<令和元年改正独占禁止法(概要)>

<課徴金制度の見直し>

<算定期間>

<算定基礎>

<その他>

<新しい課徴金減免制度一般>

<新しい課徴金減免制度の申請方法>

<判別手続一般>

<特定通信等>

<適切な保管>

<電子データ一般>

<電子データの適切な保管>

<申出書・概要文書共通>

<申出書>

<概要文書>

<令和元年独占禁止法改正>

問1 令和元年改正はどのような趣旨で行われたのですか。

答1 これまでの独占禁止法の課徴金制度においては,次のような問題がありました。
・ 事業者の調査への協力の内容等を勘案して課徴金額を決定することができないことから事業者による協力が促進されず,効率的・効果的な真相解明・事件処理に支障が生じている。
・ 事業者の経済活動や企業形態の多様化・複雑化が進む中で独占禁止法違反行為も多様化・複雑化しており,適切な課徴金を賦課することができない事案が生じている。
 このため,公正取引委員会の調査に協力するインセンティブを高める仕組みを導入し,事業者と公正取引委員会の協力による効率的・効果的な真相解明・事件処理を行う領域を拡大するとともに,複雑化する経済環境に応じて適切な課徴金を課せるようにするために改正を行ったものです。

問2 令和元年改正はどのような経緯で行われたのですか

答2 平成29年4月に公表された独占禁止法研究会報告書の提言を受けて,一律かつ画一的な算定・賦課をする課徴金制度を見直し,公正取引委員会の調査に協力するインセンティブを高める仕組みの導入,事業者と公正取引委員会の協力による効率的・効果的な真相解明・事件処理を行う領域の拡大とともに,複雑化する経済環境に応じて適切な課徴金を課せるよう所要の改正を行うべく検討・調整が進められ,平成31年3月12日に,第198回通常国会に改正法案が提出され,令和元年6月19日に可決・成立し,同月26日に公布されました(令和元年法律第45号)。

<課徴金制度の見直し>   

問3 令和元年改正によって,課徴金の算定方法(算定基礎,算定率)等はどのように変わったのですか。

答3 現行の課徴金制度では違反行為の実態に応じた適切な課徴金を課すことができない場合があることから,課徴金の算定基礎,算定率等について見直しを行いました。
 具体的な内容は次のとおりです。
(1)算定基礎について
 ア 現行制度下において最長3年間とされている算定期間について調査開始日の10年前まで遡れるように改正
 イ 今まで算定基礎となっていなかった談合金や,下請受注等による売上額,違反事業者から指示等を受けたその違反事業者の完全子会社等の売上額を算定基礎に追加
(2)算定率について
 ア 中小企業算定率の適用対象を実質的な中小企業に限定
 イ 業種別算定率を廃止して基本算定率に一本化
 ウ 早期離脱に対する軽減算定率を廃止
 エ 主導的役割に対する割増算定率について,隠蔽・仮装行為の要求等を適用対象に追加
 オ 繰り返し違反について
(ア)最初の課徴金納付命令等よりも前に,同時並行する違反行為を取りやめた場合を適用対象から除外
(イ)過去10年以内に課徴金納付命令等を受けた完全子会社の親会社,課徴金納付命令等を受けた事業者と合併した事業者及び課徴金納付命令等を受けた事業者から対象事業を承継した事業者による  違反行為についても適用対象に追加
(3)その他
    除斥期間を5年から7年に延長

<算定期間>       

問4 算定期間はどのように変わったのですか。       

答4  課徴金の算定期間は,これまで最長で3年間とされていました。
 しかし,近年では,違反行為期間の平均年数は約4年となっており,5年を超える事件も少なくなく,中には10年近い事件も存在しています。そこで,違反行為の抑止を図る観点から,算定期間について,その始期を調査開始日から最長10年遡れることとされました。
 なお,調査開始日後も違反行為を継続した場合は,算定期間が10年を超えることもあります。

問5 除斥期間はどのように変わったのですか。    

答5  排除措置命令・課徴金納付命令の除斥期間(違反行為の終了から公正取引委員会が措置を採れるまでの期間)は,これまで5年とされていました。
 しかし,近年,違反行為は認定できたにもかかわらず,除斥期間の5年を経過していたため,措置を採ることができない事件があったことから,7年に延長されました。

問6 算定基礎の推計規定とはどのようなものですか。   

答6 今回の改正により,算定期間について,その始期を調査開始日から最長10年間遡れることとなりました。
   帳簿書類は10年間の保存義務が課されていますが,例えば,事業者の帳簿書類の一部が欠落していたり,公正取引委員会の調査に応じず算定基礎(売上額等)に関する資料を提出しなかったりするなど,適正な算定基礎が把握できない事態が生じる可能性があります。
 このため,算定基礎の実額が把握できない期間について算定基礎を推計できる規定が整備されました。具体的には,把握できた期間の算定基礎額の日割平均額に把握できない期間を乗じて算出されます。

<算定基礎>

問7 算定基礎の追加の概要を教えてください。

答7 不当利得相当額以上の金銭を徴収し,違反行為の抑止を図るという課徴金制度の趣旨・目的を効果的に達成するために,課徴金の算定基礎に次のものが追加されました。
 (1)違反事業者から指示や情報を受けた一定のグループ企業(完全子会社等〔※1〕)の売上額又は購入額
 (2)対象商品・役務に密接に関連する業務(下請受注等)の対価
 (3)対象商品・役務を供給しないことに関して受けた金銭等(談合金等)(※2)
 
※1 完全子会社,完全親会社及び完全兄弟会社(完全親会社が同一の会社)等をいいます。
※2 経済的利得の全額が課徴金額となります。

問8 改正法により課徴金の算定基礎に追加された違反事業者から指示や情報を受けた一定のグループ企業(完全子会社等〔※〕)の売上額等の概要について教えてください。※ 完全子会社,完全親会社及び完全兄弟会社(完全親会社が同一の会社)等をいいます。

答8 不当な取引制限や私的独占において,対象商品・役務について,完全子会社等が違反事業者からの指示や情報に基づいて供給や購入を行う場合があります。
 今回の改正により,違反事業者からの指示や情報に基づく完全子会社等(違反事業者でないものに限ります。)の対象商品・役務の売上額又は購入額について,違反事業者の課徴金の算定基礎に追加されました。
 

問9 不当な取引制限に係る密接関連業務とはどのようなものですか。

答9  不当な取引制限に係る密接関連業務については,対象商品・役務の全部又は一部を供給しないことを条件として行う業務で,他の違反事業者等の対象商品・役務の供給に必要なものです。
 例えば,違反対象物件について入札談合が行われていた場合において,他の違反行為者に対して違反対象物件の特定の工事について受注を譲る代わりに,その下請工事を受注・施工した場合等が密接関連業務に該当することとなります。
 今回の改正により,これらの業務の対価の額が算定基礎に追加されました。

問10 私的独占に係る密接関連業務とはどのようなものですか。

答10 私的独占のうち支配型私的独占について,密接関連業務が算定基礎に追加されました。
 支配型私的独占に係る密接関連業務は,対象商品・役務の供給を受ける者に対して,当該供給を受けるために必要な役務であり,商品の供給は対象とはなりません。
例えば,次のような業務が該当します。
・ 特定の工事において,受注予定者の決定,入札価格の決定等を行っていた違反事業者が発注者から委託を受けていた当該工事に係る施主代行業務(入札執行の補助等)
・ 違反事業者が発注者に対して違反行為に係る商品又は役務の仕様書等を作成するための情報を提供する業務
今回の改正により,これらの業務の対価の額が課徴金の算定基礎に追加されました。

問11 密接関連業務の対価に相当する額はどのように算定されますか。

答11 密接関連業務の対価に相当する額の算定方法については,施行令において,売上額等の算定方法と同様に,
・ 実行期間において引き渡した商品又は提供した役務を課徴金の算定基礎とすること
・ 原則として引渡基準,例外として契約基準を適用とすること
とされています。

