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(平成14年度:事例8)新日本製鐵(株)及び住友金属工業(株)によるステンレス事業の統合について

(平成14年度:事例8)新日本製鐵(株)及び住友金属工業(株)によるステンレス事業の統合について

第1 本件の概要

 新日本製鐵(株)及び住友金属工業(株)は,共同新設分割により,両社のステンレス事業を統合することを計画している。

第2 独占禁止法上の考え方

1 競争への影響の検討

 詳細な検討を要すると認められたステンレス熱延鋼帯(以下「熱延鋼帯」という。),ステンレス厚中板(以下「厚中板」という。)及びステンレス冷延鋼帯(以下「冷延鋼帯」という。)の3分野について,重点的な審査を行った。

2 競争への影響

 本件統合により,各取引分野における当事会社グループの合算販売数量シェア・順位は,熱延鋼帯において約30%・第1位,厚中板において約40%・第1位,冷延鋼帯において約35%・第1位となる。しかしながら,以下の状況が認められることから,いずれの取引分野においても競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

(1) 熱延鋼帯

ア 有力な競争事業者
 有力な競争事業者が複数存在する(販売数量シェア約20%・1社,約15%・2社及び約10%・1社)。

イ ユーザーの取引先変更の容易性
 ユーザーが購入している熱延鋼帯はほとんどがJIS規格品であり,メーカー間に基本的に品質差がないこと等から,購入先メーカーの変更は容易であると認められる。

ウ ユーザーの購買行動
 ユーザーは,基本的に複数購買を行っており,主として価格により購入先メーカーを決定している。価格交渉においては,より低い価格を提示したメーカーからの調達シェアを増加させるとの方針を採っている者も存在する。
 また,ユーザーもその販売先から厳しい値引き要求を受けており,このような川下市場からの競争圧力がユーザーのメーカーに対する価格引下げ圧力を強める要因となっている。

エ 国際的な競争圧力
 輸入品を購入しているユーザーによれば,輸入品と国内品との間に基本的に品質差等はなく,主に国内品と輸入品との価格差を考慮して輸入品を購入するか否かを決定するとしている。
 また,国内価格と国際価格との間には一定の連動性が認められ,国内価格と国際価格との差が一定程度拡大すると輸入量が増加するという関係も認められることから,輸入圧力が一定程度働いているものと認められる。

(2) 厚中板

ア 有力な競争事業者
 有力な競争事業者が複数存在する(販売数量シェア約20%・1社及び約10%・2社)。

イ ユーザー等の取引先変更の容易性
 紐付き取引(注1)を行っているユーザーが購入している厚中板はほとんどがJIS規格品であり,メーカー間に基本的に品質差がないことから,購入先メーカーの変更は容易であると認められる。
 店売り取引(注2)において流通業者が取引している厚中板はほとんどがJIS規格品であり,メーカー間に基本的に品質差がないこと等から,購入先メーカーの変更は容易であると認められる。

 (注1) 紐付き取引: メーカーと最終ユーザー間において,価格交渉を行う取引形態。
 (注2) 店売り取引: 流通業者が自己の責任においてメーカーから製品を仕入れて販売する形態。メーカーと流通業者,流通業者間,流通業者とユーザー,それぞれの取引ごとに価格交渉が行われる。

ウ ユーザー等の購買行動
 紐付き取引を行っているユーザーは,価格交渉力の維持等の観点から,基本的に複数購買を行うとともに,複数メーカーと原料価格等を交渉材料とした価格交渉を行っている。また,より低い価格を提示したメーカーからの調達シェアを増加させるとの方針を採っている者も存在するなど,ユーザーの価格交渉力は強いものと認められる。
 店売り取引においては,多数・多段階の流通業者が存在し,市況が形成されていることなどから,流通業者は,主として価格により購入先メーカーを決定している。このような競争が多数・多段階の流通業者によって行われており,これがメーカーに対する価格引下げ圧力を強める要因となっている。

エ 国際的な競争圧力
 輸入品を購入しているユーザーによれば,輸入品は国内品との間に基本的に品質差等はなく,専ら国内品との価格差によって輸入品を購入するか否かを決定するとしている。店売り取引においても輸入品と国内品との間に基本的に品質差がないため,主として価格による競争が行われている。
 また,国内価格と国際価格及び輸入量との関係については,熱延鋼帯と同様の状況が認められる((1)エ参照)。

