(正本とは形式面で異なります。)
第十三章 競争政策
第十三・一条 定義
この章の規定の適用上、
(a) 「反競争的行為」とは、競争に悪影響を及ぼす行動又は取引であって、いずれかの締約国の競争法の下で罰則その他排除に係る措置の対象とされるものをいう。
(b) 「競争当局」とは、次のものをいう。
(i) バングラデシュについては、バングラデシュ競争委員会又はその後継機関
(ii) 日本国については、公正取引委員会又はその後継機関
(c) 「競争法」とは、次のものをいう。
(i) バングラデシュについては、二千十二年の競争法(二千十二年法律第二十三号)並びにその実施について定める命令、規則及び指針並びにそれらの改正
(ii) 日本国については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)並びにその実施について定める命令及び規則並びにそれらの改正
第十三・二条 競争法、競争当局及び反競争的行為
1 各締約国は、経済効率を増進すること及び経済効率を通じて消費者の福祉を増進することを目的として、反競争的行為を禁止する自国の競争法を維持し、並びに反競争的行為に関連して適当な措置をとる。
2 各締約国は、自国の競争法を自国の区域において商業活動に従事する全ての団体について適用する。各締約国は、自国の競争法の適用除外について、当該適用除外が自国の競争法に規定され、かつ、公共政策又は公共の利益に基づくものであることを条件として、これを定めることができる。
注釈 この2のいかなる規定も、締約国が自国の国境の外における商業活動であって、自国の管轄内で反競争的な効果を有するものについて自国の競争法を適用することを妨げるものと解してはならない。
3 各締約国は、自国の競争法の効果的な執行について責任及び権限を有する運用上独立した競争当局を維持するよう努める。
4 各締約国は、国籍に基づく差別を行うことなく、自国の競争法を適用し、及び執行する。
第十三・三条 競争法の執行における手続の公正な実施
1 この条の規定の適用上、「執行の手続」とは、競争法の違反の疑いに関する審査又は捜査に続いて行われる行政上又は司法上の手続をいう。
2 各締約国は、反競争的行為を規制するため、自国の関係法令に従い、行政上及び司法上の手続を公正な方法により実施する。
3 各締約国は、自国の競争法に違反した者に対し、制裁を科し、又は是正措置をとる前に、次のことを確保する。
(a) 制裁を科し又は是正措置をとろうとする競争上の懸念について情報を提供すること。
(b) 当該者が自己を代表し、又は弁護人により代理される合理的な機会を与えること。
(c) 自己の防御のために陳述し、かつ、証拠を提出する合理的な機会を与えること。もっとも、競争当局は、当該者に対し、暫定的な制裁を科し、又は暫定的な是正措置をとった後合理的な期間内に、陳述し、かつ、証拠を提出する機会を与えることができる。
特に、各競争当局は、当該者に対し、自己の防御のために証拠又は証言を提出する合理的な機会(適当な場合には、適切な資格を有する専門家による分析の提供、証言する証人に対する反対尋問の実施並びに執行の手続において提出される証拠に関する検討及び反証の機会を含む。)を与える。
注釈 この3の規定の適用上、「制裁」とは、命令又は法的措置を排除するものではない。
4 各競争当局は、関連する審査又は捜査を行う際に従うべき手続を書面により採用し、又は維持する。競争当局は、審査又は捜査に確定的な期限が定められていない場合には、合理的な期間内に審査又は捜査を行うよう努める。
5 各締約国は、自国の競争法の違反の疑い並びに当該競争法に基づく制裁及び是正措置の決定に関して行われる執行の手続について適用される規則であって手続及び証拠に関するものを採用し、又は維持する。この手続及び証拠に関する規則は、執行の手続の全ての当事者についてひとしく適用する。
6 各締約国は、執行の手続の当事者であって競争法に基づく制裁又は是正措置の対象となるものに対し、競争当局又は裁判所若しくは当該締約国の法令に基づいて設置され、及び権限を与えられる他の独立した審判所において、当該制裁又は是正措置に関する再審理(実体的な又は手続上の誤りがあると申し立てられる場合の再審理を含む。)を求める機会を与える。
