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アニメの制作現場における取引の適正化に関する指針

アニメの制作現場における取引の適正化に関する指針

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令和8年6月22日

内閣府 知的財産戦略推進事務局

公正取引委員会

はじめに ※本ページは注釈を省略しています。

 アニメ・音楽・放送番組・映画・ゲーム・漫画といったコンテンツは、我が国の誇るべき財産であるが、コンテンツ産業活性化戦略(令和6年6月21日閣議決定「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」において策定・明記)において、「我が国のクリエイターの創造性が最大限発揮される環境を整備する」とされ、「映画・アニメの制作現場におけるクリエイターの取引環境に係る実態調査を行う」とされたことを踏まえ、公正取引委員会は、映画・アニメの制作に係る取引分野に関する実態調査をそれぞれ実施し、令和7年12月に実態調査報告書を公表したところである。
 そして、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」(令和7年6月13日閣議決定)において、前記実態調査の「調査結果を踏まえて、独占禁止法上の考え方を明確にする指針を策定する」とされたことも踏まえ、今般、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号。以下「取適法」という。)及び特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号。以下「フリーランス・事業者間取引適正化等法」という。)に照らして具体的な考え方を示す「アニメの制作現場における取引の適正化に関する指針」(以下「本指針」という。)を内閣府知的財産戦略推進事務局及び公正取引委員会の連名で策定した。

第1 総論

1 制作取引の流れ

アニメの制作現場における取引主体間の主な取引の流れは、図表1のとおりである。

図表1 アニメ制作の取引の流れ図

※ 監督、脚本家等の一部の職種は製作委員会等が直接委託する場合もある。


 アニメ制作の取引の流れは様々な形が存在する。現在主流である製作委員会方式においては、一般的に、映画会社、放送事業者、出版社などがアニメ製作を企画し、実際にアニメを制作する業務は、製作委員会から受託した元請制作会社が行う。また、元請制作会社が自社企画を製作委員会へ売り込む場合もある。
 このほか、動画配信事業者が、オリジナル作品を製作し配信するに際して、元請制作会社に制作委託を行う場合もある。
 元請制作会社がアニメを制作するに当たっては、元請制作会社と下請制作会社、制作会社とフリーランスなどの間で、情報成果物の作成を委託し対価の支払を取り決める業務委託契約を締結する。アニメ制作の中心を担う監督や脚本家等のメインスタッフと呼ばれるフリーランスは、製作委員会又は動画配信事業者(以下「製作委員会等」という。)と直接契約する場合もある。
 フリーランスへの発注については、職種によっては契約期間中にわたって業務の対価が月額で支払われる場合(拘束契約 )もある一方で、主に監督業務や脚本の作成などにおいて作品単位・1話単位で対価が支払われる契約が締結される場合や、原画や仕上げの作業などにおいて枚数単位・カット単位の単価制で対価が支払われる契約が締結される場合もある。
 そして、制作されたアニメは、製作委員会等に納品された後、テレビ放送、劇場公開、動画配信事業者による配信、DVD・関連グッズの販売等の様々な形態で消費者に届けられる。
 このように、アニメ制作においては、主に、
 ⅰ 製作委員会等・元請制作会社間の取引
 ⅱ 元請制作会社・下請制作会社間の取引
 ⅲ 制作会社・フリーランス間の取引
の3つの取引に大別され、各取引段階において、発注者である製作委員会等又は制作会社と受注者である制作会社又はフリーランスとの間で各種の契約が締結される。
 実態調査においては、これらそれぞれの取引について調査を行い、その一部について独占禁止法、取適法及びフリーランス・事業者間取引適正化等法上の観点から問題となり得る行為を確認し、これらの法律上の考え方等を整理した。
 これらの行為が是正される必要があることは言うまでもないが、クリエイターの創造性や能力が最大限発揮され、制作会社やフリーランスに適切に収益を還元する環境を整備するためには、発注者である製作委員会等や制作会社において積極的な対応が求められる。
 なお、アニメ制作の取引については、以下の指針・ガイドラインが策定されているので、該当する事業者においては、これらの指針・ガイドラインも参照されたい。
図表2 取適法適用対象(映画制作に係る商取引)
名称 公表元 概要
アニメーション制作業界における取引適正化のガイドライン(アニメーション制作業界における受託適正取引等の推進のためのガイドライン) 経済産業省、中小企業庁 多くの制作会社やクリエイターが関与するアニメーション制作業界において適正な取引を推進することを目的に、取適法及びフリーランス・事業者間取引適正化等法の概要並びに望ましい取引事例や問題となり得る取引事例等を具体的に解説したもの。
放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン 総務省 放送コンテンツの製作に係る取引の適正化を目的として策定されたものであり、取適法や独占禁止法等の観点から、放送事業者と製作委員会・アニメ制作会社との間の取引についても言及されている。

2 法令の適用関係

 取引主体間の関係は様々であり、どの法令が適用されるかについては、契約の名称にかかわらず、個別の実態を踏まえて判断されることとなるが、事業者間取引については、独占禁止法、取適法及びフリーランス・事業者間取引適正化等法の適用が考えられる。
 この点、独占禁止法及び取適法とフリーランス・事業者間取引適正化等法については、原則としてフリーランス・事業者間取引適正化等法を優先して適用し、独占禁止法と取適法については、原則として取適法を優先して適用する。
 取適法の適用対象は図表2のとおりであるところ、製作委員会の構成事業者は、映画会社、放送事業者、出版社、広告代理店等と大企業であることが少なくないとみられるのに対し、制作会社の大多数は中小企業者であることから、制作会社が一定規模以上である場合を除き、アニメ制作において制作会社が受託する取引は、多くの場合で取適法の適用対象となると考えられる。
 なお、上記のとおり、取適法の適用対象ではない場合であっても、独占禁止法の適用があり得る。
 なお、本指針は独占禁止法上の観点から問題となり得る行為を整理したものであるが、実演家が特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号。以下「フリーランス・事業者間取引適正化等法」という。)の「特定受託事業者」又は製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号。以下「取適法」という。)の「中小受託事業者」に該当する場合には、下表の行為については、独占禁止法だけでなくフリーランス・事業者間取引適正化等法又は取適法に違反する可能性もある。そのような場合には、各事業者においては、この点についても留意が必要である。例えば、フリーランス・事業者間取引適正化等法上、業務委託をした事業者は、直ちに、報酬の額、支払期日等の取引条件を明示する義務を負う点に留意が必要である(フリーランス・事業者間取引適正化等法第3条第1項)。独占禁止法と同様に、これらの法律に違反する場合には、公正取引委員会において厳正に対処していく。
 
図表2 取適法適用対象(映画制作に係る商取引)
資本金基準・従業員基準
委託事業者 中小受託事業者(個人を含む)
情報成果物作成委託
及び
役務提供委託
資本金 5000万円超 資本金 5000万円以下
資本金 1000万円超 5000万円以下 資本金 1000万円以下
常時使用する従業員 100人超 常時使用する従業員 100人以下

3 本指針の性格

 本指針は、実態調査報告書を踏まえ、独占禁止法、取適法及びフリーランス・事業者間取引適正化等法などの観点から、前記1の取引における当事者である製作委員会等、制作会社又はフリーランスが採るべき行動等を行動指針として取りまとめたものである。
 アニメ制作の取引における発注者の立場として採るべき行動を示し、また、 問題となり得る行動例を列挙するとともに、 取引の適正化のために参考となる行動例を取り上げている。 さらに、競争政策上の観点から、受注者の立場として 採るよう努めるべき行動もまとめている。

 製作委員会等又は制作会社が本指針に記載の行動指針に沿わないような行為をすることにより、独占禁止法、取適法又はフリーランス・事業者間取引適正化等法に違反する場合には、公正取引委員会において厳正に対処していく。

第2 製作委員会(構成事業者)等が採るべき行動

1 発注時点

(1) 書面等による取引条件の明示

製作委員会(構成事業者)が採るべき行動
✓  取引条件が不明瞭であることによるトラブルが生じることがないよう、元請制作会社に対する制作委託に際して、直ちに、取引条件を明示すること
✓  未定事項についても十分に協議した上で可能な限り早期に定め、その後直ちに、書面等により明示すること
関連条文等:発注内容等の明示義務違反(取適法第4条第1項)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)を誘発する行為
 口頭による発注は、取引条件が不明瞭であることによりトラブルが生じやすく、中小受託事業者が不利益を受けることにつながりかねない。そのため、取適法上、委託事業者は、中小受託事業者に対して情報成果物作成委託をした場合は、書面等により、直ちに具体的な事項(給付の内容、代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項)を明示することが義務付けられている(取適法第4条第1項)。
 この点、製作委員会及び元請制作会社との取引では、元請制作会社に対するアンケート調査において、約98%の元請制作会社が取引条件について、「必ず明示される」又は「おおむね明示される」と回答しており、多くの場合で取引条件の明示は行われているものと考えられる。
 一方で、取引条件が明示される時期については、「発注された時点が多い」との回答は限定的であり、相当程度の取引において、制作作業の開始前であっても発注から時間が経過していたり、制作作業に着手した後の段階で明示が行われたりしているとみられる。
 通常、製作委員会・元請制作会社間のアニメ制作の委託取引は、取適法上の情報成果物作成委託(取適法第2条第3項)に該当すると考えられるところ、取適法の適用対象となる取引である場合には、製作委員会(構成事業者)は、元請制作会社に対する情報成果物作成委託に際して、直ちに、明示事項を明示しなければならない。
 もっとも、アニメ制作においては、発注段階では設計図に相当する脚本・絵コンテが確定しておらず、製作委員会の組成も完了していない場合があるなど、具体的な制作委託費や詳細な取引条件の設定が難しい場合があることにも留意する必要がある。この点、取適法では、明示事項のうちその内容が定められないことについて正当な理由があり記載しない事項(未定事項)がある場合には、これらの未定事項以外の事項を中小受託事業者に明示すること(当初の明示)が認められる。そのような場合であっても、製作委員会(構成事業者)においては、未定事項について十分に協議をした上で可能な限り早期に定め、その後直ちに当該事項を補充書面等により明示(補充の明示)しなければならない(取適法第4条第1項ただし書)。
 また、取適法の適用対象ではない場合も、元請制作会社がアニメ制作を開始する前に書面等により取引条件を明示しないことは、契約内容が不明確な状態で元請制作会社が業務を行うこととなり、アニメ制作の着手後に不利な条件を提示された場合に元請制作会社が受け入れざるを得なくなる可能性があるなど、製作委員会(構成事業者)の元請制作会社に対する優越的地位の濫用となる行為を誘発する原因となり得る。製作委員会(構成事業者)においては、この点に留意し、確定した事項について直ちに書面等により取引条件を明示し、発注段階で定められなかった取引条件についても十分に協議をした上で可能な限り早期に定め、書面等により明示することが求められる。
 