(3) 冷延鋼帯

ア 有力な競争事業者
 有力な競争事業者が複数存在する(販売数量シェア約20%・1社及び約10%・3社)。

イ ユーザー等の取引先変更の容易性
 紐付き取引を行っているユーザーが購入している冷延鋼帯はほとんどがJIS規格品であり,メーカー間に基本的に品質差がないことから,購入先メーカーの変更は容易であると認められる。
 店売り取引において流通業者が取引している冷延鋼帯はほとんどがJIS規格品であり,メーカー間に基本的に品質差がないこと等から,購入先メーカーの変更は容易であると認められる。

ウ ユーザー等の購買行動
 紐付き取引を行っているユーザーは,価格交渉力の維持等の観点から,基本的に複数購買を行うとともに,複数メーカーと原料価格等を交渉材料とした価格交渉を行っている。また,より低い価格を提示したメーカーからの調達シェアを増加させるとの方針を採っている者も存在することに加え,これらユーザーのメーカーからの購買量が多いこともあり,ユーザーの価格交渉力は強いものと認められる。
 店売り取引については,厚中板と同様の状況が認められる((2)ウ参照)。

エ 国際的な競争圧力の存在
 輸入品については厚中板と同様の状況が認められる((2)エ参照)。
 また,国内価格と国際価格及び輸入量との関係については,熱延鋼帯と同様の状況が認められる((1)エ参照)。

 ※ 当事会社への回答は参考参照。

(参考) 新日本製鐵(株)及び住友金属工業(株)によるステンレス事業の統合について(回答)

第1 当事会社

 新日本製鐵(株)(以下「新日鐵」という。)は,鉄鋼等の製造・販売業を営む者である。
 住友金属工業(株)(以下「住金」という。)は,鉄鋼等の製造・販売業を営む者である。

第2 統合の概要及び関係法条

 当事会社は,平成15年10月に,共同新設分割により,共同出資会社(新日鐵:80%,住金:20%)を設立し,両社のステンレス事業を統合することを計画している。
 よって本件統合の関係法条は,独占禁止法第15条の2である。

第3 統合の目的

 当事会社は,赤字が継続しているステンレス事業について,設備集約等による,より効率的な生産体制の実現と管理・営業部門のスリム化を図るために本件統合を行うとしている。

第4 一定の取引分野

1 一定の取引分野

 ステンレス製品を含む鉄鋼製品は,ユーザーの使用目的に応じて,異なる形状・性質の製品が製造されている。ステンレス鋼は,耐食性を高めるために,鉄を主成分とし,これにクロム又はクロムとニッケルを含有させた合金鋼であり,クロムのみを含有させたクロム系の製品と,耐食性をより高めるために,更にニッケルを含有させたニッケル系の製品がある。
 本件統合対象のステンレス製品で当事会社グループが競合する5つの製品分野について,ユーザーからみて機能・効用が同種であるか否か,また,供給に要する設備に相違があるか否かの観点から検討を行い,5つの一定の取引分野を画定した(後記3分野並びにステンレス棒鋼及びステンレス線材)。このうち,統合後に想定される市場の状況からみて,詳細な検討を要すると認められたステンレス熱延鋼帯(以下「熱延鋼帯」という。),ステンレス厚中板(以下「厚中板」という。)及びステンレス冷延鋼帯(以下「冷延鋼帯」という。)の3分野について,重点的な審査を行った(注1)。
 なお,厚中板については,一貫ステンレスメーカー(注2)が製造・販売する製品のほか,シャーリング業者(注3)が一貫ステンレスメーカーから購入した熱延鋼帯を素材として加工販売する製品が存在するが,ユーザーは,両者を相互に代替する同種のものとして購入していることから,両者を厚中板として一定の取引分野を画定した。
 また,冷延鋼帯については,一貫ステンレスメーカーが製造・販売する製品のほか,リロールメーカー(注4)が一貫ステンレスメーカーから購入した熱延鋼帯を素材として製造・販売する製品が存在するが,ユーザーは,両者を相互に代替する同種のものとして購入していることから,両者を冷延鋼帯として一定の取引分野を画定した。
 重点審査を行う3分野のいずれについても,クロム系の製品とニッケル系の製品が存在するが,主たる用途に明確な差はなく,また,製造設備に変更を加えることなく,クロム系の製品とニッケル系の製品を容易に作り分けることができることから,両者を区別することなく,それぞれの製品ごとに一定の取引分野を画定した。

 (注1) ステンレス棒鋼については,当事会社の合算販売数量シェアが,10%以下であること,また,ステンレス線材については,合算販売数量シェアの増加分が1%未満と極めて僅少であることから,独占禁止法上の問題を惹起するおそれはないと判断したものである。

