Q1
今回の改正によって,今まで認められなかった企業結合が認められるようになるなど,実質的な判断基準が緩和されたのでしょうか。
A1
今回の改正は,過去の審査実績等をもとに,「競争を実質的に制限することとなるとは通常考えられない範囲」(セーフハーバー)の見直しや,判断要素に係る考え方の明確化等を行ったものであり,審査の実質的な判断基準を緩和することを目的とするものではありません。
Q2
企業が国内のみでなく国際的に販売して競争している製品であれば,当該製品の地理的範囲は国際市場で画定されるということでしょうか。
A2
企業結合ガイドラインにおける考え方に基づき,事案ごとの実態に応じて,一定の取引分野の地理的範囲を画定することとなります。その結果,事案により国境を越えて取引分野が画定される場合もありますが,単に,国際的に競争をしている製品であることをもって直ちに国境を越えて取引分野が画定されるというわけではありません。
Q3
HHIとその増分によりセーフハーバーを規定することとした理由は何でしょうか。
A3
企業結合に伴う市場構造の変化をより適切に把握するため,欧米の競争当局でも使用されているHHIとその増分による基準を用いることとしたものです。
Q4
企業結合後のHHIが2,500以下であり,当事会社のシェアが35%以下の場合,「競争を実質的に制限することとなるおそれは小さいと通常考えられる」と規定されていますが,この範囲に該当する企業結合については,どのように扱われるのでしょうか。
A4
過去の審査事例のうち,この範囲に入る事例については,問題点を指摘したものがわずかしか存在しないという意味であり,この基準に該当したとしても,セーフハーバーに該当しなければ,ガイドラインの各判断要素を踏まえ,個別に審査を行うこととなります。
Q5
当事会社とごく一部の競争事業者のシェアしか把握できないような場合,セーフハーバーに該当するかどうかをどのように判断すればよいのでしょうか。
A5
当事会社とごく一部の競争事業者のシェアしか把握できないような場合には,基本的には,企業結合ガイドライン第4-1(3)の(注5)に記載されている関係式(HHI=最上位の企業のシェア(%)の2乗×0.75+上位3社累積市場シェア(%)×24.5-466.3)から算出したHHIの推計値によって,セーフハーバーに該当するかどうかの判断を行うこととなります。
ただし,下記の例のように,算出された推計値が,(1)HHIの理論最小値(原則として,シェアが不明の企業のシェアをほぼ0と仮定した場合のHHI)と(2)HHIの理論最大値(原則として,シェアが不明の企業について,少数の企業にシェアが集中していると仮定した場合のHHI)の間に入らない場合は,関係式から算出された推計値を用いることは適当ではありません(この場合,HHIの理論最小値と理論最大値を踏まえて,セーフハーバーに該当するかどうかの判断を行うことになります。)。
なお,HHIの増分については,以下の例のとおり,当事会社のシェアから計算することが可能です。
(例)A社のシェア=30%,B社のシェア=30%,C社のシェア=25%,D社のシェア=5%,残りの企業のシェアは不明で,C社とD社が企業結合する場合
- HHIの理論最小値は2700(多数の企業が残り10%のシェアを分け合っている場合)
- HHIの理論最大値は2800(1社が残り10%のシェアを有している場合)
⇒ここで,関係式を適用すると,30×30×0.75+90×24.5-466.3=2413.7となり,HHIは2500以下となるが,HHIの理論最小値は2700を超えているため,HHIは2500超と判断する。
⇒HHIの増分は,C社とD社が一体となることによるHHIの変化を計算すればよいことから,(25+5)2-(252+52)=250となる。
⇒HHI>2500でΔHHI>150であることから,セーフハーバーに該当しない。
Q6
新しい企業結合ガイドラインはいつから適用されるのですか。
A6
公表日の平成19年3月28日以降は,改正後の企業結合ガイドランの考え方をもとに企業結合審査を行っていきます。
Q7
企業結合ガイドライン改正前に取得した株式に関し,企業結合ガイドライン改正後に株式所有報告書を提出しますが,この場合,改正前,改正後,いずれのガイドラインの考え方が適用されるのでしょうか。
A7
改正後の考え方が適用されます。
また,事前相談のように企業結合ガイドライン改正前から審査を継続しているものも含め,企業結合ガイドライン改正後に審査を行うものについては,新しい企業結合ガイドラインの考え方に沿って審査を行います。