問12 改正法により課徴金の算定基礎として追加された談合金等の概要について教えてください。

答12 違反事業者及びその完全子会社等(※)が対象商品・役務を供給しないこと又は購入しないことに関して得た金銭その他の財産上の利益,すなわち,「談合金等」を得る場合があります。
 今回の改正により,違反事業者及びその完全子会社等(違反事業者でないものに限ります。)が得た談合金等に相当する額(談合金等相当額)の全額が違反事業者の課徴金の対象に追加されました。
 
※ 完全子会社,完全親会社及び完全兄弟会社(完全親会社が同一の会社)等をいいます。

問13 「その他の財産上の利益」はどのように算定されますか。

答13 「その他の財産上の利益」には多様なものが含まれるため,具体的な算定方法を一律に定めることは困難ですので,具体的な事例に即して適切に価額を算定することとなります。

問14 調査開始日前に違反事業を承継した子会社等への課徴金の賦課の趣旨・内容について教えてください。

答14  これまでは,違反事業者が事業譲渡や分割により違反対象事業を子会社等に承継した後に消滅した場合において,当該事業譲渡等が調査開始日「以後」に行われた場合には当該子会社等に対して課徴金を課すことができる一方,調査開始日「前」に行われた場合には当該子会社等に課徴金を課すことはできませんでした。
 しかしながら,近年では企業の事業再編が活発化しており,公正取引委員会による調査開始日前後で取扱いに差異が生じることは均衡を失すると考えられるため,調査開始日の前後を問わず,違反事業者が違反対象事業を子会社等に承継した後に消滅した場合には,承継した子会社等に対し,課徴金を課すことができるようにされました。
 なお,これまでも違反事業者が合併により消滅した場合においては,合併の時期を問わず,合併後に存続した事業者に対して課徴金を課すことができることとされており,今回の改正は,合併の場合と同様の取扱いとするものです。

問15 中小企業算定率の見直しの趣旨・内容について教えてください。

答15  中小企業算定率は,大企業と中小企業で営業利益率にかなりの幅があること等を踏まえ,通常の算定率を軽減する制度として設けられているものです。
 しかしながら,近年の独占禁止法の執行では,大企業グループに属する違反事業者であっても中小企業算定率が適用される事案もみられ,そのような大企業グループに属する違反事業者については,当該グループの経済力又は信用力等を利用したりグループ内で営業利益及び経済的負担を共有することができるなど,その趣旨に必ずしも合致しないため,中小企業算定率を適用することが適当ではないと考えられます。
 そのため,今回の改正により,中小企業算定率の適用を受ける事業者を違反事業者及びその全ての「子会社等」(※)が「中小企業」に該当する場合に限定することにより,実質的な中小企業に限定することとされました。
※ 違反事業者の子会社,親会社及び親会社が同一である他の会社

問16 業種別算定率はなぜ廃止されたのですか。

答16 業種別算定率は,小売・卸売業の取引は,利益率が小さくなる特色があったことなどを踏まえて設定されていたものです。
 しかしながら,近年では,事業活動の多様化に伴い,小売業・卸売業とその他の業種との相違が不明確になりつつあり,また,大規模な企業グループに属している違反行為者の場合,企業グループ内の他の事業者が製造した商品を購入して第三者に転売しているなど,実態としては製造業といえるにもかかわらず,卸売業として低い算定率が適用され,違反行為の抑止として十分でない場合がみられました。
 そのため,今回の改正により,業種別算定率は廃止し,基本算定率に一本化されました。
 

問17 早期離脱に対する軽減算定率はなぜ廃止されたのですか。 

答17 これまでは,早期に自発的に違反行為を解消させるインセンティブを高めることを目的として,公正取引委員会による調査開始前に短期間で違反行為をやめた者(違反行為をした期間が2年未満であって,調査開始日の1か月前までに違反行為をやめた者)に適用される軽減算定率(2割減額)が設けられていました。
 しかしながら,入札資格の喪失という外部的要因によって違反行為に参加できなくなった者や,単に違反対象事業を譲渡したために違反行為から離脱した者に適用されるなど,本来の制度趣旨に合致しない適用例がほとんどでした。
 このように,違反行為を早期に解消するインセンティブを高めるという制度としての機能を発揮していないため,今回の改正により廃止されました。

問18 主導的役割の類型の追加(割増算定率が適用される類型の追加)の趣旨・内容について教えてください。

答18 不当な取引制限の違反事業者の中には,違反行為の発見や違反行為に係る正確な事実の把握を困難にさせる目的で公正取引委員会による調査に際して隠蔽・仮装行為を行うことを要求し,指示し,又は唆す者がおり,かかる事業者は,こうした隠蔽・仮装行為によって違反行為の実効性を高め,違反行為を継続的に行うことを容易にしていると考えられます。
 また,課徴金減免制度に基づく減免申請や,調査協力減算制度による協議の申出を行わないことの要求等が行われた場合,違反行為が継続される蓋然性が高くなることから,それらの要求等は違反行為をやめないことを要求等する行為と同様と考えられます。
 したがって,今回の改正により,違反行為をより実効的に抑止する観点から,割増算定率の適用対象となる主導的役割を果たした事業者の対象範囲を拡大し,これらの行為を行った事業者に対しても割増算定率を適用することとされました。

問19 繰り返し違反の適用対象の整理(割増算定率が適用される類型の整理)の趣旨・内容について教えてください。   

答19 違反行為を繰り返す事業者は,課徴金を納付してもなお違反行為を行うインセンティブが生じるほどの利得を得ていると考えられ,そのような違反行為を抑止するために必要な課徴金を賦課する観点から,繰り返し違反に対する割増算定率が設けられています。
 しかし,「昨今は企業グループ単位でのコンプライアンスが求められている」等の独占禁止法研究会の議論を踏まえ,企業グループ単位での違反行為についても抑止効果を及ぼす観点などから,今回の改正により,過去10年以内に,
(1)完全子会社が課徴金納付命令等を受けている場合
(2)課徴金納付命令等を受けた違反対象事業を承継している場合
も繰り返し違反に対する割増算定率を適用することとなりました。
 他方,これまでは,同時並行的な違反行為に対しても繰り返し違反に対する割増算定率が適用されることとされていましたが,対象者を先行する納付命令等の日以後において当該違反行為をしていた者に限定することとなりました。

<その他の改正事項>

問20 私的独占,不公正な取引方法における課徴金制度の見直しの内容について教えてください。

答20 令和元年改正では,不当な取引制限に対する課徴金制度の見直しに応じて,私的独占,不公正な取引方法に対する課徴金制度の見直しも行われています。
 具体的には,私的独占及び不公正な取引方法についても
(1)算定期間について調査開始日の10年前まで遡れるように延長
(2)推計規定の整備
(3)除斥期間について5年から7年へ延長
(4)業種別算定率の廃止(※1)
(5)違反事業者から指示等を受けた一定のグループ企業の売上額等の算定基礎への追加(※2)
(6)対象商品・役務を供給しないことに関して受けた経済的利得(談合金等)及び対象商品・役務に密接に関連する業務(入札執行の補助等)によって生じた売上額の算定基礎への追加(※3)
(7)調査開始日前に違反事業を承継した場合への課徴金の賦課
等がされています。
 
※1 私的独占及び優越的地位の濫用を除く不公正な取引方法が対象(優越的地位の濫用は,現行規定においても業種別算定率が存在していません。)
※2 私的独占が対象
※3 支配型私的独占が対象

問21 課徴金制度以外の改正事項(課徴金の延滞金の割合の引下げ,検査妨害罪の法人等に対する罰金額の上限の引上げ,犯則調査手続における電磁的記録の証拠収集手続の整備)の概要について教えてください。

