[配布資料]
独占禁止法に関する相談事例集(平成29年度)について(平成30年6月27日公表資料)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成30年6月27日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
独占禁止法に関する相談事例集(平成29年度)について
本日,私からは,独占禁止法に関する相談事例集についてお話しいたします。
公正取引委員会では,毎年度,独占禁止法に関する相談事例集を取りまとめて公表しており,本日,平成29年度分の相談事例集を公表いたしました。
公正取引委員会は,違反行為の未然防止などのために,「流通・取引慣行ガイドライン」を始めとして多くのガイドラインを公表し,加えて具体的な事業活動に関して,事業者や事業者団体がこれから行おうとする行為が,独占禁止法上問題にならないかどうかについて,相談を受け付けております。
パワーポイントの概要資料の1枚目を御覧ください。独占禁止法に関する相談件数を記載しております。平成29年度には,合わせて1,554件の相談が寄せられました。
2頁目に,相談事例集をお示しする趣旨を記載しております。相談事例集は,先ほど申しましたように,ガイドラインなどを公表しておりますけれども,それだけでは,個々の当てはめについて必ずしもどうなのかなというふうに思われる方もいらっしゃるだろうということから,他の方にも参考にしていただけるように,事業者などから寄せられた個別相談の中から,相談者以外にも参考となるような主要な事例を選びまして,独占禁止法上の考え方を分かりやすく説明したものでございます。
今回の相談事例集では,13の事例を掲載しており,そのうち事業者の活動に関する相談が10件,事業者団体の活動に関する相談が3件になります。
今回の相談事例集の特徴について,行為類型別に見ますと,流通・取引慣行に関する事例が4件,共同行為・業務提携に関する事例が6件と,例年に比べて掲載数を多くしています。
このうち,次の3頁以下にその事例がありますけれども,事例5の「競合する電子部品メーカー間における販売に関する業務提携」におきましては,業務提携の事案において,「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」,いわゆる企業結合ガイドラインを参照していることを初めて明らかにしております。
また,掲載した13件のうち,その内容を見てみますと,事例4はプラットフォームに関するもの,事例6はシェアリングエコノミーに関するもの,事例7は海外からの旅行客の受入れ体制整備に関するもの,事例8はドライバー不足に伴う配送共同化に関するもの,事例11は働き方改革に関するものであり,最近の社会・経済情勢を反映したものとなっています。
私の方からは,これらの事例のうち三つほど簡単に御紹介させていただきます。
まず,4頁目の一番上にあります事例4を御覧ください。本件は,プラットフォーム運営事業者が,自らのプラットフォームを利用するソフトウェアメーカーに対し,特定のソフトウェアについて,開発費用を一部負担することなどの見返りとして,当該ソフトウェアを一定期間自らのプラットフォームのみを通じて配信するように義務付けることについて,主に自己の競争者との取引に及ぼす影響の観点から検討したものです。
本件におきましては,他のプラットフォーム運営事業者が,当該ソフトウェア以外にも,様々な人気ソフトウェアを配信している複数のソフトウェアメーカーと取引することが可能なことなどから,プラットフォーム市場において市場閉鎖効果が生じるおそれは小さく,独占禁止法上問題となるものではないと回答しております。
次に,5頁目の事例8を御覧ください。事例8は,家電製品メーカー6社が,将来における物流業務の共同化の実現性及びそのスキームを検討するために,各社の物流業務に関する情報を共有することについて,主に不当な取引制限の観点から検討したものです。
本件は,当該6社がそれぞれ製造販売する家電製品の販売価格に占める各社の物流経費の割合はいずれも約5パーセントと小さいこと,家電製品そのものの価格又は数量に関する情報は共有しないことなどから,独占禁止法上問題となるものではないと回答しております。
最後に,6頁目の事例11を御覧ください。事例11は,交通インフラ工事業者を会員とする団体が,政府の働き方改革を踏まえ,会員による週休二日制の実現に向けて,特定の曜日を休業日とする運動を推進することについて,主に団体の自主規制による競争阻害性の有無の観点から検討したものです。
