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(平成16年度:事例1)株式会社西日本銀行と株式会社福岡シティ銀行の合併について

(平成16年度:事例1)株式会社西日本銀行と株式会社福岡シティ銀行の合併について

第1 本件の概要

 本件は,福岡県を主たる営業地域とする株式会社西日本銀行(以下「西日本銀行」という。)と株式会社福岡シティ銀行(以下「福岡シティ銀行」という。)が,店舗統廃合等による経営の効率化,経営基盤の強化等を図ることを目的として,平成16年10月に合併を行うことを計画したものである。
 本件の関係法条は,独占禁止法第11条及び第15条である。

第2 製品又は役務の概要

 当事会社は銀行業を営む事業者であり,貸出,預金等の業務に係る役務を提供している。

第3 独占禁止法上の考え方

1 一定の取引分野

(1) 役務の範囲

 本件については,銀行業を営む事業者間の合併であることから,貸出業務及び預金業務のそれぞれについて,一定の取引分野が成立すると判断した。

(2) 地理的範囲

 西日本銀行及び福岡シティ銀行は,主として福岡県を営業地域としていることから,両行の競合する福岡県全体において一定の取引分野が成立すると判断した。また,地域経済の実態等からみて,福岡県内の地域別にも一定の取引分野が成立すると判断した。

2 市場の状況

(1) 貸出業務

ア 福岡県全体の市場の状況
 福岡県全体の両行の合算シェア・順位は,約25%・第1位となる。

順位 会社名 シェア
1 A社 約25%
2 西日本銀行 約15%
3 福岡シティ銀行 約10%
4 B社 約5%
5 C社 約5%
  その他の金融機関 約40%
(1) 両行の合算シェア 約25%
  合計 100%

 (出所:両行の提出資料を基に公正取引委員会において作成)

イ 福岡県内の地域市場の状況
 福岡県内を地域別にみると,貸出業務については,借り手側の事情として借り手の経済的活動の範囲内に支店等が所在する金融機関から借入れをする傾向があると認められ,そのような経済圏の範囲で一定の取引分野が成立すると考えられる。
 そのうち,両行の合算シェアが高くなる福岡市を中心とする経済圏(以下「福岡経済圏」という。)及び北九州市を中心とする経済圏(以下「北九州経済圏」という。)の2つの経済圏について,それぞれ重点的に検討を行った。
 なお,福岡経済圏及び北九州経済圏については,それぞれの経済圏内における福岡市及び北九州市に対する通勤依存率が高く,経済圏内の交通網も整備されていることから,利用者の移動も容易であり,また,それぞれの経済圏の範囲内で事業活動も行われていると認められるため,福岡市を中心とする春日市,筑紫野市,那珂川町等の9市14町の地域及び北九州市を中心とする行橋市,中間市,苅田町等の3市10町の地域について,それぞれ一つの地理的範囲を形成していると判断した。

(ア) 福岡経済圏
 福岡経済圏における両行の合算シェアは約25%,その順位は第1位となる。

福岡経済圏における貸出金残高シェア
順位 会社名 シェア
1 A社 約25%
2 西日本銀行 約15%
3 福岡シティ銀行 約10%
4 B社 約5%
5 C社 約5%
  その他の金融機関 約40%
(1) 両行の合算シェア 約25%
  合計 100%

 (出所:両行の提出資料を基に公正取引委員会において作成)

(イ) 北九州経済圏
 北九州経済圏における両行の合算シェアは約25%,その順位は第1位となる。

北九州経済圏における貸出金残高シェア
順位 会社名 シェア
1 A社 約20%
2 西日本銀行 約15%
3 福岡シティ銀行 約10%
4 B社 約10%
5 C社 約10%
  その他の金融機関 約35%
(1) 両行の合算シェア 約25%
  合計 100%

 (出所:両行の提出資料を基に公正取引委員会において作成)

(2) 預金業務

 福岡県全体における両行の合併後の合算シェアは約15%,その順位は第3位となる。
 福岡県内の地域別にみると,預金業務については,利用者側の事情として利用者の経済的活動の範囲内に支店等が所在する金融機関を利用する傾向にあると認められ,そのような経済圏の範囲で一定の取引分野が成立すると考えられる。
 そのうち,両行の合算シェアが最も高くなる福岡経済圏について重点的に検討を行ったところ,福岡経済圏の合算シェアは約20%,その順位は第2位となる。

3 考慮事項

(1) 貸出業務

ア 福岡県全体
 福岡県全体における貸出業務については,両行と僅差のシェアを有する有力な競争業者のほか,都市銀行,地方銀行,信用金庫等の競争業者も多数存在しており,これらの金融機関による活発な競争が認められる。

イ 福岡経済圏
 福岡経済圏における貸出業務については,シェア約25%・第2位の有力な競争業者が存在するほか,都市銀行,地方銀行,信用金庫等の競争業者も多数存在しており,これらの金融機関において,多様なローン商品の開発,金利優遇,手続利便性の向上等をめぐり,活発な競争が認められる。
 また,通常,借入れを行う事業会社は,複数の金融機関と取引しており,他の金融機関への借換えが可能な状況にある。
 さらに,競争する金融機関の規模や資金調達手段が異なる等,経営の業態に違いがみられ,また,取引先事業者との個別交渉による顧客獲得競争が行われていることなどから,これらの金融機関の間において協調的な行動をとることが困難であると認められる。

ウ 北九州経済圏
 北九州経済圏における貸出業務については,シェア約20%・第2位の有力な競争業者が存在するほか,都市銀行,地方銀行,信用金庫等の競争業者も多数存在しており,これらの金融機関において,多様なローン商品の開発,金利優遇,手続利便性の向上等をめぐり,活発な競争が認められる。
 また,通常,借入れを行う事業会社は,複数の金融機関と取引しており,他の金融機関への借換えが可能な状況にある。
 さらに,競争する金融機関の規模や資金調達手段が異なる等,経営の業態に違いがみられ,また,取引先事業者との個別交渉による顧客獲得競争が行われていることなどから,これらの金融機関の間において協調的な行動をとることが困難であると認められる。

(2) 預金業務

 両行を上回るシェアを有する有力な競争業者が存在するほか,都市銀行,地方銀行,信用金庫等の競争業者も多数存在しており,これらの金融機関は金利優遇商品をはじめ,独自性のある多様な預金商品を提供するなどして活発な競争を展開している状況が認められる。

第4 独占禁止法上の評価

 貸出業務,預金業務いずれについても,有力な競争業者が存在するほか,競争業者が多数存在し,多様な貸出・預金商品等を提供していることなどから,本件合併により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。

第5 結論

 以上の状況から,両行の提出資料等を前提とすれば,本件合併により,福岡県全体及び福岡県の各地域における貸出業務分野及び預金業務分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

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