問題となり得る製作委員会(構成事業者)の行動例
 (ア) 発注時点で、作品名・納期等最小限の取引条件を口頭で伝えるのみで、取適法で求められる明示事項のうち内容が定まった事項を記載した書面等を交付していない。(発注内容等の明示義務違反(取適法第4条第1項)・優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)を誘発する行為)
 
 (イ) 未定事項について、その後具体的な取引条件を定めることが可能となったにもかかわらず、書面等により補充の明示を行っていない。(発注内容等の明示義務違反(取適法第4条第1項)・優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)を誘発する行為)
 

取引の適正化のために参考となる製作委員会(構成事業者)の行動例 

 (ア) 発注時点で、制作委託費、納期などの重要事項等を協議し、決定した事項を記載した発注書を交付した上で、その後未定事項や細かな諸条件を確定し、本編の制作(プロダクション工程)開始前に契約書を取り交わすようにしている。
 
 (イ) 発注時点では、元請制作会社が制作コストを正確に見積もれないなどとし、制作委託費を定められない場合に、協議の上、制作委託費の最低額を定めて発注書を交付した上で、事後的に、制作実態に即して制作委託費の額を変更できるようにしている。
 
 (ウ) 元請制作会社に委託する企画開発業務について、プロダクション工程とは別契約として契約書を取り交わしている。
 
 

(2) 取引の対価の交渉・設定

製作委員会(構成事業者)が採るべき行動
✓  制作委託費を決定するに当たっては、必要な説明や情報の提供をしつつ十分に協議し、要求クオリティの高度化、制作期間の長期化、物価上昇などの状況を踏まえた対価を定めること
関連条文:買いたたき(取適法第5条第1項第5号)、協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
元請制作会社が採るよう努めるべき行動
✓  元請制作会社においては、見積りの提出等に際して、想定される制作工程、必要人員、制作期間、想定されるリスク要因等の制作委託費に影響のある事項について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めること
 アニメ制作は、作品ごとに予算規模、要求されるクオリティ、工程の複雑性及び制作期間が異なるものの、近年では、一般的に、クオリティの高度化、制作期間の長期化に加え、人件費や資材費等の上昇といった要因により、制作コストが増加する傾向にあるとみられる。この点、元請制作会社に対するアンケート調査では、元請制作会社の約7割が制作委託費の額について製作委員会と「交渉できたことが多い」と回答し、元請制作会社の約9割が制作委託費の水準について「上がっている」と回答している。元請制作会社に対するヒアリング調査では、過去に比べて交渉できるようになってきたとの回答があるなど、近年は元請制作会社によっては高い交渉力を有する場合もあるとみられる。
 一方で、元請制作会社に対するアンケート調査においては、制作委託費に「満足していない」との回答が約6割あるほか、制作委託費のみによる営業損益については約6割 、制作印税等を含めた営業損益については約4割の元請制作会社が赤字と回答している。このような結果からは、元請制作会社の収益性は依然として高くない状況にあるとも考えられる。
 そのため、取適法の適用対象となる取引である場合には、製作委員会(構成事業者)は、制作委託費を決定するに当たって、通常支払われる対価に比し著しく低い対価を不当に定めてはならず(買いたたき(取適法第5条第1項第5号))、当該作品において要求されるクオリティの水準、制作期間の長期化、人件費や資材費等に係る物価上昇などの状況の変化といった取引に影響を及ぼす要因を十分に考慮した対価を定めることが求められる。
 また、制作委託費を決定するに当たっては、元請制作会社の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、元請制作会社からの価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金の額を決定して元請制作会社の利益を不当に害してはならず(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号) )、元請制作会社に対し、上記の取引に影響を及ぼす要因を十分に考慮した上で、必要な説明や情報の提供を行いつつ、十分な協議を行うことも求められる。
 取適法の適用対象ではない場合も、製作委員会(構成事業者)が、制作委託に際し、優越的地位を利用して、一方的に著しく低い対価を設定することにより、元請制作会社に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならず (優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))、要求されるクオリティの水準、制作期間の長期化、人件費や資材費等に係る物価上昇などの状況を踏まえた協議を十分に行い、対価を定めることが求められる。
 元請制作会社においても、見積りの提出や制作コストの変動等に際して、想定される制作工程、必要人員、制作期間及び想定されるリスク要因等の制作委託費に影響のある事項について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めることが求められる。
 なお、実態調査では、前記(1)のとおり、アニメ制作においては、発注段階では設計図に相当する脚本・絵コンテが確定しておらず、製作委員会の組成も完了していない場合があるなど、具体的な制作委託費や詳細な取引条件の設定が難しい場合があることから、最低報酬のみ確定し、事後的な状況変化に対応しているとの回答がみられた。また、制作委託費が上がっている中で、制作委託費の交渉の調整の落としどころとして制作印税を活用しているとの回答もみられた。このように、最低報酬や制作印税などを含め、当事者間で十分協議の上、取引ごとの事情に応じた報酬支払方法を設定することも考えられる。
 

問題となり得る製作委員会(構成事業者)の行動例

 (ア) 要求クオリティの高度化、制作期間の長期化、物価上昇などの状況を踏まえることなく、通常支払われる制作委託費より著しく低い制作委託費を定めた。(買いたたき(取適法第5条第1項第5号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (イ) 元請制作会社から制作委託費や制作印税等に係る協議の求めがあったにもかかわらず、当該協議に応じず又は必要な説明若しくは情報の提供を行わずに、一方的に制作委託費等を定めた。(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 

取引の適正化のために参考となる製作委員会(構成事業者)の行動例

 (ア) 制作委託費は、元請制作会社が作成するコストマークアップ方式での見積りを基に、元請制作会社と十分な協議を行った上、決定している。
 
 (イ) 元請制作会社から協議の求めがあった場合は、これに応じ、元請制作会社からの要望を踏まえながら取引条件を細かく調整している。
 
 (ウ) 発注が制作に着手する数年前になる場合、脚本や絵コンテ等が確定しておらず正確な制作コストを算出することが困難なことがある。そのような場合に、制作委託費について、元請制作会社における人件費等の上昇を将来的に反映できるよう、発注時点では、書面上、最低報酬額を定めた上で、実際の制作作業が開始する際に改めて協議を行い、脚本等に基づき必要工数や人員等を算出し不足が見込まれる金額を加味して制作委託費を決定している。
 
 (エ) 制作委託費等の元請制作会社との対価の交渉において、交渉の状況等に応じて、コンテンツの二次利用の対価の還元が進むよう、制作印税等についても、料率、料率を乗じる対象等の条件を含めて元請制作会社と十分に協議した上で決定している。
 

(3) 元請制作会社に帰属する著作権が譲渡される場合の譲渡対価の交渉・設定

製作委員会(構成事業者)が採るべき行動
✓  元請制作会社に帰属する著作権を製作委員会に譲渡させるに際し、制作委託費に著作権の譲渡対価を含める場合には、必要な説明又は情報の提供をしつつ十分に協議を行って対価を定めること
関連条文:買いたたき(取適法第5条第1項第5号)、協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
 アニメのような「映画の著作物」の著作権の帰属については、著作権法第29条に基づき、製作委員会や元請制作会社など、どの主体に帰属するかは個別具体の事案に即して判断される。取引実務上は、契約書において発注者である製作委員会に帰属する又は元請制作会社に帰属する著作権を製作委員会に譲渡させる旨を規定することが多いとみられ、多くの場合に製作委員会が著作権の最終的な帰属先とされていることがうかがわれた。
 そして、元請制作会社に帰属する著作権が製作委員会に譲渡される場合について、元請制作会社に対するアンケート調査においては、「対価は支払われていることが多い」との回答が約4割あり、その対価の内容については「制作委託費に含まれている」との回答が最も多かった一方で、元請制作会社に対するヒアリング調査においては、「制作委託費のほとんどは人件費で構成され、制作委託費に著作権の譲渡益が含まれているとは思えない」旨の回答もあり、元請制作会社は著作権を実質的に無償譲渡している又は譲渡対価として不十分と認識している場合があるものと考えられる。
 また、元請制作会社に対するアンケート調査において、元請制作会社に帰属する著作権が譲渡される場合における著作権の帰属主体・譲渡対価に関する協議について、「交渉できたことが多い」という回答が約3割あった一方で、「交渉できなかったことが多い」という回答が約1割、「そもそも交渉の場が設けられていない」という回答が約3割あり、また、ヒアリング調査において、製作委員会及び元請制作会社から、「元請制作会社に対して明示的に制作委託費の中に著作権の譲渡対価が入っていることを確認したことはない」(製作委員会)、「著作権の帰属や対価について交渉の対象にもならず、交渉の余地はないと認識している」(元請制作会社)との回答があったことから、著作権の帰属主体・譲渡対価について、協議が不十分な場合があるものと考えられる。
 このような状況を踏まえると、取適法の適用対象となる場合であって、著作権が元請制作会社に帰属するときに、製作委員会(構成事業者)が、当該著作権を「給付の内容」に含めて製作委員会に譲渡させるに際し、制作委託費に著作権の譲渡対価を含む場合には、通常支払われる対価より著しく低い額を不当に定めてはならず(買いたたき(取適法第5条第1項第5号))、著作権の譲渡対価を含む制作委託費につき十分に協議を行って対価を定めることが求められる。
 また、著作権が元請制作会社に帰属する場合であって、製作委員会(構成事業者)が、当該著作権を「給付の内容」に含めて製作委員会に譲渡させるに際しては、著作権の譲渡対価を含む制作委託費の決定に当たって、元請制作会社の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、元請制作会社から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金の額を決定して元請制作会社の利益を不当に害してはならず(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号))、元請制作会社に対し、必要な説明や情報の提供を行いつつ、著作権の譲渡対価を含めた制作委託費について十分な協議を行うことも求められる。
 なお、著作権の対価を含む形で対価に係る交渉を行っていると認められるためには、製作委員会(構成事業者)及び元請制作会社双方が著作権の譲渡が取引条件であることを認識し、製作委員会(構成事業者)が著作権の譲渡に対する対価が含まれることを明示した制作委託費を提示するなど、取引条件を明確にした上で交渉する必要がある。
 取適法の適用対象ではない場合も、製作委員会(構成事業者)が、制作委託に際して、成果物と併せて著作権を自己に譲渡させる場合に、優越的地位を利用して、一方的に元請制作会社に著しく低い対価で譲渡させることにより、元請制作会社に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならない(優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))。
 また、著作権の譲渡対価ではないが、前記(2)と同様に、コンテンツの二次利用の対価を元請制作会社へ還元する趣旨で、制作印税を付しているとの回答もみられ、制作印税のように取引ごとの事情に応じた報酬支払方法を設定することも考えられる。
 

