ホーム >独占禁止法 >企業結合 >統計・資料 >公表事例において輸入について検討を行った例 >

(平成11年度:事例4)(株)東芝及び三菱電機(株)による大容量電動機の共同生産会社の設立

(平成11年度:事例4)(株)東芝及び三菱電機(株)による大容量電動機の共同生産会社の設立

1 本件の概要

 (株)東芝及び三菱電機(株)は,製造の合理化等による技術・コスト競争力の強化等を目的に,共同出資会社を設立して,両当事会社が現在行っている大容量電動機事業のうち,研究・開発,設計及び製造事業を統合しようとするものである。販売事業については,共同出資会社設立後も引き続き,当事会社がそれぞれ独自に行うこととしている。
 大容量電動機は,容量が100kW程度のものから1万kWを超えるものまであり,価格についても数十万円程度のものから1億円を超えるものまでさまざまである。代表的な用途としては,発電所の空調,冷却ファン,製鉄所の圧延ローラー回転用,製紙工場のパルプ巻取用などがある。
 大容量電動機は,個々の使用環境に合わせて一機ごとに,外形寸法,出力等が異なるため,基本的に受注生産となっている。また,大容量電動機の取引形態には,大容量電動機がプラントに組み込まれて取引される場合と電動機単体で取引される場合とがある。大容量電動機は,前者の場合はプラントメーカーに販売され,後者の場合は直接又は代理店を通じて最終ユーザーに販売される。

2 独占禁止法上の考え方

(1) 一定の取引分野

 本件においては大容量電動機の製造販売分野に一定の取引分野が成立すると判断した。また,特に大形の大容量電動機と中・小形の大容量電動機とでは,用途等に違いがあることから,それぞれの製造販売分野についても検討の対象とする必要があると判断した。

(2) 競争への影響

 両当事会社の大容量電動機の国内における生産金額シェアは,合算すると大容量電動機全体で約44%(1000kW超のもので60%超,75kW超1000kW以下のもので40%弱)となる。
 なお,当事会社のそれぞれの販売金額シェアを合算した場合には,約40%となる。
 このように生産金額シェアは高くなるものの,販売事業については,共同出資会社設立後も引き続き,当事会社がそれぞれ独自に行うこととしているものであり,以下の事情を総合的に勘案すれば,本件共同生産会社の設立により,(1)で画定したいずれの取引分野においても競争を実質的に制限することとはならないと判断した。
 大容量電動機の販売に当たっては,エンジニアリング面での提案を含む受注活動が重要な役割を有しているが,当事会社はこうした受注活動を引き続き独自に行うこととし,共同生産会社の設立後においても,当事会社間の販売活動の独自性を保持するための具体的措置を講じる旨の申し出があったことから,エンジニアリング面を含めた販売面での当事会社間の競争は今後とも維持される。
 また,国内には,大形のものを含め大容量電動機を製造できる能力と販売実績を有する有力な競争業者が複数存在し,各メーカー間に品質の差異は小さいことから,ユーザーは購入先メーカーの変更が容易である。
 さらに,特に大形の大容量電動機のユーザーは,事業規模が大きく価格交渉力が強い状況にあり,今後もその状況は変わらないと見込まれる。
 加えて,近年輸入が増加する傾向にあり,欧米の有力メーカー等の参入後,国内メーカーの製品の価格が大幅に低下してきている。大形の大容量電動機に関しては,特に海外ユーザー向けとして国内プラントメーカーに販売している分野(国内生産全体の約4分の1を占めている。)において欧米メーカーの製品が,また,中・小形の大容量電動機に関しては,アジア各国のメーカーの製品が,競争を促進する要因として機能していると評価することができる。

ページトップへ