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(平成13年度:事例6)東京海上火災保険(株)及び日動火災海上保険(株)の経営統合

(平成13年度:事例6)東京海上火災保険(株)及び日動火災海上保険(株)の経営統合

1 本件の概要

 本件は,東京海上火災保険(株)及び日動火災海上保険(株)が,損害保険業界における経営環境が急速に変化する中,効率化と競争力強化を図るため,持株会社(持株会社の名称は,「(株)ミレアホールディングス」)を設立し,その傘下に入ることにより,経営統合するものである。
 なお,本件統合には,共栄火災海上保険(相)及び朝日生命保険(相)が参加することになっているが,これについては,改めて検討することとする。

2 独占禁止法上の考え方

(1) 一定の取引分野

 損害保険市場については,損害保険全体について一定の取引分野が成立するほか,提供される保険の商品等を踏まえて,保険種目ごと(自動車保険,傷害保険,火災保険,自賠責保険,賠償責任保険及び海上・運送保険)にも一定の取引分野が成立すると判断した。

(2) 競争への影響の検討

 本件統合による国内損害保険料(元受正味保険料ベース)全体における当事会社の合算シェアは25%弱で,その順位は第1位となる。さらに,他の損害保険会社が合併を予定していることから,上位会社の集中度が高まることとなる。
 しかしながら,以下のような状況が認められる。

(ア) 当事会社以外に,シェア約10%から15%強の大手損害保険会社が有力な競争業者として複数存在すること

(イ) 生保系損害保険会社,外資系損害保険会社及び他業種系損害保険会社が新規に参入していること

(ウ) 保険料率の自由化や新規参入が行われたことにより,価格競争が促進されるとともに,損害保険会社各社が保険商品開発競争を行い,多様なサービス内容の保険商品を提供していること

(エ) 従来の損害保険代理店経由の保険商品の販売のほか,新規参入業者を中心に,電話やインターネットを利用した保険商品の通信販売が増加していること

 損害保険の種目ごとにみると,自動車保険(当事会社の合算シェア25%弱),傷害保険(同20%強),火災保険(同約20%),自賠責保険(同約25%),賠償責任保険(同30%弱)及び海上・運送保険(同30%弱)のいずれも第1位となるが,各損害保険種目の分野において,以下の状況が認められる。

(ア) 自動車保険については,保険料率が自由化され,外資系損害保険会社及び他業種系損害保険会社が新規に参入する中で,価格競争が促進されているとともに,リスク細分型保険商品や人身傷害保険の付帯等担保範囲を拡大した商品が発売されるなど,多様な保険商品の提供が進んでいること
 また,自賠責保険については,自動車保険と密接な関係があり,こうした自動車保険における競争の影響を強く受けていること

(イ) 傷害保険については,もともと外資系損害保険会社が積極的に販売活動を行っており,また,生命保険会社本体の参入も可能になったことから,競争の促進が見込まれること

(ウ) 火災保険については,協同組合が提供する火災共済が火災保険にほぼ匹敵する規模で存在し,これが競争圧力となっていること

(エ) 賠償責任保険については,統合によるシェアの増加分がわずかであるほか,海上・運送保険と同様に,もともと算定会料率(注)の対象になっておらず,活発な価格競争が行われており,また,最近,顧客ニーズを先取りした新商品の開発が積極的に行われていること

(オ) 海上・運送保険については,統合によるシェアの増加分がわずかであるほか,契約主体が海運会社,運送会社等であり,損害保険会社に対する交渉力が強く,契約先を変更することも容易であること。また,海上保険については,海外で付保するケースも多く,外国の保険会社からの競争圧力があること

 以上の状況から,上記2(1)で画定したいずれの取引分野においても,競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

 (注) 旧算定会料率は,自動車保険,傷害保険,火災保険,自賠責保険及び地震保険について,損害保険料率算定会及び自動車保険料率算定会が保険料率を算出して,行政庁の認可を取得していたものであって,算定会会員である損害保険会社は使用義務を負い,独占禁止法の適用除外とされていた。算定会料率制度の改革により,平成10年7月から自賠責保険及び地震保険を除き,各社が保険料率について個別に行政庁の認可を取得することとなった。

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