答21 令和元年改正では,課徴金減免制度の見直し,課徴金の算定方法の見直しといった課徴金制度の改正のほか,課徴金の延滞金の割合の見直し,検査妨害罪の法人等に対する罰金額の上限の引上げ等,犯則調査手続における電磁的記録の証拠収集手続の整備といった改正がされています。
(1)課徴金の延滞金の割合の見直し
課徴金の延滞金の割合については,これまでは14.5%と法定されていましたが,経済状況の変化等に迅速に対応できるようにするため,政令に委任され,政令において,年14.5%を原則としつつ,例外として,租税特別措置法に定める特例基準割合が年7.2%以下の割合の場合には,当該割合に年7.25%を加算した割合とされました。
(2)検査妨害罪の法人等に対する罰金額の上限の引上げ等
検査妨害罪の法人等に対する罰金額については,調査権限の実効性を確保するため,他の経済法令に倣って,その上限額が2億円に引き上げられました。
 このほか,調査における強制処分に係る罰則としての罰金の上限額を300万円に引き上げるとともに,行為者を罰するほか,法人等に対しても罰金刑を科することとされました。
(3)犯則調査手続における電磁的記録の証拠収集手続
犯則調査手続における電磁的記録の証拠収集手続については,サーバ管理者等に必要なデータを記録媒体に記録させるなどした上でその記録媒体を差し押さえる手続(記録命令付差押え)や,コンピュータからインターネット等を通じて接続しているサーバ等の中のデータを取得する場合に,そのデータをコンピュータに複写して差し押さえる手続(接続サーバ保管の自己作成データ等の複写)が整備されました。

問22 改正法の施行日はいつですか。

答22 今回の主な改正内容の施行日は次のとおりです。
・ 先行する課徴金納付命令等よりも前に同時並行する違反行為を取りやめた場合を割増算定率の対象から除外する部分や検査妨害罪の法人等に対する罰金額の上限の引上げ等 令和元年7月26日
・ 課徴金の延滞金の割合の見直しや犯則調査手続における電磁的記録の証拠収集手続の整備 令和2年1月1日
・ 課徴金の算定方法と課徴金減免制度の見直し等 令和2年12月25日

問23 今回の主な改正内容に関する経過措置(施行日前後の適用関係)について教えてください。

答23 主な改正内容に関する経過措置は次のとおりです。
(1)排除措置命令及び課徴金納付命令の除斥期間
  今回の改正により,除斥期間が5年から7年に延長されましたが,施行日(令和2年12月25日)において違反行為がなくなってから(実行期間が終了してから)5年を経過している場合は,命令  を行うことはできないこととされています。
(2)課徴金の納付を命じる手続 別段の定めがあるものを除き,改正後の規定が適用されます。
(3)課徴金の計算方法
 ア 施行日前に既になくなっている違反行為
   改正前の規定に基づき計算されることになります。
 イ 施行日をまたがる違反行為
   施行日前の違反行為に係る部分については改正前の規定に基づき計算され,施行日後以後の違反行為に係る部分については改正後の規定に基づき計算され,これらの合計額が課徴金額となります。
(4)課徴金の算定期間
   施行日前の違反行為に係る算定期間は施行日前日から最長で3年間となり,施行日前の違反行為に係る算定期間と施行日以後の違反行為に係る算定期間の合算した期間は公正取引委員会の調査開始   日から最長で10年前の日まで遡ることになります。
(5)課徴金減免制度
   課徴金減免申請を施行日前に行った事業者については改正前の課徴金減免制度が適用され,施行日以後に行った事業者については改正後の課徴金減免制度が適用されます。

問24 供述聴取後のメモ作成について教えてください。

答24 新たな課徴金減免制度では,事業者の自主的な調査協力の度合いに応じて課徴金の減算額が決定されることとなるため,減免申請者は,より高い減算額を得るために自主的に効果的な証拠を提出することが見込まれます。
 この点,聴取対象者が供述聴取の内容を減免申請者に報告できるようにすることにより,提出すべき証拠の内容等を減免申請者に具体的に把握させ,減免申請者による効果的な証拠提出を促すことができると考えられます。
 そこで,新たな課徴金減免制度をより機能させる観点から,減免申請者の従業員等である聴取対象者が,その日に行われた供述聴取の内容を減免申請者に対して正確に伝えることを可能とするため,審査官等の同席の下,供述聴取終了後直ちにその場でメモを作成することができることとし(必要に応じて審査官等が聴取対象者からの質問にも応じることになります),その旨が「独占禁止法審査手続に関する指針」(平成27年12月)に追記されることになりました。

問25 改正前の条文と改正後の条文の対応関係を教えてください。

答25 こちらを御参照ください。

<新しい課徴金減免制度一般>

問1 当社は改正前の独占禁止法の規定に基づき課徴金減免申請を行っています。改正後の独占禁止法の規定に基づき,同一の内容の課徴金減免申請を行うことはできますか?

答1 改正前の独占禁止法の規定に基づき課徴金減免申請を行った事業者が,改正後の独占禁止法の規定に基づき,同一の内容の課徴金減免申請を行うことは可能ですが,その場合には,改正前の独占禁止法の規定に基づき行った課徴金減免申請を撤回した上で,改正後の独占禁止法の規定に基づき,同一の内容の課徴金減免申請を行ってください(改正独占禁止法附則第6条第5項参照)。ただし,場合によっては,改正前の独占禁止法の規定に基づき行った課徴金減免申請に基づく申請順位を維持できない可能性がありますので,御留意ください。

問2 当社は改正前の独占禁止法の規定に基づき課徴金減免申請を行っています。改正後の調査協力減算制度の規定に基づき,調査協力減算制度を利用することはできますか?

答2 改正前の独占禁止法の規定に基づき課徴金減免申請を行った事業者は,改正前の独占禁止法が適用されますので,調査協力減算制度を利用することはできません(改正独占禁止法附則第6条第5項参照)。

<新しい課徴金減免制度の申請方法>

問1 新しい課徴金減免制度では,課徴金減免申請の方法が電子メールに変更されますが,減免規則様式第1号又は第3号による報告書が添付された電子メールが提出された時点とは,具体的にいつの時点を指すのですか?

答1 減免規則第4条第2項又は第7条第3項の規定に基づき,公正取引委員会の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(サーバ)への記録がなされた時に,課徴金の減免に係る報告書が公正取引委員会に提出されたものとみなされます。他方,当該記録がなされない場合には,提出したことにはなりません。
 事業者側のメールシステムの設定又は運用ルールによっては,公正取引委員会に電子メールが到達するまでに時間を要する場合又は届かない場合があります。また,事業者が送信した電子メールにウイルスが含まれている場合には,公正取引委員会は当該電子メールを受信できません。そのため,電子メールを送信した際には,課徴金減免管理官に対して受信の有無を電話で問い合わせることをお勧めします。

問2 開庁時間外に課徴金減免申請及び電子メールの受信確認を行うことは可能でしょうか?

答2 開庁時間外(平日9:30~18:15以外の時間,土日祝日)に課徴金減免申請を行うことが見込まれる場合で,開庁時間外に受信確認を希望される方は,まずは開庁時間内に課徴金減免管理官にその旨を連絡し,個別に御相談ください。
 御相談いただいた場合には,開庁時間外でも電子メールの受信確認をいたします。ただし,申請内容の是非については開庁時間内での対応になります。

問3 減免規則様式第1号又は第3号による報告書を複数の電子メールに分割して送信する場合,どの時点で提出されたと判断されますか?

答3 減免規則様式第1号又は第3号による報告書を複数の電子メールに分割して送信する場合には,電子メールの全てが公正取引委員会の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(サーバ)に記録された時点で,減免規則様式第1号又は第3号による報告書が提出されたとみなされます。

問4 減免規則様式第1号又は第3号による報告書が添付された電子メールのパスワードを別の電子メールで送信する場合,どの時点で提出されたと判断されますか?