7 各締約国は、自国の競争当局に対し、違反の疑いについて、当該競争当局が自国の法律に定める方法により承認を与えることにより、当該違反の疑いに関する手続の当事者の間の相互の同意により自主的に解決する権限を与える。
8 締約国は、自国の競争法の違反がある旨の主張を行う場合には、執行の手続において当該違反の法的根拠及び根拠とされる事実を立証する責任を負う。
注釈 この8のいかなる規定も、締約国が、当該主張を擁護するために、当該主張の対象となる者に対し、一定の要件について立証する責任を負うことを求めることを妨げるものではない。
9 各締約国は、自国が審査又は捜査の過程において入手する事業上の秘密の情報及び自国の法令により秘密のものとして取り扱われるその他の情報の保護について定める。締約国は、執行の手続においてそれらの情報を使用する場合又は使用する意図を有する場合において、その使用が自国の法令によって許容され、かつ、適当なときは、審査又は捜査の対象となる者がその主張に対して適切な防御の準備を行うために必要な情報を適時に入手することを認めるための手続を定める。
10 各締約国は、自国の競争当局が、自国の競争法の違反の可能性に関する審査又は捜査の対象となる者に対し、当該審査又は捜査に関連する重要な法律上、事実上又は手続上の問題について当該競争当局と協議する合理的な機会を与えることを確保するよう努める。
第十三・四条 私訴に係る権利
1 この条の規定の適用上、「私訴に係る権利」とは、競争法の違反により自己の事業又は財産に損害を受けた者が、独自に又は競争当局による当該違反の認定の後に、裁判所又は他の独立した審判所による救済(差止め、金銭的救済その他の救済を含む。)を求める権利をいう。
2 各締約国は、私訴に係る権利が競争法の公的な執行を補完する重要なものであることを認め、独自に行使される私訴に係る権利について定める法律その他の措置を採用し、又は維持する。
3 締約国は、独自に行使される私訴に係る権利について定める法律その他の措置を採用せず、又は維持しない場合には、1に規定する者に対して次のことを認める権利を定める法律その他の措置を採用し、又は維持する。
(a) 競争当局が競争法の違反の疑いに関する審査又は捜査を開始するよう要請すること。
(b) 競争当局による違反の認定の後、法律で定めるところにより、裁判所又は他の独立した審判所に救済を求めること。
4 一方の締約国は、2又は3の規定に従って定める権利について、法律で定めるところにより、自国の者に与えられる条件よりも不利でない条件で他方の締約国の者が行使することができることを確保する。
5 締約国は、この条の規定に基づいて創設し、又は維持する権利を行使するための合理的な基準を定めることができる。
第十三・五条 協力
1 両締約国は、競争法の効果的な執行を促進するための競争当局の間の協力及び調整の重要性を認める。したがって、各締約国は、次のことを行う。
(a) 競争政策の策定に関する情報を交換することにより競争政策の分野において協力すること。
(b) 適当な場合には、競争法の執行に関する問題について協力すること(通報、協議及び情報の交換を通じて協力することを含む。)。
2 一方の締約国の競争当局は、他方の締約国の競争当局との間で、協力の条件を定める協力に関する取決めを行うことを検討することができる。
3 両締約国は、自国の法令及び共通の利益に適合する態様により、かつ、自国の合理的に利用可能な資源の範囲内で協力することに合意する。
第十三・六条 技術協力
両締約国は、競争法の策定、適用及び執行並びに競争政策の策定及び実施における多様な経験を共有することにより両締約国が利益を享受し得ることを認め、利用可能な資源の範囲内で、次の活動を含む相互に決定する技術協力を行うことを検討する。
(a) 関連する問題についての助言又は訓練の提供(職員の交流によるものを含む。)
(b) 競争に関する啓発についての情報及び経験の交換(競争の文化を促進するための方法についてのものを含む。)
(c) 他方の締約国が自国の競争法を実施することに対する支援