本件は,発注者が,当該特定の曜日を含む週休二日制を前提とした工期で既に発注を行っていることなどから,需要者の利益を不当に阻害するものではないこと,会員間で不当に差別的な内容ではないこと,会員の労働者の処遇改善及び人材の確保という社会公共的な目的に基づく取組であり,取組の内容も合理的に必要とされる範囲内のものであることに加えて,当該団体は当該運動への参加を会員に強制しないことから,独占禁止法上問題となるものではないと回答しております。
今,申し上げました3件を含めまして,それぞれの事例の内容の詳細につきましては,担当の取引部相談指導室にお尋ねいただきたいと思います。
相談事例集は,毎年度,公正取引委員会のホームページに掲載していますが,平成29年度における相談事例集のトップページへのアクセス件数は,約6万4000件と多くのアクセスをいただいております。
また,ホームページへの掲載に当たりましては,事業者等が自らの関心のある事項を参照しやすいように,年度別だけではなくて,行為類型別にも掲載しています。例えば,事業者の活動に関する事例については,「流通・取引慣行に関するもの」,「業務提携に関するもの」などに分け,また,事業者団体の活動に関する事例については,「価格制限行為」,「不公正な取引方法」などの見出しをつけておりまして,行為類型別に事例を参照できるようにしています。これらは,公正取引委員会のホームページの「相談事例集」のページで御参照いただけるようになっております。
公正取引委員会としましては,事業者などにおいて,相談事例集を御活用いただいて,独占禁止法上の考え方への理解が一層深まり,違反行為の未然防止が図られることを期待しております。
質疑応答
(問) 今のお話と違うんですけど,今週,ボクシングのプロとアマチュアのライセンスの関係で,公正取引委員会が協会に聞き取り調査をしたという報道があったんですけども,これは恐らく今年2月の有識者会議の報告書を受けてのものかなと思うんですが,個別の話になってしまいますけど,今後もそういう情報が寄せられた場合は,例えばフリーランスとか,芸能人とか,スポーツ選手とか,その契約慣行について,公正取引委員会としても積極的に何らか改善を促していくという,そういうお考えでしょうか。
(事務総長) 今,御質問にありました日本ボクシング連盟に対しては,任意のヒアリングを行っております。これは,今の御質問の中にもありましたが,「人材と競争政策に関する検討会」の報告書を公表いたしまして,その後,私どもいろいろな取組をしております。例えば,全国で説明会を主催したりしておりました。
さらに,今月からは報告書の内容の説明,それから自発的な改善への取組を目的として,スポーツ団体に対するヒアリングを始めています。今回のボクシング連盟へのヒアリングも,その一環でございます。
今,若干,個別の話題に関する御質問も含まれていましたけれども,私どもの方からは,検討会の報告書の内容を説明して,飽くまで現状の実務に関して自発的な点検を促したものでして,何か特定の問題に焦点を当ててヒアリングを行ったというものではありません。
今後でございますけど,もちろん検討会の報告書といいますのは,この人材獲得に関する分野において,独占禁止法がどのように適用されるのか,されるべきなのかということについて,理論的な検討を行っていたものでございますので,今,申し上げたような取組も含めて,様々な企業,団体においてですね,そうした独占禁止法との関係に十分留意していただくといった広報活動は続けていきたいと思っています。また,個別具体的な情報が寄せられれば,それはそうしたものとして対応してまいりたいと思います。
(問) ちょっと別の話題で恐縮なんですけど,長崎のFFG(ふくおかフィナンシャルグループ)と十八銀行との統合の関連でですね,5月に入ってから,その問題解消措置として,債権譲渡を銀行側が検討して,その調査を続けている段階だったかと思うんですけれども,調査開始から約2か月経つ中で,その債権譲渡の額というのが,調査というのはもう終了して,皆さんに報告されている段階なのか,あるいはまだ,ある程度,完璧に固まっていないけど,額というのはこれくらいと見えてきているのか,その辺りの進捗をお聞かせいただけますでしょうか。
(事務総長) ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の統合の案件について,私どもとしては2次審査を行っていて,当事会社のほうから,問題解消措置の提示の用意があるということで,私どもはその提示があれば,それを検討するという立場でございます。これは違反事件ではありませんけれども,個別の案件の審査に関わるものでございますので,例えば,どのような問題解消措置の内容であるのかというのは,かなり企業の機微な情報に触れる部分もございますので,大変恐縮ではございますけど,途中の段階で,かなり大くくりなスケジュール感というのは,これまで申し上げてまいりましたけれども,具体的な提案があったかどうかという点については,現状ではお答えするのは適当ではないかなと思います。