答4 減免規則様式第1号又は第3号による報告書にパスワードを付けた場合には,減免規則様式第1号又は第3号による報告書が添付された電子メール及びパスワードの情報に係る電子メールの全てが公正取引委員会の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(サーバ)に記録された時点で,減免規則様式第1号又は第3号による報告書が提出されたとみなされます。
 なお, パスワードの情報も,必ず電子メールで送付してください。

<判別手続一般>

問1 判別手続とは,どのような手続ですか。

答1 公正取引委員会の行政調査手続において提出を命じられた,課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見について事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信(特定通信)の内容を記録した物件で,適切な保管がされていること等の要件を満たすことが確認されたものは,審査官がその内容にアクセスすることなく速やかに事業者に還付する手続です。
(注)指針(第4の2)では,事件ごとに指定された職員(判別官)が行う要件の確認の手続のことを指して「判別手続」と呼んでいます(狭義の判別手続)。

問2 課徴金減免対象被疑行為とは,どのような行為ですか。

答2 課徴金減免対象被疑行為とは,具体的には,
・不当な取引制限に該当する行為であって課徴金納付命令の対象となる違反行為
・事業者団体による一定の取引分野における競争を実質的に制限する行為であって課徴金納付命令の対象となる違反行為
の疑いのある行為(例えば,カルテルや談合の疑いのある行為)のことです。
 なお,課徴金減免制度の対象ではない私的独占や不公正な取引方法についての違反被疑行為は,含まれません。

問3 判別手続の対象となる調査を教えてください。

答3 公正取引委員会が行う課徴金減免対象被疑行為に対する行政調査手続を対象としています。犯則事件の調査手続(裁判官の発する許可状により差押等を行う場合)は対象としていません。

問4 判別手続を利用するための手順と,そのためにしておくべき事前準備を教えてください。

答4 判別手続を利用するためには,審査官がその物件の提出命令を行うに際し,提出命令を受けた事業者(事業者の役員等が提出命令を受けた場合を含みます。)から,その物件が判別手続の対象となるものであり判別手続を利用したい旨を審査官に伝達(口頭)し,その旨を記載した申出書(書面)を審査官に提出してください。
 また,提出命令を受けた日から2週間以内に,その提出命令により留置された物件について,その物件に記録された特定通信ごとに必要な事項を記載した概要文書を,公正取引委員会に提出する必要があります。
 そのための事前準備としては,判別手続の利用を受けようとする物件について,あらかじめ当該物件への適切な表示,特定の保管場所での保管,物件の内容を知る者の範囲の制限といった適切な保管をしておく必要があります。また,概要文書の提出については2週間という期限があるため,法務部門において担当者を定め,あらかじめ物件及び特定通信の概要を把握しておくことが望ましいと考えます。

問5 判別手続によって還付される物件は,どのような物件ですか。

答5 特定通信の内容を記録したものであること,特定通信に当たらない内容の記録が含まれていないこと,検査を妨害すること等に関するものではないこと,適切に保管されていたこと等の要件(規則第23条の3第1項参照)を満たすことが確認された物件が還付されます。
 なお,これらの要件が満たされているかは,事件ごとに指定された職員(判別官)が確認します。

問6 判別官に指定されるのは誰ですか。

答6 公正取引委員会の官房の職員から,公正取引委員会が事件ごとに指定します。当該事件の調査に従事したことのある職員は判別官に指定されません。

問7 電子データの取扱いはどうなりますか。

答7 電子データは,原則として,物件と同様に取り扱います。ただし,電子データの性質等を踏まえ,適切な保管等について物件と異なる点を明らかにしています(指針第7参照)。

問8 申出書の提出は,具体的にいつまでに行えばよいですか。(11月11日追加)

答8 まず,できる限り具体的な物件の範囲を指定して判別手続を利用したい旨を審査官に伝達(口頭)してください。当該物件に対する審査官による表示及び保管場所が適切であることの確認がなされた後に,申出書(書面)を作成してください。当該申出書は,当該物件に対する提出命令が発せられる前までに作成・提出する必要があります。

問9 判別手続により留置された物件を閲覧・謄写することはできますか。(11月11日追加)

答9 物件の提出命令を受けた事業者等からの求めがあれば,立入検査の翌日以降に,日程調整を行った上で,公正取引委員会が指定する場所において,提出物件(留置物)の閲覧・謄写が認められます(規則第18条参照)。判別手続により留置された物件は,判別官等の立会いの下,事件調査又は判別手続に支障を生じない範囲で閲覧・謄写を行うことができます。
 なお,謄写は,事業者等所有の複写機だけではなく,デジタルカメラ,スキャナー等の電子機器を用いて行うことも認められます。

問10 規則第23条の4第3項では,判別官が事業者に対して「資料の提出その他の必要な協力を求める」とされていますが,具体的にはどのようなものですか。(12月22日追加)

答10 判別官は,物件の確認を行うに当たり,必要に応じて説明や補足資料の提出を求めることがあります。
 典型的に想定される協力は,概要文書の記載内容に関する説明や,物件の保管場所に関する資料(保管場所のフロア図等の物件の保管場所の状況が分かる資料や,その保管場所を管理している部署等に関する資料など),物件の内容を知る者の範囲に関する資料(組織図等の役員等の所属や部署等の変遷が分かる資料など)などの提出です。

<特定通信等>

問1 特定通信とはどのようなものか具体的に教えてください。

答1 特定通信とは,課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見について事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信のことです。
 具体的には,課徴金減免対象被疑行為をした事業者が弁護士に対して秘密に行った法的意見を求める相談又はそれに対して当該弁護士が秘密に行った回答が,特定通信に該当します。

問2 特定通信の相手方となる弁護士の条件を教えてください。

答2 弁護士法の規定による弁護士であって事業者から独立して法律事務を行う弁護士であることが条件です。
 外国弁護士等及び事業者と雇用関係にある組織内弁護士は,該当しません。ただし,組織内弁護士が,当該事業者の指揮命令監督下になく,独立して法律事務を行っていることが明らかな場合には,当該指示があった後は,当該事業者から独立して法律事務を行う場合に該当します。具体的には,例えば,組織内弁護士が,カルテルに関する内部通報を契機として,法令遵守のために中立の立場で社内監査を行うべき旨の業務命令書を受け取り,社外監査役の直下に配置され,その他の業務から離れたような場合です。
(注)外国弁護士等とは,外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法に規定する外国弁護士及び外国法事務弁護士のことを指します。

問3 特定通信の内容を記録した物件とはどのようなものか具体的に教えてください。

答3 特定通信の内容を記録した物件とは,具体的には,例えば,
・事業者から弁護士への相談文書
・弁護士から事業者への回答文書
・弁護士が行った社内調査に基づく法的意見が記載された報告書
等です。
 他方,例えば,
・社内アンケート調査結果
・役員等へのヒアリング記録
等,事実を主たる内容とする文書等は,特定通信の内容を記録した物件に該当しません。

問4 事業者から弁護士への相談内容が記載されている文書に,その相談の前提となる事実も記載されている場合,その文書は特定通信の内容を記録した物件に該当しますか。

答4 当該文書に相談の前提となる事実が記載されていたとしても,全体として課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見についての弁護士との相談文書といえる場合には,特定通信の内容を記録した物件に該当します。

問5 判別手続の利用を申し出た物件に,特定通信に当たらない内容が記録された文書等が含まれている場合,その物件はどう取り扱われるのでしょうか。

答5 特定通信の内容を記録した物件に特定通信に当たらない内容が記録された文書等(対象外文書等)が含まれている場合,当該物件が判別手続によって還付されるためには,公正取引委員会(判別官)に対して当該対象外文書等の写しを提出等することが必要になります。したがって,文書等を管理するに当たっては,特定通信の内容を記録した文書等とそれ以外の文書等は,できる限り区別して保管することが望ましいと考えます。

問6 「課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見」とは具体的にどのようなものですか。

答6 「課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見」として典型的に想定されるのは,課徴金減免申請や調査協力を検討するための法的意見です。
 なお,それ以外の法的意見であっても,例えば,課徴金減免対象被疑行為があったかどうか不確定な段階で取得した法的意見など,減免申請の検討に至っていない段階での法的意見も,結果として課徴金減免申請等に資する可能性があるため,「課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見」に含まれ得ます。

