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事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方

事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方

平成14年11月12日
公正取引委員会

改定 平成18年5月1日
改定 平成19年9月30日
改定 平成22年1月1日

はじめに

 独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)。以下「法」という。)第9条の改正(平成14年11月28日から施行)により,他の国内の会社の株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を取得し,又は所有すること(以下「所有等」という。)により事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立・転化が禁止されることとなる。禁止の要件は法第9条第3項の規定に定められているが,公正取引委員会として本条の規定の運用に当たり,あらかじめその解釈を示すことにより,どのような会社が禁止されるかについての事業者の予測可能性を高め,運用の透明性を確保することが重要であると考え,今般,「事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方」を作成,公表することとした。
 なお,この「考え方」は,平成14年11月28日から適用し,「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の考え方」(平成9年12月8日 公正取引委員会)は,廃止する。

1 規制対象

(1) 会社グループのとらえ方

ア 事業支配力が過度に集中することとなる会社に該当するか否かの判断に当たっては,「会社及び子会社その他当該会社が株式の所有により事業活動を支配している他の国内の会社」(法第9条第3項),すなわち,「会社+子会社+実質子会社」を会社グループとしてとらえ,これについて事業支配力が過度に集中することとなるか否かを判断する。

イ 子会社とは,会社がその総株主(総社員を含む。以下同じ。)の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き,会社法(平成17年法律第86号)第879条第3項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。)の過半数を有する(子会社が保有する分を含む。)他の国内の会社をいう(法第9条第5項)。

ウ 実質子会社(「株式の所有により事業活動を支配している他の国内の会社」)とは,会社の議決権保有比率(子会社が保有する分を含む。以下同じ。)が25%超50%以下であり,かつ,会社の議決権保有比率が最も高い(他に同率の株主がいる場合を除く。)他の国内の会社をいう。

(2) 禁止される場合

ア 他の国内の会社の株式を所有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社を設立する場合

イ 設立された時点では,事業支配力が過度に集中することとならない会社であったものが,他の国内の会社の株式を所有等することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社になる場合

2 「事業支配力が過度に集中すること」の考え方

(1) 「事業支配力が過度に集中すること」とは,法第9条第3項の規定で定義されているとおり,会社グループの[1]総合的事業規模が相当数の事業分野にわたって著しく大きいこと,[2]資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいこと,又は[3]相互に関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていることにより,国民経済に大きな影響を及ぼし,公正かつ自由な競争の促進の妨げとなることをいう。
 この定義の考え方は,
ア 会社グループの形態が,
(ア) 総合的事業規模が相当数の事業分野にわたって著しく大きいこと
(イ) 資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいこと
(ウ) 相互に関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていること
という要件のいずれかに該当し,
イ 国民経済に大きな影響を及ぼし,
ウ 公正かつ自由な競争の促進の妨げとなる
という要件をすべて満たす場合,当該会社は,事業支配力が過度に集中することとなる会社に該当すると定義するものである。
 これらの要件を満たし,事業支配力が過度に集中することとなる会社として禁止される類型は,次の(2)第1類型から(4)第3類型までのいずれかに該当するものであると解釈することができる。ただし,(5)「事業支配力が過度に集中することとならない会社」の例に挙げられている場合は,この限りでない。

(2) 第1類型

 会社グループの規模が大きく(a),かつ,相当数(b)の主要な事業分野(c)のそれぞれにおいて別々の大規模な会社(d)を有する場合
(a) 会社グループの規模が大きいこと:総資産の額の合計額が15兆円を超えるもの
 総資産の額の合計額は,会社グループの総資産を連結して(グループ会社相互間の投資勘定と資本勘定及び債権と債務を相殺消去することをいう。以下同じ。)合計することによって評価する(なお,会社グループ内の金融会社(銀行業,保険業又は第一種金融商品取引業(金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第28条第1項に規定する第一種金融商品取引業をいう。)を営む会社をいう。以下同じ。)の総資産の額は計算から除く。)
(b) 相当数:5以上
(c) 主要な事業分野:日本標準産業分類3桁分類のうち,売上高6000億円超の業種
 ただし,2桁分類で同一又は類似の業種に属し,参入規制が行われる範囲や事業活動の実態を考慮すると同一の事業内容であると考えられる場合は,同一の事業分野と評価する(別表1参照)
(d) 大規模な会社:単体総資産の額3000億円超の会社
 なお,当該会社の属する事業分野は,当該会社が営む主要な事業が属する事業分野とする。

(3) 第2類型

 大規模金融会社(a)と,金融又は金融と密接に関連する業務を営む会社(b)以外の大規模な会社(c)を有する場合
(a) 大規模金融会社:単体総資産の額15兆円超である金融会社
(b) 金融又は金融と密接に関連する業務を営む会社:銀行業又は保険業を営む会社その他公正取引委員会規則で定める会社(法第10条第3項)
(c) 大規模な会社:単体総資産の額3000億円超の会社

(4) 第3類型

 相互に関連性のある(a)相当数(b)の主要な事業分野(c)のそれぞれにおいて別々の有力な会社(d)を有する場合
 第3類型に該当するかどうかの判断に当たっては,次の各項目の考え方を基本として,個別具体的に事業分野の規模及び数,事業分野間の関連性の程度,会社の有力性の程度等を総合勘案して判断する。
(a) 相互に関連性のある事業分野
 関連性については,個別の事業分野ごとに実際の取引依存度やユーザーの選択状況も参考にしつつ合理的に判断することとするが,例えば,次のような場合には関連性のあるものとして評価する。