問題となり得る製作委員会(構成事業者)の行動例

 (ア) 制作を委託したアニメ作品について、元請制作会社に帰属する著作権を製作委員会(構成事業者)に譲渡させることとしたが、その対価を含む制作委託費について、元請制作会社と十分な協議を行わないまま通常支払われる対価を大幅に下回る対価での取引を要請した。(買いたたき(取適法第5条第1項第5号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (イ) 制作を委託したアニメ作品について、元請制作会社に帰属する著作権を製作委員会(構成事業者)に譲渡させることとした。その際、元請制作会社からその対価を含む制作委託費についての協議の求めがあったにもかかわらず、当該協議に応じず又は必要な説明若しくは情報の提供を行わずに、一方的に制作委託費の額を定めた。(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 

取引の適正化のために参考となる製作委員会(構成事業者)の行動例

 (ア) 元請制作会社に帰属する著作権を製作委員会(構成事業者)に譲渡させ、著作権の譲渡対価を制作委託費に含むとしている場合は、その旨を明示した上で、元請制作会社と著作権の譲渡対価を含む制作委託費について交渉している。
 

2 取引の履行過程

(1) 発注取消し

製作委員会(構成事業者)が採るべき行動
✓  請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに発注を取り消す場合は、元請制作会社がそれまでに支出した費用等を支払うこと
関連条文:不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
 アニメ制作においては、製作委員会が元請制作会社にアニメ制作の発注をした後、制作中止等の事情によって、製作委員会が発注を取り消す場合があるが、元請制作会社に対するヒアリング調査によれば、原作者・発注者側の事由による場合もあれば、責任の所在が明らかでない場合もあるとみられる。アニメ制作では、発注後早期に人員(フリーランス等)の確保や下請制作会社への手配等が行われることが多いため、仮に発注取消しがプロダクション工程開始前であったとしても既に費用が生じている場合がある。
 元請制作会社に対するアンケート調査において、一部ではあるが、「受注後に発注を取り消されたが、行った作業に対する報酬が支払われなかった」ことがあるとの回答があった。
 また、元請制作会社に対するヒアリング調査では、発注取消しが稼働直前の場合は穴埋めのために別件を受注することは難しい旨の回答もあった。このため、発注取消しの際に費用等が支払われないと元請制作会社に不利益となる場合もあるとみられる。
 この点、取適法の適用対象となる取引である場合には、製作委員会(構成事業者)が、元請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに発注を取り消し、元請制作会社が行った作業に掛かる費用等を負担せずに、元請制作会社の利益を不当に害してはならない(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号))。
 なお、元請制作会社の利益を不当に害したといえるかは、給付内容の変更等によって、元請制作会社が費用を負担することなどにより生じた損失や、これに対して製作委員会(構成事業者)が負担した費用等を総合的に考慮し、元請制作会社に不利益が生じたといえるかで判断する点に留意が必要である。
 また、トラブル防止の観点から、発注を取り消す場合に、製作委員会(構成事業者)から元請制作会社に対する金銭の支払の有無及び金額を、(いわゆるキャンセルポリシー等の方法により)あらかじめ定めておくことが考えられる。
 取適法の適用対象ではない場合も、製作委員会(構成事業者)が、優越的地位を利用して、正当な理由がないのに、元請制作会社に対して行った発注を取り消すことにより、元請制作会社に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならない(優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))。

問題となり得る製作委員会(構成事業者)の行動例

 (ア) 制作開始後に、元請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに発注を取り消したが、納期前で成果物が納品されていないことを理由として、それまで元請制作会社が制作に要した費用を支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (イ) 元請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに、本格的な制作開始の直前に発注を取り消した。元請制作会社の制作ラインが空いたことによって損失が生じたが、一切の費用や損失を負担しなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 

取引の適正化のために参考となる製作委員会(構成事業者)の行動例

 (ア) 発注後に、制作が中止になり、元請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに発注を取り消した場合は、元請制作会社の稼働の実態に応じて補償を支払うようにしている。
 
 (イ) 企画開発をプロダクション段階とは別の契約としており、企画開発の後に制作中止となっても、企画開発については契約に基づいて企画開発費を支払っている。
 
 (ウ) 発注がキャンセルとなった場合のトラブル防止のため、契約において、金銭の支払等について定めたキャンセルポリシーを設けている。
 

(2) 制作委託費の追加支払

製作委員会(構成事業者)が採るべき行動
✓  元請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに、元請制作会社に対して、制作期間の延期・延長、当初契約と異なる業務、やり直し(リテイク)などを行わせることにより、元請制作会社に追加の費用が発生した場合には、追加の制作委託費を支払うこと
✓  給付の受領の前後を問わず、必ずしも事前に給付を充足する条件を明確にできなかったが、元請制作会社の給付の内容が当初委託した内容と異なる等とし、やり直し(リテイク)等をさせる際には、その費用について、製作委員会(構成事業者)がやり直し(リテイク)等をさせるに至った経緯等を踏まえ、元請制作会社と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定すること
関連条文:不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
元請制作会社が採るよう努めるべき行動
✓  製作委員会から制作期間の延期・延長、当初契約と異なる業務、やり直し(リテイク)を求められ、追加の費用が発生した場合に、追加の制作委託費の支払に関する協議を行うときは、追加で必要となった人員、制作期間等について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めること
 アニメ制作は、企画開発から完成に至るまでの制作期間が数年にわたることが多く、多数の制作工程があるため前の工程が遅れたといった事情で制作期間が延期・延長される場合がある。また、視聴者の期待に応える等のため、制作会社やクリエイターが作品のクオリティを追求することにより作業のやり直しを求める場合もある一方で、製作委員会の構成事業者や原作者など多数の利害関係人から様々な意見が出されることにより、作業のやり直し(リテイク)が発生したり、広告、宣伝に関する作業など当初契約と異なる業務を求められたりする場合がある。
 製作委員会に対するヒアリング調査においては、製作委員会から元請制作会社に対して追加の制作委託費を支払っているとの回答がある一方で、「製作委員会は全会一致により決定するという特性から、既に決められた制作委託費に追加して支払う判断は是認されにくい」との回答もみられたほか、元請制作会社に対するヒアリング調査においては、「当社の瑕疵(かし)に基づかないリテイクであっても、そのリテイク費用は基本的に製作委員会から支払われることはない」などの回答もみられた。
 この点、取適法の適用対象となる取引である場合には、製作委員会(構成事業者)は、元請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに、元請制作会社に対して、制作期間の延期・延長、当初契約と異なる業務、やり直し(リテイク)などを行わせることにより、元請制作会社に追加の費用が発生したときに、その増加した分の費用等を負担しない等元請制作会社の利益を不当に害してはならない(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号))。
 アニメ制作のような情報成果物の作成委託においては、成果物が当初委託した内容を満たしているかどうかは、製作委員会の価値判断等により評価される面があり、事前に給付を充足する条件を正確に発注書等で明示することが不可能な場合がある。そのように、給付を充足する条件を正確に明示することが困難な中で、例えば、原作者監修に端を発するやり直し(リテイク)が発生するということもあるとみられるが、原作許諾契約の当事者として製作委員会が原作者と十分なコミュニケーションを取れておらずリテイクが繰り返されたとみられる場合もあれば、元請制作会社の納品物のクオリティが要求水準から乖離(かいり)している場合もあるなど、作品ごとに責任の所在が異なることがあると考えられるほか、製作委員会が必須スタッフとして指定したフリーランスの作業進捗が原因の一つとなって制作期間が延びた場合に、指定した製作委員会とフリーランスの取引相手として進捗管理を担うべき元請制作会社との間で責任の所在が明らかでないというような場合等、責任の所在が曖昧なケースもあると考えられる。
 このような場合において、製作委員会(構成事業者)が、給付の受領の前後を問わず、必ずしも事前に給付を充足する条件を明確にできなかったが、元請制作会社の給付の内容が当初委託した内容と異なる等とし、やり直し(リテイク)等をさせる際に、その費用について、一方的に負担割合を決定して元請制作会社の利益を不当に害してはならず、製作委員会(構成事業者)がやり直し(リテイク)等をさせるに至った経緯等を踏まえ、元請制作会社と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定する必要がある。
 また、取適法の適用対象ではない場合も、製作委員会(構成事業者)が、優越的地位を利用して、正当な理由がないのに、元請制作会社に対して一方的に取引条件を変更したり、やり直し(リテイク)を要請したりすることにより、元請制作会社に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならない(優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))。
 元請制作会社においても、製作委員会と追加の制作委託費の支払に関する協議を行う場合は、追加で必要となった人員、制作期間等について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めることが求められる。

問題となり得る製作委員会(構成事業者)の行動例

 (ア) 制作期間中に、製作委員会側の都合によって放送開始が当初の予定から3か月先延ばしになったため、要求クオリティは満たされていたにもかかわらず、元請制作会社に延長した期間も引き続きクオリティアップ等の作業を行うよう要望した。これにより元請制作会社に追加費用が生じたが、制作期間延長により元請制作会社に生じた追加費用を支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (イ) アニメの制作委託を行い、成果物が制作委託契約の給付の内容を満たしているとして受領したが、その後DVD発売に向けて修正が必要となったため、元請制作会社に無償で修正作業を行わせた。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (ウ) 発注時に必ずしも明示されていなかったクオリティの基準について、元請制作会社によるアニメの制作の過程で、十分に協議せずに一方的に高い基準を設定し、クオリティアップのためのリテイク作業を依頼した。このリテイク作業に要した追加費用の支払を求められたが、完成保証義務(制作委託費の範囲内で制作委託業務を完遂させる義務)の範囲内であるとして、一切交渉に応じず、支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 

取引の適正化のために参考となる製作委員会(構成事業者)の行動例

 (ア) 元請制作会社から追加費用の支払を求められた場合、追加費用が必要な理由・工程や、追加費用の支払をしなければどのような事態が発生するかを確認し、その内容に応じて追加費用の支払の是非や額を決定している。元請制作会社の責任ではない理由で制作費が増加するような場合は、追加費用を支払っている。
 
 (イ) 当初の想定以上に修正が生じたことにより、制作期間が延長し、人件費等の費用が増加した際に、元請制作会社に追加費用発生の原因がない場合は、費用の負担について元請制作会社と協議した上で支払っている。
 