<適切な保管>

問1 適切な保管とは,どのようなものですか。

答1 特定通信の内容を記録した物件が判別手続により還付されるためには,当該物件が適切に保管されていたことが必要となります。
 具体的には,「表示」,「保管場所」及び「内容を知る者の範囲」の各要件について,いずれも満たす場合には,適切に保管されていたものと認められます。

問2 特定通信の内容を記録した物件にどのような表示を行えばよいのか教えてください。

答2 審査官が物件の内容にアクセスしないようにするため,物件の表面その他の見やすい箇所に特定通信を記録したものである旨が明らかとなるような表示をしてください。これに該当する表示は,例えば,ファイルの背表紙などに「公取審査規則特定通信」や「公取審査規則第23条の2第1項該当」と記載することです(指針第2の2(1)参照)。
 文言については,このほかの表示であっても,特定通信の内容を記録したものである旨が識別できるように表示されていれば認められますが,判別手続の円滑な運用・利用の観点から,まずは,例示の表示をしてください。

問3 「秘匿特権」や「attorney-client privilege」といった表示は,適切な保管の要件を満たす表示として認められますか。

答3 「秘匿特権」や「attorney-client privilege」といった表示は,課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見について事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信(特定通信)の内容を記録した文書以外にも付されることが一般的にあり得る表示であり,審査官等が特定通信の内容を記録した物件であることを識別できず,特定通信かそれ以外の通信であるかを審査官が内容にアクセスして確認せざるを得なくなるため,適切な表示とは認められません。新たに導入する判別手続における審査官のアクセスを避ける趣旨から,特定通信の内容を記録した物件であることが容易に識別できる表示を求めています。
 なお,課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見について事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信(特定通信)の内容を記録した物件であることが識別できるように表示されていれば,「秘匿特権」等の表示や英語表示が併記されていることにより適切な保管の要件を欠くものではありません。

問4 特定通信の内容を記録した物件は,どのような場所で保管すればよいのか教えてください。

答4 特定通信の内容を記録した物件が適切に保管されていたと認められるためには,事業者として管理する特定の場所(弁護士に相談することを事務として取り扱う部署又は役員等が管理する場所に限ります。)で保管し,当該物件を保管していた場所とそれ以外の物件を保管していた場所とを外観上区分しておくことが必要となります。
 これに該当する保管方法は,例えば,特定通信の内容を記録した物件が保管されていることを表示した,法務部門が管理する書架に保管し,当該箇所に特定通信の内容を記録した物件以外の物件は保管されていないことです(指針第2の2(2)参照)。

問5 保管場所に,特定通信の内容を記録した物件が保管されている旨を表示する必要がありますか。

答5 保管場所である旨の表示がなかったとしても,事業者として管理する特定の保管場所で保管し,特定通信の内容を記録した物件を保管していた場所とそれ以外の物件を保管していた場所とが外観上区分されていれば,適切な保管がなされていたと認められます。
 他方,保管場所である旨の表示があれば,区分して保管されていることが明確になるため,判別手続の円滑な運用・利用の観点から,保管場所の表示をしてください。

問6 特定通信の内容を記録した物件について,事業部門で保管していた場合でも,適切な保管として認められますか。

答6 課徴金減免対象被疑行為に関与していた事業部門やその役員等については,「弁護士に相談することを事務として取り扱う部署又は役員等」には該当しないため,適切な保管とは認められません。
 特定通信の内容を記録した物件の保管場所を「弁護士に相談することを事務として取り扱う部署又は役員等が管理する場所に限る」としているのは,事業者としての適切な保管の観点から,また,判別手続の円滑な運用・利用の観点から,主要な検査対象となり得る事業部門の営業担当者等が判別手続の対象となる物件を保管するのではなく,法務部門で保管・管理することを求めるものです。

問7 法務部門がない場合,どのような場所で保管すれば適切な保管として認められますか。

答7 特定通信の内容を記録した物件の保管場所を管理すべき「弁護士に相談することを事務として取り扱う部署又は役員等」とは,典型的には法務部門やその役員等ですが,事業者の組織の在り方は様々であり,法務部門がないことも考えられます。その場合には,例えば,総務部門など当該事業者において弁護士に相談することを事務として取り扱う部署又は役員等の担当・所掌事務の実態や対応等についての説明を踏まえ,個別に判断することとなります。

問8 特定通信の内容を記録した物件の内容を知る者の範囲について教えてください。

答8 特定通信の内容を記録した物件の内容を知る者は,事業者の役員等であれば誰でもよいというものではなく,知るべき者に限定されていることが必要です。この知るべき者とは,事業者を代表して弁護士に相談する職責にある者又はその職責にあった者等であり,典型的には法務部門の役員等です(指針第2の2(3)参照)。

問9 特定通信の内容が記録された物件について,事業部門の営業担当者等が内容を知っている場合に,その内容を知る者の範囲がそれを知るべき者に制限されていたと認められますか。

答9 知るべき者とは,事業者を代表して弁護士に相談する職責にある者又はその職責にあった者等です。課徴金減免対象被疑行為に関与する事業部門の営業担当者等は,原則として「事業者を代表して弁護士に相談する職責にある者又はその職責にあった者」には該当しないと考えられます。
 他方,「事業者を代表して…職責にあった者」である法務部門の役員等が弁護士に相談する際に,事業部門の営業担当者等が同席し,具体的な内容等を補足説明したような場合には,当該同席等した相談(特定通信)については,特定通信を行った者として,「内容を知る者の範囲」に含まれ得ます。

問10 特定通信の内容が記録された物件について,外国弁護士に対してもその内容が共有されていた場合に,その内容を知る者の範囲がそれを知るべき者に制限されていたと認められますか。

答10 新たな課徴金減免制度をより機能させることに資する観点から,特定通信の内容を外国弁護士等に共有することの必要性が認められる場合には,「内容を知る者の範囲」の要件を欠くことにはなりません。したがって,その共有の必要性等についての事業者からの説明を踏まえ,個別に判断されます。

問11 特定通信の内容が記録された物件について,子会社等のグループ関係にある企業の役員等は,その内容を知るべき者に該当しますか。

答11 令和元年改正独占禁止法では,課徴金の算定基礎に一定のグループ企業(完全子会社等)の売上額等が追加されました。そのため,課徴金の算定基礎となり得るグループ企業が存在する事業者であれば,そのグループ企業とともに弁護士に相談し,法的意見を求めることは,新たな課徴金減免制度がより機能することにつながると考えられます。そのため,グループ企業の役員等は,知るべき者に該当する場合がありますが,グループ企業との関係性等についての事業者からの説明を踏まえ,個別に判断されます。

<電子データ一般>

問1 判別手続において,「電子データ」は物件と同様に取り扱うとされていますが,「電子データ」には具体的にどのようなものが含まれますか。(11月11日追加)

答1 典型的には,パソコンで作成したドキュメントファイルや,電子メールが考えられます。それ以外の形式で存在するものであっても,特定通信の内容が記録されたものであれば,同様に取り扱われます。

<電子データの適切な保管>

問1 電子データについて適切な保管の要件を満たすためには,当該電子データにどのような措置を講じればよいですか。(11月11日追加)

答1 電子データについては,特定通信を記録したものである旨が明らかとなるような表示をし,事業者として管理する特定の保存箇所において保管してください。
 表示について,具体的には,電子ファイルの場合はファイル名,電子メールの場合は件名について,「公取審査規則特定通信」又は「公取審査規則第23条の2第1項該当」との文言を含むものとすることが必要です。これに該当する表示は,例えば,電子ファイルのファイル名に「【公取審査規則特定通信】〇〇弁護士への相談依頼文書」と記載すること,電子メールの件名に「【公取審査規則第23条の2第1項該当】当社の社内調査の状況について」と記載することです(指針第7の1(1)参照)。
 ファイル名や件名に含む文言としては,このほかの文言であっても,特定通信の内容を記録したものである旨が識別できるような表示であれば認められますが,判別手続の円滑な運用・利用の観点から,まずは,例示の文言を用いた表示をしてください。