 (注2) 一貫ステンレスメーカー: 製鋼,熱間圧延設備を有し,最終製品まで一貫して製造・販売しているメーカー。当事会社は,いずれも一貫ステンレスメーカーである。

 (注3) シャーリング業者: 一貫ステンレスメーカーから熱延鋼帯を購入し,厚中板に加工・販売している業者。一貫ステンレスメーカーから厚中板それ自体を購入・販売もしている。

 (注4) リロールメーカー: 一貫ステンレスメーカーから熱延鋼帯を購入し,冷間圧延を行い,冷延鋼帯を製造・販売しているメーカー。

2 重点審査対象3品目の概要

 別紙のとおり。

第5 重点審査対象3品目に関する検討

1 熱延鋼帯

(1) 市場の状況
 熱延鋼帯の国内需要は減少傾向にあり,平成13年度における国内市場規模は,約430億円となっている。
 本件統合により,当事会社の合算販売数量シェア・順位は,約30%を占め,第1位となる。

順位 会社名 シェア
1 新日鐵 約25%
2 A社 約20%
3 B社 約15%
4 C社 約15%
5 D社 約10%
6 住金 約10%
  輸入 約5%
(1) 当事会社合算 約30%
  合計 100%

 (出所:当事会社提出資料)

(2) 考慮事項

ア 有力な競争事業者
 A社,B社,C社及びD社という複数の有力な競争事業者が存在する。

イ ユーザーの取引先変更の容易性
 ユーザーが購入している熱延鋼帯はほとんどがJIS規格品であり,一貫ステンレスメーカーの間で基本的に品質差がなく,また,主要なユーザーであるリロールメーカー,シャーリング業者等が冷延鋼帯,厚中板等を製造・販売するに当たり,その発注先から特定一貫ステンレスメーカーの熱延鋼帯の使用を指定されることも通常ないことから,ユーザーにとって購入先メーカーの変更は容易であると認められる。

ウ ユーザーの購買行動
 ユーザーは,前記イのとおり,一貫ステンレスメーカーの間で基本的に品質差がないこと等から,基本的に複数購買を行い,主として価格により購入先メーカーを決定している。その際,原料価格,国内市況を交渉材料とした価格交渉を行い,より低い価格を提示した一貫ステンレスメーカーからの調達シェアを増加させるとの方針を採っている者も存在する。
 主要なユーザーであるリロールメーカー,シャーリング業者等は販売先からの厳しい値引き要求を受けており,このような川下市場からの競争圧力が,これらユーザーの一貫ステンレスメーカーに対する価格引下げ圧力を強める要因となっている。これに加え,一貫ステンレスメーカーとリロールメーカーは,冷延鋼帯の市場において競合関係にあることも,リロールメーカーの一貫ステンレスメーカーに対する価格引下げ圧力を強める要因となっている。

エ 国際的な競争圧力

(ア) 輸入
 平成13年度の熱延鋼帯の輸入量は,国内販売数量全体の約5%を占めている。
 輸入品はほとんどがJIS規格品である。輸入品を購入しているリロールメーカー等によれば,輸入品と国内品との間に基本的に品質差はなく,また,納期等にも問題はないため,主に国内品との価格差を考慮して輸入品を購入するか否かを決定するとしている。

(イ) 国内価格と国際価格及び輸入量との関係
 国内価格と国際価格との間には価格差はみられるものの,一定の連動性が認められるとともに,国内価格と国際価格との差が一定程度拡大すると輸入量が増加するという関係が認められることから,輸入圧力が一定程度働いているものと認められる。

(3) 独占禁止法上の評価
 前記(2)のとおり,有力な競争事業者が複数存在していること,ユーザーの取引先変更が容易であること,ユーザーからの一貫ステンレスメーカーに対する価格引下げ圧力を強める要因がみられること,輸入圧力が一定程度働いていると認められることから,本件統合により,熱延鋼帯の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。

2 厚中板

(1) 市場の状況
 厚中板の国内需要は減少傾向にあり,平成13年度における国内市場規模は,約460億円となっている。
 本件統合により,当事会社の合算販売数量シェア・順位は,約40%を占め,第1位となる。

順位 会社名 シェア
1 新日鐵 約25%
2 E社 約20%
3 住金 約15%
4 F社 約10%
5 G社 約10%
  シャーリング業者 約15%
  輸入 約5%
(1) 当事会社合算 約40%
  合計 100%

 (出所:当事会社提出資料)