 (ウ) 制作委託契約に含まれていない広告や予告編などの制作を求める場合は、別途発注し、費用を負担している。
 

(3) 支払遅延・不払

製作委員会(構成事業者)が採るべき行動
✓  アニメ制作の多層構造において、発注側の取引の支払が滞ることで、受注側の取引における支払遅延につながる可能性があることから、できる限り短い期間内で支払期日を定めて 、制作委託費をその支払期日までに元請制作会社に支払うこと
関連条文:支払遅延(取適法第5条第1項第2号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
元請制作会社が採るよう努めるべき行動
✓  製作委員会(構成事業者)が元請制作会社からの請求書に基づき代金を支払っている場合には、請求書を速やかに製作委員会(構成事業者)に提出するよう努めること
 元請制作会社に対するアンケート調査においては、一部ではあるが、支払遅延や不払といった行為を受けた経験があるとの回答があった。また、製作委員会の構成事業者内での手続などにより支払遅延が発生するのではないかとの回答もあった。
 元請制作会社は、支払期日までに代金の支払を受けなければ、資金繰りがつかず、従業員やフリーランス等の取引先への報酬の支払等が困難になり、経営の安定が損なわれるおそれがある。
 この点、取適法の適用対象となる取引である場合には、製作委員会(構成事業者)は、元請制作会社の給付の内容について検査するかどうかを問わず、代金を、給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内において定めた支払期日までに支払う必要がある(支払遅延(取適法第5条第1項第2号))。
 なお、製作委員会(構成事業者)が、元請制作会社からの請求書に基づき代金を支払っている場合であっても、元請制作会社からの請求書の提出の有無にかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに代金を支払う必要がある。もっとも、元請制作会社からの請求書の提出が遅れると、製作委員会(構成事業者)が支払期日までに代金を支払うことが困難になる場合も考えられることから、元請制作会社にあっては、請求書を速やかに提出するよう努めることが求められる。
 取適法の適用対象ではない場合も、製作委員会(構成事業者)が、優越的地位を利用して、正当な理由がないのに、契約で定めた支払期日に制作委託費を支払わないことにより、元請制作会社に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならない(優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))。

問題となり得る製作委員会(構成事業者)の行動例

 (ア) 製作委員会の各構成事業者の出資が完了していないため、支払期日までに支払ができなかった。(支払遅延(取適法第5条第1項第2号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (イ) 書面等による取引条件の明示に際し、具体的な支払期日を未定事項としていたところ、支払期日を定めることのないまま成果物を受領したが、その後も支払期日が未定であることを理由として代金を支払わなかった。(支払遅延(取適法第5条第1項第2号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 

取引の適正化のために参考となる製作委員会(構成事業者)の行動例

 (ア) 元請制作会社との契約において、制作期間が長期にわたるため、納品前から制作委託費を分割して段階的に支払うこととしており、それぞれの支払期日までに契約上定めた額を支払っている。
 

3 動画配信事業者が採るべき行動

(1) 取引の対価の交渉・設定

動画配信事業者が採るべき行動
✓  制作委託費を決定するに当たって、元請制作会社から、レベニューシェア型 等の報酬体系を含め、価格に関する協議の求めがあった場合は、必要な説明や情報の提供を行いつつ、十分に協議を行って対価を定めること
関連条文:協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
 動画配信事業者は、アニメ作品の著作権者と配信権のライセンス契約を締結し自らのプラットフォームで配信するほか、自らがオリジナル作品を製作し配信する場合もある。現状の動画配信事業者との契約においては前者の場合がほとんどのようであるが、後者の場合、動画配信事業者が、元請制作会社に対してアニメ制作を委託する。前記1(2)のとおり、近年では、元請制作会社がアニメを制作するに当たり、制作コストは増加傾向にあるとみられるが、ヒアリング調査では、動画配信事業者及び元請制作会社から、制作に掛かった実費が支払われるほか、企画開発費が支払われる旨、元請制作会社の一般管理費が別途支払われる旨、追加費用は合理的な根拠を示せば協議の上で支払われる旨の回答が複数あり、動画配信事業者との取引において元請制作会社が黒字となりやすい状況にあることがうかがわれる。
 一方で、対価の支払方法については、製作委員会方式でみられる制作印税や成功報酬、レベニューシェア型の仕組みは一般的には採用されていない。オリジナル作品の制作を元請制作会社に委託する場合であって、著作権が元請制作会社に帰属するときには、動画配信事業者が制作委託費の支払をもって著作権の譲渡を受ける「買い切り方式」が一般的であるとみられる。この点、元請制作会社からは、動画配信事業者との取引では、一定の金額の利益が確保されているという点において肯定的な回答がある一方で、大手の元請制作会社としては利益が大きいとはいえない旨の回答もあった。他方で、動画配信事業者からは、「サブスクリプション契約でユーザーから月々の料金をいただくビジネスをしているため、個々の作品が直接収益に紐付くものではなく、収益に連動させる報酬支払方法は難しい」との回答もあった。さらに、フラット型である「買い切り方式」については、制作に関わる利益となる一般管理費を制作に掛かる実費とは分けて支払うことにより元請制作会社が一定の利益を確実に回収できる利点があるとの意見もあり、また、制作委託費を成果物の納品前から分割で支払うことが一般的であることから、動画配信事業者が作品の成功・失敗のリスクを負う一方で、元請制作会社が安定的に収益を得られるモデルとなっている旨の回答もあった。
 このような状況が直ちに取適法上問題となるものではないが、取適法の適用対象となる取引である場合には、動画配信事業者は、制作委託費を決定するに当たって、元請制作会社の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、元請制作会社から価格に関する協議の求めがあったときは、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金の額を決定して元請制作会社の利益を不当に害してはならず(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号))、元請制作会社に対し、レベニューシェア型等の報酬体系を含め、必要な説明や情報の提供を行いつつ、十分な協議を行うことが求められる。
 取適法の適用対象ではない場合も、動画配信事業者が、優越的地位を利用して、協議を十分に行わず、一方的に著しく低い対価を設定することにより、元請制作会社に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならない(優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))。
 

問題となり得る動画配信事業者の行動例

 (ア) 元請制作会社から、レベニューシェア型等の報酬体系を含め、価格に係る協議の求めがあったにもかかわらず、当該協議に応じず又は必要な説明若しくは情報の提供を行わずに、一方的に価格を定めた。(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 

取引の適正化のために参考となる動画配信事業者の行動例

 (ア) 制作に掛かる費用を元請制作会社にも算出してもらい、当該見積りを基に数回の予算打合せにおける協議を経て、制作委託費を決定している。
 

(2) 視聴回数等情報の開示

動画配信事業者が採るべき行動
✓  制作委託費を決定するに当たって、元請制作会社から、価格に関する協議の求めがあった場合は、視聴回数等情報の提供を含め、必要な説明や情報の提供を行いつつ、十分に協議を行って対価を定めること
関連条文:協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)
動画配信事業者が採ることが望ましい行動
✓  レベニューシェア型契約の場合だけでなくフラット型契約の場合にも、契約更新時、シリーズ作品、当該制作会社等の類似の作品等の契約に当たり、対価についての適切な交渉を行うために必要な範囲で、当該コンテンツに係るユーザーによる視聴回数等に係る情報を提供すること
 ヒアリング調査では、作品が配信された後の視聴回数等の情報について、製作委員会及び元請制作会社から、「動画配信事業者にとってはデータ自体に価値があるので、相手に交渉余地を与えないよう、データを出さないものと思われる」等の回答があり、次回作品の動画配信事業者との交渉等において有用な場合があることがうかがわれる。
 この点、視聴時間が一定の基準以上である一部の作品については、視聴回数の推計値等の一定程度の情報を年に数回の頻度で公開している動画配信事業者がいるほか、動画配信事業者からは、「制作会社に制作委託をした作品については、配信後に作品の振り返りの場を必ず設けており、同作品がどの程度視聴されたかなどについては、必要に応じて共有し、制作会社が今後の作品制作を含めた様々な場面において、条件交渉を含め活用していると理解している」など、一定程度の情報開示を行っている旨の回答があった一方で、ユーザーの属性や視聴時間帯等の詳細な情報については、「情報提供をするシステム・人的コストを考慮すると、取引先が求める全てのデータを提供することは負担が大きく現実的ではない」、「視聴回数等に関する情報は集計・提供等に人的・物的コスト負担を要するほか、動画配信事業者の重要な営業上の秘密である」と、負担度合いや営業秘密を理由として詳細な情報開示を行うことが困難である旨の回答もあった。
 視聴回数等に関する情報は、契約更新時、シリーズ作品、当該制作会社等の類似の作品等の契約に当たり、制作委託費又はライセンスの対価の交渉の基礎となり得るものである。
 動画配信事業については、公正取引委員会ではコネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査(令和6年3月公表)においても調査を行ったが、一定程度競争的な環境にあり、制作委託費の水準についてのヒアリング結果等からも、現状、動画配信事業者が著しく低い対価を設定することが多いとまでは評価できないと考えられる。
 もっとも、動画配信事業者は、取引の相手方である製作委員会や元請制作会社といった取引先(以下「コンテンツプロバイダー」という。)に対して取引上の地位が優越している可能性があり、そのような場合には、動画配信事業者が一方的に著しく低いコンテンツの対価を設定しているか(優越的地位の濫用に該当するか)否かの判断に当たっては、両者の間で十分な協議が行われたか、動画コンテンツの需給関係等の事情を勘案して総合的に判断されることとなる。独占禁止法違反行為の未然防止の観点からは、コンテンツの対価については、動画配信事業者とコンテンツプロバイダーとの間における十分な交渉を通じて設定されることが望ましく、そのため、レベニューシェア型契約の場合だけでなくフラット型契約の場合にも、動画配信事業者は、契約更新時、シリーズ作品、当該制作会社等の類似の作品等の契約に当たり、コンテンツプロバイダーに対して、対価についての適切な交渉を行うために必要な範囲で、当該コンテンツに係るユーザーによる視聴回数等に係る情報を提供することが望ましい。
 取適法の適用対象となる取引である場合には、動画配信事業者は、制作委託費を決定するに当たって、元請制作会社の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、元請制作会社からの価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明や情報の提供をしなかったりするなど、一方的に代金の額を決定して元請制作会社の利益を不当に害してはならず(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号))、元請制作会社に対し、視聴回数等に関する情報の提供を含め、必要な説明や情報の提供を行いつつ、十分な協議を行うことが求められる。
 

問題となり得る動画配信事業者の行動例

 (ア) シリーズ作品の委託をする際に、元請制作会社から、前作の視聴回数等に係る情報に基づいて代金を協議したいとの申出があったが、当該協議に応じず又は必要な説明若しくは情報の提供を行わずに、一方的に対価を設定した。(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 