(問) 関連でもう1点。そういう意味で,これもお答えが難しいかもしれないんですけれども,実際に債権譲渡をするとなったときにですね,譲渡先の銀行に対するヒアリングを行うことになると思うんですけれども,そうしたヒアリングというのは,もう行われていらっしゃるのか,まだ,これから先になるのか,その辺りお願いできますでしょうか。
(事務総長) これも一般論で申し上げれば,当事会社のほうから問題解消措置の提示があった場合には,まず,それが問題解消措置として十分なものなのかどうかということを検討する必要があります。ですから,その過程において,十分であるということと,それから実行可能であるのかということも,やはり検証する必要がありますので,その必要に応じて,譲渡先が決まっている,あるいは想定される譲渡先があるというのであれば,それが本当に機能し得るものなのかどうかということを検討することは,あるいは譲渡先のほうにヒアリングしたりすることもあります。それはケースによって,どういうやり方をするかというのは異なってきますけれども。
(問) 今日発表になった相談事例集なんですけれども,プラットフォームであるとかシェアエコノミーの事例が載っているんですけれども,件数としては,プラットフォームとシェアエコノミーの相談数はどれぐらいあったか,それが増えているかというのを,ちょっと教えていただけますか。
(事務総長) 相談事例集,本文の方を御覧いただいても分かるかと思いますけれども,これは当事者からの御了解を得ておりますけれども,基本的には相談事例集に載せておりますのは匿名になっております。それから,個々のケース1,500件ぐらい相談がありますけれども,様々なものがありますので,それを今おっしゃられたようなくくりでですね,必ずしも集計しておりませんので,申し訳ないですが,手元に数字はございません。
(問) 相談事例の関連で,ちょっと全般的な話を伺いたいんですけれども,特に最近,自動車分野とかですね,競争領域と協調領域をどう区切るかとかですね,業界単位で技術開発をして,電池とか特にそうなんでしょうけれども,標準を獲得していこうとか,そういうふうな動きが結構多々見られるところだと思うんですけれども,そういった事例も,協調と競争の領域の切り分けが焦点になっている事例もちょっと見られるようなんですが,そこは一般的にですね,どういったポイントに着目して,事業者は判断すればいいんでしょうか。事業者,あるいは事業者団体というのは。
(事務総長) 競争と協調というふうにおっしゃられましたけど,その協調関係について言えば,同業者間で一緒に集まってやるものもあれば,取引の川上・川下といったところで一緒になってやるということもあろうかと思います。その場合に,競争業者間でやれば水平的な関係が問題になりますので,それによって,市場のどのくらいが制約されるのか,あるいはその成果というものがですね,どういうふうに共有されるのかされないのかということが一つのポイントになってくるのではないかと思います。また,取引関係にある人たちの間での協調関係ということであれば,この事例の中にもありますけれども,そういった縦の関係のところが一緒になることによって,川上・川下,それぞれの分野において,他の事業者に対する閉鎖効果がどうなるのか。この事例集の中の一番最初のケースというのは,問題になるというふうにしたものですけれども,これはやはり縦の関係で,川上である技術を供与する側と協業して,技術を供与する側を取り込んでしまったら,相談者の競争相手に対して大きな影響を及ぼすということで,これは問題になると回答しておりますので,そうした市場閉鎖効果などが主としては問題になるのではないかと思います。
また,こうした点については,それぞれの現れる文脈によって,例えば,知財のガイドラインでありますとか,流通・取引慣行ガイドラインであるとか,関係するガイドラインも御参照いただきたいと思います。
(問) 別件で恐縮なんですけれども,携帯電話の調査報告書,明日発表になると思うんですけれども,今のところ,4年縛りの問題なんかが取り上げられる見通しだということを聞いているんですけど,今回の報告書でですね,携帯キャリアに対して,どんな対応を望むかということと,あと報告書の中でですね,問題として指摘されている事例について,執行のスタンスみたいなものを教えていただけないでしょうか。
(事務総長) 携帯電話の分野については,以前に報告書を作成して,その後の状況についてフォローアップしてきたところであります。この報告書につきましては,明日,内容を公表いたしますので,恐縮ですが,そのときに改めてお尋ねいただければと思います。
以上