ホーム >独占禁止法 >企業結合 >統計・資料 >公表事例において輸入について検討を行った例 >

(平成12年度:事例9)三井化学(株)及び武田薬品工業(株)の共同出資会社の設立によるウレタン事業等の統合

(平成12年度:事例9)三井化学(株)及び武田薬品工業(株)の共同出資会社の設立によるウレタン事業等の統合

1 本件統合の概要

 本件は,三井化学(株)(以下「三井化学」という。)と武田薬品工業(株)(以下「武田薬品」という。)が,欧米企業の競争力強化に対抗するため,両社の事業を統合することにより収益力を強化するとともに,生産,物流及び販売におけるコスト削減等を図ることを目的として共同出資会社を設立し,両社のウレタン事業を統合するものである。
 武田薬品は,共同出資会社の営業開始5年後には,当該共同出資会社の持分全株式を三井化学に譲渡することとしている。

2 独占禁止法上の考え方

(1) 一定の取引分野

 本件においては,統合の対象であるウレタン原料ごとに一定の取引分野が成立すると判断した。

(2) 競争への影響

 上記(1)で画定した取引分野のうち,競争への影響が大きいと考えられる軟質ウレタンフォーム等の原料であるTDIの製造・販売分野についての検討結果は,次のとおりである。

ア 市場シェア

 本件統合により,TDIに係る両社の販売数量シェアが60%弱でその順位が第1位となる上,上位3社の累積集中度が約90%となる。また,当事会社のTDIの生産能力シェアが80%程度となる。

イ 競争業者の状況

 TDI市場においては,販売数量シェアで10%を超える競争業者が2社存在する。
 また,国内メーカーのTDI生産の稼働率は高いところ,生産数量の7割程度を輸出している当事会社に比べ,国内の競争業者の輸出比率は低いことから,競争業者が現在の販売数量以上に国内に供給する余力は少ない。

ウ 輸入

 輸入については,近年ではほとんど実績はない。
 また,ユーザーが輸入をするためには,港湾地区のタンクが必要であるところ,これを自ら手当てするとなると相当量の輸入をする必要があることから,大手ユーザーを除けばユーザーが自ら輸入を行う環境が十分には整っていない。

エ ユーザーの状況等

 TDIはメーカー間に品質差がないところ,ユーザーである大手ウレタンフォームメーカー等は複数メーカーから購入している。
 また,ユーザーは,海外市況や原料であるナフサの価格動向等を踏まえ,メーカーと価格交渉を行っている。

(3) 問題点の指摘及び当事会社の対応

 当委員会は,上記の状況を踏まえた場合,TDIの製造・販売分野について,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがある旨の問題点を当事会社に対し指摘した。
 これに対し,当事会社からは,次の問題解消措置を講ずる旨の申出があった。

(ア) 国内市場の十数パーセントに相当する7,000トンのTDIについて,2年以内に長期的生産受委託契約を締結することにより,コストベースでの引取権を競争業者に提供する。

(イ) 当事会社が保有する港湾地区のタンクをユーザー等の希望に応じ提供する。

 当委員会は,当事会社の問題解消措置が講じられた場合,ユーザーが複数購買を行っている状況の下で,競争業者が当該引取権分の供給力を増加させることにより,国内市場における当事会社に対する競争力が強化されること,また,アジア地区等においてTDIプラントの新増設が計画されているといった状況から,タンクの提供を受けることによって輸入が容易となることが期待できることを踏まえれば,本件統合により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないものと判断した。

ページトップへ