取引の適正化のために参考となる動画配信事業者の行動例

 (ア) 契約更新時、シリーズ作品、類似の作品等の契約に当たり、対価についての適切な交渉を行うために必要な範囲で、当該コンテンツに係るユーザーによる視聴回数等に係る情報を提供している。
 

第3 元請制作会社の採るべき行動(下請制作会社 に対する取引)

1 発注時点

(1) 書面等による取引条件の明示

元請制作会社が採るべき行動
✓  取引条件が不明瞭であることによるトラブルが生じることがないよう、下請制作会社に対するアニメ制作に係る委託に際して、直ちに、取引条件を明示すること
✓  未定事項についても十分に協議した上で可能な限り早期に定め、その後直ちに、書面等により明示すること
関連条文等:発注内容等の明示義務違反(取適法第4条第1項)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)を誘発する行為
 元請制作会社と下請制作会社との取引では、下請制作会社に対するアンケート調査において、書面等による取引条件の明示状況について、約91%の下請制作会社が必ず又はおおむね明示されると回答しており、多くの場合に取引条件の明示は行われているものと考えられる。
 一方で、明示される時期については、製作委員会及び元請制作会社との取引と同様に、発注された時点が多いとの回答は半数未満にとどまっており 、委託業務の開始前であっても発注から時間が経過していたり、委託業務開始後に明示されたりしている例が相当程度あるとみられる。
 通常、元請制作会社・下請制作会社間のアニメ制作に係る委託取引は、取適法上の情報成果物作成委託(取適法第2条第3項)に該当すると考えられるところ 、取適法の適用対象となる取引である場合には、元請制作会社は、下請制作会社に対する情報成果物作成委託に際して、直ちに、明示事項を明示しなければならない(発注内容等の明示義務(取適法第4条第1項))。
 製作委員会・元請制作会社間の取引と同様に、発注段階では詳細な取引条件を設定することが難しい場合があることにも留意する必要がある。この点、取適法では、明示事項のうちその内容が定められないことについて正当な理由があり記載しない事項(未定事項)がある場合には、これらの未定事項以外の事項を中小受託事業者に明示すること(当初の明示)が認められる。そのような場合であっても、元請制作会社においては、未定事項について十分に協議をした上で可能な限り早期に定め、その後直ちに当該事項を補充書面等により明示(補充の明示)しなければならない(取適法第4条第1項ただし書)。
 また、取適法の適用対象ではない場合も、下請制作会社が委託された業務を開始する前に書面等により取引条件を明示しないことは、契約内容が不明確な状態で下請制作会社が業務を行うこととなり、業務の着手後に不利な条件を提示された場合に下請制作会社が受け入れざるを得なくなる可能性があるなど、元請制作会社の下請制作会社に対する優越的地位の濫用となる行為を誘発する原因となり得る。元請制作会社においては、この点に留意し、確定した事項について直ちに書面等により取引条件を明示し、発注段階で定められなかった取引条件についても十分に協議をした上で可能な限り早期に定め、書面等により明示することが求められる。

問題となり得る元請制作会社の行動例

 (ア) 作業量が多い業務の場合は契約書を作成するが、カットごとなど少量の依頼の場合は、取引条件を口頭で伝えるだけで、書面等により明示することはない。(発注内容等の明示義務違反(取適法第4条第1項)・優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)を誘発する行為)
 
 (イ) 後工程の作業の納期は前工程の制作状況次第であるため、発注時点では書面等で明示できず、納期が定まる度に、下請制作会社に口頭で伝えているのみである。(発注内容等の明示義務違反(取適法第4条第1項)・優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)を誘発する行為)
 
 (ウ) 発注時点で代金が定められない場合は、納品後に、代金を含む取引条件を記載した発注書を交付している。(発注内容等の明示義務違反(取適法第4条第1項)・優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)を誘発する行為)
 

取引の適正化のために参考となる元請制作会社の行動例

 (ア) 発注時点では制作委託費、納期などの明示事項等を協議し、決定した事項を記載した発注書を直ちに交付した上で、その後未定事項や細かな各条件を詰め、本格的な制作に入る前に契約書を取り交わすようにしている。
 
 (イ) 元請制作会社は、製作委員会との制作委託契約において、再委託先の権利に関しても譲渡を受けるなどして権利処理を適切に行う義務を負うことがあり、そのような場合は、下請制作会社への委託に際しては、権利処理を含め取引条件を書面で提示している。
 
 (ウ) 下請制作会社への発注がカット単位であったり、少量・少額・短納期であったりするなどの場合は、契約書を取り交わす時間がないこともあるため、協議によって定めた取引条件を基に発注書を交付している。
 

(2) 取引の対価の交渉・設定

元請制作会社が採るべき行動
✓  アニメの制作に係る委託費を決定するに当たっては、必要な説明や情報の提供をしつつ十分に協議し、要求クオリティの高度化、制作期間の長期化、物価上昇などの状況を踏まえた対価を定めること
関連条文:買いたたき(取適法第5条第1項第5号)、協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
下請制作会社が採るよう努めるべき行動
✓  下請制作会社においては、見積りの提出に際して、想定される必要人員、制作期間等のアニメの制作に係る委託費に影響のある事項について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めること
 アニメ制作は、近年では、一般的に、クオリティの高度化、制作期間の長期化に加え、人件費や資材費等の上昇といった要因により、制作コストが増大する傾向にあるとみられるが、この傾向は下請制作会社の業務においても同様であると考えられる。
 制作委託費の水準について、下請制作会社に対するアンケート調査では、下請制作会社の75%が「上がっている」と回答した一方で、作画を担当する下請制作会社の50%が制作委託費のみでの営業損益は赤字と回答したほか、下請制作会社へのヒアリング調査では、「動画や仕上げは単価が上がっていないが、原画や色彩設計の単価は上がってきている」との回答があるなど、下請制作会社によっては収益性が高くない状況にあり、また、工程によって委託費の上昇傾向に差があると考えられる。
 また、制作委託費の額の交渉状況について、下請制作会社に対するアンケート調査では、「交渉できたことが多い」という回答が6割弱あったものの、下請制作会社へのヒアリング調査では、元請制作会社から制作委託費を指定され、単価自体は交渉できない旨の回答が複数あったことから、交渉の場があったとしても、協議が不十分な場合もあると考えられる。
 そのため、取適法の適用対象となる取引である場合は、元請制作会社は、制作委託費を決定するに当たって、通常支払われる対価に比し著しく低い代金の額を不当に定めてはならず(買いたたき(取適法第5条第1項第5号))、当該作品において要求されるクオリティの水準、制作期間の長期化、人件費や資材費等に係る物価上昇などの状況の変化といった取引に影響を及ぼす要因を十分に考慮した対価を定めることが求められる。
 また、制作委託費を決定するに当たっては、下請制作会社の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、下請制作会社から求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金の額を決定して下請制作会社の利益を不当に害してはならず(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号))、下請制作会社に対し、上記の取引に影響を及ぼす要因を十分に考慮した上で、必要な説明や情報の提供を行いつつ、十分な協議を行うことも求められる。
 取適法の適用対象ではない場合も、元請制作会社が、制作委託に際し、優越的地位を利用して、一方的に著しく低い対価を設定することにより、下請制作会社に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならず(優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))、要求クオリティの高度化、制作期間の長期化、物価上昇などの状況を踏まえた協議を十分に行い、対価を定めることが求められる。
 下請制作会社においても、見積りの提出や制作コストの変動等に際して、想定される必要人員、制作期間等のアニメの制作に係る委託費に影響のある事項について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めることが求められる。

問題となり得る元請制作会社の行動例

 (ア) 要求クオリティの高度化、制作期間の長期化、物価上昇などの状況を踏まえることなく、通常支払われる制作委託費より著しく低い制作委託費を定めた。(買いたたき(取適法第5条第1項第5号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (イ) 下請制作会社から制作委託費に係る協議の求めがあったにもかかわらず、当該協議に応じず又は必要な説明若しくは情報の提供を行わずに、一方的に制作委託費を定めた。(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 

取引の適正化のために参考となる元請制作会社の行動例

 (ア) 下請制作会社から協議の求めがあった場合は、製作委員会と掛け合った上で、下請制作会社と制作委託費等の取引条件について協議をしている。
 
 (イ) 下請制作会社の実績を踏まえ、作業内容が難しい場合は単価を通常よりも上げるなど、案件によって柔軟に制作委託費を決定している。
 
 (ウ) 近年の物価高を受けて、下請制作会社からの申入れがなくとも、当社から制作委託費の上乗せの必要がないか打診している。
 

2 取引の履行過程

(1) 発注取消し

元請制作会社が採るべき行動
✓  下請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに発注を取り消す場合は、下請制作会社がそれまでに支出した費用等を支払うこと
関連条文:不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
 アニメ制作においては、下請制作会社にアニメ制作の発注をした後、制作中止等により、発注者である元請制作会社が発注を取り消す場合がある。アニメ制作では、発注後早期の段階から人員の確保や外注先への手配等が行われることが多いため、発注取消しの際に費用等が支払われないと下請制作会社に不利益となる場合もあるとみられる。
 下請制作会社に対するアンケート調査では、一部ではあるが、「受注後に発注を取り消されたが、行った作業に対する報酬が支払われなかった」ことがあるとの回答があった。
 この点、取適法の適用対象となる取引である場合には、元請制作会社が、下請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに発注を取り消し、下請制作会社が行った作業に掛かる費用等を負担せずに、下請制作会社の利益を不当に害してはならない(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号))。
 また、トラブル防止の観点から、発注を取り消す場合に、元請制作会社から下請制作会社に対する金銭の支払の有無及び金額を、(いわゆるキャンセルポリシー等の方法により)あらかじめ定めておくことが考えられる。
 取適法の適用対象ではない場合も、元請制作会社が、優越的地位を利用して、正当な理由がないのに、元請制作会社の行った発注を取り消すことにより、下請制作会社に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならない(優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))。

問題となり得る元請制作会社の行動例

 (ア) 下請制作会社の業務開始後に、下請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに発注を取り消したが、成果物が納品されていないため、それまで下請制作会社が要した費用を支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 