第十三・七条 消費者の保護
1 両締約国は、効率的かつ競争的な市場を創設し、及び消費者の福祉を向上させる上での消費者の保護に関する政策及びその執行の重要性を認める。
2 この条の規定の適用上、「詐欺的な又は誤認させる商業活動」とは、消費者に現実の害をもたらし、又は防止されない場合に現実の害をもたらす急迫したおそれがある詐欺的な又は誤認させる商業行為をいい、次の行為を含む。
(a) 重要な事実に関して誤った表示(その暗示を含む。)を行う行為
(b) 物品又はサービスを供給する意思又は合理的な能力なしに、その供給のための広告をする行為
(c) 消費者による代金の支払の後、当該消費者に商品を引き渡さず、又はサービスを提供しない行為
(d) 許可なく、消費者の金融口座、電話料金のための口座その他の口座に請求をし、又はこれらの口座から引落としをする行為であって、法律で定めるもの
3 各締約国は、消費者の保護に関する法律その他詐欺的な又は誤認させる商業活動を禁止する法令を制定し、又は維持する。
注釈 詐欺的な又は誤認させる商業活動は、締約国が制定し、又は維持する民事又は刑事の法令によって禁止することができる。
4 両締約国は、国境を越える詐欺的な又は誤認させる商業活動が増大していること並びに両締約国間の協力及び調整が望ましいことを認める。
5 両締約国は、適当な場合には、詐欺的な又は誤認させる商業活動に関して相互に関心を有する事項について、協力及び調整(消費者の保護に関する法律の執行における協力及び調整を含む。)を促進する。
6 両締約国は、自国の法令及び共通の利益に適合する態様により、かつ、自国の合理的に利用可能な資源の範囲内で、自国が決定する消費者の保護に関する政策、法律又はこれらの執行について責任を負う国の関連する公的機関又はその職員を通じ、この条に規定する事項について、協力し、及び調整するよう努める。
第十三・八条 透明性
1 両締約国は、自国の競争に関する執行政策をできる限り透明性のあるものとすることの価値を認める。
2 各締約国は、競争法並びに競争に関する政策及び執行活動の透明性が有する価値を認め、公にアクセス可能な単一の窓口に統合されている自国の公式ウェブサイトのリンクを通じ、自国の競争法並びに競争に関する政策及び執行活動に関する自国の公開情報を維持し、及び更新するよう努める。
3 一方の締約国は、他方の締約国からの要請があった場合には、当該要請を行った他方の締約国に対し、次の事項に関する公開情報を利用可能なものとする。
(a) 自国の競争法の執行に関する政策及び実務
(b) 自国の競争法の適用除外及び免除。ただし、当該要請において、関心のある物品又はサービス及び市場が特定され、かつ、当該適用除外又は免除がどのように両締約国間の貿易又は投資を妨げるおそれがあるかについて説明する情報が含まれる場合に限る。
4 各締約国は、自国の競争法の違反を認定する最終的な決定が書面により行われること並びに行政上の問題である場合には当該決定にその基礎となった事実認定及び論拠(法的分析及び適当な場合には経済的分析を含む。)を記載することを確保する。
5 一方の締約国は、更に、4に規定する最終的な決定及び当該決定を実施する命令を公表すること又はその公表が可能でない場合には利害関係を有する者及び他方の締約国が知ることができるように利用可能なものとすることを確保する。各締約国は、公に利用可能なものとされる当該決定又は当該命令が、自国の法律により公への開示から保護されている秘密の情報を含まないことを確保する。
第十三・九条 協議
一方の締約国は、他方の締約国からの要請があった場合には、両締約国間の理解を促進し、又はこの章の規定の下で生ずる特定の問題(競争法の行政上又は司法上の執行の内容を含む。)に対処するため、当該要請を行った他方の締約国と協議する。当該要請を行った他方の締約国は、当該要請において、適当な場合には、当該問題がどのように両締約国間の貿易又は投資に影響を及ぼすかについて明示する。当該要請を受けた一方の締約国は、当該要請を行った他方の締約国の懸念に対して十分かつ好意的な考慮を払う。
第十三・十条 紛争解決の不適用
第二十一章の規定は、この章の規定については、適用しない。