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企業結合審査における内部文書の提出に係る公正取引委員会の実務

企業結合審査における内部文書の提出に係る公正取引委員会の実務

 企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かについての審査(以下、この審査を「企業結合審査」といいます。)においては、企業結合に関する事実確認のため、企業結合を行う会社及びそれと結合関係を有する会社(以下、併せて「当事会社グループ」といいます。)等に対して内部文書(取締役会資料、経営会議資料等の事業者内部で作成・利用された文書)の提出を求める場合(注1)があります(「企業結合審査の手続に関する対応方針(手続対応方針)」(平成23年6月14日公正取引委員会))別添(注1)参照)。
 迅速かつ的確な企業結合審査を実施する上では、企業結合計画に関する正確な事実関係の把握が極めて重要であり、内部文書は、そのための重要な資料の一つとなるものです。公正取引委員会が内部文書の提出を求める場合の実務は以下のようなものとなっています。
 (注1) 経済分析を行う場合には、別途、各種データの提出を求めることがあります。

1 企業結合審査における内部文書の提出の意義

 企業結合審査においては、届出書の記載事項及び添付書類のほか、企業結合の内容に応じて様々な資料を参考としています(手続対応方針別添参照)。企業結合審査において参考とする資料には、内部文書が含まれる場合があり、そのような場合には、公正取引委員会から当事会社グループのほか、必要に応じて、当事会社グループが供給する商品・役務の需要者や当事会社グループの競争者等(以下「第三者」といいます。)に対して内部文書の提出を求めることがあります。
 当事会社グループや第三者が公正取引委員会に内部文書を提出することにより、当事会社グループがどのような意図・目的をもって企業結合を計画しているのか、企業結合の結果、第三者にどのような影響が生じると予測しているのか、市場の将来をどのように予測しているのかなどについて、公正取引委員会も詳細かつ正確に把握できるようになり、迅速かつ的確な企業結合審査に資すると考えられます。特に、デジタル分野の企業結合案件については、急速に市場状況が変化する中で、これらの内部文書が競争への影響を判断する際に必要となる場合が多く、こうした内部文書の活用が国際的にも標準的な審査手法となっています。

2 提出を求める内部文書の範囲

 公正取引委員会は、前記1の企業結合審査における内部文書の提出の意義を前提として、内部文書の確認が必要と判断した場合、まず、企業結合の内容や市場の状況に応じて、企業結合審査に必要と考える範囲で、主に以下に例示した内部文書の中から必要と考えるものの提出を求めることとなります。その後、案件における内部文書の確認の必要性の程度に応じて、当事会社グループ等からの相談に応じた上で、提出を受ける具体的な内部文書の範囲について特定を行います。その際、組織図や従業員リスト等の一部の文書の提出を受けた上で、当該内部文書の内容を踏まえ、他に提出を求める内部文書の範囲について検討を行う場合があります。
 提出を求める内部文書の対象期間については、案件により様々ですが、多くの案件では内部文書の提出を求めた時点より2年程度以前からの文書について提出を求めています。また、当該内部文書の作成の時期について特段の指定のないものについては、企業結合の検討段階以降に作成したものに限らず、それ以前に作成した内部文書の提出を求める場合があります。

  • 企業結合に関連する当事会社グループの取締役会等の各種会議等で使用された資料や議事録等
  • 当事会社グループが、企業結合の検討及び決定に当たり企業結合の目的・効果等について検討・分析した資料や企業結合の検討を開始した経緯を示す資料
  • 企業結合の検討に関与した当事会社グループの役員又は従業員の電子メール(企業結合に関するもの)
  • 企業結合の対象となる事業に係る組織・部署における、策定した事業計画や事業上の各種戦略又は事業報告に関して作成した文書
  • 企業結合の対象となる事業に係る競争者・新規参入者の事業計画・参入計画に関して当事会社が検討・分析した際に作成した文書や競争者の範囲、競争力、競合の程度についての当事会社の認識や評価を示す資料
  • 企業結合の対象となる事業に係る商品・役務の価格、数量又は市場研究、市場予測、市場調査等のマーケティングに関する報告書(当事会社又は調査会社等が作成したもの)
  • 当事会社グループの組織図、各組織・部署の業務内容を示す資料及び従業員リスト(会社全体及び企業結合に関連する一定の取引分野における商品・役務の提供、価格決定又はマーケティングに従事する組織又は部署ごと)

 提出する内部文書について、当事会社グループ等が一定の抽出・選定作業を行うことを希望する場合には、公正取引委員会は提出範囲などに関する相談に先立って又はその過程において、当事会社グループ等に対して当該抽出・選定の方法等について説明を求め、対応について協議を求めています。説明を求める主な事項の例は以下のとおりです。

  • 抽出・選定作業を行う必要性・合理性の有無
  • 抽出・選定作業を行う場合、その範囲(対象部署・対象者等の人的範囲のほか、電子メールサーバー、ローカルフォルダ、共有フォルダ、外部メモリ等の物的範囲や対象期間の範囲を含む。)及び当該範囲とする理由
  • 検索ワード等による抽出・選定の場合、使用する検索条件、使用するツール(フォレンジック業者を利用する場合にはその概要を含みます。)、抽出・選定された内部文書について更に絞込みを行う場合には、当該絞込み作業の体制、絞込みの基準、使用するツール等
  • 抽出・選定対象となり得る内部文書の保全状況(破棄等が行われていないことの確認)

 また、公正取引委員会が企業結合審査を行い、内部文書の提出を求める場合、抽出・選定対象となり得る内部文書については、公正取引委員会が内部文書の提出を求めた時点から破棄することを避け、企業結合審査が終了するまで、保全・保存を求めています。また、後記3のとおり、公正取引委員会が内部文書の提出を求める前に当事会社グループにおいて内部文書を示す形で企業結合の目的等について説明を実施した場合においても、当該時点から内部文書の保全・保存をお願いしています。

3 内部文書の提出時期

 公正取引委員会は、第2次審査に至らない案件についても内部文書の提出を求める場合があります。また、公正取引委員会からの求めを受ける前の段階から、当事会社グループにおいて、内部文書を示す形で企業結合の目的等について説明を実施することは、迅速かつ的確な企業結合審査に資する場合があります。

4 内部文書の提出方法

 内部文書を提出する方法については、公正取引委員会と当事会社等との間で最適な方法を検討しています。具体的な方法としては、主に、以下の方法の中から当事会社グループ等のシステム、内部文書の種類や量等に応じて最も適当なものを選択しています。

  • 電子メールへの添付(メール本文を含めて50メガバイトを超える容量となる場合、分割送付をしていただいています。)
  • ハードディスクやDVD等の記録媒体での提出
  • 公正取引委員会の指定するファイル転送サービスでのデータの提出

 また、提出の際には必要に応じて以下の点についても対応を求めています。

  • パスワード等のセキュリティ措置の解除
  • 文書内の文字列を検索可能な形式での提出
  • メタデータの提出
  • 添付文書・引用文書等の関連文書の提出
  • 重複する文書の削除
  • 記録媒体の返却要否等についての連絡
  • 必要な範囲での和訳の提出又は日本語での説明
  • 提出時のデータの分類・整理

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問い合わせ先

公正取引委員会事務総局経済取引局企業結合課
電話 03-3581-3719(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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