取引の適正化のために参考となる元請制作会社の行動例

 (ア)下請制作会社の責めに帰すべき理由がない場合において、取引を中止するときは、下請制作会社が既に行った作業量分の制作委託費を支払っている。
 
 (イ) 発注がキャンセルとなった場合のトラブル防止のため、契約において、金銭の支払等について定めたキャンセルポリシーを設けている。
 

(2) 制作委託費の追加支払

元請制作会社が採るべき行動
✓  下請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに、下請制作会社に対して、制作期間の延期・延長、当初契約と異なる業務、やり直し(リテイク)などを行わせることにより、下請制作会社に追加の費用が発生した場合には、追加の制作委託費を支払うこと
✓  給付の受領の前後を問わず、必ずしも事前に給付を充足する条件を明確にできなかったが、下請制作会社の給付の内容が当初委託した内容と異なる等とし、やり直し(リテイク)等をさせる際には、その費用について、元請制作会社がやり直し(リテイク)等をさせるに至った経緯等を踏まえ、下請制作会社と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定すること
関連条文:不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
下請制作会社が採るよう努めるべき行動
✓  元請制作会社から制作期間の延期・延長、当初契約と異なる業務、やり直し(リテイク)などを求められ、追加の費用が発生した場合に、追加の制作委託費の支払に関する協議を行うときは、追加で必要となった人員、制作期間等について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めること
 製作委員会・元請制作会社間の取引と同様に、制作期間の延期・延長、当初契約内容と異なる追加作業の発注、やり直し(リテイク)等によって、下請制作会社に、追加費用が生じる場合がある。
 元請制作会社に対するヒアリング調査においては、「下請制作会社は、成果物の納品後直ちに制作委託費の全額を請求してくる」として下請制作会社からの請求額を支払っている旨の回答があった一方で、下請制作会社からは「追加予算を出してくれる元請制作会社もあったが、要求額の1/10程度の少額しか出してもらえない。また、そのような要求をすると、次回以降仕事が依頼されなくなるので、そもそもの交渉がしづらい」、「元請制作会社の全体の予算が不足していることが分かっている場合は、制作委託費の追加の請求を躊躇(ちゅうちょ)することがある」との回答もあった。
 この点、取適法の適用対象となる取引である場合には、元請制作会社が、下請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに、下請制作会社に対して、制作期間の延期・延長、当初契約と異なる業務、やり直し(リテイク)などを行わせることによって、下請制作会社に追加の費用が発生した場合に、その増加した分の費用等を負担しない等下請制作会社の利益を不当に害してはならない(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号))。
 アニメ制作のような情報成果物作成委託においては、成果物が当初委託した内容を満たしているかどうかは、元請制作会社の価値判断等により評価される面があり、事前に給付を充足する条件を正確に発注書等に明示することが不可能な場合がある。そのように、給付を充足する条件を正確に明示することが困難な中で、コミュニケーションが不十分で作業内容の理解が異なった結果、下請制作会社の納品物のクオリティが要求水準から乖離(かいり)している場合がある等、責任の所在が曖昧なケースもあると考えられる。
 このような場合において、元請制作会社が、給付の受領の前後を問わず、必ずしも事前に給付を充足する条件を明確にできなかったが、下請制作会社の給付の内容が当初委託した内容と異なる等とし、やり直し(リテイク)等をさせる際には、その費用について一方的に負担割合を決定して下請制作会社の利益を不当に害してはならず、元請制作会社がやり直し(リテイク)等をさせるに至った経緯等を踏まえ、下請制作会社と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定する必要がある。
 また、取適法の適用対象ではない場合も、元請制作会社が、優越的地位を利用して、正当な理由がないのに、下請制作会社にやり直し(リテイク)を要請したり、一方的に取引条件を変更したりすることにより、下請制作会社に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならない(優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))。
 下請制作会社においても、元請制作会社と追加の制作委託費の支払に関する協議を行う場合は、追加で必要となった人員、制作期間等について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めることが求められる。

問題となり得る元請制作会社の行動例

 (ア)下請制作会社に責任のない理由によって制作期間が延長した結果、追加費用が生じたとして下請制作会社から協議の申入れがあったが、制作委託費が不足していたこともあり、追加費用について協議せずに支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (イ) 下請制作会社から納品された成果物の完成度が低かったため、次工程を委託していた別の下請制作会社に対して、当初契約内容には含まれていなかった前工程の修正作業も追加で依頼した。その際、修正作業を行った次工程の下請制作会社に追加報酬は支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (ウ) 事前に指定した条件を変更してやり直し(リテイク)を求めたが、下請制作会社に生じた追加の費用を一切負担しなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (エ) 製作委員会において脚本を確定するのに時間を要したため、制作を開始できず、下請制作会社にも作業開始をさせずに待機させた。当初契約で定めた納期は変更しなかったことから、下請制作会社に追加人員のための人件費が生じたが、追加費用を一切負担しなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 

取引の適正化のために参考となる元請制作会社の行動例

 (ア)作業期間が短期間であることが見込まれる発注の場合に、取引先が想定外に長期間拘束されないようにするため、リテイク回数の上限を契約書で定めたり、制作の早い段階でリテイクの基準をすり合わせたりしている。
 

(3) 減額

元請制作会社が採るべき行動
✓  下請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた制作委託費の減額をしないこと
関連条文:代金の減額(取適法第5条第1項第3号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
 下請制作会社に対するアンケート調査では、一部ではあるが、「自身に責任がないのに、支払代金を減額された」ことがあるとの回答があった。
 下請制作会社へのヒアリング調査においては、「発注者がこれまで報酬の金額から振込手数料を一方的に減額していた」との回答もあった。
 この点、取適法の適用対象となる取引である場合には、元請制作会社が下請制作会社の責めに帰すべき理由がないのに、代金を減じてはならない(代金の減額(取適法第5条第1項第3号))。
 取適法の適用対象ではない場合も、元請制作会社が、優越的地位を利用して、正当な理由がないのに、契約で定めた対価を減額することにより、下請制作会社に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならない(優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))。

問題となり得る元請制作会社の行動例

 (ア)当初定めた制作委託費から下請制作会社の銀行口座に振り込む際の振込手数料を差し引いた 。(代金の減額(取適法第5条第1項第3号))
 

取引の適正化のために参考となる元請制作会社の行動例

 (ア)下請制作会社は成果物の納品後直ちに制作委託費を請求してくるので、全額支払っている。
 

(4) 支払遅延・不払

元請制作会社が採るべき行動
✓  アニメ制作の多層構造において、発注側の取引の支払が滞ることで、受注側の取引における支払遅延につながる可能性があることから、できる限り短い期間内で支払期日を定めて 、制作委託費をその支払期日までに下請制作会社に支払うこと
関連条文:支払遅延(取適法第5条第1項第2号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)
 下請制作会社に対するアンケート調査では、一部ではあるが、支払遅延や不払といった行為を受けた経験があるとの回答があった。
 元請制作会社と同様に、下請制作会社についても、支払期日までに代金の支払を受けなければ、資金繰りがつかず、従業員や取引先であるフリーランス等への報酬の支払等が困難になるなど、経営の安定が損なわれるおそれがある。
 この点、取適法の適用対象となる取引である場合には、元請制作会社は、下請制作会社の給付の内容について検査するかどうかを問わず、代金を、給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内において定めた支払期日までに支払う必要がある(支払遅延(取適法第5条第1項第2号))。
 取適法の適用対象ではない場合も、元請制作会社が、優越的地位を利用して、正当な理由がないのに、契約で定めた支払期日に制作委託費を支払わないことにより、下請制作会社に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えてはならない(優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))。

問題となり得る元請制作会社の行動例

 (ア) 資金が不足したため支払期日に支払えず、発注者からの入金があるまで下請制作会社への支払を遅らせた。(支払遅延(取適法第5条第1項第2号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 
 (イ) 当社内での承認を得てから代金を支払いたいという趣旨で、作業の進捗状況に応じて代金を支払うという支払条件を定め、具体的な支払期日を定めないまま下請制作会社から成果物を受領していたが、社内での承認を得るのに時間を要したため、代金の支払が遅れた。(支払遅延(取適法第5条第1項第2号)、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号))
 

取引の適正化のために参考となる元請制作会社の行動例

 (ア)下請制作会社との契約において、制作期間が長期にわたるため、納品前から納品までの間に制作委託費を分割して段階的に支払うこととしており、それぞれの支払期日までに契約上定めた額を支払っている。
 

第4 制作会社の採るべき行動(フリーランスに対する取引)

1 発注時点

(1) 書面等による取引条件の明示

制作会社が採るべき行動
✓  取引条件が不明瞭であることによるトラブルが生じることがないよう、フリーランスに対する業務委託に際して、直ちに、明示事項を明示すること
✓  未定事項についても十分に協議した上で可能な限り早期に定め、その後直ちに、書面等により明示すること
関連条文:取引条件の明示義務違反(フリーランス・事業者間取引適正化等法第3条第1項)
フリーランスが採るよう努めるべき行動
✓  制作会社から発注書等で示される取引条件を十分に確認し、契約書への署名、その契約書の返送等必要な対応がある場合は速やかに行うよう努めること
 制作会社及びフリーランスに対するヒアリング調査では、令和6年11月にフリーランス・事業者間取引適正化等法が施行された影響もあり、契約書、発注伝票、メール等で取引条件を明示している(明示されている)といった回答があった。一方で、職種や契約形態によって明示状況が異なる旨の回答もあった。
 フリーランスに対するアンケート調査では、フリーランス・事業者間取引適正化等法上の明示義務のある取引条件(明示事項)の書面等による明示状況について、「事前に書面等で伝えられている」との回答が5割を下回っていることからも、明示事項の明示がいまだ不十分な場合もあるとみられる。
 また、明示事項が明示される時期についても、製作委員会及び元請制作会社との取引並びに元請制作会社及び下請制作会社との取引と同様に、委託業務の開始前であっても発注から時間が経過していたり、委託業務開始後に明示されたりしている例が相当程度あるとみられる。
 制作会社は、フリーランスに対して業務委託をした場合は 、直ちに、明示事項を書面等により明示しなければならない(取引条件の明示義務(フリーランス・事業者間取引適正化等法第3条第1項))。
 もっとも、アニメ制作においては、製作委員会・元請制作会社間及び元請制作会社・下請制作会社間の取引と同様に、発注段階では詳細な取引条件を設定することが難しい場合があることにも留意する必要がある。この点、フリーランス・事業者間取引適正化等法では、明示事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるもの(未定事項)については、業務委託をした場合に直ちに明示することを要しないが、未定事項以外の事項のほか、未定事項の内容が定められない理由及び未定事項の内容を定めることとなる予定期日を直ちにフリーランスに明示(当初の明示)しなければならない。加えて、制作会社においては、当該未定事項について十分に協議をした上で速やかに定め、その後直ちに当該未定事項を補充書面等により明示(補充の明示)しなければならない(フリーランス・事業者間取引適正化等法第3条第1項ただし書)。
 フリーランスにおいても、制作会社から発注書等で示される取引条件を十分に確認し、契約書への署名、その契約書の返送等必要な対応がある場合は速やかに行うよう努めることが求められる。