問2 電子メールについては,添付ファイルのファイル名にも適切な表示をする必要がありますか。(11月11日追加)

答2 判別手続の確認の過程においては,電子メールの本文と添付ファイルは区別して取り扱いますので,メール本文のみならず,添付ファイルにも特定通信の内容が記録されている場合には,当該電子メールの件名及び当該添付ファイルのファイル名の両方において適切な表示をしていただく必要があります。
 電子ファイルに特定通信の内容が記録されている場合には,それが電子メールに添付されるか否かにかかわらず,そのファイル名を適切な表示とするとともに,適切な保存箇所で保管しておくことが必要となりますので,電子メールに添付する前の電子ファイルを作成する段階から,ファイル名における適切な表示と適切な保管を行ってください。

問3 特定通信の内容を記録した電子データの保存箇所について詳しく教えてください。(11月11日追加)

答3 特定通信の内容を記録した電子データの保存箇所は,弁護士に相談することを事務として取り扱う部署又は役員等が管理する場所であって,それ以外の電子データの保存箇所とを,フォルダの名称等によって区別しておくことが必要となります。
 これに該当する保管方法は,例えば,特定通信の内容を記録した電子データが保管されていることを表示した,法務部門が管理するフォルダに保存され,当該フォルダに特定通信の内容を記録した電子データ以外の電子データは保存されていないことです(指針第7の1(2)参照)。課徴金減免対象被疑行為に関与していた事業部門が管理するフォルダでの保管については認められません(<適切な保管>問6参照)。
 また,電子メールの場合は,特定のメールアカウントを用いて送受信を行うことで,電子メールを管理してください。

問4 法務部門がない場合,どのような箇所で電子データを保存すれば適切な保管として認められますか。(11月11日追加)

答4 特定通信の内容を記録した電子データの保存箇所を管理すべき「弁護士に相談することを事務として取り扱う部署又は役員等」とは,典型的には法務部門やその役員等ですが,事業者の組織の在り方は様々であり,法務部門がないことも考えられます。
 その場合には,例えば,総務部門など当該事業者において弁護士に相談することを事務として取り扱う部署又は役員等の担当・所掌事務の実態や対応等についての説明を踏まえ,個別に判断することとなります。

問5 特定通信の内容を記録した電子データの保存箇所について,「電子メールの場合は特定のメールアカウントで管理」とされていますが,具体的にどのようなことを行えばよいのか教えてください。(11月11日追加)

答5 特定通信の内容を記録した電子メールは,特定のメールアカウントで管理されている必要があります。
 このため,特定通信の内容を記録した電子メールを取り扱う際は,通常使用するメールアカウントとは別に,特定通信の内容を記録した電子メールの送受信を行うためだけに使用するメールアカウント(電子メールアドレス)を作成し,当該メールアカウントを使用して,特定通信の内容を記録した電子メールの送受信を行ってください。
 社内の特定通信の内容を知るべき者の間で電子データを共有したり,電子メールでやり取りを行う場合は,<電子データの適切な保管>問8を参照してください。

問6 判別手続が導入される以前に作成していた電子メールについては,適切な表示等ができていませんが,どうすればよいですか。(11月11日追加)

答6 判別手続が導入される以前に作成していた電子メールは,一般的な電子ファイルと異なり,件名を事後的に変更することができないなどの特性があることを考慮し,一定の措置を講じた場合には,適切な保管の要件を満たすものとして取り扱います。
 具体的には,当該電子メールをエクスポートするなどして別の電子ファイルを作成し,当該エクスポート後の電子ファイルについて,①ファイル名を「公取審査規則特定通信」等の特定通信の内容を記録したものであることが明らかとなるような文言を含むものとした上で,②事業者として管理する特定の保存箇所に保存してください(<電子データの適切な保管>問3参照)。過去に作成していた元の電子メールは,従来の状態のまま保管していて問題ありません。
 その上で,判別手続が導入される以前に作成していた電子メールと一定の措置を講じて作成された別の電子ファイルの双方について判別手続の利用を申し出る必要があります。
 判別手続が導入される以前に作成していた電子メールについて判別手続の利用を口頭で申し出る際は,①及び②の措置を講じた電子メールが存在することを審査官に説明するとともに,その旨を申出書に記載してください。また,概要文書には,判別手続の導入以前に作成された電子メールであること及び一定の措置を講じたことを記載して提出してください。

問7 電子データの形式上,電子メールのような一定の措置(<電子データの適切な保管>答6)を講じることが不可能な判別手続導入前の電子データについては,どうすればよいですか。(11月11日追加)

答7 例えば,特定のシステムに依拠していてエクスポートできない形式の電子データやバックアップデータ等,<電子データの適切な保管>答6のような一定の措置も講じることが技術的に不可能な電子データも存在し,判別手続導入前のそれらの電子データの中に特定通信を記録した内容が含まれていることもあり得ます。
 そのような場合は,判別手続の利用を口頭で申し出る際に,一定の措置を講じることが技術的に不可能であった理由を併せて審査官に説明するとともに,その旨を申出書に記載して提出してください。また,概要文書にも同様の理由を記載して提出してください。

問8 社内で,特定通信の内容を記録した電子データの内容を共有したい場合は,具体的にどうすればよいですか。(11月11日追加)

答8 特定通信の内容を記録した電子ファイルやそれらの保存フォルダを,パスワードで管理したり,アクセス制限をしたりすることで,社内の特定通信の内容を知るべき者だけで内容の共有ができると考えられます。
 また,特定通信の内容を知るべき者である社内の役員・従業員の間で,弁護士と特定のメールアカウントで送受信した電子メールの内容を共有したい場合は,その特定のメールアカウントについて,複数人の知るべき者がアクセスできるようにすることが考えられます。知るべき者の間で特定通信の内容を記録した電子メールを送受信することによりその内容を共有したい場合には,社内の役員・従業員間においても,それぞれが特定のメールアカウントにより送受信していただく必要がありますので,特定通信の内容を共有する役員・従業員それぞれが特定のメールアカウントを作成してください。
 電子メール以外の方法,例えばイントラネット等を用いて,特定通信の内容を記録した電子データや弁護士とのメールの内容について社内で共有を行う場合も,社内の特定通信の内容を知るべき者のみがアクセスできる環境で管理されていることが必要となります。

問9 電子データを保管するに当たっての注意点を教えてください。(11月11日追加)

答9 特に,特定通信の内容が記録された電子メールを取り扱う際に,判別手続において問題が生じ得る事態が起こりやすいと考えられます。例えば,添付ファイルを閲覧する際,事業者として然るべき者・部署が管理する電子データ用の保存箇所(<電子データの適切な保管>問3参照)を具体的に定めないまま従業員等が使用する個人用のパソコンのデスクトップ等に当該ファイルをダウンロードしてしまったり,役員に報告するために,特定のメールアカウント以外の通常の業務で用いているメールアカウントに向けて電子メールを転送してしまったりするなどです。
 このようなことを極力避けるため,特定通信の内容が記録された電子メールを取り扱う際のルールや手順を社内であらかじめ定めておくなど,適切な保管方法について担当者が理解を深め,必要な事項を周知しておくことが望ましいと考えます。
 また,電子データの保管にあっては,人事異動やシステム変更のタイミングなどではアクセス権の設定ミスといった単純なミスも起こりやすいと考えられますので,電子データの保管については,十分留意してください。

問10 弁護士に最初に相談した際の電子メールについては,相談内容が判別手続の対象になり得ると認識していなかったため,適切な表示等ができていませんが,どうすればよいですか。(12月22日追加)