(2) 考慮事項

ア 有力な競争事業者
 E社,F社及びG社という複数の有力な競争事業者が存在する。

イ ユーザー等の取引先変更の容易性
 紐付き取引(注1)を行っているユーザーが購入している厚中板はほとんどがJIS規格品であり,一貫ステンレスメーカー及びシャーリング業者(以下第5,2において「メーカー」という。)の間で基本的に品質差はないため,ユーザーにとって購入先メーカーの変更は容易であると認められる。
 店売り取引(注2)において流通業者が取引している厚中板はほとんどがJIS規格品であり,メーカーの間で基本的に品質差はなく,また,ユーザーが特定メーカーの製品を指定することも通常ないことから,流通業者にとって購入先メーカーの変更は容易であると認められる。

 (注1) 紐付き取引:メーカーと最終ユーザー間において,価格交渉を行う取引形態。
 (注2)店売り取引:流通業者が自己の責任においてメーカーから製品を仕入れて販売する形態。メーカーと流通業者,流通業者間,流通業者とユーザー,それぞれの取引ごとに価格交渉が行われる。

ウ ユーザー及び流通業者の購買行動
 紐付き取引を行っているユーザーは,メーカーの間で基本的に品質差がないため,価格交渉力維持,安定供給確保等の観点から,基本的に複数購買を行っている。また,ユーザーは,複数のメーカーと原料価格,国内市況を交渉材料とした価格交渉を行い,価格,納期等により購入先メーカーを決定している。その際, より低い価格を提示したメーカーからの調達シェアを増加させるとの方針を採っている者も存在する。このように,メーカーに対するユーザーの価格交渉力は強いものと認められる。さらに,ユーザーの中には不定期に大口購買をしている者もあり,このような購買方法が採られる場合におけるメーカーの間の受注競争は激しいものとなっている。
 店売り取引においては,多数・多段階の流通業者が存在し,市況が形成されているとともに,ユーザーが特定メーカーの製品を指定することも通常ないことから,流通業者は主として価格により購入先メーカーを決定している。このような競争が,各流通段階ごとに多数の流通業者によって行われており,これがメーカーに対する価格引下げ圧力を強める要因となっている。

エ 国際的な競争圧力

(ア) 輸入
 平成13年度の厚中板の輸入量は,国内販売数量全体の約5%を占めている。
 輸入品はほとんどがJIS規格品である。紐付き取引を行っている主要なユーザーで輸入品を購入している者によれば,輸入品は国内品との間に基本的に品質差はなく,また,納期等も問題はないため,専ら国内品との価格差によって輸入品を購入するか否かを決定するとしている。
 輸入品の約8割が取引されている店売り取引においても,輸入品と国内品との間に基本的に品質差がないため,主として価格による競争が行われている。

(イ) 国内価格と国際価格及び輸入量との関係
 熱延鋼帯と同様の状況が認められる(第5,1(2)エ(イ)参照)。

(3) 独占禁止法上の評価
 前記(2)のとおり,有力な競争事業者が複数存在していること,ユーザー等の取引先変更が容易であること,ユーザー等のメーカーに対する価格交渉力が強く,また,価格引下げ圧力を強める要因がみられること,輸入圧力が一定程度働いていると認められることから,本件統合により,厚中板の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。

3 冷延鋼帯

(1) 市場の状況
 冷延鋼帯の国内需要は平成9年度をピークに減少傾向にあったが,平成12年度から増加傾向に転じている。平成13年度における国内市場規模は,約1930億円となっている。
 本件統合により,当事会社の合算販売数量シェア・順位は,約35%を占め,第1位となる。

順位 会社名 シェア
1 H社 約20%
2 新日鐵 約20%
3 住金 約15%
4 I社 約10%
5 J社 約10%
6 K社 約10%
7 L社 約5%
8 M社 0~5%
9 N社 0~5%
10 O社 0~5%
  その他リロールメーカー 0~5%
  輸入 約5%
(1) 当事会社合算 約35%
  合計 100%

 (出所:当事会社提出資料)

(2) 考慮事項

ア 有力な競争事業者
 H社,I社,J社及びK社という複数の有力な競争事業者が存在する。

イ ユーザー等の取引先変更の容易性
 紐付き取引を行っているユーザーが購入している冷延鋼帯はほとんどがJIS規格品であり,一貫ステンレスメーカー及びリロールメーカー(以下第5,3において「メーカー」という。)の間で基本的に品質差はないため,ユーザーにとって購入先メーカーの変更は容易であると認められる。
 店売り取引において流通業者が取引している冷延鋼帯はほとんどがJIS規格品であり,メーカーの間で基本的に品質差はなく,また,ユーザーが特定メーカーの製品を指定することも通常ないことから,流通業者にとって購入先メーカーの変更は容易であると認められる。