問題となり得る制作会社の行動例

 (ア) 納期は、前工程の遅れにより後ろ倒しになることが多いため明確にせず、口頭のみで取引条件を伝えた。(取引条件の明示義務違反(フリーランス・事業者間取引適正化等法第3条第1項))
 
 (イ) 関連する業務についても作業を依頼する可能性があるため、業務を委託する際に、委託する業務の内容について発注書に一切記載しなかった。(取引条件の明示義務違反(フリーランス・事業者間取引適正化等法第3条第1項))
 

取引の適正化のために参考となる制作会社の行動例

 (ア) フリーランスに対しては、発注時点で明示事項をメール等により明示した上で、遅くともプロダクション工程開始前までにはその他の詳細な取引条件の協議を終え、契約書を取り交わすようにしている。
 
 (イ) 事前にメールで明示事項を記載した発注書等をフリーランスに交付した。その後、それを踏まえその他の詳細な取引条件について直接フリーランスと対面で協議をし、補充書面を交付している。
 

(2) 取引の対価(報酬の額)の交渉・設定

制作会社が採るべき行動
✓  報酬の額を決定するに当たっては、必要な説明や情報の提供をしつつ十分に協議し、物価上昇、要求クオリティの高度化などの状況を踏まえた対価を定めること
関連条文:買いたたき(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第4号、取適法第5条第1項第5号)、協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)
フリーランスが採るよう努めるべき行動
✓  報酬の額の交渉に際して、想定される作業時間等の報酬の額に影響のある事項について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めること
 制作会社・フリーランス間の取引においては、フリーランス側の交渉力が劣る場合が少なくないとみられるものの、アニメ業界全体で制作需要に対して供給(人手)不足の状況にあり、製作委員会等から指名を受けるような実力のあるフリーランスについては十分な交渉力を持つ場合があるなど、フリーランスによって状況が異なるとみられる。
 報酬水準について、フリーランスに対するアンケート調査では、職種や契約形態によって傾向が異なるとみられるが、フリーランスの約70%が報酬水準について「上がっている」と回答した。一方で、物価の上昇に追いついていない、そもそもの報酬/単価が低い、要求されるクオリティが高度化しているなどの理由により、約5割のフリーランスから現在の報酬水準に満足していないとの回答があった。
 もっとも、制作会社に対するヒアリング調査では、制作委託費が増加するか、制作印税等を得ることができなければ、フリーランスの報酬水準を上げることが難しい旨の回答が複数あるなど、製作委員会・元請制作会社間や元請制作会社・下請制作会社間の取引条件がフリーランスの報酬水準に影響を及ぼしている可能性もあるとみられる。
 報酬に係る交渉状況については、アンケート調査からは多くの制作会社が交渉には応じているとみられる一方で、制作会社及びフリーランスへのヒアリング調査からは、「自転車操業であり、交渉に十分に応じることができていない」(制作会社)、「交渉するにしても、面倒な人と思われないように気を付けて控えめな交渉とならざるを得ない」(フリーランス)などの回答があり、交渉の場があったとしても、協議が不十分な場合もあるとみられる。また、制作会社に支払われる制作印税が少ないことなども背景として、フリーランスへの成功報酬等の報酬以外の対価は、限られた職種などでのみ支払われているとみられる。
 この点、フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象となる取引である場合には、制作会社は、フリーランスの報酬の額を決定するに当たって、通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めてはならず(買いたたき(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第4号))、物価上昇や当該業務で要求されるクオリティの水準の高度化といった取引に影響を及ぼす要因を十分に考慮した対価を定めることが求められる。
 フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象ではない場合も、取適法の適用対象となる取引であるときは、制作会社は、制作委託費を決定するに当たって、通常支払われる対価に比し著しく低い代金の額を不当に定めてはならず(買いたたき(取適法第5条第1項第5号))、上記のような取引に影響を及ぼす要因を十分に考慮した代金の額を定めることが求められる。
 また、取適法の適用対象となる取引である場合には、フリーランスへの委託の代金を決定するに当たっては、フリーランスの給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、フリーランスから求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金の額を決定してフリーランスの利益を不当に害してはならず(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号))、フリーランスに対し、上記の取引に影響を及ぼす要因を十分に考慮した上で、必要な説明や情報の提供を行いつつ、十分な協議を行うことも求められる。
 フリーランスにおいても、報酬の額の交渉に際して、想定される作業時間等の報酬の額に影響のある事項について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めることが求められる。

問題となり得る制作会社の行動例

 (ア) 業務で要求されるクオリティの水準が高度であったが、それを踏まえず、当該クオリティの業務に対して通常支払われる報酬の額より著しく低い報酬の額を定めた。(買いたたき(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第4号、取適法第5条第1項第5号))
 
 (イ) 継続的に取引があるフリーランスから、物価上昇などを理由に報酬の額の引上げを求められていたが、明示的に協議することなく、従来どおりに報酬の額を据え置くことで、通常支払われる報酬の額より著しく低い報酬の額を定めた。(買いたたき(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第4号、取適法第5条第1項第5号))
 
 (ウ) フリーランスから代金の額に係る協議の求めがあったにもかかわらず、当該協議に応じず又は必要な説明若しくは情報の提供を行わずに、一方的に代金の額を定めた。(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号))

取引の適正化のために参考となる制作会社の行動例

 (ア) フリーランスとは、物価傾向のほか、作業量、作業難易度、本人の技術力・経験等を考慮しつつ交渉し、報酬の額等の取引条件を定めている。
 
 (イ) フリーランスから協議の求めがあった場合は、これに応じ、フリーランスとの交渉を経た上で、報酬の額等を定めている。
 
 (ウ) 継続的な業務委託契約を結んでいるフリーランスとは、年に複数回行っている面談の中で契約更改後の報酬の額について交渉を行っており、契約更改時等には、その交渉で決定した報酬の額を反映させている。
 
 (エ) 自社に制作印税が発生する作品の場合は、それを原資として、当該作品について取引のあったフリーランスに対して追加で成功報酬を支払うことがある。
 

(3) 短納期発注

制作会社が採るべき行動
✓  通常よりも短納期の発注を行う場合には、フリーランスと報酬の額を定めるに当たり、必要な説明や情報の提供をしつつ十分に協議し、フリーランスに発生する負担増を考慮した報酬の額を定めること
関連条文:買いたたき(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第4号、取適法第5条第1項第5号)、協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)
 フリーランスに対するアンケート調査からは、アニメ制作において、制作会社がフリーランスに対して通常よりも短納期の発注を行ったにもかかわらず、割増料金が支払われない場合が一定程度あるとみられる。
 制作会社へのヒアリング調査では「短納期でフリーランスに発注する際は割増しの特急料金を支払っている」との回答があった一方で、フリーランスへのヒアリングでは「どれだけ急ぎの仕事でも割増料金というものはない」との回答もあった。
 この点、フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象となる取引である場合であって、制作会社が、通常よりも短納期の発注をフリーランスに行うに当たり、短納期の発注のためにフリーランスに発生する費用が増加するときには、当該費用の増加を考慮した通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めてはならず(買いたたき(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第4号))、フリーランスに発生する費用の増加を考慮した報酬の額を定めることが求められる。
 フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象ではない場合も、取適法の適用対象となる取引であるときであって、制作会社が、通常よりも短納期の発注をフリーランスに行うに当たり、短納期の発注のためにフリーランスに発生する費用が増加するときには、当該費用の増加を考慮した通常支払われる対価に比し著しく低い代金の額を不当に定めてはならない(買いたたき(取適法第5条第1項第5号))。
 また、取適法の適用対象となる取引である場合には、通常よりも短納期の発注をフリーランスに行うに当たり、フリーランスの給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、フリーランスからの求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金の額を決定してフリーランスの利益を不当に害してはならず(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号))、フリーランスに発生する費用の増加を十分に考慮した上で、必要な説明や情報の提供を行いつつ、十分な協議を行うことも求められる。

問題となり得る制作会社の行動例

 (ア) 短納期の発注を行うに際して、フリーランスに発生する費用の増加を考慮することなく、当該費用の増加を考慮した通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を定めた。(買いたたき(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第4号、取適法第5条第1項第5号))
 
 (イ) 短納期の発注を行うに際して、フリーランスから特急料金を含む価格協議を求められたにもかかわらず、当該協議に応じず又は必要な説明若しくは情報の提供を行わずに、一方的に代金の額を定めた。(協議に応じない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号))
 

取引の適正化のために参考となる制作会社の行動例

 (ア) 短納期の発注を行うに際して、発注元とも交渉して追加の制作委託費を発注元が負担することにより資金を確保した上で、フリーランスには通常よりも割増しした報酬の額を支払うこととした。
 

2  取引の履行過程

(1) 発注取消し

制作会社が採るべき行動
✓  フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに発注を取り消す場合は、フリーランスが行った作業に掛かる費用等を支払うこと
関連条文:不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第2項第2号、取適法第5条第2項第3号)
 アニメ制作においては、フリーランスにアニメ制作に係る発注をした後、制作中止等により、発注者である制作会社が発注を取り消す場合がある。フリーランスへのヒアリング調査によれば、発注取消しの時期によっては、既に準備作業を進めている旨や穴埋めのために別件を受注することは難しい旨の回答もあり、発注取消しの際に費用等が支払われないとフリーランスに不利益となる場合もあるとみられる。
 制作会社へのヒアリング調査では「短納期でフリーランスに発注する際は割増しの特急料金を支払っている」との回答があった一方で、フリーランスへのヒアリングでは「どれだけ急ぎの仕事でも割増料金というものはない」との回答もあった。
 フリーランスに対するアンケート調査では、一部ではあるが、「依頼された後に案件がなくなったが、既に作業した範囲に対する報酬が支払われなかった」ことがあるとの回答があった。
 この点、フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象となる取引である場合には、制作会社が、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに発注を取り消し、フリーランスが行った作業に掛かる費用等を負担せずに、フリーランスの利益を不当に害してはならない(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第2項第2号))。
 なお、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに稼働直前で業務委託をキャンセルしたことにより、フリーランスが別の業務を実施することを不可能にさせたときは、制作会社は、直前までにフリーランスが行った作業分の費用を負担するだけではなく、フリーランスに対し、当該業務委託の「報酬の額」相当額の支払を行わなければ、給付内容の変更によりフリーランスの利益を不当に害したとしてフリーランス・事業者間取引適正化等法上問題となるおそれがある点に留意が必要である。
 フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象ではない場合も、取適法の適用対象となる取引であるときには、フリーランスの責めに帰すべき理由がないのに発注を取り消し、フリーランスが行った作業に掛かる費用等を負担せずに、フリーランスの利益を不当に害してはならない(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号))。
 なお、フリーランスの利益を不当に害したといえるかは、発注取消しによって、フリーランスが費用を負担することなどにより生じた損失や、これに対して制作会社が負担した費用等を総合的に考慮し、フリーランスに不利益が生じたといえるかで判断する点に留意が必要である。