答10 弁護士に最初に相談した際の電子メールは,一定の措置を講じた場合(<電子データの適切な保管>問6参照)であって,最初に相談を行った時点では相談内容が判別手続の対象になり得ると認識していなかったことについて合理的な説明ができる場合には,適切な保管の要件を満たすものとして取り扱います。
 具体的には,当該電子メールをエクスポートするなどして別の電子ファイルを作成し,当該エクスポート後の電子ファイルについて,①ファイル名を「公取審査規則特定通信」等の特定通信の内容を記録したものであることが明らかとなるような文言を含むものとした上で,②事業者として管理する特定の保存箇所に保存してください(<電子データの適切な保管>問3参照)。元の電子メールは,従来の状態のまま保管していて問題ありません。
 その上で,判別手続が導入される以前に作成していた電子メールと一定の措置を講じて作成された別の電子ファイルの双方について判別手続の利用を申し出る必要があります。
 御質問のような電子メールについて判別手続の利用を希望する際は,一定の措置を講じた電子メールが存在することや,最初に相談を行った時点では相談内容が判別手続の対象になり得ると認識していなかったことを審査官に説明(口頭)するとともに,その旨を申出書に記載してください。
 また,概要文書にも,同様の説明を記載して提出してください(必要に応じて概要文書の別紙様式3(自由記載)も利用してください。)。

問11 特定通信の内容を知るべきでない者を,誤って電子メールの宛先に含めて送信してしまった場合は,どうすればよいですか。(12月22日追加)

答11 電子メールを用いて社内で情報共有する場合には,特定のメールアカウント間でやり取りを行うことを求めています。
 仮に御質問のようなことが起き,特定通信の内容を,それを知るべきでない者が知ってしまった場合には,当該誤送信メールは,特定通信の内容を記録したものであることの要件を満たさず,判別手続の対象とはできません。ただし,事業者からの説明により,当該電子メールの秘密性が維持されていると認められる場合には,判別手続の対象となり得る場合があります。
 具体的には,①内容を知る者の範囲がそれ以上広がらないようにする措置を採った上で,②概要文書においては,当該誤送信メールの受信者を「電子メールの誤送信によりやむを得ず知った者」としてください。誤送信の状況についての事業者からの説明等を踏まえ,個別に判断することとなります。
 また,当該誤送信の受信側の電子メールを判別手続の対象としたい場合には,①当該誤受信メールについて,相談担当者の指示の下,エクスポートするなどして別の電子ファイルを作成し,②当該エクスポート後の電子ファイルについて,事業者として管理する特定の保存箇所に保存してください。その上で,③誤受信メールと一定の措置を講じて作成された別の電子ファイルの双方について判別手続の利用を申し出る必要があります(この場合,誤受信メールは,その状態のまま保管していて問題ありません。)。

<申出書・概要文書共通>

問1 申出書や概要文書に押印する必要はありますか。(12月22日追加)

答1 押印していただく必要はありません。

問2 公正取引委員会のウェブサイトで公開されている様式を用いずに申出書や概要文書を作成した場合,どのように扱われますか。(12月22日追加)

答2 申出書や概要文書は,規則・指針等で示している必要な要素が記載されていれば,様式や記載例どおりでなくても,提出の要件に欠けると判断することはありません。
 しかし,ウェブサイトで公開している様式は,事業者が提出する申出書や概要文書に必要な要素が円滑に記載できるよう作成していますので,公開している様式を参考にして作成いただくことが望ましいと考えます。

<申出書>

問1 申出書を当日に提出できない場合,後日電子メールやFAXで提出することはできますか。(12月22日追加)

答1 申出書は,立入検査当日にその場にいる審査官に提出していただくものです。このため,後日の提出や,電子メールやFAXによる提出は想定していません。

問2 申出書については,記載例(物件)記載例(電子データ)のとおり,物件と電子データを別々に作成して提出しなければならないのですか。(12月22日追加)

答2 記載例は,分かりやすさの観点から物件の場合と電子データの場合に分けて作成し,公開していますが,実際に申出書を作成する際に,物件と電子データを別々に作成する必要はありません。

問3 申出書の「申出者名」には,どのような者を記載すればよいですか。(12月22日追加)

答3 判別手続の申出を行う者と提出命令を受ける者(名宛人)は同一の者となります。そのため,立入検査当日,審査官に対して提出命令書の名宛人を確認し,同一の者を申出書の「申出者名」に記載してください。

問4 申出書の「事務上の連絡先」には,どのような者を記載すればよいですか。(12月22日追加)

答4 判別手続では,事業者と判別官でコミュニケーションを取りながら手続を進めていく必要があるため,申出を行う物件の内容等について説明・回答できる方や申出後の手続について対応可能な方の氏名等を記載してください。
 また,「電子メールアドレス」については,今後判別係とのやり取りを行う際に使用するものを記載してください。
 なお,説明・回答できる方や対応可能な方が複数名いる場合には,複数名を記載しても構いません。

問5 申出書の別紙目録の記載方法について教えてください。(12月22日追加)

答5 審査官が作成する提出命令品目録の記載内容に合わせて申出書の別紙目録を作成することになりますので,立入検査当日,審査官に確認してください。また,参考として,記載例(物件)記載例(電子データ)を公開しています。

問6 申出書の説明事項欄を立入検査の翌日以降に修正することはできますか。(12月22日追加)

答6 修正が可能な場合もありますので,判別係に御相談ください。
 申出書の記載内容に誤りがある場合には,判別係から事業者に連絡をして対応を確認することもあります。

<概要文書>

問1 概要文書の提出方法を教えてください。(12月22日追加)

答1 概要文書は,郵送,持込み,FAX又は電子メールにより提出することができます。

問2 概要文書の提出期限を延長してもらうことは可能ですか。(12月22日追加)

答2 概要文書は,物件について提出命令を受けた日から原則2週間以内に,公正取引委員会に提出する必要があります(規則第23条の2第2項)。また,電子データの場合は,特定データを複製した記録媒体の交付から原則2週間以内に,公正取引委員会に提出する必要があります(指針第7の2(2))。
 概要文書の提出期限の延長は,災害等により期間内に提出できないことについて特別の事情がある場合は可能ですので,特別の事情について説明してください。しかし,単に概要文書に要する情報整理等の準備を事前には行っていなかったため作成に時間が必要,といった事情では延長は認められません。
 そのため,日頃から,事業者を代表して弁護士に相談する職責にある者(典型的には法務部門の役員・従業員,法務部門がない場合には例えば総務部門の役員・従業員などが想定されます。)を相談担当者として定め,判別手続の対象とすることを求める物件(文書等)と,その物件に記録されている特定通信の概要など概要文書の作成のために必要となる情報を事前に整理・把握しておくことが極めて重要です。また,迅速に概要文書を提出するためには,事前に概要文書の様式に記入しておくことも考えられます。

問3 概要文書作成要領では,「概要文書の作成のために必要となる情報を事前に整理・把握しておくことが極めて重要です」,「事前に概要文書の様式に記入しておくことも考えられます」とされていますが,具体的には概要文書のどの部分について,必要となる情報を整理・把握し,概要文書の様式に記入しておくことができますか。(12月22日追加)

答3 概要文書の記載事項の大部分(「提出命令品目録の番号・品目」欄以外の欄)は,判別手続の利用を求める可能性がある物件及び電子データについて,事前に作成のために必要となる情報を整理・把握することにより様式に記入することが可能な部分です。
 なお,別紙様式4(「一定の措置を採った電子データ」一覧表)は,一定の措置を採った電子データがある場合のみ作成してください。

問4 判別手続を利用するための事前準備として,概要文書の具体的な記載方法などを判別係に相談することはできますか。その際,相談内容が審査官等に伝わることになりますか。(12月22日追加)

答4 概要文書の具体的な記載方法について,判別係に事前に相談することは可能です。
 事前の相談内容を判別係から審査官等に伝えることはありません。

問5 概要文書作成要領では,概要文書(物件)について「特定物件1点につき1つ作成」するとされていますが,具体的には,どのような単位で作成すればよいですか。(12月22日追加)