ウ ユーザー及び流通業者の購買行動
 紐付き取引を行っているユーザーは,メーカーの間で基本的に品質差がないため,価格交渉力維持,安定供給確保等の観点から,基本的に複数購買を行っている。また,ユーザーは,複数のメーカーと原料価格,国内市況を交渉材料とした価格交渉を定期的に行い,価格,納期等により購入先メーカーを決定している。 その際,より低い価格を提示したメーカーからの調達シェアを増加させるとの方針を採っている者も存在する。また,これらユーザーのメーカーからの購買量が多いこともあり,メーカーに対するユーザーの価格交渉力は強いものと認められる。
 店売り取引については,厚中板と同様の状況が認められる(第5,2(2)ウ参照)。

エ 国際的な競争圧力

(ア) 輸入
 平成13年度の冷延鋼帯の輸入量は,国内販売数量全体の約5%を占めている。
 輸入品はほとんどがJIS規格品である。紐付き取引を行っている主要なユーザーで輸入品を購入している者によれば,輸入品は国内品との間に基本的に品質差はなく,また,納期等も問題はないため,専ら国内品との価格差によって輸入品を購入するか否かを決定するとしている。
 輸入品の取引は,主として,店売り取引において行われているところ,輸入品と国内品との間には基本的に品質差がないため,主として価格による競争が行われている。

(イ) 国内価格と国際価格及び輸入量との関係
 熱延鋼帯と同様の状況が認められる(第5,1(2)エ(イ)参照)。

(3) 独占禁止法上の評価
 前記(2)のとおり,有力な競争事業者が複数存在していること,ユーザー等の取引先変更が容易であること,ユーザー等のメーカーに対する価格交渉力が強く,また,価格引下げ圧力を強める要因がみられること,輸入圧力が一定程度働いていると認められることから,本件統合により,冷延鋼帯の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。

別紙

重点審査対象3品目の概要
製品名 概要
ステンレス
熱延鋼帯
(特性)
 熱間圧延機で製造し冷間圧延していない帯状のステンレス鋼。主として,ステンレス厚中板,ステンレス冷延鋼帯等を製造するための中間部材として使用され,最終製品として使用されることはほとんどない。
(主な用途)
 二次製品(厚中板,冷延鋼帯,鋼管,形鋼等)向けの部材となる場合がほとんどであるが,一部,家電品等(加工性,光沢を要求されず,耐熱性・耐食性のみを要求される機能材)に使用される。
(主なユーザー)
 冷延鋼帯を製造するリロールメーカー,鋼管等の加工メーカー,厚中板に加工するシャーリング業者。
(取引形態)
 ほとんどが紐付き取引(注)。
(注) 紐付き取引
 メーカーと最終ユーザー間において,価格交渉を行う取引形態。
ステンレス
厚中板
(特性)
 熱間圧延機で製造した厚さ3ミリメートル以上の板状のステンレス鋼。厚さを増すことにより強度が増し,構造材料に適する。
(主な用途)
 産業用プラント,LPGなどの化学薬品運搬のための船舶のタンク,産業機械部品等に使用されている。
(主な最終ユーザー)
 プラントメーカー,造船メーカー,機械部品メーカー等。
(取引形態)
 紐付き取引が約5割,店売り取引(注)が約5割。
(その他)
 一貫ステンレスメーカーが製造・販売している製品のほか,シャーリング業者が一貫ステンレスメーカーから熱延鋼帯を購入し,これを厚中板に加工販売している製品がある。
(注)店売り取引
 流通業者が自己の責任においてメーカーから製品を仕入れて販売する形態。メーカーと流通業者,流通業者間,流通業者とユーザー,それぞれの取引ごとに価格交渉が行われる。
ステンレス
冷延鋼帯
(特性)
 熱延鋼帯を冷間圧延した厚さ3ミリメートル未満の帯状のステンレス鋼(磨帯鋼,冷延鋼板を含む。)。冷間圧延によって光沢が増すことにより意匠性が高まり,かつ,加工性が向上する(金属組織が微細化し,曲げによる割れが発生しづらくなる。)。
(主な用途)
 自動車のマフラー,エンジンのパイプ,電気製品,厨房製品,建材等多様な用途に使用されている。
(取引形態)
 紐付き取引が約7割,店売り取引が約3割。
(主な最終ユーザー)
 自動車メーカー,家電メーカー,厨房メーカー,建材メーカー等。
(その他)
 一貫ステンレスメーカーが製造・販売している製品のほか,リロールメーカーが,一貫ステンレスメーカーから熱延鋼帯を購入し,これを素材として製造・販売している製品がある。

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