、例えばパブリッシャーのコンテンツが生成AIの学習などに使われることを拒否できる、つまり、オプトアウトできるようにするであるとか、コンテンツが生成AIの学習などにどのように利用されるかといった情報をパブリッシャーに開示する、あるいはパブリッシャーのコンテンツの出典を明確かつ正確に記載するといったことが定められていると承知をしております。
それから、御指摘のあったとおり、グーグルも本件に関連した対応をイギリスの一部において開始していると承知しております。コンテンツがAI OverviewsやAI Modeなどに使用されることをパブリッシャーが拒否できる機能の提供を開始しているというところだと思います。
当然我々の調査ともかなり関係してくる動きというふうに見ておりますし、このイギリスでの動きは、公正取引委員会としても関心を持って注視しているところであります。イギリスの競争当局を含めて、海外当局とも連携しながら、我々の調査も進めていきたいと考えているところです。
(問) ニュースコンテンツの調査について、今回の事業者向けのアンケートにおいては、契約の有無、内容について聞くということですけれども、割と動きの速い分野で、しかも、先ほど話に出たイギリスでの動きなどもあって、ある時点とその他の時点とで契約の内容が変わったり、あとは、契約は変わってなくても、実際のプラクティスが変わったりということがあるのではないかと想像しますが、その点についてはどのように把握されるのでしょうか。
(事務総長) 御指摘のとおり、非常に動きが速いですし、我々が調査をスタートした昨年12月以降の6、7か月の間でも、海外を含めいろいろな動きがあったところであり、今後の調査をしていく中でも、もちろんいろいろな動きがあるのだろうと思います。
最終的には調査結果を報告書という形でまとめることになると思いますが、調査をしていく中で、変化があればそれをフォローして、必要があれば報告書に反映していくことになるのだと思います。報告書という形でまとめるまでは、常に何が起きているか、それを独占禁止法上あるいは競争政策上、どう考えるのかという作業は、繰り返しやっていくことが必要になってくると考えているところです。
(問) ありがとうございます。そして、イギリスでもそういうことがあるのだから日本でも、と、グーグルに対して、当局としてプレッシャーというか国際的な整合性を求めることができるのかなと思いますが、今後どのようなアプローチを考えていますか。
(事務総長) グーグルが先行してイギリスでやっていることが、それ以外の地域でどうなっていくのかというところもよく注視していきたいと思っていますし、我々の調査で、もし何らかの競争政策上あるいは独占禁止法上の課題がありそうだということになれば、今のままでいいのかという問題提起はもちろんしなければいけないと思っています。その際には、同じような観点で調査をしたり、あるいは事態を注視している当局は他にもありますので、そういうところともしっかり連携をして何ができるのかを一緒に考えていったりという作業が、今後出てくるのかなと思っております。
以上