ホーム >独占禁止法 >企業結合 >主要な企業結合事例 >平成16年度における主要な企業結合事例 >

(平成16年度:事例11)東京新宿青果株式会社と東京淀橋青果株式会社の青果物卸売事業の統合について

(平成16年度:事例11)東京新宿青果株式会社と東京淀橋青果株式会社の青果物卸売事業の統合について

第1 本件の概要

 本件は,東京都中央卸売市場淀橋市場(以下「淀橋市場」という。)に入場している青果物卸売業者である東京新宿青果株式会社(以下「東京新宿青果」という。)と東京淀橋青果株式会社(以下「東京淀橋青果」という。)が,平成17年4月1日を目途に,共同新設分割により青果物の卸売事業を統合することを計画したものである。これにより淀橋市場における青果物卸売会社は1社となる。
 本件の関係法条は,独占禁止法第15条の2である。

 第2 卸売市場の概要

 「卸売市場」とは,生鮮食料品等の卸売のために開設される市場であって,卸売場,自動車駐車場その他の生鮮食料品等の取引及び荷さばきに必要な施設を設けて継続して開場されるものをいう(卸売市場法第2条第2項)。
 そのうち,一定規模以上のもので,都道府県,20万人以上の市又はこれらが加入する一部事務組合が農林水産大臣の認可を受け開設する市場を「中央卸売市場」といい,東京都中央卸売市場もこれに属している。また,中央卸売市場以外の卸売市場で,面積が一定規模以上の市場を「地方卸売市場」という。

第3 独占禁止法上の考え方

1 一定の取引分野

(1) 商品又は役務の範囲

 本件については,当事会社が淀橋市場において青果物の卸売業を営んでいることから,青果物の卸売業について一定の取引分野が成立すると判断した

(2) 地理的範囲

 当事会社の買参人の分布状況をみると,買参人の約85%が淀橋市場を中心とする半径20キロ圏内に所在していることから,淀橋市場を中心とする半径20キロ圏内に一定の取引分野が成立すると判断した。

2 市場の状況

 青果物の卸売業を巡っては青果物消費量の減少,市場外流通の拡大,卸売市場法の改正による卸売手数料の自由化等,大きな環境変化がみられる。
 淀橋市場においても,産地では出荷先卸売会社を取扱高の規模や提案力によって選別する傾向が強まっており,当該市場を品揃えの豊富な魅力ある市場として成長させていくために,取扱高の増大や提案力の向上を図ること,また,淀橋市場は住宅密集地に位置し,市場全体が狭隘なため,利便性を高めること等が大きな課題となっているところ,当事会社は青果物卸売業を統合することにより,取引量の増大と経営効率等の向上を実現しようとするものである。
 前記のような状況から,当事会社の取扱高は合計約700億円で,この数年大きな増減はない。

3 考慮事項

 当事会社が所在する新宿区は,首都高速道路等が整備されており,近隣に所在する他の卸売市場間の移動を容易に行い得る至便な地区である。
 当事会社の買参人の分布状況より,淀橋市場を中心とする半径20キロ圏内においては,下表のとおり,登録等の手続や時間距離等の点からみて容易に仕入れることが可能な代替的仕入先と認められる他の卸売会社が複数存在している。
 また,買参人の卸売市場への登録基準は共通であり,登録においては一定額の保証金を提出する必要はあるものの,買参人にとって大きな負担額ではないことから,重複登録は容易であると考えられる。

市場 取扱高 卸売会社
東京都中央卸売市場
豊島市場
約250億円 1社
東京都中央卸売市場
築地市場
約850億円 1社
東京都中央卸売市場
板橋市場
約350億円 1社
東京都中央卸売市場
世田谷市場
約100億円 1社
東京都中央卸売市場
北足立市場
約500億円 1社
東京都中央卸売市場
大田市場
約2300億円 3社
東京都中央卸売市場
葛西市場
約200億円 1社
(参考)
〃淀橋市場
約700億円 (統合後)
1社

(単位:百万円)
 (出所:当事会社提出資料を基に当委員会において作成)
 (注) 表中の取扱高の期間は,平成15年4月から平成16年3月までの1年間である。

第4 独占禁止法上の評価

 買参人の卸売市場への登録等の手続や時間距離等の点からみて容易に仕入れることが可能な代替的仕入先が多数存在することから,本件統合が行われたとしても,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。

第5 結論

 以上の状況から,当事会社の提出資料等を前提とすれば,本件行為により,前記第3の1で画定した一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

ページトップへ