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(平成13年度:事例9)富士電機(株)による三洋電機自販機(株)の株式取得

(平成13年度:事例9)富士電機(株)による三洋電機自販機(株)の株式取得

1 本件の概要

 本件は,三洋電機グループの自動販売機事業からの撤退に伴い,三洋電機(株)が自社の100%子会社である三洋電機自販機(株)(以下「三洋自販機」という。)の株式のすべてを富士電機(株)(以下「富士電機」という。)に譲渡することとし,当該株式を取得する富士電機が三洋自販機を自動販売機の製造・開発に特化した子会社とするとともに,製造面での集約化を図るものである。

2 独占禁止法上の考え方

(1) 一定の取引分野

 自動販売機については,販売する中身商品により,仕様やユーザーが異なることから,当事会社が共に製造・販売している自動販売機の中身商品ごとの製造・販売分野にそれぞれ一定の取引分野が成立すると判断した。

(2) 競争への影響

 上記2(1)で画定した取引分野のうち,競争への影響が大きいと考えられる飲料用自動販売機の製造・販売分野について重点的に検討を行った。

 本件株式取得により,飲料用自動販売機の製造・販売分野における当事会社の合算出荷台数シェア等は,約55%・第1位となる。

 しかしながら,以下の状況が認められる。

(ア) 有力な競争事業者の存在
 出荷台数シェア約20%有する有力な競争事業者2社を含む複数の競争事業者が存在する。

(イ) ユーザーの価格交渉力
 ユーザーである飲料メーカーは,価格交渉力維持等の観点から,同一の機能を有する飲料用自動販売機を複数の自動販売機メーカーから調達したり,大量購入を背景として有利な条件での購入を図るために共同購入を行っており,ユーザーの価格交渉力は強い。
 また,コンビニエンスストアの普及等による飲料用自動販売機での販売効率低下に伴い,ユーザーからの飲料用自動販売機の購入価格の引下げ圧力は強まっている。
 このような状況の下,飲料用自動販売機の価格は低下している。

(ウ) ユーザーの調達方針
 ユーザーは,上記のとおり,価格交渉力維持等の観点から,複数の自動販売機メーカーから飲料用自動販売機を調達するという方針を採っている。このため,競争事業者は,本件株式取得後においては,自己とユーザーとの取引の機会が増加する可能性があるところから,これをむしろビジネスチャンスとしてとらえている。したがって,当事会社が現在の合算出荷台数を維持することは難しいと考えられる。

 他方,ユーザーに対するヒアリング結果等を踏まえれば,本件株式取得により,飲料用自動販売機製造に係る技術が当事会社にかなりの程度集積されることとなり,当事会社の技術力が相当程度高まることが予想される。この結果,当事会社は,今後の技術開発の面も含めて,競争事業者に比し,事業活動上著しく優位に立つことが見込まれ,当事会社が保有する技術の競争事業者に対する供与が制限された場合には,競争事業者が当事会社と同一の機能を有する飲料用自動販売機を製造・販売することが難しくなるおそれがあり,また,その場合には,ユーザーが複数の自動販売機メーカーから飲料用自動販売機を調達することが困難となることにより,ユーザーの価格交渉力が弱まることが懸念された。このため,当委員会は,当事会社に対し,当該懸念を指摘したところ,当事会社から,仮に,当事会社が保有する特許権等の技術について競争事業者からその実施許諾等の求めがあったときは,これを拒否することなく,適正な条件の下でその求めに応ずることとする旨の申出があった。

 結論
 本件株式取得については,飲料用自動販売機の製造・販売分野における当事会社の現在の合算出荷台数シェアは約55%なるものの,記(2)イのとおり,有力な競争事業者が複数存在すること,ユーザーである飲料メーカーの価格交渉力が強いこと,また,当事会社が申し出ている措置が着実に実行されれば,ユーザーである飲料メーカーによる複数の自動販売機メーカーからの飲料用自動販売機の調達が確保されることによりユーザーの価格交渉力が従来同様維持されるとともに,当事会社がその保有する特許権等の供与を拒否することによって競争事業者を市場から排除するおそれも生じないと考えられること等から,本件株式取得により,飲料用自動販売機の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないものと判断した。

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