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(平成12年度:事例6)NTTコミュニケーションズ(株)によるJSAT(株)の株式取得

(平成12年度:事例6)NTTコミュニケーションズ(株)によるJSAT(株)の株式取得

1 本件の概要

(1) 相談の概要

 本件は,NTTコミュニケーションズ(株)(以下「NTT-C」という。)が,衛星通信事業を行っているJSAT(株)(以下「JSAT」という。)に自社が保有する衛星2機の持分を譲渡するとともに,18.6%出資するものである。

(2) 衛星通信市場の概要

 衛星通信事業は,第一種電気通信事業のうち,通信衛星により通信回線を設定し,これを専用回線として顧客に提供するものであり,地上局(送信局)から送られた電波を通信衛星に搭載されたトランスポンダ(電波中継器)で増幅し,地上局(受信局)に送信するものである。
 第一種電気通信事業者が,国内サービスに使用中の静止衛星は,平成11年度末現在10機(JSAT5機,NTT-C2機,競争業者3機)である。

 新たな衛星を打ち上げる場合には,衛星の軌道位置について,国際調整が必要となる。
 また,平成12年の電波法改正により,今後,後継機の免許申請を含め,同一の軌道位置・周波数に複数の事業者から衛星局の免許申請があった場合には,手続の透明性や電波の有効利用等の観点から比較審査が行われることとなる。

2 独占禁止法上の考え方

(1) 一定の取引分野

 本件においては,衛星による専用サービスは,同報性があること等の地上網の専用線サービスと異なる特徴を有していること,衛星による専用サービスのユーザーは地上局を設置する必要があるなど衛星通信サービスには特別な設備を要すること,衛星による専用サービスは地上網の専用線サービスと料金体系が異なること,また,衛星による専用サービスについては,衛星の軌道位置及び照射範囲等により,国内通信に向いているものと国際通信に向いているものに分かれていることから,衛星による国内専用サービスに一定の取引分野が成立すると判断した。

(2) 競争への影響

ア 競争業者

 NTT-Cは,現在,保有する衛星2機を自社内利用に用いているところ,当該衛星を用いて衛星通信サービスを行う場合には,有力な競争単位となり得るところ,本件行為により,衛星による国内専用サービスの競争単位は,JSATと競争業者の2社になる。

イ 隣接市場からの競争圧力

 料金体系,同報性等の違いがあるものの,地上網を用いた専用線サービスは,衛星専用サービスと同じ用途の使用ができ,今後も光ケーブルの敷設,技術革新が進み,価格も低下していくと考えられることから,衛星による専用サービスに対する競争圧力は一定程度高まっていくと考えられる。

ウ 総合的事業能力

 地上網を用いた専用線サービスにおいて圧倒的地位を有するNTT-Cが,本件行為により衛星通信分野において衛星の総数の3分の2を有することとなるJSATに出資することにより,NTT-Cの地上網とJSATの衛星網を組み合わせたシステム提案等が容易となり,JSATの総合的事業能力が高くなる。

(3) 問題点の指摘及び当事会社の対応

 当委員会は,当事会社に対して,本件行為により,JSATの総合的事業能力が高くなることから,衛星による国内専用サービス分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがある旨の指摘を行った。

 これに対し,当事会社からは,以下の措置を講ずる旨の申し出があった。

 NTT-CとJSATとの間において行われる取引については,他の衛星通信事業者の取引と公平かつ適切な条件で行う。なお,衛星通信事業者と接続してサービスを提供する際は,接続協定等により適切な接続料金,技術的条件を定め,各衛星通信事業者と公平な条件で接続する。

 JSATがNTT-Cの購買力を使用することのないよう,共同資材調達は行わない。

 NTT-CからJSATに対し,JSATが営業活動を行う際にNTT-Cの販売力を不当に使用できるような補助は行わない。

 NTT-CとJSATのタイアップ広告は実施しない。また,JSATが広告宣伝を行う場合には,NTT-Cのロゴ使用等,NTT-Cの広告宣伝力を使用できるような補助は行わない。

(4) 当委員会の判断

 当事会社が申し出た措置が講じられれば,本件行為により,(1)で画定した一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないものと判断した。

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