答5 特定通信の内容を記録した文書等が単独の文書等(報告書,冊子,ノートなど)により構成されている場合には,その単独の文書等1つにつき概要文書を1つ作成してください。また,特定通信の内容を記録した複数の文書等をファイルにつづって管理しているのであれば,そのファイル1冊につき概要文書を1つ作成の上,文書等ごとにそれぞれ行を分けて記載してください。
 なお,特定通信の内容を記録した複数の文書等を1冊のファイルにつづり保管している場合には,文書等ごとに仕切り紙を入れてインデックスを付す,目次を作成することなどにより,概要文書の作成が容易になると考えられます。

問6 概要文書作成要領では,複数の特定通信の内容が記録されている場合には,その「特定通信ごと」に,それぞれ行を設けることとされていますが,「特定通信ごと」とは,具体的には,どのような単位で作成すればよいですか。(12月22日追加)

答6 「特定通信ごと」に概要文書を記載するとは,事業者と弁護士との間の相談・回答のまとまりごと(内容,形状,作成日などを踏まえて区別してください)に,行を設けて,概要文書に記載することです。
 例えば,弁護士との打合せ報告書に,異なる日に行った相談の内容が記載されている場合(令和3年8月23日に行った相談の内容と,同年8月31日に行った相談の内容が記載されている場合),概要文書には2つの相談についてそれぞれ行を分けて設け,必要な事項を記載してください(概要文書作成要領2ページの物件の「特定通信ごとの記載欄」例2)。
 また,例えば,弁護士に法的意見を求める内容を記載した電子メール①を送信し,①を引用して返信する形で弁護士から法的意見を記載した電子メール②を受信した場合,②のメールについて,概要文書には,①,②についてそれぞれ行を分けて設け,必要な事項を記載してください(ただし,既に①について概要文書に行を設けて記載している場合は,②の行のみを設け,その「概要」欄に①の引用がある旨を記載してください。①について繰り返し行を設ける必要はありません。)(概要文書作成要領8ページの電子メールの「特定通信ごとの記載欄」例2)。

問7 特定通信の内容を記録した物件にヒアリング記録などの対象外文書等が添付されている場合,その対象外文書等についても概要文書に記載する必要はありますか。(12月22日追加)

答7 概要文書は,特定通信の内容を記録した物件について必要事項を記載するものです。ヒアリング記録などの対象外文書等については,仮に判別手続によって留置されたとしても,概要文書に記載することは求めていません。
 物件に対象外文書等が含まれていた場合は判別官から後日その写しの提出等を依頼する連絡を行うことになりますが,概要文書を作成する段階で,事業者の相談担当者が対象外文書等と考えられるものを発見した場合は,判別手続の円滑な運用・利用の観点から,判別官からの連絡を待つことなく,ある物件に対象外文書等が含まれている旨を当該物件の「概要」欄に記載することも可能です。

問8 中小事業者などで部署や役職が存在しない場合,「通信をした者の氏名」欄や「共有した者の氏名」欄は,どのように記載すればよいですか。(12月22日追加)

答8 部署や役職が存在しない場合,記載は不要です。
 別紙様式2(「通信・共有した者」一覧表)を用いる場合には,部署や役職の欄は空欄にはせず,斜線を引いてください。

問9 概要文書作成要領では,概要文書の「共有した者の氏名」欄には,「実際に物件の内容を見た者に限らず,その物件の内容にアクセスしようと思えばすることができた者」の氏名や所属等を記載することとされていますが,具体的には,どのような者を記載すればよいですか。(12月22日追加)

答9 特定通信の内容を記録した文書等にアクセスすることができる状態にあった全ての者を記載してください。
 例えば,特定通信の内容を記録した物件が法務部の管理する書棚に保管されている場合,当該物件が保管されている期間に,その書棚を利用し当該物件の内容にアクセスすることができる状態にあった全ての者を「共有した者の氏名」欄に記載してください。
 電子データについては,例えば,特定通信の内容を記録した電子ファイルが法務部の管理するフォルダに保存されている場合,当該ファイルが保存されている期間に,当該フォルダのアクセス権限を有していた者を「共有した者の氏名」欄に記載してください。また,電子メールの場合は,当該電子メールを送信又は受信した特定のメールアカウントのアクセス権限を有している者は全て「共有した者の氏名」欄に記載してください(システム担当者等のシステム保全・管理のためにマスター権限を持つ者等は除きます。)。

問10 特定通信の内容を記録した物件の内容を「事業者を代表して弁護士に相談する職責にある者」以外の者に共有した場合,どのような説明が求められるのですか。(12月22日追加)

答10 共有した者が特定通信の内容を記録した物件の内容を知るべき者であることを説明していただく必要があります。
 例えば,特定通信を行った者であること(事業者〔事業者を代表して弁護士に相談する職責にある者〕が弁護士に相談する際に同席し,相談対象となっている課徴金減免対象被疑行為の具体的な内容等を補足説明した者であること等)や,新たな課徴金減免制度をより機能させる観点から共有の必要性等があること(弁護士との相談を行っている課徴金減免対象被疑行為についてその売上額等が課徴金の算定基礎に含まれるグループ企業の役員等であり,通信の秘密を保持するための措置が講じられている等)等の事情について,具体的な事実を示しつつ,概要文書の別紙様式3(自由記載)を利用するなどして,判別官に説明してください。

問11 特定通信の内容が記録された物件について,外国弁護士等や一定のグループ企業の役員等に対してもその内容が共有されていた場合,概要文書の「部署・役職」欄に弁護士事務所名等や親会社の社名等を記載してもよいですか。(12月22日追加)

答11 「部署・役職」欄に所属を記載してください。

問12 通信の相手方が組織内弁護士だった場合,どのような説明が求められるのですか。(12月22日追加)

答12 判別手続の対象となる特定通信の相手方となる弁護士は,事業者から独立して法律事務を行う者である必要があります(指針第2注5参照)。
 組織内弁護士が,課徴金減免対象被疑行為の発覚等を契機として,当該事業者からの文書による指示により,当該事業者の指揮命令監督下になく,独立して法律事務を行っていることについて,具体的な事実を示しつつ,概要文書の別紙様式3(自由記載)を利用するなどして,判別官に説明してください。

問13 別紙様式1(「通信・共有した者の業務内容」一覧表)について,在任期間や業務内容の記載は何のために必要なのですか。(12月22日追加)

答13 判別官が,共有者について,特定通信の内容を知るべき者(事業者を代表して弁護士に相談する職責にある者又はその職責にあった者等)であるかを確認するために必要な情報です。
 仮に,在任期間や業務内容が未記入であっても,それをもって概要文書の提出がなかったものとすることはありませんが,後日,判別官から同様の資料を求めることが想定されます。

問14 例えば,特定のメールアカウントAから,社内の別の特定のメールアカウントBへ,当該特定のメールアカウントAと弁護士との間で通信した電子メールを転送した場合,その転送メールに関して「通信をした者」をどのように記載すればよいですか。その転送メールを引用して,特定のメールアカウントBから弁護士に電子メールを送信した場合はどうですか。(12月22日追加)

答14 概要文書の「通信をした者の氏名」欄には,実際に特定通信をした者を記載します。
 特定のメールアカウントAから特定のメールアカウントBへの転送メールについては,当該転送メールに記録された特定通信をした者は,「弁護士」と「特定のメールアカウントAを利用した者」になりますので,「通信をした者の氏名」欄には「弁護士」と「特定のメールアカウントAを利用した者」を記載します。
 その転送メールを引用して特定のメールアカウントBから弁護士に送信した電子メールについては,それ自体が特定通信となることから,特定通信をした者は,「弁護士」と「特定のメールアカウントBを利用した者」になりますので,「通信をした者の氏名」欄には「弁護士」と「特定のメールアカウントBを利用した者」を記載します。この場合,弁護士宛ての当該電子メールにおいて過去の別の特定通信(「弁護士」と「特定のメールアカウントAを利用する者」との間の特定通信)も引用している旨を「概要」欄に記載してください。

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