問題となり得る制作会社の行動例

 (ア) フリーランスに対して業務委託をしたが、フリーランスが絵を描き始める前に予定が変更となり、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに発注を取り消した。通常、絵を描く前に必要な準備作業(絵コンテや素材の確認等)を求めており、当該作業は既に行われていたが、成果物を受け取る前であったので、準備作業に掛かる費用は支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第2項第2項、取適法第5条第2項第3号))
 
 (イ) 企画開発工程から作品完成までの長期間を予定して発注したが、プロダクション工程開始直前に制作が中止となり、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに発注を取り消した。フリーランスが既に行った作業に掛かる費用のほか、急に空いたスケジュールを穴埋めできずに生じた損失を一切考慮せず、何らの費用等の支払をしなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第2項第2号、取適法第5条第2項第3号))
 

取引の適正化のために参考となる制作会社の行動例

 (ア) 発注後に、制作が中止になり、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに発注を取り消した場合は、フリーランスの稼働の実態に応じて補償を支払うようにしている。
 
 (イ) 発注がキャンセルとなった場合のトラブル防止のため、契約において、金銭の支払等について定めたキャンセルポリシーを設けている。
 

(2) 制作委託費の追加支払

制作会社が採るべき行動
✓  フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、フリーランスに対して、制作期間の延期・延長、当初契約と異なる業務、やり直し(リテイク)などを行わせることにより、フリーランスに追加の稼働が発生した場合には、追加の報酬を支払うこと
✓  給付の受領の前後を問わず、必ずしも事前に給付を充足する条件を明確にできなかったが、フリーランスの給付の内容が当初委託した内容と異なる等とし、やり直し(リテイク)等をさせる際には、その費用について、制作会社がやり直し(リテイク)等をさせるに至った経緯等を踏まえ、フリーランスと十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定すること
関連条文:不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第2項第2号、取適法第5条第2項第3号)
フリーランスが採るよう努めるべき行動
✓  制作会社から制作期間の延期・延長、当初契約と異なる業務、やり直し(リテイク)などを求められ、追加の稼働が発生した場合に、追加の報酬の支払に関する協議を行うときは、追加で必要となった制作工程、制作期間等について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めること
 製作委員会・元請制作会社間、元請制作会社・下請制作会社間の取引と同様に、制作期間の延期・延長、当初契約内容と異なる追加作業の発注、やり直し(リテイク)等によって、フリーランスに追加の稼働が発生する場合がある。
 フリーランスに対するヒアリング調査においては、月額固定報酬の場合には延長した期間分の報酬も支払われる旨の回答があった一方で、作品単位・1話単位の契約の場合には期間延長しても追加報酬が支払われない旨やリテイクの結果2話分の作業をしたが1話分の報酬しか支払われなかった旨の回答もあった。
 この点、フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象となる取引である場合には、制作会社が、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、フリーランスに対して、制作期間の延期・延長、当初契約と異なる業務、やり直し(リテイク)などを行わせ、フリーランスに追加の稼働が発生した際に、制作会社が追加報酬を支払わない等、フリーランスの利益を不当に害してはならない(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第2項第2号 ))。
 また、フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象ではない場合も、取適法の適用対象となる取引であるときには、制作会社がフリーランスの責めに帰すべき理由がないのに、制作期間の延期・延長、当初契約と異なる業務、やり直し(リテイク)などを行わせることによって、フリーランスに追加の稼働が発生した際に、制作会社が追加の代金を支払わない等、フリーランスの利益を不当に害してはならない(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号))。
 なお、アニメ制作のような情報成果物の作成委託においては、成果物が当初委託した内容を満たしているかどうかは、制作会社の価値判断等により評価される面があり、事前に給付を充足する条件を正確に発注書等で明示することが不可能な場合がある。そのように、事前に給付を充足する条件を正確に明示することが困難な中で、コミュニケーションが不十分で作業内容の理解が異なった結果、フリーランスの納品物のクオリティが要求水準から乖離(かいり)している場合がある等、責任の所在が曖昧なケースもあると考えられる。
 このような場合において、制作会社が、給付の受領の前後を問わず、必ずしも事前に給付を充足する条件を明確にできなかったが、フリーランスの給付の内容が当初委託した内容と異なる等とし、やり直し(リテイク)等をさせる際に、その費用について一方的に負担割合を決定してフリーランスの利益を不当に害してはならず、制作会社がやり直し(リテイク)等をさせるに至った経緯等を踏まえ、フリーランスと十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定する必要がある。
 フリーランスにおいても、制作会社と追加の報酬の支払に関する協議を行う場合は、追加で必要となった制作工程、制作期間等について、可能な範囲で具体的に説明するよう努めることが求められる。

問題となり得る制作会社の行動例

 (ア) 契約期間は発注時に明示したが、前工程の遅延により、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに半年以上契約期間が延長した。その際、フリーランスに対し、延長した期間分に相当する追加報酬を支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第2項第2号、取適法第5条第2項第3号))
 
 (イ) 製作委員会に対する納期に間に合わせるために、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、本来委託した業務の範囲外である前工程の修正を追加で依頼したが、追加報酬は支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第2項第2号、取適法第5条第2項第3号))
 
 (ウ) 発注時の打合せの際に伝えた内容と異なる内容へのリテイクを要求した際に、追加の報酬を支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第2項第2号、取適法第5条第2項第3号))
 
 (エ) スケジュールが遅れていたため、発注時に明示した納期を前倒しした。フリーランスの作業期間は短くなり、フリーランスに追加の費用が生じたが、特急料金等の追加報酬を支払わなかった。(不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第2項第2号、取適法第5条第2項第3号))
 

取引の適正化のために参考となる制作会社の行動例

 (ア) 契約期間を定めた上で月ごとに固定額を報酬として支払う契約の場合に、制作期間が延長され契約期間を延長した際は、延長した期間についても報酬を支払っている。
 
 (イ) 当社の都合によりフリーランスの作業開始時期が延期になった際に、直前で作業開始が延期となることでフリーランスが不利益を被らないよう、契約期間の始期を変更せずに空いた期間で当初の給付内容とは別の業務を担当してもらったが、当初の報酬に加え、延長した期間についても報酬を支払った。
 
 (ウ) テレビ放映後、DVD化するに当たってやり直し(リテイク)作業を依頼した際は、別途作業費を支払った。
 

(3) 減額

制作会社が採るべき行動
✓  フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、業務委託時に定めた報酬の減額をしないこと
関連条文:報酬の減額(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第2号)、代金の減額(取適法第5条第1項第3号)
 フリーランスに対するアンケート調査及びヒアリング調査では、一部ではあるが、納品後に当初合意のあった金額から減じて支払われたことがあるとの回答や、振込手数料分を減額されたことがあるとの回答があった。
 この点、フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象となる取引である場合には、制作会社がフリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、業務委託時に定めた報酬の額を減じてはならない(報酬の減額(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第2号))。
 フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象ではない場合も、取適法の適用対象となる取引であるときには、制作会社がフリーランスの責めに帰すべき理由がないのに、代金の額を減じてはならない(代金の減額(取適法第5条第1項第3号))。

問題となり得る制作会社の行動例

 (ア) フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、当初依頼していたフリーランスに加え、助手(フリーランス)を追加した際に、助手の報酬の額を捻出するとして、当初依頼したフリーランスの報酬の額を減額した。(報酬の減額(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第2号)、代金の減額(取適法第5条第1項第3号))
 

取引の適正化のために参考となる制作会社の行動例

 (ア) 報酬を支払う際に、振込手数料を報酬から差し引くことはせず、当社が負担している。
 

(4) 支払遅延・不払

制作会社が採るべき行動
✓  できる限り短い期間内で支払期日を定めて 、報酬をその支払期日までにフリーランスに支払うこと
関連条文:期日における報酬支払義務違反(フリーランス・事業者間取引適正化等法第4条第5項)、支払遅延(取適法第5条第1項第2号)
フリーランスが採るよう努めるべき行動
✓  制作会社がフリーランスからの請求書に基づき報酬を支払っている場合には、請求書を速やかに制作会社に提出するよう努めること
 フリーランスに対するアンケート調査では、一部ではあるが、支払遅延や不払といった行為を受けた経験があるとの回答があった。
 この点、フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象となる取引である場合には、制作会社は、フリーランスの給付の内容について検査するかどうかを問わず、報酬を、給付を受領した日(役務提供委託の場合は役務の提供を受けた日)から起算して60日以内のできる限り短い期間内において定めた支払期日までに支払わなければならない(期日における報酬支払義務(フリーランス・事業者間取引適正化等法第4条第5項))。
 フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用対象ではない場合も、取適法の適用対象となる取引であるときには、制作会社は、フリーランスの給付の内容について検査するかどうかを問わず、代金を、給付を受領した日(役務提供委託の場合は役務の提供を受けた日)から起算して60日以内のできる限り短い期間内において定めた支払期日までに支払う必要がある(支払遅延(取適法第5条第1項第2号))。
 なお、制作会社が、フリーランスからの請求書に基づき報酬を支払っている場合であっても、フリーランスからの請求書の提出の有無にかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに報酬を支払う必要がある。もっとも、フリーランスからの請求書の提出が遅れると、制作会社が支払期日までに報酬を支払うことが困難になる場合も考えられることから、フリーランスにあっては、請求書を速やかに提出するよう努めることが求められる。

問題となり得る制作会社の行動例

 (ア) 資金繰りの悪化を理由に、報酬の支払が支払期日から遅れた。(期日における報酬支払義務違反(フリーランス・事業者間取引適正化等法第4条第5項)、支払遅延(取適法第5条第1項第2号))
 

取引の適正化のために参考となる制作会社の行動例

 (ア) 成果物の受領後にクオリティが一定の水準に達しているかを確認しているが、給付を受領した日を起算日として報酬の支払期日を設定し、同期日までに報酬を支払っている。
 

第5 今後の対応

 1 内閣府知的財産戦略推進事務局及び公正取引委員会は、関係府省庁・関係事業者団体等の協力を得て、今後、本指針の周知を徹底する。
 
 2 公正取引委員会は、製作委員会(構成事業者)、動画配信事業者及び制作会社が本指針に記載の採るべき行動に沿わないような行為をすることにより、独占禁止法、取適法又はフリーランス・事業者間取引適正化等法に違反する場合には、厳正に対処していく。
 

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