(1) 取引関係
 各財・サービスを供給する事業分野間で密接な取引関係のある場合
(例:製品とその原材料又は製品とその生産設備機器などの関係にある場合別表2参照)

(2) 補完・代替関係
 ユーザーが両方の財・サービスを結合して消費し又は選択的に利用するなど,ユーザーからみて,各事業分野の提供する財・サービスが補完・代替関係にある場合(別表3参照)

(b) 相当数:5以上(規模が極めて大きい事業分野に属する有力な会社を有する場合は,会社の有力性の程度により3以上)(注)

(c) 主要な事業分野:日本標準産業分類3桁分類のうち,売上高6000億円超の業種
 ただし,2桁分類で同一又は類似の業種に属し,参入規制が行われる範囲や事業活動の実態を考慮すると同一の事業内容であると考えられる場合は,同一の事業分野と評価する(別表1参照)。

(d) 有力な会社:当該事業分野における売上高のシェアが10%以上の会社をいう。
 (注)同一の事業分野に属する複数の会社を有する会社グループが形成されている場合がある。このような事業分野に属する会社の有力性の程度を判断するに当たっては,個々の会社の当該事業分野におけるシェア,売上高順位等の状況のほか,同一の会社グループ内の当該事業分野に属する複数の会社全体のそれらの状況も併せて勘案することとする。

(5) 「事業支配力が過度に集中することとならない会社」の例

ア 分社化の場合
自社が現に営む事業部門を子会社化し,かつ,当該子会社の株式を100%取得する場合(設立当初から100%所有を継続している場合に限る。)

イ ベンチャー・キャピタルの場合

 会社が,金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第16項に規定する金融商品取引所に上場されておらず,かつ,同法第67条の11第1項の店頭売買有価証券登録原簿に登録されていない株式を発行する株式会社のうち,資本の額が5億円以下のものであって,前事業年度において試験研究費及び法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第14条第1項第3号に規定する開発費の合計額の収入金額(総収入金額から固定資産又は法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第21号に規定する有価証券の譲渡による収入金額を控除した金額)に対する割合が3%を超えるもの又は設立の日以後1年を経過していないものであって,常勤の研究者の数が2人以上であり,かつ,当該研究者の数の常勤の役員及び従業員の数の合計に対する割合が10%以上であるものに対する出資を業務とするようなベンチャー・キャピタルである場合

ウ 金融会社の異業態参入の場合

 金融会社が異業態の金融会社を新規に設立することによって参入する場合

エ 小規模の場合

 会社と子会社の総資産を連結して合計した額が6000億円以下である場合

3 会社に対する独占禁止法の他の規定の適用

 2の考え方により「事業支配力が過度に集中することとなる会社」に該当しない会社についても,株式所有等に係る法第10条の規定は適用され,個別市場における競争を実質的に制限することとなる等の株式所有等は法第10条の規定により禁止される。また,会社が,合併する場合には法第15条の規定が,分割する場合には法第15条の2の規定が,共同株式移転する場合には法第15条の3の規定が,それぞれ適用され,個別市場における競争を実質的に制限することとなる場合等は禁止される。

4 事前相談について

 具体的な会社の設立等の計画について,事業者から独占禁止法第9条に関する問題の有無について照会がある場合は,公正取引委員会は,この「考え方」に基づき回答することとする。
 この会社の設立等に係る事前相談の内容及び回答については,事業者の秘密に関する部分を除き,支障のない限り,その概要を公表するものとする。

 (別表1) 同一の事業分野と評価される事業分野の例
○紙製品製造業(184),紙製容器製造業(185),その他のパルプ・紙・紙加工品製造業(189)
○電子計算機・同附属装置製造業(305)と電子部品・デバイス製造業(308)
○国内電気通信業(有線放送電話業を除く)(471)と国際電気通信業(472)
 (()内の数字は日本標準産業分類(平成5年総務庁告示第60号)の分類番号。別表2及び別表3において同じ。)

(別表2) 取引関係があり,相互に関連性があると評価できる事業分野の例
○一般土木建築工事業(091)と
 セメント・同製品製造業(252)
 高炉による製鉄業(261)
 建物売買業,土地売買業(701)
 各種商品卸売業(481)
 一般産業用機械・装置製造業(297)
 事務用・サービス用・民生用機械器具製造業(298)
 建設用・建築用金属製品製造業(製缶板金業を含む)(284)

○自動車・同附属品製造業(311)と
高炉による製鉄業(261)
 電子部品・デバイス製造業(308)
 タイヤ・チューブ製造業(231)
 プラスチック板・棒・管・継手・異形押出製品製造業(221)
 ガラス・同製品製造業(251)
 各種商品卸売業(481)

○船舶製造・修理業,舶用機関製造業(314)と外航海運業(421)
○電気業(351)と石油精製業(211)
○銀行(622),証券業(681),生命保険業(691),クレジットカード業・割賦金融業(663),貸金業(661),損害保険業(692)

 (別表3)補完・代替関係にあり,相互に関連性があると評価できる事業分野の例

○国内電気通信業(有線放送電話業を除く)(471)と通信機械器具・同関連機械器具製造業(304)
○銀行(622),証券業(681),生命保険業(691),クレジットカード業・割賦金融業(663),貸金業(661),損害保険業(692)
○映画館(761)と映画,ビデオ制作・配給業(801)
○ソフトウェア業(821)と電子計算機・同附属装置製造業(305)
○広告代理業(831)と新聞業(191)・民間放送業(有線放送業を除く)(812)

関連ファイル

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