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(平成15年度:事例10)(株)日立製作所とオムロン(株)による金融用端末事業の統合について

(平成15年度:事例10)(株)日立製作所とオムロン(株)による金融用端末事業の統合について

第1 本件統合の概要

 本件は,株式会社日立製作所(以下「日立」という。)及びオムロン株式会社(以下「オムロン」という。)が,共同新設分割により新会社を設立し,両社の金融用端末事業の製造,販売事業の統合を行うものである。
 本件の関係法条は,独占禁止法第13条及び第15条の2である。

第2 金融用端末について

 金融用端末とは,銀行支店,コンビニなどに設置されているATM(automaticteller machine:現金自動預け払い機)を中心とした金融サービスを提供する端末類のことで,カードや通帳を用いて,現金の払出し,預入れ,振込みなどを行う装置のことをいう。
 金融用端末の大部分はATMであり,その他は両替機や記帳機などの補助的な業務を行う端末である。

第3 金融用端末の利用状況及び発注状況

 金融用端末は,銀行などの需要家のホストコンピュータに接続して使用されているが,金融用端末メーカーにとって,この接続は困難なものではなく,実際に同一の需要家において複数のメーカーの端末が稼動している。また,金融機関は金融再編や不良債権処理を進める過程で発注に際しては,慎重になってきており,複数見積り合わせなどを実施してコスト削減を図っている。この結果,ATMの販売価格は一貫して低下している。

第4 独占禁止法上の考え方

1 一定の取引分野

 金融用端末には,ATMのほか,両替機や記帳機も存在し,これらの機種は需要家からみた機能,効用や価格帯が異なることから,それぞれ一定の取引分野が成立すると判断した。
 しかしながら,両替機や記帳機も同じ供給者,需要家による市場で取引が行われていること,これら機種のみが特殊な動きをしているとは認められないことから,金融用端末の大部分を占めるATMを分析し,もって全体を評価することとした。

2 競争への影響

(1) 本件統合によって,ATMにおける当事会社の合算販売台数シェア・順位は,約35%・第1位,上位3社の累積シェアは約80%となる。

ATMの国内販売台数シェア
順位 会社名 シェア
1 日立製作所 約25%
2 A社 約25%
3 B社 約20%
4 C社 約10%
5 オムロン 約10%
6 D社 5~10%
(1) 当事会社合算 約35%
  100%

 (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)

(2) しかしながら,以下の状況が認められる。

ア 有力な競争事業者の存在

 当事会社のほか,シェア10%を超える複数の有力な事業者が存在する。

イ 供給者切替えの容易性

 いずれのメーカーの端末も需要家のホストコンピュータに接続が可能で,実際に需要家は複数の端末メーカーとの取引を行っている。端末メーカー間の代替性は高く,需要家にとって供給先を切り替えることは容易である。

ウ 需要家の強い価格交渉力

 需要家は銀行などの金融機関であり,強い交渉力を有していると考えられる。こうした需要家がコスト削減圧力を強めていることから強い価格交渉力を有しているものと考えられる。

エ 過去の市場の競争状況

 過去の供給者の市場シェアは変動しており,市場参加者間に協調的な行動があるとはみられない。こうした背景には端末メーカー間の代替性がある一方,需要家がコスト削減を強めていることが挙げられる。こうした状況は今後も継続することから,引き続き市場の競争は確保されるものと考えられる。

3 結論

 以上の状況から,当事会社の説明を前提とすれば,前記第4,1で画定した取引分野において,競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

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